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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Nick Drake / Five Leaves Left 初版をめぐる一考:その3 "REVERSE C"

3回目となるこのシリーズ。

これまでの情報
を整理すると、私の考える初版プレスの種類と順番は次のようになる。






プレス順・ラベル誤植マトリクス
① テクスチャージャケのみ枝番号なし反転C
② テクスチャージャケのみA//2, B//2
③ スムースジャケのみA//2, B//2
④ スムース ジャケ&盤両方?


このほかに、Discogsではジャケットの裏面のアイランドのスタンプが黒ではなくカラー刷りでグリーンのものの存在が(写真が挙げられているので)わかっている。しかし、そのマトリクスがどれなのかはわかっていない。ラベルの種類、誤植、マトリクスの違い等でさらに細かく分類される可能性もある。また、ユニオン等ではDGの有無についても記載しているが、テクスチャーと同義と考え、ここでは省いた。③で、スムースラベルで誤植なしの盤があるかもしれない。④のマトリクスは写真で確認したが画像が粗く判別ができなかった。文字数から考えるとどうやらリバースCではないようだ。


このレコードはここ2、3年で最高取引価格が2倍以上になってしまったと思う(価格の変動はpopsikeで検索するとよくわかる)。私は高くなり過ぎた時期に買ってしまった感があるのは否めない(人生の1枚だからと言い訳しているが…)。流動しやすい価格について記載するのはどうかと思ったが、近年高騰しがちなアナログ盤の沈静化を狙って(2018/1時点での)相場を書いてみたい。






ラベル出現比率市場価格 備考 
① テクスチャー(リバースC)320~23万ファクトリーサンプル盤?
② テクスチャー615万~最も価格に幅がある
③ スムース(ジャケ裏誤植)約3010~16万最も入手しやすい
④ スムース(W誤植) 123万最もレア


出現比率というのはこの1年半ほどの間にユニオン・HMV・ebay・Discogs・ヤフオクその他レコード屋で私が目撃したこのレコードの大体の枚数を書いている(勿論見落としや重複もあるだろう)。国内の市場では、③のスムースラベルが年に4、5枚は出てるようだ。ebayでも10万~12万前後で常時複数枚出ていたが最近は少なくなった。テクスチャーラベルとスムースラベルの見分け方をもう一度書いておくと、テクスチャーはザラザラした凸凹感があり、スムースはなめらかである。しかし、写真では判別しにくいので、DG(ディープグルーブ・・・ジャズのレコードでよく出てくるレーベル面の深溝のこと)の有無で判断するとよい。ラベルの淵の内側の円周に沿ってテクスチャーは切れ込み?のようなミゾがあるのに対し、スムースの方にはなく、なめらかに盛り上がったカーブになっている。私が思うに、年間で結構枚数が出てくる割に価格が高騰しているのはやはり作品自体の人気によるのだろう。稀少な盤なはずだが出せば売れるのでどんどん市場に出回り、高値安定という悪循環になっている気がする。


世の中にはアナログレコードの稀少性を尊ぶ方々もおられるが、私としてはやはり音質に最も関心がある。最愛の盤のひとつは、最良の音質で聴きたい。稀少性では④のスムースラベルW誤植が最もレアで、以前書いたようにこれまで1枚しか見たことがない。だが、これは1stプレスとされる中で最もレイトな盤ではないかと私は考えている(前述したようにマトリクスは未確認)。つまり、常識的に考えると音質面での評価は低くなる。海外のサイトでBest vinyl pressing of Five Leaves Left?という議論が掲示板で数年に渡ってなされている。長すぎて全てには目を通していないが(オリジナル盤の盤起こしのハイレゾが最上だと何度も書いている人がいる)、そこでも「最初のプレスA1B1に何らかの不具合があってA2B2がプレスされたのだ。だからこれが最上」と書いている人がいる(念のため書いておくとA1B1というマトリクスは確認されていない)。また、上の表にまとめたようなラベルとミスプリントの違いで分類している方もやはりいる。


どれが最良の音質なのかは結局聴いてみないと分からない。CDなどデジタルは無ノイズだが、経験上では表現という点で緻密さでアナログに劣ると思っている。アナログにはノイズというデメリットもあるが耳馴染みがよく存在感のある太い音が好きだ。盤起こしは元の盤を超えられないのでアナログの原盤が手に入るなら見送るのがよかろう。というわけで、できるだけ初期のプレスのレコードを求めるべきだというありがちな方針になる。ということは、ユニオンが書いているように世界市場でも確認された数が少ないというリバースCを探すしかない。




この度、四方八方手を尽くして"リバースC"を手に入れた




経路は某レコ屋を通じて海外の業者から入手。現地イギリスのコレクター&業者の間ではリバースCのマトリクスについては知られていたということである。ユニオン渋谷店の盤の購入も検討したが、コンディションを考えるとやはりあの価格では手を出せなかった(これを書いた2018/1/15現在未だに売れ残っている。やはり高すぎる)。自分の買った盤の額を書きたくはないが、ユニオン渋谷店よりはかなり安く買えた、ということだけ書いておきたい。

FLL

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入手したレコードのコンディション、今回でトドメを刺そうと盤質で妥協しなかったので厳しく見てもEX+~EXと言える。表面には光沢が残り、ごく薄いヘアラインが数本ある程度。早速手放した②テクスチャーとの(記憶での)比較を試みる。


マトA//2B//2の②テクスチャーと比べてかなり違うのが聴いてすぐわかる。とにかくまず、ベースがメチャクチャ出ている。我が家はスピーカーの低音がショボいのでウーハーを追加しているのだが、少し絞ろうかなと思うほど全曲に渡ってよく低音が出ている。これは②ではなかったことだ。さらに各楽器やヴォーカルの明瞭さ、音の分離が素晴らしい。アナログ特有の空気感に加え、音の輪郭が整っていることで、例えばtr.4とtr.5のヴォーカルにかかっているリヴァーブの違いもはっきりと聴きとれる。これにはデメリットもあり、各楽器の輪郭が強調されたことで逆に歌が引っ込んでいるように感じて気になる曲(tr.2、7)もあれば、よく伸びて聴こえる曲(tr.3,8,9)もある。もっとも、これは単に盤の部分的なコンディションの良さによるのかもしれない。アルバムで重要な要素を担うストリングスだが、アナログらしい重厚な響きが素晴らしい。②も良かったが、この盤では低音が加わったことでさらに豊穣に響いているように感じた。tr.6「チェロソング」の、まさしく間奏のチェロの音色はもはやクラシックのそれと言っていい。また、以前所有していた②では時折ストリングスが加わった時の最強音でサチっていたが、今回は盤質せいかプレスのお陰か分からないが今回はそれもない。ギターはリアルな再現性の面で②よりも優れている。例えばtr.6などで、アルペジオでの各弦のサステインの違いまでしっかり聴きとれる。ところが、だ。



レコードにキズが見られないところでのプチパチノイズが結構出るのである。



静電気のようなプチパチ音の量が、私の基準からすると許容範囲ギリギリなのだ。それも、レコードをかける時々によってノイズの量もかなり変わる。ゴミやチリかと思い、1度丁寧にクリーニングしたがそれほど改善されなかった。このプチパチノイズについてはgeppamenさんがブログで好事家の話として書かれていたことなので、ちょっと気になっていた(好事家がリバースCマトのことを指しているとは限らないけれども)。今思い返すと、コンディションが悪いと思って手放した②テクスチャーでもほぼ似たようなノイズがあって手放す決断の一因となったので、もしかしたらマトリクスに関わらずこの初版レコードの欠点なのかもしれない。反転Cマトの盤をごく少数プロモ用にプレスした後、ノイズの多さ等このマトの問題に気付いて前述のフォーラムの意見のようにA2B2マトの盤をプレスしたのか(目の覚めるような鮮度の音質そのものは素晴らしく、失敗プレスとはとても思えないが)・・・色々推測してしまう(私は③④のスムースラベルの盤を聴いたことがないので、ノイズの量の比較については分からないがお持ちの方は感想を寄せてくれると嬉しい)。キンクリ『宮殿』のオリジナル盤は、超絶激レアのA1B1マトでなくA2B2の方がバランスが良い、という話を聴いたが、それと似たようなことが当てはまるのだろうか。分からない。


結論を言うとこの①リバースCには、②と比べてその稀少性と価格の分だけの音質の違いはないだろう(泣)まあ②もコンディション面以外の音質そのものには満足していたのだが・・・。ユニオン渋谷で売れ残っている間にリバースCの盤を一度試聴してみようかな…適正価格は14万くらいではないかと思うが>>ユニオン渋谷店さん。



というわけで、一部ちょっと残念な結果となってしまった。ノイズに神経質な私はそもそもアナログに向いていないのかもしれない(聴くのは大好きなのだが、同じくらいイライラ&ガッカリすることも多い)。洗浄液を替えて盤を洗浄したり、傷の修復、セッティングの仕方でノイズを改善できるのかもしれないが、今後の宿題だ。アナログレコードの道というのは、果てしなく険しい。


・・・このマトリクスがebayに出たようにファクトリーサンプルとしてプレスされた盤だとすると、ニック・ドレイク本人が最初に耳にした音である可能性がある。世に出て50年が経とうとするこの作品、そう考えるとより一層感慨深い。私は基本的にアーティストを神格化するのを好まないが、彼だけは別だ。


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BON JOVI / THESE DAYS (EU original)

突然だが私はボン・ジョヴィが好きである。



HR/HMを基調として、時代のその時々で流行を巧みに取り入れ(ヘヴィロック、カントリーetc)、ソングオリエンティッドな(≒売れ線)メジャーバンドとしての矜持を失わず歌メロで果敢に勝負し続けた彼らは、まさにアメリカを代表するロックバンドのひとつとして相応しい。そんなベテランバンドの彼らの、個人的マイベストが実は『ジーズ・デイズ』なのだ。


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敏感だけが取り柄のクソガキだったティーン時代に聴きまくった思い出の1枚ということもあるが、スタンダードなロックンロール&ブルースフィーリングに程よいアコースティック感が混じり、メタル臭やヘヴィロック感がほぼゼロで(←注:嫌いではない)時代を超越した普遍的な「歌モノロック」感に満ちている。今聴いても全く古さを感じない。wikiなどを見ると暗い曲調が多いことをジョンは気にしていたようだが、タイトルトラックの4曲目「These Days」など、これほどまでに胸を打つメロディがあるだろうか。私の知る限り、ボンジョヴィ史上最高の名曲だと思う。オープニングの「Hey God」の乾いた、しかし力強く跡を引くロック感、カントリーでどこかポップな「Something For The Pain」、お約束のみんな大好きバラード「This Ain't A Love Song」、曲のタイトルと相まって全ギター弾きは感涙必至「My Guitar Lies Bleeding in My Arms」のリッチー・サンボラの超絶泣きギターなど、聴き所満載である。




そんなこのアルバム、実はアナログが存在する。



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超有名なアルバムの割に1994年というCD全盛期の作品のため、アナログは非常に稀少な上、例によってUSオリジナルが存在せず、初版はEUオリジナルだと思われる(Discogsではギリシャ盤が一番上に来ているが)。くまなくチェックしているわけではないがユニオンでも年に1or2枚出るか出ないかの一品である(今はちょうどユニオン町田で1枚売りに出ているようだ)。ボンジョビのレコードの中ではおそらくズバ抜けて高い(余談だがこの時期のUSロックのアナログは総じて高い。ヴァン・ヘイレンの『バランス』などもレアで異常に高い)。


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私の所有盤のA面のマトリクス、末尾は 「A1」だが、


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何故かB面は末尾が「B」のみである(Discogs通りだ)。よくわからない。勿論2枚組である。


クラシックでの弦楽器はアナログが抜群に合うのと同様、クランチなギターサウンドはレコードがピッタリだと思っている。乾いたギターサウンドと、アメリカンロック史上稀に見る豊穣な歌メロに充ちたこの1枚、(お高いが)是非アナログで体感してみて頂きたい。
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Nick Drake / Five Leaves Left 初版をめぐる一考:その2

以前、ニック・ドレイクの1st『ファイヴ・リーヴズ・レフト』の初版についてちょっとした考察を書いた。


その後、短い間に立て続けに色々なことがわかった。マニアの皆さんについては常識だったのかもしれないが、何かの役に立てばと思い、記録として書いておくことにした。


前回の記事で、とあるDiscogsの業者の言葉を信じるならば、初版のプレス順は

ラベル名スリーブヴィニール
スムースA (Adv)××
スムースB (Gatefold)×
テクスチャー×


となる、ということを書いたが、ebayやユニオン・HMVその他の意見によるとテクスチャーが初版の初期プレスである、という説を紹介した。この答はこの夏、アッサリ出た。なんと、ebayでファクトリー・サンプルのステッカーが貼られた盤が売りに出たのだ




そのラベルはテクスチャー。やはりユニオン等が正しかったのだ。




さらに驚くべきは、その盤のマトリクスである。A, Bの後ろの枝番号が無い。ファクトリー・サンプルという事実も合わせると、これこそが本当の最初期プレスなのだ。A面B面を表すA、Bの後ろにはスラッシュがなく、アルファベットのCを反転したような記号が打たれているのみである(後述するが、通称リバースCと呼ぶらしい)。恥ずかしながら、私はこのマトについては全く知らなかった。。以上から、以前の記事で話題にしたラベルのミスプリントの違いによるプレス順の答えは出た。テクスチャーが最初期ということがわかれば、


ラベル名スリーブヴィニール
テクスチャー×
スムースB (Gatefold)×
スムースA (Adv)××


という順番だとするのが自然だ。つまり、ジャケットとラベルの両方を誤植しているものは、間違った方に合わせて刷り直してしまったと推察される(直ってないのだが)。プレスしてからすぐ間違いに気付いたのだろう、市場に出る枚数が極めて少ないのも頷ける(いくら新品同様のミント盤とは言え、8月にこのダブルミスプリント盤を約22万でebayで買った方は知らない方が幸せかも)。




そして、この最初期マトリクスについてである。



大枚はたいて買ったテクスチャーラベルが(神経質な私からすると)キズモノで、しかもそのうえ最初期マトでないと分かった時の私の嘆きはご理解頂けると思う。このような「人生で1枚」のレコードは、いきなり最高の1枚を買いたいものだ。大体が、このクラスの価格のレコードを買い直すのは私のような庶民派のアナログファンにとって不可能なことなのだから。しかし、このアルバムは最も好きな作品のひとつ…相当悩んだ末、ダメージ覚悟で所有していたテクスチャー・ラベルでマトリクスA//2、B//2の盤をここには書けない(情けない)手段で手放すことにした。某レコ屋の主人に助言を貰い、ほぼ最小限のダメージで手放せたのは不幸中の幸いだった(嫁バレした上、資金の回収に2カ月かかったが)。



そんな決断を下した私に吉報が飛び込む。ユニオン渋谷中古センターである。12月のセールでリバースCが売りに出たのだ…!



上のebayに出品されたファクトリー・サンプル盤とマトは同じ。間違いない。気になるのはそのお値段、ジャケ/盤がVG++/EX-で20万という恐るべき価格だ(公開されているからここに書いてもよかろう)。担当の方に詳細を問い合わせたら、写真付きで盤質の丁寧な返信を頂いた。私は色めきたった。けれども、いくら花より団子の私でも、このジャケのコンディションは頂けない(VG「++」は苦しいのでは)。そして、一番判断に迷うEX-という盤質である。前述したテクスチャーもEX-表記の盤で痛い目に遭っているので、正直手を出したくない。何より、ebayで出たファクトリー・サンプルのミント盤が1575ユーロ、約21~22万ということを考えると、ユニオンの20万はあのコンディションでは高すぎる(ebayで買うと実際にはPaypalで3%前後の手数料や送料等を取られるので、実際には23万近くになるが…)。しかし、実際に手に取れて試聴もできるとなると話は別だ。やはりとにかくユニオン渋谷に行くべきか…



話は変わるが、悩む私の前にピンク・フロイド『狂気』テストプレス(ネット上では150万との噂)、ザ・フー『マイジェネ』テストプレス(約61万)、スパイロジャイラ3rdテストプレス(約43万)など、博物館級の化け物が次々にユニオンに襲来(ついでに言うとメロキャンも約34万で売りに出てた)。去年のキンクリ宮殿アセテート盤といい、ユニオンは凄すぎる。レコード1枚に数十万出せるか?それだけの価値(音質/稀少性/投資価値/アート性)があるか?自分自身に問い続けてしまう。



悩みに悩んで、出した結論(結末)は次回以降に。
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Nick Drake / Five Leaves Left 初版をめぐる一考

ニック・ドレイクに心酔しているという事は以前にも書いた。


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この作品の初版(ブラックボールラベル)は絶大な人気があり、アイランド・レーベルでも1969年の9月~12月の間にプレスされ、わずかに2作しか存在しないという激レアラベルである。


しかし実際にはバイヤーの営業努力??により、この「ファイヴ・リーヴズ・レフト」のUKオリジナル盤は結構出回っている。ebayやDiscogsを覗けば10万前後で常時売りに出ており、日本のレコード屋でも年に数点売りに出るレコードだ。例えば、今年の初めにはディスクユニオン新宿中古センターに状態EX程度のものが約10万で売られていたし、ほぼ同様のコンディションの盤がロックレコード館にほぼ同様の値段で売られていた(そちらはなぜか当時の新聞の広告?付きという珍しいものだった)。それらは比較的長く壁を飾っていたが、近ごろの急なアナログブームのせいか1・2カ月して2枚とも立て続けに売れてしまった。ほぼ同じ頃、渋谷中古センターが超美品を15万超という国内で私が知る限り最高額で売りに出し、ヤフオクに並行出品しても案の定長いこと売れなかった。それを私は買おうと思っていたが4月初旬に売れてしまったことは以前書いた。 


これには後日談がある。ヤフオクで売れてから数週間後の4月下旬にジャケ/レコードのコンディション表記が全く同じ盤が新宿HMVレコードショップでGWセールの目玉品として売りに出たのだ。その価格、なんと18万over!それもすぐに売れてしまった。なぜ私が値段を知っているかと言うと、ネット上ではSOLD OUTになっていたのに店舗に行くとまだ「中身はレジ保管」状態でジャケのコピーだけ店に売りに出ており、「お宅のサイトで見ましたがこれはもう売れてるはずですよ」と私が哀しいお節介をしたからだ(ユニオンのセールばかりに気を取られてHMVをチェックしてなかった。迂闊だった)。


さて本題。このレコード、どれが初版の「初期プレス」なのか、議論の余地があるのだ。


まず背景について説明しよう。この盤にはミスプリントがあることが知られている。裏ジャケの、本来4曲目の「Way to Blue」と5曲目「Day is Done」の表記が入れ替わっているのだ。ちなみにDiscogsではここ1年くらいでようやく「Misprint」についての記述が追加された。その後情報は累積し、現在はそれに「Gatefold」「Adv」を加えた3種類のUKオリジナル盤(と思われる盤)が売られている。共通しているのはすべて「ブラックボール」ラベルということだ。初盤とされるラベルについて表にまとめると次のようになる。

ラベル名スリーブヴィニール
テクスチャー×
スムースA (Adv)××
スムースB (Gatefold)×



このスムースラベル「Adv」盤を売りに出していた業者が興味深いことを書いている。


「スリーブの裏側のアイランドのスタンプがグリーンのものは発売前のいわゆるプロモ盤」であり、「スリーブもラベルも両方ミスプリントのものが初版で、ラベルが訂正されたものは後期プレスである」(意訳)。


事実、ebayでこれと同じスムースA(××)盤の超絶美品を韓国の業者が売りに出した。私が見る初めてのダブルミスプリント盤だったが、恐るべきことに£1,536.11(約22万!!)という途方もない価格で落札されたのだ・・・!このレコード、半世紀近く前の盤なのに、今まさに封を切られた新品同様のレコードにしか見えず、最初は「偽物だろう」と思っていたのだが、ラベルやスリーブ、マトリクスを確認した限りでは本物だった。これは私の知る限り、このレコードの最高販売価格だと思う(「天井を上げちまいやがったな」と思わざるを得なかった)。この考えに基づいてラベルの違いをプレス順に並べるとすれば、

ラベル名スリーブヴィニール
スムースA (Adv)××
スムースB (Gatefold)×
テクスチャー×


とするのが自然だ。しかし、である。


前述したHMVのGWセールでのレコードの説明を見て驚いた。お読み頂ければわかるように「テクスチャーラベル=アーリープレス」、と書かれているのである。Discogsにはテクスチャーラベルについての情報は現時点(2017/8/4)では書かれていない。ユニオンで出ていたUKオリジナル盤にもテクスチャーという説明の記述はなかったように思う。これは一体どういうことなのだろう。


Discogsの業者が正しいのか、それともHMVの担当者は何か別のソースを頼りに書いているのか、どうしたことかと思いネットを色々調べてみると、このラベルについて詳細な情報を書いているこちらページにたどり着いた。やはり世界は広い。2012年にこのページが書かれて3500人が見たというので、情報としては広まっていてもよさそうだがまだ知られていないようだ(HMVの担当者はこれを読んで説明を書いたのだろうか)。


さて、この筆者は、この2つ目の表のように考えるのが自然と書きつつも、なぜかテクスチャー・ラベルの方に価値を置いているのだ。この筆者はこれらのプレスを所有した上で「テクスチャーラベルの方がより高値で取引され、その豊かなサウンドに感銘を受ける」と書いている(真実はPerhaps we will never know.ということらしいが)。この筆者はスリーブのグリーンスタンプの違いについては言及していない。


60〜70年代のレコードのテクスチャーラベルについては巷間色々な情報が出回っている。私が勉強させて頂いているgeppamenさんはピンクフロイド「アニマルズ」のテクスチャーラベルについてこのように書いている。そのほか、このレコードに限らずテクスチャーラベルについてネット上では「音が良い」「オリジナル盤の中でも初期のプレス」「チリノイズが多い」など、評価が分かれるが概ね「音質の良い盤」という意見が多い。けれども、テクスチャーラベルはレコードを問わずやはりレアである。この「Five〜」に関して言うと、私がこの1年でネット(Discogs、ebay、CD&LP、ヤフオク)や店で見たこのレコードのオリジナル盤とされるものは十数枚あるが、そのほとんどがスムースラベルB(×〇)だった。写真で確認できたテクスチャーラベルはHMVのものを含めわずかに2枚しかなかった。スムースラベルA(××)に至っては、前述したebayの1枚のみだ。


そろそろ出ることのない結論に移ろう。私はスムースラベルA(××)盤のレアさとその価格に恐れをなし、上述したページの意見(テクスチャーラベルが最も良い音質である)を信じてテクスチャーラベルを手当たり次第に探した。Discogsで登録した「ほしいアイテムが出品されています」メールが来るたびに、仕事中だろうが何だろうが(joke)「このレコードはテクスチャーラベルか?」という問い合わせのコピペ文を速攻で送りつけた。海外はいい加減なレコ屋と商売っ気で脂ぎったセラーとに大別されるので返信率は高くないのだが、写真を送ってもらうとほぼ全て「スムースラベルB(×〇)」であった。「テクスチャーラベルだったが、売れてしまったよ。残念」という悲しいメールが来たこともある。


そんな業者らとのやり取りを10回近く繰り返し(中にはイギリスの大学で美術と情報工学を教えてるというコレクターと20回近くもの報われない往復書簡(笑)を交わしたこともある)、ようやくテクスチャーラベルを持っているイタリアのレコード屋を見つけた。例によってDiscogsで引っかかったレコードは残念ながらスムースラベルB(×〇)であった(ちなみにその値段は800ユーロ)のだが、何回もメールをやり取りしていくうちに「探したらテクスチャーがあったよ」という怪しすぎるメールが追加で来て、嘘だろうと思い写真を送ってもらって確認すると間違いなくテクスチャーラベルであった。そのレコ屋はテクスチャーの価値を分かっていないようだった。値段は書かないでおこう。


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(分かりづらいが表面がテクスチャー加工でデコボコしている。また、リムの縁に沿った線がスムースラベルより深く切れ込みのように入っている)


先ほどの「どれが初期プレスか」という問題について、届いたテクスチャーラベルのマトリクスでこれら3種のどれが最も若い盤かを特定できるだろうと思っていたのだが、「A//2」のあとの枝番号??のような数字が判別不能で断念した。色々送ってもらったスムースラベルのものもこれと同じような印になっている。

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ちなみにDiscogsではスムースラベルA(××)が、

Matrix / Runout (Side 1): ILPS 9105 A // 2 1 1 7
Matrix / Runout (Side 2): ILPS 9105 B // 2 1 1 1

と記載されているが、テクスチャーもスムースBも、記されているマトリクスの文字数はこれよりも少なく、どう解釈すればよいのかわからない(ダブルミスプリント盤をお持ちの方は是非情報をお寄せください)。


レコード屋は「これは厳密にEX−と鑑定できる!」とメールしてきたが、はたして送られてきたレコードのA面はキズだらけであった(泣)指で触れてわかる深い傷が2か所あり、盛大な周期プチノイズ(プチどころでなく「パァチ!」)が丸々1曲半延々と続く始末。おまけにジャケットも退色や折れ、スレ、カスレに溢れていた。大枚叩いて酷いレコード掴まされたと怒り心頭だったのだが、爪楊枝を使って丁寧に傷を補正し、洗浄液で丁寧に洗うと聞き違えたかと思うほど音がクリアになり(流石はオリジナル盤)、キズの割にはA面のノイズもごく小さく「プティ」程度までなんとか軽減できた(ただし、A面ばかり聴き込んだのか全体的にかなりヒスノイズが目立つ・・・)。盤の歪みによる音揺れがなかったのが幸いだった(その場合はおそらくどうしようもない)。


長くなったがテクスチャーラベルの音質である。私はスムースラベル2種をどちらも聞いたことがない。よって、比較することができない(だから出せない結論である)。最も見かけるスムースラベルB(×〇)でも最近は10万以上が当たり前であるこの盤を、ラベル違いで買うことは未来永劫ないだろう。私の音盤歴でぶっちぎりの最高額を支払ったというバイアスを考慮しても、音は良い。非常に良い。というか、アナログが良いのだろう。ウォームな低音の自然な伸び、ニックのヴォーカルの空気感、そして何よりストリングスの美しさが素晴らしい(クラシックでも弦はアナログに限ると思っているが、この盤を聴いてその思いはもはや確信に変わった)。初版にはチリノイズが多いという話もネット上で見かけたが、神経質な私でもほとんど気にならなかった。



それにしても・・・素晴らしい作品だ。時代やジャンルを超えた普遍的とも言える美しさがある。



今のところ手持ちで音質を比較できるのはCDとSHM-CDの2種。価格差100倍以上のレコードに続けてCDを流すが、ピンクムーンの時同様やはりヴォーカルの印象の違いが大きい。CDの方は声が前面に出てくるようにマスタリングされているのがわかる(高音にフォーカスされ過ぎている)。対してアナログは地味だが、毎回書いているように耳なじみが滅茶苦茶良い。ヴォリュームを相当上げてもキツさがない(子守りの日に、皿洗いをしながらでも十分に聴こえる大音量であっても、うちの子が「パパうるさい!」と言わないのは珍しい)。だがもちろん初版のレコードなぞ買わずにCDをオススメする(余談だがSHM-CDとの違いは車で聞くとよくわかった。SHMはクリアで輪郭のはっきりした音だが、車のショボいオーディオだとキンキンしているのがわかる)。今後とも追加で音源を購入したときは、聴き比べに追加したいと思っている。


長くなったが以上が調査結果である。世の先輩コレクターの皆さんは真実をご存知でこんな記事を鼻で笑われるのかもしれないが、一応このアルバムをこよなく愛する1人として、ちょっとした記事を書いてみた次第である。Perhaps we will never know.


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レコードプレーヤー新調〜カーロイのショパン・ピアノソナタ第2番〜

レコードプレーヤーを新調した。

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(回っているのはUK『UK』UKオリジナル(笑))

パワハラと引き換え(??)に出た退職金で、人生でいちばんの浪費を重ねている。さすがの嫁もそれほどうるさいことを言わないので、この機会に遠慮なく買わせてもらった(ちなみに30万のカルティエは5万の中古のグッチに取って替わったので助かった)。


これまで3台のショボいプレーヤーを使ってきて、3台目は母親が1970年代に買ったSONYのプレーヤーを長いこと使い回していたのだが、今回出たばかりのTechnicsのSL-1200GRを買った。30万超えの上位モデルは手が出なかったので、16万のスタンダードモデルのこちらにした。ヴィンテージプレーヤーについて詳しくないのでなんとなくダイレクトドライブがよかろうと思い選んだが、文句の無いクオリティであと20年は楽しめそうだ。カートリッジはSUMIKOのPearlで、 このくらいの価格帯が気兼ねなく使えてケチな私には丁度良い。肝心の出音だが、SN比が良くなった気がする。何より、盤の歪みによるピッチの揺れが小さくなったのが嬉しい。次は金を貯めてスピーカーを新調したい。


そんなわけで、最近CDは全然聴いておらず、もっぱらレコードばかりかけている。そんな中、聴いたのはジュスマルダホスさんにオススメ頂いたショパンの3番が素晴らしかった、ユリアン・フォン・カーロイのソナタ2番。

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Discogsなどに情報が載っておらず、Amazon等を見てもソナタ2番がCD化されている形跡が無さそうだったので買ってみた。録音年等は記載がないが、かなり古そうである。

演奏は3番の名演に比べると若干落ちるかなという感じ。第1楽章は結構弾き飛ばして縦の線が合っていないところもあるのだが、3番のような飄々とした勢いがあってなかなか良い。スケルツォはちょっとタメがあるがこれも聴ける。ところが期待した第3楽章がイマイチ。私の基準からはテンポが遅過ぎる。録音のせいか音楽的な感興も少なく、ちょっと残念であった。終楽章は彼らしいサッパリさが上手く出ていて流麗。全体として○かな、というところ。

10インチのレコードは初めて買ったと思うが、盤面にキズはないもののチリプツが盛大で出る箇所もあって、残念ながらアナログの良さは感じられなかった。


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