音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
デヴィッド・グレイルザンマーの『MOZART IN BETWEEN』
2012-10-27-Sat  CATEGORY: 音盤紹介
前回の告知通り、David Greilsammer(デヴィッド・グレイルザンマー b.1977)の新譜をご紹介します。


greil


曲は(輸入盤を買ったのでよくわからないものはケッヒェル番号で書きます)、交響曲第23番、ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」、それにK.345、Denis Schuler(b.1970)のIn-Between(弦楽四重奏とオーケストラのための、2010、世界初録音)、K.345、K.87です。オーケストラはL'ORCHESTRE DE CHANBRE DE GENEVE、K.87でのカウンターテナーはLawrence Zazzoとあります。勿論、Greilsammerによる弾き振りです。


まず初めの交響曲23番、わずか8分半ほどの曲ですが、出だしから快活でテンポが速く、これまでのグレイルザンマーのピアノ解釈の延長線上にある演奏です。しなやかな強弱と旋律のヨコの流れを重視したタクトと言えるかもしれません。オケの実力もあるのか、やや音色がぎすぎすしている箇所もなくはありませんが、爽やかで好感の持てる内容です。


続いてピアノコンチェルトの9番。これまでに出た2枚と同様、期待通りの好演です。細部まで十二分にコントロールされたタッチで、非常に繊細でありながらモーツァルトらしい快活さや幸福感をいささかも失っていません。楽譜を見ながら聴くと、TUTTIは力強く、fのところは快速に、pのところはしっとりと、オケとともに結構大胆にテンポを切り替えているのですが、それが実に説得力を持っています。第3楽章のロンドも品を保ったまま元気良くPrestoで駆け抜けます。細かなトリルや無窮動的な急速部分でも丁寧に表情付けがされていて、やはり技にもキレがあります。カデンツァは彼のもので、過去の録音同様全く違和感を感じない自然な出来栄え。正直初期のコンチェルトはほとんど聴かないのですが、これは繰り返し聴くことになりそうな予感(それにしても、前作の『Baroque Conversations』のラモーのガヴォットでも感じましたが、彼はこういう無窮動な、なんというかピアノを弾いていて生理的快感を感じる「弾いていて楽しい」曲が好きなのかも)。


お次はエジプト王ターモスよりNo.2、No.5で、その間にDenis Schulerによるin-Betweenという曲が(まさに)挟まっています。例によって、この意図がよくわからない。Schulerの曲はドン、カァーーンとか、ヒュゥゥン、ジィィーーーンとか、ヒュワーシュキィィンみたいな音が飛び交う、いかにもゲンダイオンガクな10分程度のシンフォニーなのですが、なぜこれがモーツァルトの間奏曲にサンドイッチされているのかわかりません。私はプログレも大好きなので、こういう落ち着かない曲も嫌いではありませんが、サンドイッチする必然性がわからないのでこの曲群についてはコメントできません。


そんなわけで前作同様に輸入盤を買ってしまったので、長々と書かれた英語のブックレットも読む気になれず、困っています(苦笑)とりあえず1ページ目に「A JOURNEY INTO MOZART'S INTIMATE AND FRAGILE WORLD」と大きく書かれていて、そう言われてみると確かに後期モーツァルトの円熟した完璧な作品のようなある種の近寄りがたさではなく、若書きの作品が持っているナイーヴな壊れやすさや親しみやすさ(取っ付きやすさではなく、誤解を恐れずに言えば人間っぽさ?)を、アルバムを通して感じます。長ーい英文をナナメ読みすると、「私のモーツァルトへの無限の愛」「モーツァルトの心に沸き起こる暴力的な想像上の嵐」とか、「我々が期待していなかった、曖昧で、不確かで、恐怖によって克服し、遠い世界の合間で失われた、モーツァルト」「この変ホ長調のコンチェルトはモーツァルトのエロイカ」などと彼のモーツァルトへの熱い思いが延々と書き連ねてあるような気がします。よくわかりません。


最後を飾るのはモーツァルトが14歳で書いたオペラ「ポンテの王ミトリダーテ」のアリアから「執念深い父がやってきて」(Venga pur, minacci e frema)です。これにも詳しくコメントできませんが、ラストに歌が出てくるのが唐突過ぎてかなり面白い。



というわけで、シンフォニーにコンチェルト、そしてアリアと、彼のモーツァルトへの愛とコダワリがテンコ盛りなこのアルバム。もう私は完全に彼にハマっているので、玉石含めて期待通りの内容だったと思います。私はモーツァルトが特に好んで聴くというわけではありませんが大変楽しく聴けましたし、Greilsammerの、知的好奇心を強く刺激してくるピアニズムがお好きな方には是非オススメしたいと思います(ただし、途中のゲンダイオンガクとか、歌モノが入る選曲の妙にはお気を付け下さい)。

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