音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
アンドレイ・ガヴリーロフのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番新旧聴き比べ
2007-07-02-Mon  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
またまたまた、ラフ3の同一ピアニストによる新旧録音聴き比べ。
今回は18歳でチャイコフスキー・コンクールを制したロシアの豪腕アンドレイ・ガヴリーロフです。


まずは現役盤から。


gavgeneki.jpg



録音データは1986年で彼の2度目の録音にあたり、共演はリッカルド・ムーティ&フィラデルフィア交響楽団です。


旧録音である1976年からちょうど10年後の録音。持ち前の技巧はさらに冴えを見せ、圧倒的な迫力で弾き進む所では余裕すら感じさせます。しかしその分、勢いに任せて弾き飛ばしている印象を受ける箇所がなくもないです。演奏時間が以前よりも全体で2分近く遅いので、少し弛緩した演奏になっている感じがします(部分的には前回より速いテンポで弾きこなしている場面もあり、テンポの揺れが結構ある)。第1楽章中盤の和音連打のスピードはハフ盤と並んで手持ちの中でおそらく最速(彼のショパン・エチュードを思い起こさせます)。カデンツァは旧録よりさらにじっくりとタメを効かせていて迫力がありますが、和音部分などで大胆なアゴーギクをここまで露骨にやられると流石にくどいかも。また、大事な所でわずかに音を引っかけることがあって少々ドキッとします。良くも悪くも彼らしい豪快さが前面に出ている演奏と言えると思います。ゆったりとしたテンポのおかげで、ムーティ率いるオケの素晴らしさを十分に味わうことが出来るのは良いです。特に弦楽器の膨らみのある美しさは筆舌に尽くし難いものがあります。録音は音に艶があるのは良いのですが、ふくらみがありすぎてやや大味な印象。しかし、全体としてはピアノ・オケともに完成度が高く、バランスの良さでは突出した出来です。もう一押しあれば、かなりの名盤と言えるのですが。




続いて、CD化されていないLPでの旧録音を。
録音データは1976年6月、録音当時彼は若干20歳でした。共演はアレクサンダー・ラザレフ&ソビエト国立交響楽団。


gavame.jpg



手持ちのラフ3の中で、この演奏のカデンツァ(ossia)が一番好きです。アゴーギク・デュナーミクが個人的な好みにハマってます。サラサラ弾くことが多い今時のピアニストの解釈と違って、壮大なカデンツァを十分にタメを作って堂々と歌い上げるさまは、ロシア的な雄大さやロマンを十二分に兼ね備えていると言ってよいでしょう(ossiaを弾くならこうでないと)。


全体的な演奏の完成度も第1楽章の前半に1箇所小さい隣の音を引っ掛けたようなミスタッチがある他は万全。展開部の和音連打などは彼らしい畳みかけるような迫力に満ちています(再録音ほどのスピードはありませんが)。第2楽章はもたれない程度に歌います。特に緩徐部分はやや足取りが重めなのですが、のちの録音ほど作為的でないので好感が持てます。第3楽章は豪快かつスッキリと弾ききっている印象を受けます。同音連打はもう少しスピード感が欲しいところ。20歳の時の録音だけあって10年後の再録音ほど手慣れた様子はないですが、程良く張りつめた緊張感が漂っています(録音時間は再録音より全体で3分も速い!)。


余談になりますが、彼が若い頃に録音したラ・カンパネラやスクリャービンのソナタ第4番は個人的に大のお気に入りの演奏なのです。それらの録音と同じように豪快ながらも精緻な美しさを伴った演奏と言えるでしょう。音質は(LPということもあって)やや古さを感じますが、オケの暗い音色には合っています。


あまりにもこの録音が気に入ってしまったので、各国のレコードを色々集めてしまいました(そのため、合計十数枚所有してます・・・)。プレスされた国ごとに音質が微妙に違うのが面白いです(当然と言えば当然ですが)。最初の画像は米盤。未開封のものをゲット出来ました(まだ開けてません)。米盤は4枚所有していますが、どれも音質はやや丸みがあって、比較的バランスの取れている盤と言えます。



続いて、英盤。ピアノの響きがクリアで、オケの輪郭もしっかりしています。第1楽章のミスタッチは一番目立って聴こえるかも。

gavieng.jpg



お次は独盤。綴りがGawrilowになっています。ピアノに最も迫力があるのがこの独盤でしょう。ただ、その分やや硬めの音質です。


gavger.jpg



帯付きの邦盤。米盤ほど音の輪郭が丸くなく、それでいて全体のフォルムが堅すぎないバランスの良い音質です。

gavjap.jpg



最後は露盤。おそらくこれはメロディアのオリジナル盤のジャケではないと思われますが、各国の中では一番音質が悪いです。例のミスタッチで聴き比べるとよくわかるのですが、かなり音質に明晰さと輪郭のぼやけ具合を感じます(入手したレコード自体のコンディションも良くないのですが)。

gavrosi.jpg



というわけで、未CD化のこのレコード、ラフ3好きの方は是非とも入手されることをお薦めします(レコード屋ではまだ一度しか見かけたことがないのですが、オークションなどでは半年に数回ほど見かけます)。ちなみに、旧録音と再録音の演奏タイム比較は 17:06、11:15、13:38 VS 18:33、12:36、14:19 となっています。数字の上からも旧録音の方がかなり速いテンポであることがわかります(旧録音の方はLPですので、計測に若干の誤差があります)。

スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
旧盤があったとは
コメントジュスマルダホス | URL | 2007-07-03-Tue 20:03 [EDIT]
ガヴリーロフのラフ3になんと旧盤があったとは・・・知りませんでした (もしくは、どこかで見たかも知れませんがまったく印象に残っていなかったのかも)。
それにしても面白いジャケ集ですね。一番上のはどこのでしょうか。字だけなのに何だか気色悪いです(笑)。一番下のメロディア盤のジャケが一番シックでかっこいいのが意外ですが、ソ連というより、帝政ロシア的なテイストですね。
でもやっぱり膠の悪臭を放っているんでしょうね。

バックがラザレフというのも興味深いです。

新盤はガヴリーロフにもですが、やはりオケに圧倒されますね。キメのところで容赦なく吹きまくるホルンにいつもやられます。
ラザレフも悪くないです
コメントA太 | URL | 2007-07-03-Tue 21:47 [EDIT]
初コメントありがとうございます!

一番上は米盤です。字ばっかりでセンスがとても悪いです(苦笑)
メロディア盤のオリジナルのジャケはいつもピアニストのアップ写真なので、おそらく一番下のジャケは再発モノだと思います。

メロディア・オリジナルは邦盤と同じジャケットではないかと推察して探しておるところです。音悪いし、臭いでしょうけど・・・。

新盤のムーティはいいですよね!
あれだけ吹かれると、相手がガヴリーロフくらいでないと務まらないのかも。
トラックバック
TB*URL
<< 2017/05 >>
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.