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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Francesco Grillo / Vivaldi: The Four Seasons, etc

フランチェスコ・グリッロというイタリアのピアニスト&コンポーザーの作品を聴いた。

ピアニスト&コンポーザーというワードは久々に目にした気がする。原曲に彼なりの編曲を加えているようである。販売元による情報では次のように書かかれている。


イタリアのピアニスト&コンポーザー、フランチェスコ・グリッロ。音楽に造詣の深い家庭に育ったグリッロは8歳からピアノを始め、11歳で作曲を始めるまでとなりました。彼の憧れはショパンやリストであり、15歳で初めてのソナタを作曲、さらにその後ラフマニノフ、プロコフィエフなどのロシア系、さらにラヴェルなどのフランス系作曲家たちに影響を受け、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院を卒業。ビル・エヴァンスやバド・パウエルなども好んで聴き、弾いていました。彼のアルバムは、これまでの音楽とは異なり、クラシックの伝統を完全に学び自分のものにしたミュージシャンが、現代の音楽(ジャズ・インプロヴィゼーション)を織り交ぜた独特なもの。この斬新なリリシズムと多彩なスタイルは、ポピュラー音楽に通じるクールさがあります。それにしてもこんな斬新で美しい音楽は、どうやったら思いつくのだろうか? 演奏技術もさることながら、その創造力にもただただ感心させられるアルバムです。


これはひょっとして私の好きなGreilsammer系ピアニストか?と思い手を出して聴いてみた。

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曲目は、ヴィヴァルディ(フランチェスコ・グリッロ編):協奏曲集「四季」(全曲)、バッハ/ブゾーニ:コラール『主よ、われ汝に呼ばわる』、シャコンヌ、バッハ/ラフマニノフからヴァイオリンパルティータ第3番より3曲、となっている(ちなみに収録曲はいつも通りまずはネットからコピペをしたのだが、メーカーのインフォがデタラメで書かれていない曲もあり、閉口した)。2016年の録音である。

これがまあ酷い。何が酷いかというと、演奏はそれほど酷くないのだが、上の紹介文が全くのデタラメだったのだ。

まず録音だが、毎度おなじみソニーの明晰モノクローム調&不自然な残響の音質で、悪くはないがピアノの音色が磨かれているとまでは言えない。初めのヴィヴァルディは過度な虚飾を排したカッチリしたタッチで、なんとなくグレイルザンマーやドゥバルグを思わせる知的な印象がして期待させる(アームストロングほどではないが)。ところがPrestoなど素早い同音連打が続く曲になると、粒が揃ってない感じでパサついてホコリっぽい。また、ところどころで彼の編曲が加わっているのだが、近代的な音を少々追加した程度にしか私には感じられず、ジャズだの現代音楽だのと言った雰囲気は皆無。

バッハ=ブゾーニになると、聴き慣れた曲だけにさらに注文が増えるのだが、ヴィヴァルディから想像するほど悪くない。技巧はたとえば近年盤だとレスチェンコやグロヴナーとかの若手?技巧派から3段くらい落ちるのだけれど、まずまず標準的でストレスはそこまで感じない。前半の長大なアルペジオが連続する部分の勢いも結構あって頑張っているのだが、和音が入る箇所ではさすがにテンポが落ち、オピッツには遠く及ばない。アルバム全体を通して、和音に腰が入っていない印象を受けるのがいちばん気になる。ほかに、レガートとノンレガートの弾き分けが極端というか、恣意的にコロコロ変わるのが私の趣味に合わない。演奏時間は14:46で個人的な好みからは少し遅めであり、以前紹介したビスムート盤のほうが良いかも。そしてまだ聴き込んでいないが、ここでも一部に彼なりの音の追加と解釈の変更がある気がする(良いとは言えない)。

バッハ=ラフマニノフのパルティータ3番は一番良くない。解釈もそうだが、和音や同音連打の響かせ方が特にイマイチで、しかもたった3曲でアッという間に終わるし、一体何がやりたかったのか?しかもこれがトリとは、販売元は何を考えているのか。

そして最も憤るのは、アルバムのどこを聴いても「現代音楽もジャズのインプロヴィゼーションもポピュラー音楽のクールさ」が感じられないことである。ひょっとしたら、彼の他盤からの印象を書いているのかもしれないが、少なくともこのアルバムの紹介文としては誤解を招く内容であり、極めて不適切である。書いた人間がこのアルバムを聴いていないとしか思われない。

そんなわけで、アルバム全体の出来としては60点台半ばくらいで「今後聴き直すか微妙」なラインだが、何よりメーカーの紹介文が許せない。モノを売るなら、もっときちんとしたほうがいい。

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Sergio Tiempo / Live in het Concertgebouw

最近はユニオンに出かけても胸がときめくことがほとんどない。


既出の見知らぬレア盤に出会うことなど、年に1・2度あるかないかなのだが、その1度がいきなり年始にやってきた(なんか毎年この時期に同じこと書いてる気もするが)。


セルジオ・ティエンポ / ライヴ・イン・コンセルトヘボウ

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これが(hetというのはオランダ語での「the」を表すようだが)有名なコンセルトヘボウ・アムステルダムでのライヴ盤とは違うCDなのだ。


ユニオン某店でふと手に取ったところ、値段がべらぼうに高くて驚いた。どうせ例のアムステルダム・ライヴだろうし、そんな珍しい盤じゃないのにと不思議に思い、一応収録曲を見たところ、1曲目にバッハのパルティータが入っていないことで脳内で完全にスイッチが入る。慌ててAmazonで調べ、タワレコで調べ、Discogsで調べ、さらに念には念を入れてGoogleでも調べ、最後に自分の記憶ともじっくり照らし合わせ、これは自分の未知なるCDと判断して購入した(だって高いんだもの)。先ほど述べたように、この3重・4重の"レア盤"フィルターを通過する盤は年に数枚もない(勿論、Discogsにも未だ載っていない)。


録音は1993/4/4、収録曲は、シューマン・幻想曲Op.17、ラヴェル・夜のガスパール、リスト・コンソレーション第3番、そしてメフィストワルツ第1番。EMIから出た夜のガスパール以外はどうやら初出のようだ。21歳の時の演奏ということになる。レーベル名がよく分からず、最初は海賊盤のような裏青CDかと思ったがプレスCDで、ジャケ写真もしっかりしているし、折りたたみのブックレットになっている。録音データも使用機材を書くなど思いのほか詳しい。肝心の音質は、隠し録りっぽさがなく、コンサートホールの前から15席めくらいで聴いているような残響多めの音で団子っぽい感じはあるが、この時代のライヴ録音としてはまずまず普通か。


シューマンの幻想曲は久しぶりに(そういえばこないだ聴いたのはアムラン盤だった)聴く気がするが、ダイナミックレンジが大きく、歌心もある。ロマンティックというよりは、力強さが目立つ弾きっぷりに若さを感じる。結構大胆にテンポを揺らすだけでなく、止まったり駆け出したりと忙しないのだが、センスがあって飽きさせない。技巧が目立つ曲ではないものの、テクニックの優秀さを随所に感じる。この曲は10年くらい前に知り合いが北川暁子氏についていて、先生がリサイタルをするというのでコンサートに聴きに行った思い出がある。その時の演奏がまた力強く、ガシンと心を掴む名演だったので、その刷り込みのせいかそんな演奏が好みになっている。このティエンポの演奏はそれを思い起こさせてくれた。


続いてラヴェルの夜のガスパール。これは後のEMIでの名演の印象が強いだけに、その6年前の演奏だからどうかなと思ったのだが、ライヴらしい勢いと生々しさがあって非常に良い。昔、ガラス細工のように繊細なこの曲はちょっとでもミスが出ると興ざめだと思い、ライヴ盤では聴きたいとは思わなかったのだが、シュフの、素晴らしい実演に接して以来、また違った楽しみ方ができるようになった。上手く言えないのだが、劇場で演者が目の前で慟哭しているような生々しさをイメージするといいかも(全く何を書いてるんだか…)ともかく、ミスはそれなりに多く、オンディーヌは時折、スカルボでは結構目立つ。それでも絞首台はグロテスクかつ暗澹たる情景を描き出しており、惹き込まれる。全体的なテクニックの冴えはEMI盤ほどではないが、それでも高レベル。ロルティ、ポゴレリチ、シュフ、グロヴナー、そしてティエンポ自身と、数ある名演の中でもやはり鋭利かつ豪快さに満ちた特異な盤として、このライヴには価値がありそうだ。

最後のリスト2曲。コンソレーション第3番は至極まっとうな佳演。最後に控える曲のために力を溜めているかのようではあるが、アルバム中もっとも抒情的で歌に浸れる演奏。音色も綺麗で、団子状に中央に密集しているのが惜しい。トリのメフィスト。出だしから金属的な打鍵でエコノム盤を思い出す。時折猛烈な勢いを見せる箇所もあるものの、むしろ緩徐部分での歌のセンスに惹かれる。重音トリルや同音連打がメチャ速く、ラヴェルで見せた細かい指技が彼の真骨頂か。クライマックス部分の迫力は凄まじいが、いまひとつスピードが上がらない上にミスが多くポロポロと目立つ。跳躍部分はテンポはまずまずだがやはり弾き損じが多い。ライヴで勢いのある演奏というとロマノフスキのブゾーニコンのガラコンサートを思い出すが、あれほど録音は良くないので、トータルではこちらの方が分が悪いか。この曲のマイベストはブニアティシヴィリかエコノム、D・トンだろうか(マツーエフには色々厳しい私)。


というわけでまとめると、団子の録音にミスが多めで、70点台の半ばという感じ。すんごいレア盤を見つけたと思ったが、中身はそれほどでもなかったというのが正直なところ。

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David Greilsammer ほか / SOUNDS OF TRANSFORMATION

私が最も注目しているアーティストの1人、デヴィッド・グレイルザンマーの新譜。一言で表すと、ジュネーヴ・カメラータとジャズ・ミュージシャンによる、ジャズとクラシック・現代音楽の融合である。

もう期待を裏切らないというか、私の好みズバリそのものな内容である。出だしから、バロック時代のクラシックに現代ジャズの高速インプロがビックバンド風に織り交ぜられる。途中、アイヴズの曲などを緩衝材的に挟みつつ、プログレ好きの私には嬉しい「許容範囲に適度なゲンダイオンガク感」がフランク・ザッパを思わせる。

今回、グレイルザンマーのエラいところは、ジャズのインプロヴィゼーションの編曲・演奏を専門家に任せ、自身は指揮と一部のピアノ演奏に徹したところである。以前の作品でも取り上げた作曲家、ジョナサン・ケレンが作編曲で参加するなど、各曲のアレンジの質がいちいち高い。ジャズピアノのインプロはYaron Hermanというジャズ方面で何作もアルバムを出している「ホンモノ」が担当しており、グルーヴが素晴らしい(他のジャズ・ミュージシャンも言わずもがな)。勿論、グレイルザンマーもピアノを弾いており、ラヴェルのピアノ協奏曲では御馴染みの知的好奇心をかきたてる解釈が聴ける。主役な感じがしないのが、ちょっと残念だが・・・。

というわけで、クラシック方面オンリーな読者の方には全くオススメできないが、私としては今年のベストな1枚になりそうな予感。

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Volodos plays Brahms

昨年出たアルカディ・ヴォロドスのブラームスを買ってみた。ユニオンに行く暇がないので、HMVで輸入盤抱き合わせ買いである。


この人は現役最高レベルのテクニシャンであり、ペトロフ亡き後の総合力No.1重戦車であることは疑いがないと思うのだが、なぜか渋い曲の録音ばかりで、不満を感じている(ちょっと前に出たモンポウも聴いたが、素晴らしいことは素晴らしかった。しかし、彼が録音すべき曲はもっと他にあると思うのだが・・・)。

ともあれ、聴いてみた。曲はピアノの小品Op.76より1~4番、3つの間奏曲Op.117、6つの小品Op.118。やはり巧い。かなり昔になった渋い選曲のリスト集のような印象で、録音はいつものソニーでモノクローム調ながら、滋味深く大人な、極めて洗練されたタッチ。テクニックが目立つ曲ではないけれども、それでも圧倒的な音色のコントロール力が際立つ。デビュー時の超絶編曲ものの緩徐部分で聴かれた歌い方の暑苦しさも薄まっており、彼の音楽性の面での深長が見られる(彼の目指している方向なのだろう)。

しかしながら、比べてしまわずにはいられない、グールドの演奏。以前書いたように、グールドのインテルメッツォは「ピアノが歌っている」ことの代表元となるべき世界遺産的演奏だと思っているので、明らかに分が悪い。テクニックで勝負しない曲における、ヴォロドスの限界が見えてしまう気がする。それでも、秀逸なアルバムであることは疑いがない。

今後のヴォロドスはどう歩んでいくのだろうか。超絶技巧編曲路線にはもう戻らない予感がする。ショパンやリスト、ラフマニノフはなんとなくもう弾かなさそうなので、ベートーヴェンのソナタや、ショスタコーヴィチの前奏曲とフーガ、そしていよいよ本格的にバッハの録音に向かうのだろうか。いずれにせよ、質の高い録音を期待したい。
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Vesselin Stanev / Franz Liszt

Vesselin Stanevという知らないピアニストが、リストの私の好きな曲中心に録音を出していたので買ってみた。

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曲はノルマの回想、ダンテソナタ、メフィストワルツ1番、ドン・ファン幻想曲という、コッテリ具合である。2014年の録音のようだ。ネットのHMVで見かけて、演奏時間等をよく確認せずに買ったのだが、これだけ好きな曲があればまあ買っても損はなかろう。

・・・しかし、届いて裏ジャケを見てみれば、収録時間が18:36、17:12、11:53、18:33で、トータル66分。道理で4曲しかないわけだ(もう1曲入っただろうに)。ということで、どの曲も遅すぎが予想され、「コリャダメだろうな」という先入観で聴いた。

ノルマはとにかく遅い。剛腕フィリペツの印象がまだ強いため、テクでは比較にならない。「戦争だ!」のところも蚊が止まりそうな勢いのなさ。ダンテは録音が良く(SACDハイブリッド)、例のオクターヴ上昇もまずまずなので、それほど印象は悪くない。メフィスト1番は爽快感とは程遠い演奏で、跳躍部分やその前の大きなアルペジオも幼稚園児が駆けている感じ。ドンファンも明らかにテク不足で、どこを取っても不満が残る。全体的に「リストらしいピアニスティックな迫力」に欠けている。

というわけで、録音の良さ以外に聴くべきところがなかった。ソニー/RCAというメジャーレーベルを信じてしまって、失敗。
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