音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.50〜David Greilsammerのスカルラッティ&ケージ:ソナタ集〜
2017-02-11-Sat  CATEGORY: 雑多な話題
年末年始に買い漁った盤をようやく一通り聴けた(とにかくロックが多くてキツかった。。。)。私の大好きなデヴィッド・グレイルザンマーによるスカルラッティとジョン・ケージのピアノソナタ・インターリュード集である。


dg



ケージと聴いて逃げ出すアナタ、ちょっと落ち着いて私の感想を読んで頂きたい。グレイルザンマーはクラシックど真ん中のアルバムをそれほど出していないせいか、ネット上でレビューを見かけることが少ない。けれども、その知的でよく練られた個性的な解釈と、繊細な技巧は私のどストライクで、時にはグールドでありムストネンであり「知的な」ツィモン・バルトである。


さて、出だしは静謐なスカルラッティのソナタK.213。タッチの磨かれ方が尋常でない。神経症的にならないギリギリのところで崇高に歌っている。続くケージのソナタ。中世の時計店の屋根裏に潜んだかのような、幻想的で魅惑的なプリパレーション。ここでピアノは一部完全に打楽器となっている。私はケージのソナタは他に高橋悠治盤しか知らないが、あれを有り難がって聴いていたのはなんだったのかと思うほど説得力がある(こちらの素晴らしいサイトで勉強しようと思っているが、さすがにケージonlyの盤にはなかなか手が出ない・・・)。なんというか、間と響きをきちんと計算して演奏されているように思う。「ケージが意図したプリペアドピアノはこうだったのかも」とさえ感じる。アタッカのように編集されて続けざまにK.141、同音連打のキレがどうとかそういう次元でなく、威厳すら感じる新鮮な解釈。これは再録音になる。ケージのソナタ8番は以前よりも叙情的でファンタジック。K.531は初めて聴く。頻繁に入るトリルが美しい。K.27の針の先で突いたような絶妙なタッチ!ケージの第7番、旧録音よりもダイナミックで幾何学的な美しささえ漂うミステリアスさ。行進曲的なK.381は繰り返しがややクドいか。ケージの第5番は旧録音同様のジャングル感。ケージの第16番はオルゴールのような、夢見るような音色。K.492 Prest。非常に気品のある演奏。


録音はSONYらしく、ピアノの音が近くも深い残響をまとわっている感じ。全曲を通して聴いてみて、これがスカルラッティのソナタだけなら愉悦的でしまりのないアルバムになっているところが、間にケージのソナタを挟んでいるので1本筋の通った揺るぎない構築感を感じさせる内容になっている。喩えが変だがプレリュードとフーガのような(勿論フーガがケージ)。


ともかく、このアルバムはブログを頻繁に書き始めたこの数ヶ月聴いたものの中で最もよく聴いている1枚になりつつある。彼の、知的で聴く者を惹き付ける解釈と表現力はまさに音楽の再創造と呼ぶに相応しい。「バロックと現代音楽の奇矯なサンドウィッチ」と敬遠される向きもあろうが、私の中では現代のピアニストでベスト3に入る存在だ。是非今後も追いかけて行きたい。


・・・余談だが、なんとアムランもラフマニノフの3番を出すらしい。しかも併録は私の大好きなメトネルの2番である!おまけに発売日はどうやらソコロフ・ブニアティシヴィリと同日の3月10日である。私にとっては、大ピアニスト3人の惑星直列級の出来事になりそうだ(もう少しずらしてくれた方が楽しみが分散したのに笑)。

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最近聴いている音楽 vol.48〜トリフォノフのリスト超絶〜
2017-02-03-Fri  CATEGORY: 雑多な話題
若手金メダルコレクター、ダニール・トリフォノフが昨年リスト超絶2枚組を出した。気になっていた盤をようやく聴く。3回通しただけだが書いてしまう。


トリフォノフの演奏は例によってショパンのソナタ3番しか知らない。そこでは豊かな叙情性を表現しようという意思は感じられるものの、まだまだ青い(というか波長が合わないのか私の琴線には触れない)という印象であった。1枚で見切るのは惜しいと思っていたところに、リストの2枚組である。超絶全曲にコンサートエチュード5曲、さらにパガニーニによる大練習曲ときてる。正直、この難曲群を揃えて「いい度胸してるな」と思った。1枚ずつ出しても良さそうな内容だ。



聴く前は「ショパンのソナタで聴けたような甘いマスクの優男が女性を口説くような」演奏かと思っていたのだが、半分アタリ半分ハズレと言ったところか。



まずはdisc2の方から(超絶は聴き疲れするので後回し)聴く。コンサートエチュードを一聴して、録音が良い!というか、やたら近接録音でしかもピアノの音色が耳に痛くない(DGの録音技術の為せる技か)。ショック・アブソーバーが鍵盤についているというか、強打してもキツい音にならない構造でピアノが作られているかのようである(勿論、録音の影響が大きいのもありそうだ)。また、ショパンではキザな印象(あざとい感じ)を受けた語り口が、実にこのリストに合っている。エチュードではあるが、技巧のための技巧ではなくあくまで音楽を表現する手段としての技巧、という印象を受ける。これには驚いた。barで口説いているような安っぽさは微塵も無い。『小人の踊り』も、音色の粒が揃っているとかテンポがきちんと測られているとかそういう次元ではなく、音楽を虚飾なく語ろうという姿勢に感じる。タッチの表情付けが素晴らしい。この前半5曲には感心した。


続いてパガニーニ大練習曲。この間のフィリペツの名演があるのでどうかなと思っていたが、案の定雲行きが怪しくなってくる。第1番のトレモロのキレはちょっと物足りないし、ラ・カンパネラも歌はともかくテンポが遅い。第6番だけはなぜか速めのテンポでかなりのテクニックを見せるが、それでもラエカリオやフィリペツには及ばない。フィリペツは宙に舞う半紙を日本刀で切り裂く鋭さがあるなら、トリフォノフは手で掴んでハサミで切ったような感じだ(なんという例えだ)。前半5曲は素晴らしい出だしだったのに、アレレと思ってしまう。


段々と不安になってきていよいよdisc1の超絶12曲。これはもう巷ではkyushimaさんのレビューがクラシックピアノファンに膾炙して全集はオフチニコフ一択のような気がしているが、果たしてどうか。前奏曲こそまずまずの迫力だが、第2番はベルマンVictor盤でこの曲を刷り込まれた身にはおとなしめというか、少し優等生的に響く。第3番は期待していた歌い方が微妙で、単に足取りが重いだけのように聴こえる。そして、disc2のほうではそんなに感じなかったのだが、マゼッパなどではピアノの音が柔らかく感じてもう少し金属的で鋭い音色も欲しくなってくる。そのマゼッパは出だしのユニゾンはいい感じなもののその後の主題はオフチニコフ新盤と比べると堅いというか、噛み締めるようなところがあって惜しい(演奏時間は8分台でオフチニコフより30秒以上もかかっている)。鬼火はキーシンや横山盤ほどの高速テンポではないが3分半を切る演奏時間でこれはかなりいい(そしてまた非常に音楽的である)。続く幻影も叙情的で巧いけれど、リストの超絶としてはどうだろう。エロイカも同路線(中盤の下降・上昇のアルペジオが美しい)。狩はオフチニコフとテンポこそ変わらないが、キレというか迫力の点で物足りない。回想も音楽性重視の演奏で、聴かせる演奏だが繰り返し書くように超絶としてはどうなのか?10番冒頭のキレもいまひとつな気がするし、ラスト2曲もややテンポ遅めでどちらかと言うと音楽性に偏っている(11番などかなり遅めによく歌っているのだけれど)。


ネット通販のレビューではどこも絶賛の模様である。確かに、普段シンフォニーをメインで聴いているようなベテランのクラシックファンの方が聴いたら「歌が上手いしこれは凄い!」と思う演奏のような気がする(水準以上のモノは持っている)。少なくとも、ショパンのソナタよりは語り口に惹き付けられる。けれども、普段からテク重視のピアノ曲やピアニストを根掘り葉掘り意地悪く聴いている私のような向きには「リストの超絶」として若干物足りない感は否めない。


というわけで、disc2の前半は素晴らしいものの、肝心の超絶とパガ練は70点というところ。それでも、ショパンコンクールの時のソナタは気になってきた。リシャール=アムランのコンクールもyoutube以来聴いていないのにアレだけど。トリフォノフは私の好きなババヤンに師事しているということなので、レパートリーに加わるであろうラフマニノフの3番では師匠を超える演奏を残して欲しいものである(結局このエリコンラフ3レビューは書いていないが、技巧の確実性で言えばプラッジ>ババヤン、ボロヴィアク>ルデンコ、ジュニエだった気がする。まぁプラッジはシェン・ウェンユーや若林と同じテク路線ではあったが)。
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最近聴いている音楽 vol.47〜ロール・ファヴル=カーンのショパン集〜
2017-01-31-Tue  CATEGORY: 雑多な話題
久々にショパンのソナタ第2番の更新。私がその音楽性を気に入っているロール・ファヴル-カーン(Laure Favre-Kahn)のショパン集。


favrekahn


出ていたことは知っていて、ネットダウンロードで買おうかずっと迷っていたのだが、出来ればフィジカルで・・・と見送り続けてようやくユニオンでget。まだそれほど聴き込んでいないが書いてしまう。


収録曲はソナタ2番、マズルカ4曲、即興曲4曲(幻想含む)。彼女のアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズは色々聴いた中でぶっちぎりのベストなので、このショパン集には非常に期待していた。


予想通り、ソナタ2番は非常に音楽的な演奏。女流ながら力強さとメリハリがある。第1楽章はかなりいい。音も伸びやかで美しく、取り立てて文句を付けるところがない。スケルツォの和音連打も意外にいい線いってる。ややタメが多めだが致し方ないか。問題の第3楽章。演奏時間は10:11で、私の許容範囲ギリギリの遅さだが、葬送行進曲は期待通り素晴らしい。トリオはルービンシュタインの境地までは達していないがグッと来る。再現部も崇高さが表出している。終楽章はストレートで力強い感じ(彼女のこれまでの録音と同じ路線かも)。全体的には外せない。ただ、彼女の芸風から言ってソナタは3番の方が合っているに違いないので、是非今後早いうちに期待したい。


このアルバムのハイライトは間違いなく次のマズルカ4曲である。女流で水準のテクで豊かな音楽性を持つ(私の好きな)ピアニストと言えば他にシモーヌ・ディナースタインがいるが、彼女のスタイルには慈しみや優美さが感じられるのに対し、ファブル-カーンはそのような母性的なものよりは幾分の力強さと陽性の語り口が感じられる。時に飛び跳ねたり舞い踊ったりするかのような愉悦的なタッチとアゴーギクがマズルカにピッタリである(そう言えば書いてて思い出したがバルボーザのマズルカ、最後の3枚目のupをすっかり忘れてまだだった。。。あっという間にライブラリに埋もれてしまったので発掘次第upします・・・スミマセン)。


即興曲も普段あまり耳にする機会はないが、これもいい。けっこうテンポを揺らすがスッと入ってくる。第2番の指回りも秀逸。ただ、イヤホンで聴いているとアンプロンプチュの第3番から鼻をすするような?音やドアかイスの軋むような音が気になってくる。・・・と思ったら、終演後に拍手が起きてようやくライヴと気付く(ショパンのプレリュード集など、彼女の録音はこういうライヴ録音ものが多い気がする)。最後の幻想即興曲は改めて聴くと気恥ずかしくなるが、意外にプロのピアニストでも(だから?)感激する演奏は少ない中、キッチリと弾き上げる。トータルで収録時間が60分と短いのが少々残念か。


というわけで、ソナタも期待通りなかなか良かったし、マズルカは抜粋ものとしては極めて上質で、ショパン好きの方に十分オススメできる。どうでもいいが、上の画像を検索してたら、まさかのハイレゾ音源が配信されているのを見つけてしまった。下のところから英語版のサイト?が開けたが、ちょっと躊躇してしまう。iTunesでハイレゾが買えるようになるといいのだが・・・。


追伸:2月のソコロフに続いて3月にはブニアティシヴィリがラフマニノフの3番をパーヴォ・ヤルヴィと出すらしく、嬉しい悲鳴である。


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最近聴いている音楽 vol.46〜ベンジャミン・グロヴナー『Homages』〜
2017-01-30-Mon  CATEGORY: 雑多な話題
ベンジャミン・グロヴナー(Benjamin Grosvenor)の昨年出た比較的新譜。





曲はバッハ=ブゾーニ/シャコンヌ、メンデルスゾーン/前奏曲とフーガ第1番・第5番、フランク/前奏曲、コラールとフーガ、ショパン/舟歌、リスト/ヴェネツィアとナポリ。これもシャコンヌ以外は2回しか聴いていないが、短くサラッと書いてしまう。


勿論、シャコンヌが目当てで買ったのだが、14:06という演奏時間に一抹の不安を覚える(私の基準からするとやや遅い)。それは的中、ひと言で表すなら私と波長が合わない。私はオピッツやレーゼルのように整って格調高い演奏が好みで、ロマンに振れている演奏は苦手なのだが、グローヴナーは残念ながら後者のタイプに分類されそうだ。まず、録音が風呂場系でジャブジャブしてる。鉄製の螺旋階段の上で弾いているピアノを最下部で聴くような感じ(残響で音が濁りまくり)。技巧のキレは文句がないのだが、変奏ごとのテンポの揺れや、急速部分の前後でのロマン派的なタメや見栄の切り方が残念。ラスト直前では一部右手をオクターヴ上げて弾いてる?・・・勿論質は高く、決して悪い演奏ではないのだが、彼のデビュー盤を聴いて大きな期待をしているほうとしては肩透かしかも。少なくとも、比較対象となりそうな同系統のガヴリリュク盤ほどの感銘は受けなかった。というわけで、読者の方で私と同じ嗜好をお持ちの方はこれだけ目当てで買われるのは注意が必要と思われる。


続くメンデルスゾーンの前奏曲とフーガ、恥ずかしながら初めて聴いた。どこかで聴いたような旋律だったりするプレリュードの後を受け、フーガでカッチリ引き締めていて面白い。フランクは私の大好きな前奏曲、フーガと変奏曲でないのが極めて残念だが、これも(曲への感度が高いわけではないが)良い演奏。ラヴェルの「夜のガスパール」で見せたキレと凄みがある。ただし、録音のせいなのか、ここまで雰囲気というか曲想が似ているものの連続な気がする(まぁ変奏曲のシャコンヌから始まって、前奏曲〜フーガの連続だから当然だけど)。ショパンの舟歌、これは抜群の出来。やはり彼にはこういう比較的自由に歌える曲が合っている。最後のリストも秀逸。トリを飾るのは昨日書いたガヴリリュクとの「タランテラ」対決、演奏時間はグロヴナーの方が約30秒ほど短い。この段階ではどっちがどうと軍配を上げられそうにはない。これからじっくり聴き込んで比較するのが楽しみだ。


いつも思うのだけれど、音楽のこんな味わい方はクラシック特有だ。ほんとに楽しいのだけれど、ロックの友人達は理解してくれるだろうか。評論家気取りかとバカにされそうだ。まさにpersonalな意味でクラシックは評論家的に楽しめればいいと思っている。つらつらと書いたが、ガヴリリュク盤共々、若手の技巧派好きならオススメである。
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最近聴いている音楽 vol.45〜ガヴリリュクのブラームス/リスト〜
2017-01-29-Sun  CATEGORY: 雑多な話題
ヴォンドラチェクのHMV抱き合わせをぼちぼち聴いている(エリコンの残りもまだ聴いていないのに笑)。


1枚目はガヴリリュクのブラームス/リスト集。曲はブラームスのパガニーニ変奏曲第1・2巻、リストのコンソレーション第3番、メフィストワルツ第1番、トリスタンとイゾルデより「イゾルデの愛の死」、死の舞踏(サン=サーンス-リスト-ホロヴィッツ)、タランテラ。まだ2回ほど聴いただけだが、書いてしまう。


ブラパガは彼の一体何回目の録音なんだ?と思うほどだが(多分3回目)、勿論悪くない。しかし、テーマや一部の緩徐変奏でやたらとテンポを落とすなど、年齢とともに濃ゆい演奏になっている(第13変奏は遅すぎ?)のはちと残念な感じ。第1巻最終変奏もスピード感はいまひとつ。第2巻の方はやたらと力強さが目立ち、気合いを感じる。「慰め」第3番はその濃い語り口が良い方向に作用している。期待のメフィストワルツは11:25でやや遅め。前半は所々のタメが多めなのがややかったるいものの、勢いと迫力はかなり期待通り。歌う部分のセンスの良さが失われていないのがイイ。例の跳躍部分も合格。kyushimaさん評価で言えば○以上○-◎以下は堅そうだ。イゾルデも音楽性で勝負してる。重低音の迫力もなかなかで、語り口との対比が巧みである。死の舞踏は2度目の録音でオハコだけあって、歌には気品と余裕まで感じる(ちなみに、演奏時間は前回よりなんと50秒ほども短い!)。タランテラは浜コンで演っていたそうだがコンクールCDには未収録だったので、一般向けにはようやく手に入ったか。これが今回一番価値があるように思う。


というわけで、30歳半ばに近付きつつあるガヴリリュクだが、ブラームスではやや年齢相応の変化も感じられたものの、後半のリスト集は期待通りに近い出来でやはり要チェックなピアニストであることを再確認した次第。あとは、新しいレパートリーを聴かせてくれれば尚嬉しい(ショパンのソナタを待っている笑)。


追伸:どうやら2月にソコロフの今まで未発売だったラフマニノフ3番が正規発売で出るらしく、非常に楽しみ。早速ヴォンドラーチェクの対抗馬足りうるか?期待したい。

前回の岡田盤(passはいつものピアニスト頭4文字)
http://14.gigafile.nu/0205-a891f26fb839a0b22656561102a1ef56
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