音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
未CD化のレコードあれこれ~リスト編~3/2追加
2013-03-02-Sat  CATEGORY: 廃盤再発推進委員会
いつもショパンとラフマニノフばかりなので、たまには違うネタを。未CD化のレコードのショパン編に続いて、リスト編です。一部CD化されたものもあります。


※デ・ワール盤を追加(3/2)





まずはカツァリスのDECCAレコーディング。



こちらの記事によるとこれがカツァリスのレコードデビューで、1972年のエリザベートコンクールの最中に彼とデヴィッド・ライヴリーの2人がDECCAから秘密裏にコンタクトされ、カツァリスはコンクールのあとにモーツァルトとリストのロ短調ソナタを4時間半かけてレコーディングしたとのことです。


ということは、近年出されたカツァリス・プレイズ・リスト Vol.1というアルバムでのリストのソナタは、このLPとは別録音ということになります(CDの方は1973年7月の録音とあります)。ものごっついピアニスト シプリアン・カツァリスでも書かれているように、モーツァルトはイマイチですが、こちらのソナタは非常に真っ当で逆に興味深い。彼らしいアクロバティックでぶっ飛んでる感じはまだそこまで見られませんが、一部の技のキレはやはり刮目させられるものがあります。CDの方は聴いていないのですが、いずれ聴き比べてみたいと思います。



続いては、ショパンの方でも紹介したアレクサンドル・スロボジャニクのソナタとハンガリー狂詩曲第6番。

SLO.jpg

例によって大味でガサツという向きもあるかもしれませんが、以前紹介したショパン・エチュード(ライヴ)と同様の豪快で振幅の激しい演奏はいかにもロシアという趣きのあるものです。彼はジャケがカッコいいので、どうしても評価が甘めになってしまいます(笑)ちなみに私は他にRCAから出たショパンのマズルカ、ハイドンとプロコのソナタ、メロディアから出たバッハ=レーガーの変奏曲とミャスコフスキーのソナタ第4番のLPを持っていて、どれも同じような迫力のある演奏です(ミャスコフスキーが特にスゴい。バッハ=レーガーはかなりのレア盤ですが、アムラン盤があればいいかなという感じ)。

※と、ここまで書いてから調べて気づいたのですが、この演奏は「フランツ・リスト生誕200周年に捧ぐ」というアルバムでCD化されているようです。これによると、彼のソナタとハンガリー狂詩曲第6番は1975年のハンガリー・フランツ・リスト賞に輝いたとのことです。




こちらは私の思い出深い盤。ギャリック・オールソンによるリスト集です。

Ohlsson.jpg

曲はメフィスト・ワルツ第1番、詩的で宗教的な調べより孤独の中の神の祝福、葬送、それに愛の夢第1〜3番となっています。実はオールソンは私の大好きなピアニストの1人で、(ショパン・コンクールで優勝したからというわけではないのですが)彼のショパン演奏は特に好んで聴いているものです。

私の知っているところでは、(ショパンやブゾーニ・コンクールのCDを除くと)彼はコンクール優勝後にEMIからピアノソロではショパンのノクターン、ポロネーズ、スケルツォ、前奏曲、そしてこのリスト、ブラームスではソナタ第3番他、ヘンデル&パガニーニの主題による変奏曲集、ラフマニノフの編曲集、さらにレアなところではシューベルトのソナタ第17番など数多くのレコードを出しており、そのうちショパンのノクターンとポロネーズなど幾つかのものはレーベルを変えて何度かCD化されています(最終的?には完全盤がEMI1300シリーズで2枚組で出てます)。特に私が好きなのはポロネーズ集で、幻想ポロネーズは色々聴きましたが彼の演奏がダントツでベストです(10年ほど前、某掲示板でも私と全く同意見の方が居て、その当時マイナーレーベルでCD化された盤を探していたのを思い出します)。

さらにその後、アラベスクやブリッジ等のレーベルから上記の再録音を含め様々な音源が出ていますが、量が膨大過ぎてあまりカバーできていません。その中ではアラベスクから出たショパン作品全集が質の高さという意味では本当に素晴らしく、我が家のリファレンスとなっています。ただし、ポロネーズ集の新録音はベーゼンドルファーを使っているせいかボヤケ気味の録音のせいかなのか、旧録音のような輝きに欠ける感じがあるのが惜しいです(余談ですが、アラベスク盤を分売で買い集めていたところ、全集が出そうなのでヤフオクに売りに出したらなぜかエチュード集が10500円で売れてビックリしました。ちょうど廃盤になっていた時期のようです)。

随分と横道にそれてしまいましたので、このLisztのレコードの話に戻ります。彼の演奏の特徴は手の大きさを活かした豪快な技巧と、大らかでゆったりとしたテンポの語り口が挙げられると思います。(ラフマニノフの3番のレビューで書いたように)ともするとそれが緊張感の欠如につながる場合もあるのですが、曲によってはこのピアニズムがピッタリとハマっています。それが最良の面で発揮されているのが愛の夢の3曲で、有名な第3番はちょっとテンポが遅すぎるかなと思わなくもないですが、船に揺られているような心地良さがあります。詩的で宗教的な調べも秀演。特に「孤独の中の神の祝福」は深刻になりすぎず、かといって弛緩過ぎず、絶妙なラインを保ってます。そして冒頭のメフィストワルツ。実はこれは私が最初に聴いたメフィストで、今でこそキーシンやエコノム、ルガンスキー、マツーエフ、Tong、ブニアティシヴィリなどの現代的名演が出てますが、オールソンのこの演奏は最もよく聴いた思い出の1枚なのです。緩徐部分の歌の自然さ、急速部分の豪快な技巧はやはり今も魅力(細かく聴くと跳躍部分でスローテンポから徐々にスピードアップしていくところなど、前述の盤に比べるとちょっとユルいというか、多少時代を感じさせる解釈もありますが)。というわけで、このレコードはCD化されていないと思われるので、是非ともして欲しい1枚です。

ちなみに前述したLPについても少しコメントしておくと、ブラームスのパガバリやラフマニノフは技巧的に悪くはありませんが、彼の詰めの甘いところ?が多少見られて惜しい感じ(パガバリ第1巻最終変奏はスピード的にタラソフ以上ガヴリリュク以下の速さでまずまず健闘していますが、主題や第1変奏のテンポがやや遅め。その他の変奏ではインテンポで難なく突っ走って技巧を見せつけるところもあり、あんまり弾きこんでないor考えてないのかな?というところがいかにも彼らしいです(笑))。



お次は趣向を変えて、ギター編曲によるリストのLP。山下和仁によるハンガリー狂詩曲第2番です。

YAMASHITA.jpg

初めてこれを聴いたときは本当に戦慄しました。もはやギターという楽器の範疇を超えてます。唸りを上げて咆哮する6本弦にはオリジナルのピアノ版とはまた違った魅力に溢れています(ハンガリーのラプソディという、民族的な曲調とギターの音色がこれまたピッタリとハマってます)。私はあらゆるギタリストの中で彼がもう2度と現れないであろう人類史上最強のテクニシャンだと思っているのですが、その技巧が全開。フリスカでは低音弦を刻みつつ同時に高音弦で超高速のトレモロを聴かせているのですが、右手も左手もどういうことになっているのか想像も付きません(試しに右手人差し指・中指をできるだけ速く痙攣させつつ、親指で低音弦をはじくマネをしてみてください。勿論、同時に左手の方もスゴいことになってます)。歴史に名を残すであろうこの演奏がなぜCD化されていないのか、全く理解できません(余談ですがこのレコードは2枚持っていて、そのうち1枚はディスクユニオンで300円でした。大変狙い目です)。彼が出している膨大なCDの中にはベートーヴェンの協奏曲(ピアノ協奏曲第「6」番を編曲したもの)や吉松隆のソナタ、ドヴォルザークの新世界、兄妹デュオによるモーツァルトのオペラ編曲などなど廃盤のものがかなりありますが、その中には素晴らしいものも多いのでいずれ項を改めて紹介したいと思います。




トリを飾るのはやはりピアノで行きましょう。ニコライ・デミジェンコによるリストのドン・ジョヴァンニ幻想曲です。

DEMIDENKO-MELO.jpg

多少の弾きこぼしや隣りの鍵盤の引っ掛けなどもあるのですが、それをもろともせずに快速テンポで飛ばします。とにかく急速部分の鮮やかなこと!路線としてはラエカリオ(ブゾーニ版)の豪快さとデュシャーブルの直球勝負を足して1.7で割った感じです。ペトロフ盤の部分的なテンポの遅さ、アムラン盤2種の薄味加減、崩し気味のクズミン盤が気に入らないという方には大変オススメできます。

そしてメロディアのレコードながら、録音も優秀ではないでしょうか。併録のベートーヴェンのソナタ第3番、ハイドンのソナタなども音に輝きがあって素晴らしい。(kyushimaさんも書かれていますが)これは本当にCD化してもらいたい1枚です。私は見本盤と通常盤を持っているのですが、やはり白ラベルの見本盤が良い音です。彼はメロディア時代にクレメンティのソナタ、ウェーバーのコンツェルトシュトゥックなどをレコードで出しており(ハイペリオンから出したものとは別録音の模様)、どちらもCD化されていないようです。

3/2追記
デ・ワール盤を忘れてました。

dewaal


RCAから出たこのレコードは大好きな盤で(それならなぜ忘れてたのかという話ですが汗)、ハンガリー狂詩曲第12・11・13・6・3・9番が収録されています。2番が入っていないのは正直ちょっと残念。ゴドフスキーのパッサカリアのところでも書きましたが、彼の直線的で一本気なところが魅力の1枚です。シフラのような土着のコブシはありませんが、ディヒターやシドンのような良い意味で抑制の取れている演奏と言えるでしょう。特に13番は最近だとアムランの精緻流麗ここに極まれりという演奏や、ヴォロドスのキレ味鋭いナイフのような技巧と悪趣味一歩手前の編曲を加えた演奏が印象に残ってますが、それに比してデ・ワールの演奏は妙に朴訥と響き、ある意味隔世の感があるもののそれが逆に魅力に感じます。第6番も非常に模範的な演奏。録音も優秀。1985年9月に録音されたこのレコードは、どれだけ探してもネットに情報が落ちておらず、CDにもなっていないと思われるのですが、どうやら1986・87年辺りにVanguardでほぼ同じ曲目を録音してCDを出していたことしか掴めていません。そのヴァンガード盤の情報も全く分からず、録音年月が近いので同一音源の可能性もあります。情報をお持ちの方は是非お知らせください(ジャケットにDIGITALとあるのでいかにもCD化されてそうですが・‥)。




以上、長くなりましたが、他にも出てきたら随時追加したいと思います。
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