音楽好きの世迷い言
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ルーカス・ヴォンドラチェクのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
2017-01-22-Sun  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
ついにヴォンドラチェク(Lukáš Vondráček)のラフ3が届いた。


youtubeで見て感激して以来1ヶ月半余り、コンビニ到着のメールを受け速攻で引き取りに行った(家に届くと嫁にバレる)。貧乏性の私は、在庫有りのタワレコでなくHMVのまとめ買いで注文していたのでこれだけの時間がかかってしまったが、1400円ほど安く買えたのではないかと思う(抱き合わせ商品を追加で3点買ってるので完全にHMVの思うツボなのだけれども)。


嫁が自宅でレッスン中、プラレールに夢中の息子の脇で大音量で2回ほど流す。youtubeで見たりレコーダーに録音して聴いたりしていた時の印象とかなり違う。youtubeでは音が途切れたり音質がイマイチだったりしていたのもあるが、CDの方は随分と演奏に品がある。動画では「濃ゆい」感じだったので(それが苦手な私は)ある程度覚悟をして聴いたが、それほど気にならない。むしろどんな急速部でも(終楽章の冒頭でさえも!)気品あるタッチでフレーズに表情がついていることに驚愕する(この曲の演奏を数多く聴いている方ほどそう思うのではないかと思う)。


全楽章を通じても、第1楽章はまだ若干の硬さが見られるかもしれない。けれどもそれが程よい緊張感となって聴き手に迫ってくる。出だしの快速感は他のピアニストでも聴けるレベルだが、タッチの精度が段違いだ。ヴォロドスやハフ、いや、冗談抜きで彼ら以上かもしれない。緩徐部分ではテンポを落とすものの、動画よりもあざとく感じないのは気のせいか。両手交差部分も実に美しい。展開分の和音連打は最高速クラスではないものの、十分な迫力。ossiaのカデンツァはyoutubeではちょっと気に入らない感じも受けたが、CDだとそうでもない(やはり目から入る情報は大きい?)。


第2楽章は最近聴いた横山盤の名演があったのでどうかなと思ったが、負けてない。それどころか、タッチの精度は上をいき、おまけに(横山盤と違って)ピアノの方が音が大きく録られているのが嬉しい。ついでに言うと、オケの健闘も素晴らしい。随所でピアノを盛り立てている。緊張感というものは有り余る技巧のせいかそれほど感じられないが、逆にこの楽章のロマンに浸れるという意味ではよいかもしれない。


そして特に素晴らしいのが第3楽章である。スピード感はブロンフマン2004年やハフ、横山盤にはかなわないが、とにかくよく歌う。ふんわりと絹のヴェールを纏った繊細さがあり、あらゆる細部で気遣いが見られながらも角を矯めて牛を殺すことになっていないのはズバ抜けた歌のセンス以外の何者でもない。例の楽章後半の重音ossia部分までの数分間はこの演奏の白眉だろう(誤解の無いよう書いておくと彼はこの箇所で通常版を弾いている)。何よりこの楽章からこんなに「音楽」が聴けたことは未だかつてない。徐々にアルゲリッチ的な推進力と自在に空を飛んでいくかのようなスピード感を増していき、一気にコーダまで駆け抜ける。最後のモチャモチャしがちな部分も明晰にピアノが聴こえて恐ろしい。彼は人間なんだろうか


CDを聴いて感じることは、我々が協奏曲第2番に期待しているようなロマンが演奏解釈に盛り込まれている、ということである。そのような路線の演奏は今までにもあったと思うが、2番を上回るとされる技巧が要求される3番にあって、技術的に成功していたとは言い難い(ベタベタのロマンを聴かせるもののテクニックでは物足りない演奏になっていることが殆ど)。ところがヴォンドラチェクは、私の知る限りこの曲の演奏者史上最高の技巧によって、それを見事に実現している。しかも、聴けば聴くほど「こんなこと演っていたのか!」という新たな驚きをもたらす新鮮な解釈と驚愕のテクニックが味わえる。演奏時間は16:48/10:14/14:10である(終楽章の演奏終わりは13:40ほど)。随所での「歌」のせいか演奏時間は長めだが、聴感上はそれほど遅く感じない。



ブロンフマン2004年に比して(ロシア的な解釈での)怒濤の迫力でストレートな演奏、というわけではないので決定盤と言うのは憚られるが、演奏から受ける感銘度からするとやはり初めての5つ星☆☆☆☆☆を付けたいと思う。何より、私の好きなエリザベート王妃国際でこの奇跡のような演奏が生まれたことが、コンクール好きの私には嬉しい。


前回のエントリーでも書いたが、ピアニスト新時代が来ている気がする。まだまだMIDIやAIには負けて欲しくない。というわけで、ヴォンドラチェクは今後も要注目していきたい。
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ブロンフマン&ラトルBPOのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番Blu-ray Disc
2017-01-09-Mon  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
今からちょうど12年前のこの日、2005年1月9日の夜、あなたは何をしていたか覚えているだろうか。




私は覚えている。鮮明に覚えている。




その日は日曜日だった。何を隠そう、NHK教育でブロンフマン&ゲルギエフVPOによる伝説のラフ3サントリーホールライヴ11/21が初放映された日なのだ。


修士論文の提出を控えていた私は、指導教官である教授がすべてを書いてくれた創案を基に毎日必死にタイプ打ちをしていた。お陰で書き上がった論文は大変立派な出来であった(皆さん薄々お気付きのように−−−−−−−私はあまり頭がよくないのだ)。日曜ということもあって、当時交際していた女性を一人暮らしの家に呼び、「今日は絶対に外せない番組があるんだ」とTVの前に陣取った。ラフ3マニアを志して数年が経っていた私は、アルバイト代のすべてをレコードにつぎ込んでいた。よく暮らせていたと自分でも思う。


果たして、当時すでに年代物になっていたブラウン管の中でブロンフマンは驚愕の演奏を繰り広げ始めた。2ヶ月半前、北オセチアで起きたテロで身を焦がしたであろうゲルギエフは年齢よりも相当老けて見える。ウィーンフィルの音色は期待通りに素晴らしく、展開部の鬼気迫るブロンフマンの打鍵を聴いて今夜は凄いことになりそうだと確信した。




その時、携帯電話が鳴った。




近所に住む大学院の友人(正確にはその恋人から)だった。「彼が胃腸炎になったみたいで、ひどく苦しんでいるんだけど、どうしたらよいかしら」という戸惑いの電話だった。続いて息も絶え絶えの友人が電話に出て「薬を買って来てくれないか」と懇願された。何もこんな時に腹痛を起こさなくてもいいだろうに、と私は恨めしく思いながら、胃腸薬を買ってそちらに行く、と告げて電話を切った(私はバイクを持っていたのだ)。


顔を上げてふとTVを見ると、ブロンフマンの演奏はカデンツァに突入していた。サントリーホールに響き渡る轟音。私は画面に釘付けになった。観客全員が固唾を飲んで見守っているのがわかる。NHKの巧妙なカメラワークで映し出される和音部分の激甚なまでの迫力で雷に打たれたようになった私は、ただただ呆然と口を開けて立ち尽くし、気が付くといつの間にか涙を流していた。やれやれ、この途中で出掛けなきゃ行けないのかと思いつつ、彼女を家に残して愛車のCB400SSに乗って開いてる薬局を探しに出かけた。



胃腸薬を買って友人のアパートに着くと、私の奮闘もむなしく友人は救急車で運ばれるところであった。



俺の感動を返せ



と不謹慎なことを半ば本気で思いつつ、私は帰宅した(友人は腸炎を起こしていたが無事に回復した。胃腸薬は自分で使った)。



・・・それから12年、つい最近その時の友人から久々に連絡があった。年上の女性と結婚するとのことだった。ちなみに彼は、当時の彼女と同棲を始めてしばらくして、浮気を疑われるという些細なケンカをした後に、仕事から帰ると家財道具と一緒に彼女が消えてアパートがもぬけの殻だったという、なかなか凄まじい体験をしている男である(さらに余談だが私も当時の女性にフラれた。全く音楽を解さない女性だったので無理からぬことだったのかもしれない)。


ブロンフマンの04/11/21はビデオで録画していたので、それこそテープがすり切れるまで観た。観まくって音が途切れるまでテープが劣化し、途方に暮れた私はネットでこの演奏のことを書いている方に手当たり次第「DVDに焼いて送って頂けないか」とメールを送るという厚顔無恥の所業に出たが、なんとこの世の中に神様は居るもので、どこの馬の骨ともわからない私へ本当にDVDを贈って下さった方がいた。しかも、御礼を頑なに拒否されるという素晴らしい人格者だった。


その時以来、その方の恩に感謝し、こんな拙いブログに来て下さる読者の方に恩送りをしようと決めた(だからお年玉なんてことをやっているのです。一応言っておくと、ごくたまーに「お友達になりませんか。音源交換しましょう」という脂ぎったメールが届くのですが、すべて無視しておりますのであしからず)。



さて、話の枕が長くなってしまったが、そんな個人的な思い入れのあるブロンフマンの演奏なのでどうかお許し頂きたい。



ヤーフィム(以前はイェフィムとも)・ブロンフマン&サイモン・ラトル&ベルリンフィルハーモニーによる2009年のライヴのBlu-rayである。



以前書いた通り、最初に出たDVDは赤ん坊の泣き声が思い切り入っているという欠陥商品だった。ところが、今回たまたまAmazonを回遊して「あの欠陥DVDにはどんなレビューが書かれているかな」と見てみたところ、「Blu-rayでは鳴き声が軽減されている」というにわかには信じ難い一文が書かれていた。ブロンフマンのラフ3に思い入れのある私は、ワラにもすがる思いでこれに飛び付いた。



驚くべきことに、泣き声は確かに軽減されていたのだ!




かなりの音量でTVで流したときは全く気が付かなかった。DVDは頭に来て速攻でヤフオクに売ったので手元になく、どこの箇所かもよく覚えていなかったのだが、とにかく気付かなかった。いつも通り音声のみを録音してイヤホンでじっくり聴いた時に「ああ、やっぱり聴こえるな」と思ったが、ガッカリするほどではなかった。該当の泣き声の箇所は第1楽章の長いカデンツァの終わり辺りからで、ちょうど静かになるところからであるので、やはり目立つと言えば目立つ。しかし、どう編集したのか見当もつかないが、確かにイヤホンでも許容範囲と言えるほどに泣き声は小さくなっているように感じる。アマゾンでレビューを書いてくれた方に深く感謝したい。

※17/1/11追記※
カデンツァ前半の低音部分の中程で、鳥の鳴き声とも子どもの叫び声ともつかないやや大きなノイズが入る。

それにしても・・・クラシックが生活に根付いているヨーロッパだからということもあろうが、野外のドでかいすり鉢状のスタジアムのような会場でクラシックをやるというのは、見ていて驚かざるを得ない。みんな演奏中にゴロ寝したり飲み物を飲んだり、思い思いのかっこうで音楽を楽しんでいる。日本からすると考えられない光景だ。そのせいか、オケも若干緊張感に欠けた演奏になっている気がする。特に、ちょうどブロンフマンの後方のヴァイオリンの女性は泣き声に気付いた辺りから時折ニヤつきながら周囲に目配せをしているのが何度も映り、イライラすることこの上ない(美人だがステージ上でそんな所作では台無しだ)。おまけに、シリアスな演奏の途中で寝そべっている観客を映すという未曾有のカメラワークにより、こちらの感激もそがれてしまう。ライヴは演奏者と観客が共に作りあげるもの、との思いを強くした。


演奏に関してだが、ラトルとブロンフマンの解釈に差が見られるような気がする。ラトルはテンポ遅めに歌わせたいのだろうが、ブロンフマンは2004年の名演同様グイグイ突き進みたいようだ。その2人の折衷になっているのでテンポは概して遅くなっている。演奏時間は17:02、10:45、16:21で、勿論終楽章は長い長い拍手と何度も何度もカーテンコールがあるので実際には13分20秒くらいとかなりの速さだ。ブロンフマンは完全にこの曲を手中にしており、手慣れている感があるのだが緊張感を失わないのが凄い。2004年ではミスをした両手交差部分も完璧。展開部はややモッサリしていて以前の突進するブルドーザーのような迫力は薄いのが残念だが、それでも水準以上ではある。全体的にピアノは濃いめの味付けになっており、所々「エッ、、そんなスイスイ次行くの?」と思うところもある。やはり2004年にはかなわない。それでも第2楽章の叙情的な語り口など、大変に素晴らしい。ベルリンフィルだが、弦の大木の太い幹のようなドッシリとした音色は文句の付けようがないが、管楽器、特にホルンの音色がいまひとつ(これはマーラーの9番の録音でも感じた)。前回書いたヴォロドスと比べると、あちらがリファレンスとなる演奏なら、このブロンフマンBDは勢いやダイナミズムというもので勝っており、私にはより魅力的に感じる(ヴォロドスに比してブロンフマンはタッチの音ギレの悪いところがあるのだが、コンチェルトではそれが逆に良い方に作用しているように思う)。


ともあれ、BronfmanにRattle&BPOという、考えうる最強のメンバーによる演奏だが、2004年の名演にはかなわないとは言え、私の手持ちのラフ3の中で最上級の録音のひとつと呼べるのは間違いない。よって、ブルーレイは☆☆☆☆に格上げさせて頂く。映像は観ずに(笑)、音声だけ楽しまれると良いと思う。



これをお読みのNHK関係者の方がいたら、是非とも2004年11月21日のサントリーホールライヴをBlu-ray化して頂くよう切にお願いする。

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ヴォロドスのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番SACD盤
2017-01-05-Thu  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
何度も何度も書いているように、エリザベート2016のヴォンドラチェクのラフ3が届かない。


youtubeで見て期待してしまってから随分経つのに未だ入荷の気配なく、HMVからは遅配を詫びるメールが定期的に届いている(すなわち抱き合わせCD3枚も届かない!)。そんな欲求不満を解消するように最近ラフ3を聴きまくっているのだが、「これがベスト」という演奏は正規盤では存在しない。当たり前だが、何度聴いても同じ演奏はそれ以上良くはならない。


というわけで、演奏が変わらないなら音質の向上を図るしかないわけで、今のところ手持ちでベスト5に入るヴォロドスのSACD盤を入手して聴いてみた。夕方から嫁と子どもが出かけるという奇跡のような1時間があったので、爆音で鳴らした。ちなみに私の言う爆音とはどれくらいの音量かというと、トゥッティの最強奏部で床がズシンと響くくらいのデカさである(嫁にバレたら大変だ)。演奏に関してはこちらをご覧頂くことにして、音質についてメインで書きたい。


出だしからピアノの音が輝くばかりに美しい。これに比べてCD盤の方は音に余計なテカリがあるというか、純粋にリアリティに欠ける気がする。オケはそれほど印象の違いはないが、これは我が家のスピーカーの性能のせいもあるだろう。

それにしても、聴けば聴くほど凄い演奏である(15年前、hironovさん達に追いつきたくて、来る日も来る日もこの演奏をスコアを見ながらイヤホンで根掘り葉掘り聴いていたことを思い出す。当時は「アンスネス旧盤とどちらが巧いか」を判定しようとそれこそ何十回も聴き比べていた)。

強靭なテクニックと正統的な解釈で、非の打ちどころがないと言っては言い過ぎだが(勿論私の好みに合わない箇所はある)演奏としてはほぼ完ぺきに近いのではないか。しかしながら、その「完璧」具合が時として優等生的というか予定調和というか、まだ踏み込めるのではないかという物足りなさを感じさせてしまっている。私はこの曲に、手に汗握るような感激と興奮を求めているのだ。それゆえ、サモシュコやハフの「攻めまくり」な演奏は高く評価したい。


第1楽章はまだまだエンジンがかからないままだが、美しいピアノの音色によって抱く印象はかなり向上している。第2楽章も言うに及ばずで、三日月の上を転がる宝石のようなピアノの音色は一聴の価値があるが、先ほど述べたようにオケの音色がいまひとつ(レヴァインはあまり手綱を締めるタイプでない?)。それでも、終楽章でヴォロドスが回転数を上げてくるのが音質の良さによって際立ってわかる。出だしの同音連打は粒の揃ったダイヤモンドが弾け飛ぶかのようだ。「鐘」の部分も実に美しく和音を鳴りきる。素晴らしい。最後の部分もCD盤以上の迫力だ。


そんなわけで、無理やり音質に点数を付けるなら、CD盤が82点、SACD盤は91点くらいありそうだ。嫁と子どもが帰宅したので慌てて音量を下げたが、それでも音の良さを失わないのがSACDの凄いところだ(アンプやスピーカーが良ければもっと点は上がるかもしれないが…我が家の財力ではハードまでお金が回らない)。

よって、ついに5つ星☆☆☆☆☆を与えたいところだが、ここは自分が受けた感銘度を正直に厳しく判定して現状維持の4つ星のままとしたい。手持ちのラフ3の中では総合的にトップクラスなので、ラフ3好きかつヴォロドスファンの方はSACD盤を入手して聴かれるのもよいかもしれない(ただし、劇的に変わるわけではないので無理にはオススメしない)。


(次回も同路線で、私にとっては世紀のガッカリ盤だったアレを取り上げる予定…)

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Wibi Soerjadiのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
2016-12-29-Thu  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
ウィビ・スルヤディ(ソエリャディ)というピアニスト、名前は知っていたのですがこの15年間縁がなく中古屋で見かけることがありませんでした。この度、運良く??ラフ3のCDを入手しました。。


昔、とあるホームページでインドルーツでソラブジ(Sorabji)少年?と呼ばれていた記憶があるのですが、wikiで調べてみると実際にはインドネシア系オランダ人でした。


この演奏がめっぽう面白い!


テクニックはあります。第1楽章は極めて中庸なテンポながら、独特の飛び跳ねるようなリズムとパラパラ乾いたチャーハンのようなタッチでユーモアとロマンたっぷりに弾き進めます。ともすれば「奇矯」の一言で片付けられるところが、彼の豊かな音楽性とセンスで非常に楽しめる演奏となっているのです。両手交差は川底に潜った子どもが足をバタ付かせるような、不釣り合いなまでに元気溌剌なコミカルさ。展開部も標準的なスピードながら、なかなかの迫力。カデンツァの前半部分は重低音を利かせるというよりは品良く味わい深い。後半の和音部分はちょっと苦笑してしまうような、コサックダンスのような??不可思議なリズム!やや和音が荒れて苦しそうです。再現部の後の緩徐部分はウットリとするような語り口。どことなく上品さが漂います(お坊ちゃんだけどユーモアのある学級委員長といった感じ)。

第2楽章、ここでふとオケがやたらと巧いのに気付きます。よく見るとロンドン・フィルでした。指揮はMiguel Gomez Martinezという人です。スルヤディの個性的なピアノを支えています。ロマンの聴かせどころがまた凄い。歌のセンスは実に正統的で、柔らかく甘美な旋律を歌い上げています。オケの素晴らしい伴奏とも相まって、全曲を通じてもこの楽章はハイライトと言えるかもしれません(手持ちの中でも上位の部類)。

第3楽章は標準的なテンポで健闘していますが、ちょっと苦しそう。出だしのところなどは音がはっきり出ていないところも。けれでもインテンポで快速を保ち、スポーティな爽快感があります。VivaceになってからのPoco a poco accelerの箇所、右手をオクターヴ上げて弾いてる気がします(両手が近付いて素早く連打するところなので嫌がったのかな)。


というわけで、この曲の正統的な演奏とはとても言い難いですが、かなり楽しめました。横山盤ほどではないものの、星3つ☆☆☆は十分に付けられます。普通の演奏に飽きたおマニアさんには尚更良いかもしれません。
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横山幸雄のラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
2016-12-28-Wed  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
横山幸雄氏のリストの記事を以前書いた時、「そろそろラフ3も聴かねば」と思っていたのですが、ようやく中古でgetしました。2012年2月28日サントリーホールでのライヴ演奏で、指揮は小泉和裕、オケは東京都交響楽団。フォーマットはハイブリッドSACDで、iPodに取り込んでイヤホンで数回、それとSACDレイヤー層をスピーカーで(リーズナブルな音量で)1度聴きました。


何度か書いてますが、横山氏は岡田博美氏の後に続く日本が誇る世界的なテクニシャンだと思っているので、実は結構期待していました。聴く前は「細かい箇所はクリアで、やや遅めのもったりしたテンポでの冷静緻密な演奏」だと予想していたのですが、その予想は良い意味で大きく裏切られました。


まずとにかくテンポが速い。演奏時間は順に15:42/9:50/13:45となっていますが、ライヴなので終楽章は拍手入りで実際には13分10秒を切るものとなっています。第1楽章は出だしから飛ばす飛ばす。こんなに速い演奏は久しぶりに聴きます(先日書いたヴォンドラチェクはまだCDが届いていないので正規のレビューではないということで・・・)。緩徐部分は意外に(と言っては失礼ですが)かなり聴かせます。両手交差も実に力強い!お待ちかねの展開部の和音連打は十分なスピードですが、音が深くまで鳴り切っていない感じなのが非常に惜しい。また、録音がやけにマルチな感じで、弦楽器の定位がやたらと細かく感じます(ある意味凄い録音)。特に、右側のコントラバスは未だかつてないほど音がでかく、真ん中やや左寄りのピアノの音にも少し被っている感じです。演奏時間が15分台だし、originalのカデンツァの方が彼向きかなと思っていたのですが、嬉しいことにカデンツァはossia。やや音ギレが悪く締まりに欠けるのが若干気になるものの、後半の和音部分はメチャメチャ速い!いくらなんでも速過ぎじゃないの、というくらいの凄まじいスピードで(技巧を見せ付けているかのよう)、個人的にはもっと音を深々と鳴らし、思い入れをもって表現して欲しい気もしますが、それにしてもこのテクニックは手持ちでもトップクラス。勿論、ノーミスです。第1主題の再現部も極めて切なく弾き上げており、何気なく聴いていた家人も「こんな単純な旋律をここまで聴かせるなんて・・・巧いわね」と感心(学生の頃、彼女は横山氏のショパコン後の凱旋公演を聴きに行ったことがあるとか)。


第2楽章、オケの音の分離の良さというか、録音にも感心(イスのきしみや呼吸音まで拾ってる気がします。また、この楽章は特にオーディエンスノイズも気になります)。ピアノが入って来てからの叙情的な旋律が素晴らしい。。技巧派の歌いベタという彼に対する個人的な印象を大きく変えるものです。ピアノの録音がややライヴすぎて残響が実音に被って濁っているためか音色の変化はそれほどでもないのですが、それでもこの語り口は聴き惚れます。その後の細かいフレージングは彼の独壇場という感じ。左手の上昇音型の力強さも目立ちます。オケも健闘しており、良い音を奏でています。ところどころで定位が変わる?気がするのが多少気になります(突然前面に出てくるように感じる)。


第3楽章、出だしの同音連打に始まる細かなフレーズのタッチも実に見事。かなりの高速テンポながら、細部での表情付けをしているのが凄い。というか、巧い。巧すぎる。極めて流麗に音楽が進んで行きます。重音の得意な彼のことだから、重音ossiaを弾いてないかと期待しましたが、ノーマルでした。そこからは徐々に熱を帯びていき、オケとともに駆け出します。強奏部ではオケに埋もれがちなのが惜しい。「鐘」の部分の前後もはっきり言ってオケが目立ち過ぎです。エンディング手前の2拍3連で降りてくる辺りもピアノが聴こえません。ともかく、大熱演で終わった直後はブラヴォの嵐。ほとんどノーミスなのでゲネプロからの編集は入れているかもしれません。録音日は上記の1日だけとなっています(私はむしろ編集して欲しい派)。


聴き終えて、横山氏の素晴らしい演奏に深く感激しました。ひとつ残念なのは、ある意味良質な録音がピアノを埋もれさせていることです。オケの音色が素晴らしいのは良いのですが、協奏曲では逆に仇となってるかなとも思いました。上でも書きましたが、ピアノの残響多めなのがこの盤最大のマイナスポイントでしょう。ピアノへの不満は、強いて言えばさらなる和音の深い響きと、終楽章等での熱っぽさでしょうか。また、全体的に優等生すぎるという人もいるかもしれません。


色々録音上の不満も述べましたが、ピアノのテクニックと叙情性は数多の手持ちの盤にあっても最上位と言えるでしょう。トータルな評価でも、これは躊躇無く日本人ピアニスト初の4つ星☆☆☆☆を付けたいと思います。

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