音楽好きの世迷い言
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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~3つ星編その1~
2012-07-24-Tue  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
☆☆☆・及川浩治/広上淳一/新日本フィル/2008年/Live
 熱演です。たたみかける箇所は力強く、緩徐部分では伸びやかに、この曲のツボを心得ているという感じ。よくよく聴けば、技巧的にあまりキレが感じられないというか、ビクともしないテクニックというわけではないのですが全体的に完成度は高く(ライナーで「本番とゲネプロのみからしか編集していない」とある)、ミスはほとんどありません。第1楽章の前半も精緻というわけではないものの、まずまず勢いがあります。和音連打も途中からテンポアップしてなかなかの迫力。一番評価できるのはossiaのカデンツァで、スケールが大きく迫力もあります。ただ、第2楽章でもそうなのですが、時折立ち止まるようなアゴーギクが気になるというか、少しやりすぎかも。また、第3楽章ではスピード的には十分合格点ですが前半のところどころでわずかにタメが入り、インテンポで弾くのが辛そう(ミスは無いので安全運転してる感じ)。それでも聴き終わりには十分満足することができる熱演です。
※ちなみに併録のソナタ2番は原典版でも改訂版でもホロヴィッツ版でもない「及川版」だそうで、聴き慣れてないので違和感を覚える箇所もありますが、全体的にはやはり熱演で力強く迫力に満ちており、楽しめました(終結部は急速音型を両手ユニゾンで弾いておりスピード感が素晴らしいのですが、その分左手の重低音が落ちてしまっている)さらに余談ですが、この人のサイン入りのソナタ2番の旧録音も持っていて、そちらも熱演でかなり気に入った覚えがあります。勿論、この曲の決定盤はクズミン新旧盤ですが)。


☆☆☆・グレムザー(旧)/Maksymiuk
冒頭の主題をゆっくり奏でつつも、その後の素速いフレーズからテンポ良く弾き始める所などはメリハリを上手く付けていて良いです。彼らしく技巧もなかなか安定している感じ。ossiaのカデンツァも充分に抑揚を付けて歌っているし、間の取り方も上手く最低限決めるところでは決めています。第3楽章の急速部分も歯切れが良くて爽快。解釈が標準過ぎというか個性や面白みに欠けるという点はありますが、完成度が高いので繰り返し聴く気になります。なんというか、模範演技という印象を受けます。惜しむらくはオケに存在感が無くて、重量感のある響きに欠けること。また録音も音のダイナミクスの幅が小さくて奥行きがなく、のっぺりとした感じ。ピアノの出来は良いのでそれらが残念です。

☆☆☆・ヴァーシャーリ//77年
協奏曲全集の中の1枚。奇をてらわない堅実な演奏と言えるでしょう。演奏時間はそれほど長くはないのですが、テンポは少し遅めに感じられます。ピアノの技巧に関しては、第一楽章の中盤の和音連打でほんの少しぎこちなさを見せるのですが、全体的に不満を感じることはありません。所々でペダルを利かせ過ぎている感があり、やや明晰さに欠ける箇所があります(その分、聴き疲れすることがないのは良い)。カデンツァはossiaで、ほとんどミス無く弾いておりクレッシェンドの仕方も上手いです(出来としてはかなり上位に入る)。録音は格別悪いわけではないですがオケの響きがややふくよかで丸味を帯びており、まろやかな印象を受けます(少しおっとりした感じ)。また、ダイナミクスの幅がありすぎてオケがあまり聴こえなくなる場面があるのが珍しい。色々書きましたが変な癖が無いので、最初の一枚には良いかも。

☆☆☆・キーシン/小澤/ボストン交響楽団
コンサートのライヴ録音。全体的にテンポがかなり遅めで、聴いていてジリジリします。スッと流れて欲しいところで音楽が停滞してしまうというか、澱んでしまうような印象を受けます。ライヴということもあり、ホールで聴いているような自然な仕上がりの録音であるが個人的には好きではないです。また、オケがサポート役に徹しすぎていて目立たず、弦楽器隊の響きに色彩が乏しい印象です。キーシンのピアノは当然と言うべきかライヴでありながら文句の付けるところはほとんどないです。タッチに張りがあって瑞々しく、音色も綺麗で鮮やかさがあります。しかしその反面、やや線が細く微温的でラフマニノフらしいスケールの大きさには欠けてます。ossiaのカデンツァにも見事に歌いあげているのですが、クライマックスの和音部分が(録音のせいもあって)底が浅く、もう少し深い響きが欲しい(贅沢を言いすぎ?)。こちらが期待し過ぎなのかもしれないですが、是非過去の大家に習って再録音を果たして欲しいです(彼は1度弾いた曲は2度と録音しないそうだから無理かな)。

☆☆☆・ゲルナー/シナイスキ/BBCフィル/02年/original
 解釈は正統的、技巧も十分、歌心も兼ね備えた模範的な盤。ライヴ録音ですが、どちらかと言うと熱気よりは緻密な冷静さを感じます。これでピアノに編集が無いとしたら相当なテクニック。指回りの鮮やかさはルガンスキーやグレムザー、シチェルバコフなどのテクニシャンに引けを取らないと言えそうですが、彼らよりももっと人間味があるというか、自然な感じ(ライヴということもありますが)。緩急の付け方も上手いです。ただ、あまりに教科書的なアゴーギクに終始してしまって強いインパクトに欠ける気がしないでもないです。多少リズムが前のめりになっている気もします。録音のせいか残響が多めで、硬質で線の細いピアノの音色であるために多少語尾が不明瞭になる箇所もあります。完成度は高く、文句を付ける所は殆どないのですが、もう一つキラリと光るアピールが欲しいところです(ショパンのピアノソナタと同じ印象)。

☆☆☆・ベレゾフスキー/リス/Orchestre Philharmonique de l’Oural/ossia
再録音。第1楽章の出だしから左手がモチャモチャしていて旋律が埋もれており、先が不安になります。旧録音は録音の良さが印象的でしたが、明晰な音を捉えていません。その後も細かい音型で気になる。展開部は期待通りの迫力。カデンツァは旧盤と違って、後半の和音部分も普通にガツンと弾いてくれたので一安心。第2楽章は非常に懐の深さを感じる好演。前回よりもさらにこなれた歌いっぷりを聴かせます。第3楽章はかなりテンポが速く、それでいて技巧も安定しています。ただ、やはり音質がモヤモヤしてるのが残念。オケは音の線が細く、それでいて濃ゆいロマンがあるわけでもないので印象が悪いです。というわけで、演奏としては前回より良いと思うのですが、音質とオケがイマイチ。勿体ないです。

☆☆☆・モギレフスキー/Sternefeld/Symphony Orchestra of the RTB/64年/ossia/Live
 64年エリザベート・コンクールライヴ(第1位)。コンクール後のスタジオ録音よりもテンポはかなり遅めで、じっくりと歌い上げてます。極めて叙情性豊かで、この若さで(しかもライヴで)ここまで聴かせる音楽性は驚異的です。第1楽章前半のオケと掛け合う場面で一瞬音を忘れたのか、ドキッとする箇所がありますが、目立った大きなキズはそこくらいでしょうか。展開部の和音連打では力強くたたみかけます。ossiaのカデンツァも迫力十分で、力強いタッチには爽快感があります。第2楽章は彼の本領が発揮。ロマン溢れる演奏でこの盤の一番の聴き所と言えるかも。第3楽章では多少疲れてきたのか、急速部分などで少々指がもつれることもありますが、丁寧に弾き通そうという姿勢は伝わってきます。音質はかなり悪く、途中で一瞬音が小さくなる箇所もあります。終演後はブラヴォの嵐ですが、この演奏では優勝も当然かなという印象です。このCDはエリザベート・コンの記念BOXで、10枚組程の中の1枚。ヴァイオリンや歌唱部門も収録されており、まだ買えるかもしれませんがよほどのマニア以外は買わなくても良いかも(ただし、マニアでモギレフスキー好きの方は聴いたほうが良いでしょう)。


☆☆☆・ ラシュコフスキーー/ヴァルガ/ベルギー国立管弦楽団/07年/ossia/Live
 2007年エリザベート・コンクールライヴ。第4位にもかかわらず、ファイナルのコンチェルトが実況ライヴCDに録音されています(ラフ3だからかな)。全体的に手堅いです。第1楽章出だしはモゴモゴしてるものの、インテンポを保ち、勢いもあります。ただ、タッチが硬めなのか、音楽の表情付けという点では今一歩です。テクニックが露わになる中盤の両手交差部分も少したどたどしい。展開部の和音連打はまずまずのテンポ。カデンツァはなかなか迫力がありますが、後半の和音部分でペダルを踏みすぎなのか音がボワァ~と濁ってしまって惜しい。第2楽章の緩徐部分は意外に聴かせます(流石はロシア人、自国ものはお手の物?)。第3楽章の冒頭の同音連打の箇所はかなりのスピードで攻めを見せて好印象。この楽章に関して言えば、前々回のサモシュコよりも完成度は高いかもしれません。全体として、彼の演奏は水準以上なのですが、キラリと光るテクや音楽性があるわけでもなく堅実に弾き過ぎたのが第4位という結果になったようです。この前の大会で第2位だったシェンのサイボーグのごとき高い完成度の演奏や、前々回第1位のサモシュコ渾身の名演に比べると遜色があるのは否めません。
 ※ちなみに、今回大会のファイナルに残ったコンテスタントの中では合計4人ものピアニストがラフ3を弾きました。

☆☆☆・エレスコ/プロヴァトフ/USSR響/(84年・ossia)
 がっちりとした骨太の演奏です。太筆で一気に書いた感じ。第1楽章はなかなかの好演です。フォルテには気迫がみなぎっています。カデンツァも味付けが濃厚で良い出来(前半で左手の低音を強調するのがうるさくて少し気になる)。第2楽章の歌いどころであまり胸に迫ってくるものがないのが少し残念(ゆっくりとメロディを奏でようという姿勢は伝わってくるのですが)。第3楽章はかなり遅めのテンポで、1音1音をしっかり打鍵しようという感じ。力で押す傾向があるかも。部分的に他盤よりもテンポの遅いところ(終楽章の出だしとか)があるのが少々惜しいです。全体を通して腰が重いので、もっとスッキリと弾ききってくれれば良いのですが(特に終結部分の急速部分は遅すぎ)。オケは非常に力強く、印象に残ります。録音もメロディアにしては比較的優秀な部類に入ると思います。
※全集の中での1枚ですが、コンチェルト2番の方は腰の重さが曲想にマッチしていて、3番よりも良い演奏だと感じました。また、最近CD化されたようですが音の絵エチュードOp39のLPも持っていて、技巧のキレはルガンスキーやアンゲリッチ、オフチニコフには及ばないものの、骨太なピアニズムが曲想になかなかハマっていました。


☆☆☆・シェパード/プリチャード/ロンドン・フィル/76年/ossia/(LP)

シェパード


第1楽章の冒頭はかなりスピードはあるものの、明晰さに欠けてオケともあまり合っておらず先行き不安に思いますが、その後は持ち直します。速めのテンポですが、語尾を誤魔化し気味の所が多少あるかも。歌い方は自然でなかなか聴かせるものがあります。展開部はまずまずの標準的な速さ。ちょっとリズムに違和感あり。カデンツァは前半が個性的なアゴーギクで面白いですが、後半に差し掛かると和音を確かめながら弾いているのか、メトロノーム的なテンポでちょっと苦笑してしまいます。第2楽章はなかなかの好演。緩徐部分もすんなり入ってきます。第3楽章は急速部分でも指回りの良さを見せ付けますが、少々勢いで押している感もあります。オケは太い響きで好印象。録音はレコードですが、メロディア系統のものより良質です。おそらくCD化されていないと思うのですが、入手したレコードにはところどころ心臓の鼓動のようなノイズが入っていて残念…。かなりレアで、全然見かけない盤です(まだ1度しか見たことがない)。

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