音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
続いてカティア・ブニアティシヴィリのラフマニノフのピアノ協奏曲第2・3番。指揮はパーヴォ・ヤルヴィ、チェコ・フィルハーモニック。



実は以前NHK(FMだったかも)で放送された彼女のラフ3を聴き逃しており、残念に思っていたので、この録音の発売は大変嬉しい。さて、演奏時間は16:08/9:36/13:06とのことで、いつも通り彼女の他盤から想像するに演奏の様子は大体予想出来たが、実際聴いてみると期待以上の出来であった。


第1楽章出だしは快速。キビキビと進む。また、ペトリューシュカで聴かれたような彼女らしいテンポの揺らしが見られるもののコンチェルトということもあって余裕で許容範囲。タッチは弱音で抑制が利いた感じ。両手交差は鮮やかで飛び跳ねるようなスタカートが目に浮かぶよう。展開部の和音連打もテンポを落とさず突っ走り、激情的。音の線が細めなのが少々気になるか。カデンツァは演奏時間から察した通りossia。これがまた良い。衝撃のデビュー盤リスト集で見せたシリアスさとキレのある技巧が相まって、後半の和音部分でクライマックスを迎える。後半に続くカデンツァはややモタレ気味かも。第2楽章、例の歌の部分は派手さはないがしみじみと歌っており好印象。その後もやや速めのテンポながら、ジャケ写真のような雨に濡れそぼった叙情を時折見せつつサクサク進む。後半の細かい音の部分は流石の鮮やかさ。お待ちかねの第3楽章、期待通り同音連打は非常に速いテンポで細部まで音が明晰。その勢いは衰えず、疾走する。息子ヤルヴィはオケを遅めに歌わせたいようだが(別にズレているわけではなく、なんとなくの印象)、意外にも彼女は走るだけでなく寄り添うような姿勢を見せ、ロマンティックな雰囲気を醸し出している。最後の方はアルゲリッチ的な爆発を望んでしまうが、比較的優等生な表情のまま終わる(それでも普通からすると十分派手だけど)。録音は毎度お馴染みピアノが近く、オケが遠く、深くて長ーい残響をまとったSONYな音質。そのせいか、やたらとオケが地味。


全体としては、彼女のオテンバなところがセーブされており、端正な印象さえ感じるところもある。テクニックの高さは予想通りで、文句の付けようがない。ただ、やはり彼女のポテンシャルを考えると、熱狂するようなライヴ演奏を期待してしまう。けれども、この質の高い演奏には4つ星☆☆☆☆を付けたい(ただし、4つの中では下の方かな・・・)。


さて、いつもならここで終わりだが、今回はラフマニノフの2番の方の感想も少し書いておく。これが素晴らしい演奏!ラプソディックな曲想と彼女の奔放な??キャラクターがマッチしており、他のピアニストがテンポを落とす箇所でもズイズイ駆け抜けるので爽快なことこの上ない。活きの良い、ピチピチしたタッチで攻めまくりの急速部分は鮮やかの一言である。


というわけで、3番も完成度の高い演奏だが、2番の方は手持ちの盤の中でも俄然ベスト3に食い込んできた感じで、1枚のアルバムとしてオススメである。

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SokolovのMozart Rachmaninov Concertos
2017-03-17-Fri  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
随分間が空いてしまった。



年度末で忙しいのと、村上春樹を読んでいたせいだ。私は本を読むのがとても速いのだが(家人には「読み飛ばしている」とよく言われる。実際あまり頭に入っていない)、今回は珍しくじっくり味わうように読んだ。


そしてここにようやく、皆さんお待ちかね??の大物ピアニスト3人のラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番の感想三連発をお届けする。実はHMVで注文したら、アムランの発売が1日延びたせいで配達が遅れ、到着したのはつい一昨日である。まずはソコロフのラフ3から。1995年7月27日録音で、随分と前の演奏である。指揮はYan Pascal Tortelier、オケはBBCフィル、ライヴ録音。


再生し始めてまず気になるのがホールのザワザワしたノイズ。これからコンサートが始まるかと思うと胸が高鳴る。音密度というか、解像度は高そうである。以前の録音と同様、出だしはノッソリ始まるが、その後すぐの細かい音型からは人が変わったかのように走り出す。かなりの快速テンポ。タッチが力強い。両手交差部分は相変わらず巧みで、展開部の和音連打は相当なスピードでやや音が荒れ気味なものの、迫力十分。カデンツァは言うことなし。深々とした重低音の響かせ方など、この辺りはロシア正統派という感じ(何でも無さそうなところでちょっとミスっているが)。第2楽章も実に手慣れていて素晴らしい。最近は横山盤やヴォンドラチェク盤など名演揃いだったのでどうかなと思っていたが、負けていない。というか、それらのどれとも違う。奏でられている音楽に余裕があるというか、懐が深い感じ。単に水平方向に濃ゆいだけでなく、垂直方向にも深い説得力を感じる。終楽章、出だしが速い!彼としてはミスが多めながら、同音連打の攻めっぷりが爽快。例の重音上がりの部分は以前の盤ではモゴモゴとしていて気付かなかったが、明らかに他盤と違うソコロフヴァージョンとでも呼ぶべきフレーズを弾いている。口で言うのは難しいが、重音ではなく左手で対旋律を加える感じで、華やかかつセンスの良さを感じる。この楽章はテンポが速めなこともあって、第1楽章と比べると結構ミスは増えてきている。曲の終わりの箇所は前半を8分音符で下降して途中で2拍3連に戻す以前と同様のもの。演奏時間は17:28/11:29/15:01で、ライヴのため終楽章は14分半ほどで終わる。前回の海賊盤??らしきCDでは第1楽章が18分を大きく超えていたので、テンポが速い方が好きな私には嬉しい違いである。ちなみに、オケの出来はイマイチ。ところどころでピッチが外れているのが残念。


トータルとしては前録音を優に超え、十分に4つ星を付けられる素晴らしい演奏なのだが、実はこのCD、私にとっては見過ごせない重大な欠陥がある



音が変なのだ。



音がごくわずかにズレてダブリングして聴こえる。最初はピアノだけかと思ったが、部分的にオケもおかしい。エレキギターを弾く人には、エフェクターで『コーラス』をかけた時のような音と言えば分かって頂けると思う。私はこのコーラスをかけた楽器の音色が大嫌いで、コーラスがビンビンにかかったギターサウンドのフュージョンがジャンルごと嫌いになるくらい苦手なのだ。はっきり言って気持ち悪くて船酔いしそうである。イヤホンでは1回通して聴くのがやっとだ。スピーカーで鳴らすとイヤホンよりはマシだが、第2楽章の緩徐部分などはとても聴いていられない。今のところネットを検索してみても「音が変」と書いているレビュワーはいない。私の耳がおかしいのだろうか?


CDケースの裏面左下には小さく「Live radio recordings by ORF and BBC」と書かれている。私の持つディスコグラフィー情報によると、どうやらこの録音は海外のエアチェックとしてラジオ放送されたもののようだ。おそらくその権利をDGがBBCから買ったのだと考えられる。


兎も角、こんな変な音のするピアノをソコロフが弾いていて気が付かないわけはないので、明らかに録音上あるいは編集上の瑕疵だろう。天下のDGがこのような音質のCDを出すということが驚きである。はっきり言ってしまえば、不良品として回収されて然るべきCDだ。これをお読みの関係者の方には、名演を台無しにしているこの音質について説明して頂きたいものである。総合評価としては怒りを込めて2つ星☆☆としたい。というわけで、私のように音に神経質な方は、購入される前に店頭でじっくり試聴するなりして、よく検討したほうがよいと思われる。




(頭に来てモーツァルトの方は聴いていない)

※後日談

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Kurt Rosenwinkel 『Caipi』
2017-02-25-Sat  CATEGORY: ギター作品
ジャズギターは私の準専門分野(??)だ。



語るとピアノ並みかそれ以上に長くなるのでこれまでブログに書くのを控えてきたが、そろそろガマンできなくなって来たのでいよいよ書く。


現代ジャズギター界の皇帝こと、カート・ローゼンウィンケルのニューアルバム、『Caipi』である。





フィジカルCDの発売日は昨日だったが、先行発売のハイレゾに手を出して聴き込んでいた(危うくハイレゾに気付かずCDを買うところだった)。家ではMac+Audirvana or VLCで鳴らし、通勤ではハイレゾのポータブル再生機を持っていないのでスマホとハイレゾ対応のイヤホンで聴いた。しかし、こないだの記事ではないが、ネット購入はなんとも味気ない。。。


カートの作品について、リーダー作は全部愛聴してきたし、彼の楽曲集のスコアを買ってにわか研究したこともある(生半可に奏法分析などをするとジャズギターマニアの方に怒られるのでやらない(苦笑))。彼の『Remedy』というヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ盤は私の無人島行きスーツケースに収められる最高に好きな作品だ(いつかこの盤についても書きたい)。


カートのリーダー作は2012年の『Star of Jupiter』以来、5年ぶりである。この前作『スター・オブ・ジュピター』は今をときめく凄腕ミュージシャンによる超コンテンポラリーなジャズカルテット。特にリードトラック『Gamma Band』では、もはやジャズでもロックでもプログレでもない、近未来の音楽セッションという感じの曲。ギターはリングモジュレーターを同時に鳴らしたかのような不可思議で宇宙的なサウンドで、強烈なコード進行の上を縦横無尽に未だかつて聴いたことのないソロをカートは弾きまくる。若き天才ピアニストとの誉れ高いアーロン・パークスも、ここでのソロは流石に苦しそうである(ちなみに私は同じアーロンでもゴールドバーグの方が好きだ)。



さて、話を『Caipi』に戻す。これはカート自らほとんどすべての楽器を演奏し、10年の歳月をかけて完成させたという驚きの作品である。いわゆる普通のコンテンポラリー・ジャズを期待すると肩すかしを喰う。ネット上ではライナーノーツの翻訳が読める。全曲のレビューを書きたかったのだが、こんなに立派な文章があるので書くのを止めた。しかし、ちょっとだけ語るなら、これほどまでに鮮やかな色彩を感じる音楽は初めてだ。このアルバムの美しいジャケットそのままの、実にカラフルなサウンドに満ちている。ジャズとボサノヴァを基調として、ブラジル音楽、ブルース、ソウルを織り交ぜ、さらにはテクノやポストロック、音響系への漸近までもが見てとれる(ライナーでエイフェックス・ツインが何度も引用されてるのにはビックリ)。何より驚くのは、歌入りだということだ(正しくは「声入り」かもしれないが)。声入りと言っても、ポップソングのようなAメロBメロサビの繰り返しとは違う。メロディは今までのカートの曲のテーマ調ではあるが、より取っ付きやすくそして美しい。曲によっては不可逆的な進行を見せ、プログレ的でさえある。


カートの略歴はこちらが詳しい(なぜかファーストアルバム『East Coast Love Affair』や2nd『Intuit』発売の経緯が書かれていないのが怪しいけれど)。これを読むと、カートが実は相当な宅録オタクだったことがわかるが、このアルバムはまさにそんな彼の本質が全面に出ている。彼の演奏するベースやドラム、そして以前から聴けていたピアノも上手く(当たり前と言えば当たり前だが、そのグルーヴは面白いことにギターの時とほとんど同じ!!)、多彩なゲストの起用も当たっている(目玉のはずのクラプトンの演奏だけは「?!?」と思わざるを得ない笑)。マーク・ターナーは相変わらずマーク・ターナーだし(J・レッドマンのように自己主張が強いわけでなく、C・ポッターのように先鋭的でもなく、M・ストリックランドやE・アレキサンダーのようにストレート・アヘッドでもない。要するに丁度良い)、「voice」担当のペドロ・マルティンズは、元パット・メセニー・グループのペドロ・アズナールかリチャード・ボナのようだ。声を楽器のようにジャズに用いるミュージシャンと言えばメセニーがいるわけだが、数百年後のクラシックとなりうるポピュラリティを備えつつ壮大で映画音楽的でさえあるメセニーに比べ、カートは自己の先鋭的な音楽性そのままに現代の音楽シーンに切り込んでいる気がする。それを理解する(できる)リスナーの醸成に時代の変遷を感じるのは私だけだろうか。


眼前に立ちはだかるようなコンプの効いたスネアやバスドラの音、ややラウドなベース(嫁は「床が揺れる」と)、(クラプトンに限らず)時折埋もれがちになるエフェクトかかりまくりのギター、細部までこだわったアレンジのシンセの入れ方など、宅録的に煮詰めまくった音楽である。はっきり言ってジャズの伝統的なフォーマットとは全く違うし、「ラテンジャズ」のコーナーに置くのが正しい分類だろう。手を入れ込み過ぎと感じる向きもあるに違いない。今までの彼のような、脱バップ・非ロックなジャズギターを期待していたギター小僧はガッカリするかもしれないが、私は本当に素晴らしい作品だと思う。ここには私の好きなジャンルが目一杯詰まっている。まさに、カートの新たな代表作と呼ぶに相応しい必聴の名盤である。ハイレゾはキメ細かすぎて聴き疲れするので、別ミックスによるマイルドなアナログレコードで出して欲しいが、まあ不可能だろう。


カートはこの4月に来日公演を行う。早速私はチケットを予約した。彼の実演は2010年と2011年にどちらも新宿ピットインで観た。2010年の公演では、演奏終了後にドラムのロドニー・グリーンが客席を歩いてきてある男性客の前で立ち止まり、周囲は何事かと思っていると、客の胸ポケットからICレコーダーを取り出し「これは何だ!」と怒鳴ったことを思い出す(笑)



ともあれ、現代ジャズギターの皇帝が、実は宅録オタクだったというのは私にとって嬉しすぎる驚きである。けれども最も驚くべきは、この作品の制作に「10年かかった」ということだ。これが10年前に彼の頭の中で鳴っていた音楽ならば、今の彼にはどんな音楽が聴こえているのだろう?

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ウィウコミルスカ&バルボーザのベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ第5番「春」〜
2017-02-19-Sun  CATEGORY: お気に入りピアニストの紹介
長年欲しかったレコードを手に入れた。



barbeet



これはワンダ・ウィウコミルスカのブラームスのヴァイオリンソナタ第3番、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」である。ブラームスの方は第1・2番とカップリングされてCD化されており(ヤフオクでとんでもない値段で出ているが吉祥寺ユニオンでは7000円弱で1ヶ月ほど売れずに残っていた)、ベートーヴェンの方は適当な併録が見付からなかったのだろう、おそらく未CD化でTAPE化のみされていて、それを例の図書館行脚(笑)で私は音源だけ入手していた。案の定、テープが伸び伸びで聴けたものではなかった。


これはウィウコミルスカの人気も手伝って、非常に入手が困難なレコードだ。年に数枚出るのだが、足が速い。CD&LPでは送料込みで2万円overで長いこと売られていたり(送料の値下げを業者にメールでお願いしたが「一度出品すると変えられない。申し訳ない」と丁寧かつ残念な返事が来た)、何度も見送ってきた(ちなみに、そのレコードが売れたちょっと後に日本でブログで話題にされている方がいた。お金持ちはいるものである笑)。邦盤もあり、ユニオンで出るとそれほど高くないようだ。兎も角今回、ようやくebayで比較的納得できる価格で入手できた。


入手したのは実はかなり前なのだが、あまりにショックでずっと書かなかった。それと言うのも、例に寄って盤質がNMとあったのに、重大な瑕疵があったからだ。春ソナタの冒頭でわずかに盤の山折れがあり、周期的にチックノイズが入るのだ!・・・これには本当に凹んだ。。何度か盤のその膨らみを直そうと試みてるが、勿論うまく行かない。


さらに肝心の演奏が酷い。ヴァイオリンの良し悪しなど私にはよくわからないが、それでもこの演奏はイマイチだと分かる。ピッチが不安定なのだ。バルボーザの伴奏は勿論素晴らしいのだが、ブラームスよりは目立たない感じで、とにかく残念である。唯一の慰めは、ブラームスの3番がCDよりも味わい深い音質に感じることだろうか。しかし、入手した価格を考えると失敗だっと言わざるを得ない。ベートーヴェンのみ(おそらく)CD化されていないのも無理はない、という出来である。


というわけで、私のようなバルボーザ好きの方でも無理に入手される必要はないかと思う。
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最近聴いている音楽 vol.51〜ブニアティシヴィリとクリッヒェル〜
2017-02-18-Sat  CATEGORY: 雑多な話題
忙しくて間が空いてしまった。



何故忙しいのか、4月以降に書こうと思う。まあヒマそうに見える私だがたまには忙しくなるのだ。


さて、通勤中にやっつけた2枚を。カティア・ブニアティシヴィリの『カレイドスコープ』(展覧会の絵とラ・ヴァルス、ペトリューシュカ)と、アレクサンダー・クリッヒェルのラフマニノフのコンチェルト2番。さらっと書いてしまう。


何度か書いているように、私はムソルグスキーの『展覧会の絵』が苦手である。大体、あの旋律でなぜタイトルが「展覧会の絵」なのか?私的には雄大な山々を眺めてるような感じだ(観ていた絵が山の絵だったのかもしれないが)。上手く説明できないが、嫌いとまではいかないけれど好んで聴くことはない。おまけに、kyushimaさんに(ペトリューシュカも)「△」評価を付けられている。だから今回も買おうかどうか迷ったのが安かったので聴いてみた。


最初に聴いた時は「意外にいいかも」と思った。苦手な曲なので、彼女のもはや隠しきれないオテンバ感が予想外の面白さを生んでいると感じたのだ。しかし、2回目には「やはり気ままにすぎる」と思った。部分部分は面白くても、全体のつながりというかなんというか変な感じで、おまけに技のキレも?苦手曲だから他盤との比較もする気はないのだが・・・少なくてもティエンポ盤とはかなりの完成度の差がある気がする。

ラ・ヴァルスは予想通りvirtuosity溢れる演奏で、音の五月雨という感じ。ライバル?のユジャ・ワンよりかなりテンポが速いのだが、曲に合っているのかどうか(この曲は私の好きなババヤンも演奏を残しているので久々に聴き直してみよう)。

最後のペトリューシュカからの3楽章、これは最初に聴いた時からイカンなぁとわかった。第1楽章は予想外の内声の強調や、急加減速がまだ面白いのだが、終楽章はあまりにも恣意的すぎるというか、コロコロと変わるテンポに付いて行けない。アルゲリッチはこの曲の録音を残していない(と思う)が、彼女が演奏したらこんな感じだろう。細身の女性が力任せにエキスパンダーをグイグイ引っ張ってるようなテンポ感だ。というわけで、ラ・ヴァルスはなかなかだったものの、メインの2曲はkyushimaさんの評価通りである。


続いてKrichelのラフ2。これも1回聴いて「もういいかな」と思ったが、頑張って2周した(率直に言えば、そのような評価だ)。とにかくテンポが遅い。じっくりと歌っているのだが、いわゆる勿体ぶったロシア流ではなく、いかにも生真面目なドイツ人が歌っていますという感じで、しゃくり上げたり慟哭したりというのがない。全体的にノッペリとテンポが遅い感じ。それに加えて録音がよくない。ピアノが遠く、モヤッとしていて「ホールの客席で聴いている」かのようなタイプの音質である。音像もボヤけてヌケが悪い。第2楽章など、ピアノの陰が薄過ぎてまるで「ピアノ入りシンフォニー」のようだ。急速部分のメカニックも(解釈かもしれないが)物足りない。あまりにガッカリして耳直しにツィメルマンの2番の演奏を聴いて上書きした(が、これも昔聴いたほどの感銘は受けなかった。歳を取ると変わるのだなぁ・・・それでもやはり良い演奏だけど)。


他に楽興の時の6曲。第2番のアレグロは以前書いたようにアムラン、ヴォロドス、ルガンスキー、ギンジンらテクニシャンが録音を残して私がピアニストのメカニック能力のベンチマークとしている曲だが、想像よりかなりいい。彼らトップ層よりは1.5段階ほど落ちるがそれでも相当巧い。他のリリカルな曲はようやく彼の本領発揮と言う感じで、やはり繊細で音の響かせ方に良いモノを感じる彼はコンチェルト向きではないのかもしれない(彼の既発のショパンのコンチェルトに手を出さなくてよかったかも??)。最後の自作だという「子守唄」は、辻井君のデビュー盤に収録されている絶句する名曲よりは出来がいい・・・という程度(演奏はとてもいい)。響きが現代の映画音楽的なところがあって、やはり作曲は誰でも出来るわけではないなと感じた次第。


というわけで、私と同じ嗜好をお持ちの方は、この2枚はスルーされるのが良いと思う。


それと前回、大事なことを書き忘れたが、図書館でCDを借りる際は東京の図書館横断検索カーリルローカルを利用されると良いと思う(前回の記事にも追記しておこう)。バルボーザのレア盤やその他の廃盤を探しに東京を小旅行するのも面白い。

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