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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~3つ星編その2~
2012-07-25-Wed  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ

☆☆☆・ニコルスキー//ossia/Live
‘87年エリザベートコンクールライヴ(この時、彼が第1位で若林顕が第2位)。残響の少ない硬めの録音でバキバキ弾いてます。第1楽章前半はまだ様子見なのかタッチに力がなく、オケに埋もれがち。その後はアゴーギクに説得力が出てきて好印象。ダイナミックレンジが広いです。展開部は出だしがもそもそしていてちょっと盛り上がりに欠けますが、そこそこのスピード。カデンツァはメリハリを上手く付けていて聴かせます。ミスがあって、ちょっと辿々しい感じもありますが、悪くはありません。第2楽章はあくまで朴訥と歌うところが初々しい。ただ、一部のパッセージが苦しそう。第3楽章はまずまずのテンポ。後半は多少息切れの感もあり、語尾が曖昧になるというか弾き飛ばしている感じの箇所もあります。どうやら彼は技巧のキレで勝負するタイプではなさそうです。終演後は猛烈な拍手の嵐。技巧的な完成度では若林盤に及ばないものの、音楽的豊かさの面で高く評価されたのでしょう。確かに語り口が巧いというか、どこか惹きつけられるような不思議な魅力があります。彼はこの後、若くして自動車事故か何かで急逝してしまいます。惜しいピアニストをなくしました。
 *彼の他の録音では、ショパンの24の前奏曲と舟歌、ソナタ第2番が入ったCDが気に入りました。特に、ソナタ第2番が良い出来です。第2楽章のスケルツォもテンポが速く、跳躍部分も安定しており、ツボを押さえた佳演と言えるでしょう。

☆☆☆・J.ナカマツ/シーマン/ロチェスター・フィル/original/00年
 模範的演奏。技巧的にもこなれており、欠点が少ないです。叙情性に溢れ、力強さや緩急のメリハリの付け方も上手い。ただ、その完成度の高さがどことなく他人行儀な気がしないでもないです(指回りが多少機械的過ぎるきらいはあります)。押しが少々弱いというか、もっと踏み込んで弾いて欲しいです。第3楽章などでの急速部分は録音のせいか少々発音が不明瞭な所も。オケ(というか指揮者の解釈)は現代的かつ洗練されていて、全体的として佳演であるのには間違いありません。しかし、数多の個性溢れる他盤を前にすると、印象が薄くなってしまいます(それがこの曲の難しい所かも)。録音はピアノの音がやけに磨かれ強調されていて、やや不自然な感じです。

☆☆☆・クレショフ/ヤブロンスキ/The Russian State Orchestra/original/01年
 まず一聴して、残響が非常に多めの録音なのが気になります。第1楽章は特にピアノがモヤッとしています。展開部の和音連打が若干スピード不足なのが惜しい。ホロヴィッツ信者の彼らしく、カデンツァはオリジナル。重低音の強調の仕方もサマになっています。第2楽章は特異な解釈を見せることもなく、堅実に弾いています。ピアノの歌い口は悪くないのですが、オケがかなり軽量級で、深みが感じられません。第3楽章は出だしの急速部分がかなり遅く、勢いに乗り切れてないのが残念。その後は持ち直してまあまあですが、ちょっと平凡かも。エンディング間近の和音での下降フレーズは8分音符と2拍3連を混ぜて弾いてるのが珍しく、少々驚きます。テクニックとしては良いものを持っていると思うのですが、もう少し踏み込んでくれたらよかった気がします。併録のチャイコフスキーの協奏的幻想曲はオケともども雰囲気が出ていて中々良かったです。

☆☆☆・ルディ/ヤンソンス/サンクトペテルブルクフィル/original/92年/
 誠実で生真面目な演奏。全体的に楷書的な弾き方で、コラールのようなタイプと同系統です(ボールペンで下書きをして細部までキッチリ描いた感じ)。アシュケナージの1回目の録音のようにキビキビとしています。カデンツァはオリジナルで、ちょっとスケールは小さめだが印象は悪くないです。オケもなかなか良い出来。多少優等生的な印象を受けなくもないですが、そういう演奏が好きな方(ゲルナーとかシチェルバコフとかナカマツとか)には是非オススメです。

☆☆☆・K.W.パイク/フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団/(97年・ossia)
 第1楽章は相当にテンポが遅い。ossiaのカデンツァはなかなか上手く聴かせてくれる。堅実な技巧で豊かに歌う箇所もあるが、いまひとつ大きくアピールする所が欲しい。正直、良い演奏なのですがあまり演奏に残らないという感じ。全集の中の一枚ですが、完成度は高くお薦め出来る部類です。

☆☆☆・ホロヴィッツ/バルビローリ/ニューヨークフィル・41年/original
 若き日のホロヴィッツの凄まじさが伝わってくる一枚。推進力というか、爆発力が尋常でなく、第1楽章の出だしから突進します(オケがかなり泡を喰っている感じ)。現代の精緻な演奏に比べるとかなり粗く、タッチも揃いが悪くてホコリっぽく、洗練されているとは言い難いのですが、迫力が凄すぎます。和音連打部分は直前でほとんどルバートをかけずにインテンポのまま弾き切っているのが彼の他の盤と違う所。多少の荒さはあるがカデンツァも豪快なことこの上ないです。第2楽章は後年の演奏を聴くともう少し歌えるのではないかと思いますが、ピアノの音色を楽しめるような録音ではないせいもあるのかもしれません。第3楽章の推進力と衝撃はおそらく手持ちの中で一番。ところどころ音抜けもして雑な感じもありますが、コーダはオケもピアノも回転数をかけ間違えたレコードのような凄まじさ。カットもスピードに乗って飛ばしに飛ばす演奏のせいか、彼の他盤に比べるとそこまで気にならないかも。最大の問題はやはり音質。途中でマスターテープがよじれたのか音像が途切れたりする箇所もあります。というわけで、総合的にはライナーとの盤の方に軍配が上がるでしょう。正直ホロヴィッツの他の盤での演奏はあまり好きではなかったのですが、この盤は有無を言わせない凄みがあります。この場にいた人がうらやましい。

☆☆☆・ワイセンベルク/プレートル/シカゴ交響楽団/68年・original
 旧録音。後年の録音よりもテンポ設定が速めで、印象は結構違います(というか再録音の方は遅すぎ)。第1楽章は快速系の解釈ですが、自作自演とはまた違って内声の出し方も個性的なところがあります。彼のピアノについてよく言われることですが、透き通った硬めの音色でバリバリ弾いていて、急速部分も鮮やかで一気に駆け抜ける感じ。明晰性も抜群。カデンツァも疾風怒濤。下降部分はオクターヴを(おそらく)両手で取り分けていて、他盤とは比較にならない凄いスピード。第2楽章は録音のせいか打鍵がドタバタしていてちょっと気になります(音質は年代相応)。どっしりとした新録に比べればサラサラとエチュードを弾いているような感を受けなくもないですが、新録が遅すぎることを考えると個人的にはこちらの方が魅力を感じます。第3楽章も彼らしい技巧の冴えが見られて爽快感があります。オケはあまり印象に残りませんが、それだけピアノが強烈だからかも。

☆☆☆・アシュケナージ/プレヴィン/LSO・70&71年/ossia
 解釈・演奏ともにオーソドックスの極み。メカニカルな面では彼らしいキビキビした指運びで安心して聴けます。語り口が上手く、ゆったり目のテンポ設定が心地よい。弱音の響かせ方が印象的。カデンツァなどでは彼の微温的な面というか、他盤の圧倒的な迫力の演奏を聴くとガツンと攻めて欲しいで少々不満が残ります(それでも悪いというほどではない)。録音は音に張りがあって、残響もちょうど良いです。オケは粘り気があって悪くないです。所々元気が良すぎてピアノをかき消してしまってるのが残念(特に管楽器がうるさい)。オーマンディ盤のように変な癖がなく、ハイティンク盤の残響の多い録音を考えるとossiaが聴ける彼の盤では最も魅力的。

☆☆☆・ベレゾフスキー///ossia
旧録音。録音が非常に私好みです。オンマイク過ぎない程度に音像が近く、しかも残響が適度で明晰なピアノの音を捉えています。オケとの音量のバランスも良いです。ピアノのタッチが力強く、豪快で勢いがある(その代わり緩徐部分は少し癖があってあまり面白くない。別な言い方をすれば個性的)。技巧も全体的に洗練されていて、低音を響かせるカデンツァの前半が迫力に満ちていて素晴らしく、これは凄いと思って聴いていると、後半の和音部分の出だしでは突然弱音でそろりと弾き始めるので肩すかしをくらいます。このような解釈で弾いているのは彼とバルトくらいしかいないかもしれません。その後段々とクレッシェンドさせていくのは面白いとは思いますが、やはりクライマックスの頭はガツンとやって欲しいです。ちょっとやりすぎと思えるくらいに弱音を聴かせる所が他にも多々あります。そこさえ除けば個人的に結構気に入っている盤です。

☆☆☆・クライバーン/コンドラシン/シンフォニー・オブ・ジ・エア
カーネギーホール凱旋ライヴ。彼の十八番の曲であるので、随所でさすがによく弾き込んでいるなと思わせます。ライヴであるためミスもそれなりにあり、第1楽章では結構目立つ所で音を外しています。彼の演奏は曲の勢いというか、流れを大切にした音運びが印象的で、ロマンティックにピアノを歌わせようと腐心していることがこちらにも伝わってきます。カデンツァもossiaを叙情性たっぷりに弾いていますが、繰り返し聴いているとやはり疵が少々気になります。後半からは演奏精度が上がり、何かに憑かれたかのような見事な演奏が続きます。録音年が若干古いため音的な魅力に欠けるのが残念。チャイコフスキーコンクールのような尋常でない緊張感はないですが、それでも熱気十分。世評の高さにも頷けるものです。ただ、例によって最近の洗練された演奏が好きな人にはお薦め出来ないかも。

☆☆☆・小山美稚恵///
 女流ながら流石テクニシャンの彼女らしく技巧的には十分で、スケールも大きいです。第1楽章は少しテンポが遅め。ossiaのカデンツァはガヴリーロフばりにタメを作って壮大に歌い上げます。ここが一番評価できるところ。第2楽章もややデュナーミクにやや癖がありますが、大胆でなかなか面白い。第3楽章もかなり勢いがあって、熱っぽさもあります。録音の良さも手伝って、ピアノの迫力が申し分なく伝わってくる良い演奏です。
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