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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~4つ星編~
2012-09-29-Sat  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
4つ星盤の評価を一部変更し、追記を加えました(9/29)。同一評価の中で4つ星の盤のみ気に入っている順に紹介しています。


☆☆☆☆・サモシュコ/Soustrot/Orchestre National de Belgiue/(99年/ossia)
 99年エリザベートコンクールライヴ(第1位)。技巧・迫力・叙情性と三拍子揃っていてそのバランスが素晴らしい。テクニックは凄いけどロマンがイマイチ、あるいはその逆といった演奏が多い中でこのサモシュコの演奏はそれが両立されている演奏です。そして何より私が重視する、コンクールの緊張感に加えてライヴならではの生々しさとダイナミズムに満ちています。全体的にストレートな解釈で、この曲に対する思い入れが感じられ、細かいミスは多少あるもののかなり弾き込んでいる印象を受けます。第1楽章は個人的にほぼ理想的な演奏。展開部の和音連打は猛烈なスピードで、多少音が濁ってますがそれが逆に手に汗握るスリリングを演出しています(ここが聴きたくてこの盤を何度も手に取ります)。カデンツァもスケールが大きく、後半の和音部分での畳みかける迫力が出色。第2楽章の緩徐部分もなかなかの出来。ボレットやチェルカスキーのような滋味深いものではなく、どちらかと言えば溌剌とした清々しさがあるという感じでしょうか(ライヴながら明晰な録音のせいもあるかも)。懲りすぎないデュナーミクにも好感が持てます(もしくは、そこまでの余裕が無いのかもしれませんが)。第3楽章も全体的に速めのテンポ。後半になると少々疲れてきたのか多少疵が多めなのが惜しい。ただ、所々ミスはあるものの時々フッと力を抜く表現がツボにはまっていて魅力十分です。コンクールながらオケもけっこう気合いが入っており、この手の演奏としてはかなり良いのではないでしょうか。当時の審査員を務めた故園田高弘氏が生前ご自身のウェブサイトで語っていましたが、まさにロシア人ピアニストのロシア物に対する強さをまざまざと見せ付けた感があります。入手できる正規盤としては最も気に入っているものの1つです(まだ海外アマゾンや海外ショップを探せばあるかも。2ヶ月位前までは新宿のユニオンに900円くらいで出てました。格安なのに1ヶ月くらい売れずに残ってて哀しかったのを覚えています)。新録音より断然好きです。
※なお、この演奏の動画がネット上に落ちているので興味のある方は探してみてください。
以前書いた記事も参照下さい。


☆☆☆☆・ハフ/リットン/ダラス響/(04年/original)
 自作自演の解釈を踏襲した冷静かつ緻密な演奏。ライヴながら技巧のキレが素晴らしく、相当速めのテンポにもかかわらず余裕を感じます。第1楽章の出だしから左手の精妙な動きが印象的。展開部などはピアノが割れんばかりの強烈なタッチ(さすがに少々やり過ぎかも)。ここのテンポはおそらく最速で、ガヴリーロフの再録音盤と双璧のスピード。かと思えば弱音での高速トレモロなど、聴いているこちらが戦慄するような繊細さも聴かせます。オリジナルのカデンツァは風のように速く、表情付けも上手。第2楽章も弱音が綺麗で聴かせてくれます。第3楽章は文句なしの名演。手持ちの中でも最上位に入る猛烈なテンポでスピード感抜群。ハイペリオンが誇る技巧派の面目躍如たる演奏と言ってよいでしょう。あとはもう少しロシア的な情緒を感じさせてくれると良かったかも。決してロマンが欠如した演奏ではないのですが、例えばモギレフスキー盤やベルマン盤から聴ける哀切の表情というか、深い歌い回しがこの盤には少々足りない気がします。もっともそれでは彼が目指す自作自演の解釈に反してしまうのかもしれませんが。
*ちなみに、協奏曲第2番の方の演奏もこれに劣らず良いです。第2楽章なども歌い方がうまく、気味が悪いほど完成度の高い内容となっています。ただ、第1楽章の冒頭の和音は(ツィメルマンやアンスネスのように)もっと勿体ぶって弾いて欲しかったかも。
*同じくハイペリオンに録音したシャルベンカとザウアーのコンチェルトも驚異的な名演で必聴です。


☆☆☆☆・ヴォロドス/レヴァイン/ベルリン・フィル(99年/ossia)/ライヴ
 輝かしい和音、機械のように精密なタッチ、震えるようなsinging tone、凄まじい技巧で難曲を鮮やかに弾きこなしており、驚異の演奏精度を誇っています(技術的にはおそらく最高の1枚で、ハフ、アンスネス盤以上かも)。個人的にここはこう弾いて欲しいというポイントをほぼ押さえていると言ってもよいです。さらに内声の浮き立たせ方など細かい音楽的表現においても充実しており、鬼気迫る瞬間が幾つもあります。第1楽章は凄まじく精確ですが、まだまだ大人しいかも。手持ちの全ディスコグラフィーの中でこのヴォロドスの演奏が最も際立っているのは展開部で、右手で3連付の和音連打する場面では最初の8分音符の後に休符を入れて(譜割りが変わるので正確な表現ではありませんが)その後の3連符につなげることで非常にスリリングな効果を上げていることです(カッコ悪いですがカタカナで書くと、ヴォロドスは「タッ タカタータ」で、ガヴリーロフなどは「タタタタータ」と楽譜通り)。ちなみに彼はossiaのカデンツァの後半部分でも他のピアニストが普通ルバートをかける箇所をインテンポで弾いているのでリズム的に「おおっ」と感じるかも。第2楽章は歌い回しもなかなか上手。後半の細かなパッセージはどこまでクリア。第3楽章は勢いに乗ってきて全楽章中で一番良い出来でしょう。ただ、彼の実力からするとまだセーブしている感じがあるというか、冒頭の和音連打からしてもっと超高速に畳み掛けられるのではないかと思います。それでも最後は勢いに乗ってオケと手に汗握るデッドヒートを繰り広げています。録音は若干ピアノの音が強調気味ですが適度にライヴ感があってなかなか良いです。ヴォロドスの他の録音にも感じる事ですが、あまりに完成され過ぎていて行儀が良すぎるというか人間味に欠ける気がしないでもないです。おそらくその尋常でない技巧(特に彼の編曲ものでの急速音型の滑らかさは人間とは思えない)のせいもあると思うのですが。youtubeでのメーターを振り切った爆演を聴くと「これ以上」を期待してしまいます。ベルリン・フィルも当然のことながら素晴らしく、ピアノ共々技術的な完成度の高さに他の盤が聴けなくなる可能性が大なので、初めに聴く一枚にはオススメ出来ません。
※9/29追記
その後、何度か聴き直してみましたが、やはり技巧的完成度では他の追随を許しません。あらゆるタッチがコントロールされており、細部に渡って解釈のコダワリと工夫を感じます。私的チェック項目全体の平均点ではダントツで最高ですが、上にも書いた通りまだまだ彼ならスゴい演奏を残せると思います。細部の精度をある程度犠牲にしても勢いや高揚感・緊張感を出して欲しいと個人的には思います。繰り返しになりますが、その技巧によって汗をかいているところが感じられないのもあるかもしれません。例えば私が最重要視している展開部の和音連打部分と終楽章冒頭のテンポを、それぞれ2割・1割はupして欲しいところです。特に展開部は、みなぎる緊張感の中で渾身の打鍵を聴かせるサモシュコ盤や、直線的に何者もなぎ倒すかのようなハフ盤を聴いてしまうと、もう少しヴォロドスにも気合いを求めたくなります(それでも彼のこの部分には他盤にない独特の凄みがありますが)。
余談になりますが、私はニコライ・ペトロフのラフ3を聴いたことがあり、彼も持ち前のテクニックで余裕シャクシャクに弾いていて、その体型のように恰幅の良い演奏でやはりそれほどの感銘を受けませんでした。ちなみにアムランの演奏は弾き込みが足りないのか、意外とミスが多く感心しなかった覚えがあります。彼の場合はレパートリーが多すぎるから仕方ないかも??。


☆☆☆☆・プラッツ/バティス/メキシコシティ・フィルハーモニック/(89年/ossia)
 カデンツァがoriginalのロドリゲス盤の爆演に対する、ossiaの盤として双璧を成す爆演。こちらはスタジオ録音ながら全く守りに入っていないのが良いです(というかむしろライヴを聴いているような熱気に満ちています。カツァリスの78年盤と同様の印象)。ピアノの音色が明晰で、オケもかなりデッドな響き。やたらとシンバルがでかく、全体的に音量のバランスが妙です。その分迫力は素晴らしく、ホロヴィッツやアルゲリッチ、ロドリゲス盤と遜色ありません。第1楽章は丁寧にしっかりと弾きこなしています。技巧にもキレがあり、展開部の和音連打の迫力はかなり凄い。テンポが速めのossiaのカデンツァもややせわしない感があるものの、こなれていて良い出来です。第2楽章も引き続いて巧みです。ロシア的な構えの大きさがあるかと言うと実はそうでもないのですが、興に乗って感情の赴くままに弾いたのが成功している感があります。第3楽章の冒頭はスピードというか勢いを大事にした内容でやや荒いですが、急速部分もスタジオ録音とは思えないくらいに攻めまくり、コーダではピアノ・オケともに駆けに駆けてすっ飛んでいきます。録音のせいか、フォルテでの打鍵が一本調子なのが少し気になります(ややヒステリックな印象を受ける場面がなくもないです)。しかし、全体的な説得力では手持ちの盤の中でも上位に入るでしょう。オケも気合いが入っていて、聴き終えた後はなにかアクション映画でも観たかのような錯覚に囚われます。
*コンチェルトの2番の方も濃い味付けで良い出来です。ただ、彼には2番よりピアノの見せ場の多い3番の方が性に合っているのかも。



☆☆☆☆・ロドリゲス/P.A. マクレー/Lake Forest Symphony/(94年/original)
 歴史的爆演。ライヴならではの凄まじい熱気と勢いで突き進みますが、緩徐部分では伸びやかに歌うことも忘れません。緩急が自然で、緊張の解きほぐしが上手いです。第1楽章の出だしなどオケとピアノが少々あっていなくてハラハラするのですが、後半になるにつれてしっかり決めてくれます。疾風のごとく駆け抜けるoriginalのカデンツァも素晴らしい。ライヴのためか録音がとてもデッドで間近に感じられ、客のクシャミや咳が結構良い所で聞こえてくるので、神経質な人は嫌がるかもしれませんが、個人的にそんなことはこの凄まじい演奏の前には些細な問題。オケの出来も素晴らしく、非常に生々しい響きを奏でていて迫力十分。よくぞこの重戦車(むしろ爆撃機?)的なピアノに合わせてくれたものです(指揮者は偉い)。ただ、終楽章の終盤でオケの残響が変化しているような気がするので、ひょっとしたら完全なライヴではなくかなり編集しているのかもしれません(単にマイクの問題かもしれませんが)。この演奏の迫力に聴き慣れてしまうと間違いなく他盤が物足りなくなる危険があります。終演直後にはブラヴォと観客が絶叫。燃えに燃えたい気分の時にはベスト。ただし、聴く気分を選ぶほど激しい演奏であるのは間違いないです。
※彼のコンチェルトはラフ2、ショパ2、チャイ1、グリーグ、リスト1、ラフ3旧録、プロコ3のCDを持っていますが、どれも豪快かつ勢いに満ちています。特にリストは秀逸。逆にショパンはイマイチ度が高く、ベッタリとした歌い回しが曲想と合っていない気がなんとなくしました(ラフ3での名演を聴いて期待すると拍子抜けするかも)。ラフ2もスピード感溢れる3番の演奏と違って、歌は十分なのですがどこかモッサリしていて少々期待はずれでした。



☆☆☆☆・ガヴリーロフ/ラザレフ/モスクワ・フィル/76年/ossia/LP

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 手持ちの中でこの演奏のカデンツァが一番好きです。アゴーギク・デュナーミクが個人的好みにハマってます。サラサラ弾くことが多い今時のピアニストの解釈と違って、壮大なカデンツァを十分にタメを作って堂々と歌い上げるさまは、ロシア的な雄大さやロマンを十二分に兼ね備えていると言ってよいでしょう(ossiaを弾くならこうでないと)。全体的な演奏の完成度も第1楽章の前半に1箇所小さい隣の音を引っ掛けたようなミスタッチがある他は万全。展開部の和音連打などは彼らしい畳みかけるような迫力に満ちています(しかも安定感が抜群)。第2楽章はもたれない程度に歌います。特に緩徐部分はやや足取りが重めなのですが、新録音ほど作為的でないので好感が持てます。第3楽章は豪快かつスッキリと弾ききっている印象。出だしの同音連打はもう少しスピード感が欲しいところ。20歳頃の録音ということで、10年後の再録音ほど手慣れた様子はないですが、程良く張りつめた緊張感が漂っています(録音時間は再録音より全体で3分も速い!)。彼が若い頃に録音したラ・カンパネラやスクリャービンのソナタ第4番は私のお気に入りの演奏なのですが、それらの録音と同じように豪快ながらも精緻な美しさを伴った演奏と言えるでしょう。録音は(LPということもあって)やや古さを感じますが、オケの暗い音色には合っています。
※9/29追記
2度ほど聴き返しましたが、聴くたびに感心します。彼の録音の中では異例なほど抑制が効いていて端整で引き締まった演奏だと思いました。私の安物のLPプレーヤーでは全体的にピアノがくぐもって柔らかめに聴こえてしまうので、ぜひCD化して欲しいものです。



☆☆☆・ドノホー/フェドセーエフ/Moscow Radio Symphony Orchestra/(82年/ossia/Live/LP

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 チャイコフスキー・コンクールライヴ。ピアニストの中村紘子氏がコンクールでこのドノホーの演奏を聴いて、「きちんと弾こうとするとまるで味気ないエチュードを弾いているような演奏になってしまう云々」と著書の中で酷評(?)されているので、問題のその演奏を是非聴いてみたいと思っていました。入手してみて聴いた感想はと言うと、その酷評に反して素晴らしいです。確かに指回りが鮮やかな上に気になるミスもほとんど無いので「エチュードを弾いているような」感じを受けないこともないですが、スポーツ的な爽快感は抜群。(少なくとも私には)ロマンティックな歌いこなしも魅力十分です。第1楽章の展開部での和音連打は強烈な音色を聴かせます。ossiaのカデンツァは出だしの和音が大きすぎるので少々びっくり(ここはもう少し響きに気を遣って欲しいところ)。後半の有名な和音部分は怒涛の攻めという言葉が似合う激烈な勢い。何者をもなぎ倒していくような迫力はおそらく手持ちの中でもベストの部類でしょう。第2楽章前半はテンポをぐっと落として、濃厚に歌います。後半は若干印象が薄いでしょうか。アタッカで第3楽章に突入する箇所では、フェドセーエフ率いるオケの爆発が聴けます。そしてこの終楽章は手持ちの盤の中でベストを争う名演。推進力・完成度ともに申し分ありません。練習番号58辺りでは有名なossiaの急速な重音上がりの方を弾いています。手持ちの中でこのように弾いているのはカツァリスの2種とこのドノホー盤だけです。個人的にはトータルで決定盤にかなり近いのですが、残念なのが2点。タッチに重量感がありすぎるあまり、音色が美しく響いていないこと(録音の問題もあるでしょうが、コンクールのライブとは言え、もう少し和音の響きに気を遣って欲しい)と、マイクのそばでやたらと咳をする観客がいることです(特に第2楽章が気になる)。コンクールとは言え、こんなに平然と咳をしまくってるコンサートも他にないでしょう。いくらなんでもヒドいと思います(ロシア人の嫌がらせかと勘ぐってしまうほど)。とにかく、このコンクールでドノホーはオフチニコフと1位なしの2位を分け合いましたが、それだけのことはある演奏です(ちなみに私はオフチニコフの3番の実演を2005年に池袋の芸術劇場で聴いたことがありますが技術的にかつて聴いたことが無いほどメタメタで、この曲の完成度だけで言えばドノホーに軍配が上がります。尤も、オフチニコフの演奏はミスは凄まじく多かったものの、不思議と心に沁み入る演奏でした)。
 ※ドノホーはこの手の重量級のコンチェルトが得意なようで、ブゾーニのピアノコンチェルトもライヴながら極めて高い完成度と熱気に満ちた素晴らしい演奏でお薦めです(例によってEMIの録音はあまりよくありませんが・・・)。



☆☆☆☆・アンスネス/ベルグルンド/オスロ・フィル(95年)
 旧録音。この頃のアンスネスの素晴らしい感性が光ります(勿論、新録も悪くはありませんが)。第1楽章はやや速めのテンポでサクサク進みます。音色に透明感があり、しなやかなタッチは流麗で繊細、強弱のつけ方も上手く非凡なセンスを感じます。特に歌い方が巧みで、グッとくるものがあります。技巧的にもキレがあり、アルペジオが続くveloceの部分はヴォロドスと同様、ルバートをかけずに一気に弾ききっています。ossiaのカデンツァは前半部分に余裕が感じられ、低音の迫力もあって良い出来。後半からの和音部分はケチの付けようがない完成度ですが、もう少し思い入れがあってもよかったかな。originalの方を弾いてくれた方が彼には合っていたかも。第2楽章の緩徐部分も素晴らしい。後半の音数が増えてくる部分でも安定しています。アタッカで次の楽章に行く際、オケが音価を長く取るのはちょっと間が抜けた感じ。第3楽章は手堅くかつ丁寧にまとめています。正直もう少しテンポアップして欲しい箇所もあり、彼ならもっと凄いテクを見せてくれるとは思うのですが、あくまで技巧を見せ付けるようなことはしていません。恣意的な演奏が苦手な人には非常にお薦めです。自然体のこの盤に聴き慣れるともったいぶった演奏はあざとく感じることでしょう。フィナーレでオケが少し音を外している?のがちょっと残念。ライヴということもあり、(また録音に定評の無いEMIということで)音質がぼやけ気味なのが惜しいですが、総合的に4つ星として推すのに躊躇しません。
※後年彼が録音した2番は、3番よりさらに完成度が高く(というか、彼には合っている?)、個人的にツィメルマン盤と双璧を成す演奏だと思います。



☆☆☆☆・アルゲリッチ/シャイー/アムステルダム・コンセルトヘボウ/82年
 大学1年の時に知人に貸してもらって、初めて聴いたラフ3の録音がこれ。この演奏に惚れてクラシックに本格的にのめり込むようになったという思い入れがある一枚です。アルゲリッチらしい畳み掛けるような勢い・推進力があり、そのせいもあってオケと合っていない所も散見されるのですが、それを補って余りある情熱的な演奏です(指揮のシャイーは苦労しただろうなという感じ)。彼女の特長のひとつである、鮮やかなタッチで変化に富んだ音色が素晴らしい(コロコロして落ち着かないという人もいるかもしれませんが)。第1楽章の冒頭の駆け上がるピアノのフレーズでは何度聴いても鳥肌が立つし、彼女得意のオクターヴや和音の高速連打の滑らかさには胸がすきます。第2楽章も彼女らしいラプソディックな歌い方で聴かせます。第3楽章は冒頭から彼女の独壇場。駆けに駆けて爽快な指回りを味わうことが出来ます。磨き抜かれたような近年のピアニストによる演奏と比較すると多少荒さは目立ちますが、それでも十分に魅力的。ひいき目も多少ありますが、個人的には最初に聴く一枚に良いと思います。
※9/29追記
久々に聴き返しましたが、数多の名盤を聴いた後では最初の感動はやや霞んでしまうかなという印象です。曲の出だしや展開部もそこまでのスピード感はありませんし、何よりライヴということもあるのかピアノの音がこもり気味なのが気になりました。しかしながらオケが非常に良いこと、第3楽章の熱演、フレーズ内で万華鏡のようにキラキラ音色が変化する独特のタッチ(先日紹介したショパンのコンチェルトの1番はこれが本当にスゴかった)を聴くと、やっぱり4つ星は外せません。



☆☆☆・ボレット/フィッシャー/ロンドン響/(82年)
 再録音。第1楽章は冒頭の主題の旋律を奏でた後はテンポ良く入ります。歌いどころでは磨き抜かれた美しいピアノの音色をここぞとばかりにゆったりと聴かせます(再現部前のAllargandoなど)。時間を贅沢に使って一音一音を慈しむように奏でるロマンティックな語り口は、まるでピアノコンチェルトの2番を聴いているかのよう。カデンツァはoriginalで、曲の中で実に自然な流れを感じさせます。和音の高速連打の場面でテンポが落ちるので勢いの点で物足りないと感じる箇所もありますが、この盤を聴くといかに他の演奏が歌えていないのかが分かります。単に遅く弾けばピアノを歌わせることが出来ると他のピアニストは勘違いしているのではないか、と思うくらいに説得力のある音運びです。特に第2楽章はこの演奏の白眉。時間を贅沢に使い、ツボを押さえた味わい深い強弱のつけ方と円熟味のある語り口が素晴らしい。録音も優秀で、宝石がこぼれ落ちるようなキラキラとしたピアノの音色を捉えています。第3楽章は急速部分でのスピード感に欠けるのが惜しいですが、和音の響きが美しくて聴き飽きさせません。手持ちの盤の中では歌という点では最高峰なので、この曲に叙情性を求める人にはベストでしょう。スポーツ的な爽快感は皆無ですが、それとは違うこの曲の美しさを伝えている点で素晴らしいと思います。
※9/29追記
久々に聴き直したところ、やはり私が求めるこの曲の理想の演奏とは距離があると思い、評価を変えました。一番気になったのは、肝心のピアノの音色が埋もれ気味というか、おそらく技巧的問題もあってやや明晰さを欠くように感じたところです。テンポが非常に遅く、第1楽章などはカデンツァがオリジナルにも関わらずossia並みの演奏時間ですし、終楽章も半ば別な曲に感じるほど遅いテンポですが、それでもこの豊かな音楽性には4つ星を付けます。



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というわけで、複数回に渡りラフ3のレビューを書いてきましたが、この曲に関して今後はレビュー未記入のものを聴き直してその都度更新していきたいと思います。

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