音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~2つ星編その2~
2012-07-17-Tue  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
☆☆・グティエレス/ロジェストヴェンスキー/Moscow Radio Symphony Orchestra/70年/original/LP

gut1.jpg

自由闊達で流麗な音運びが心地良いです。例えばワイセンベルクのように透徹した硬さのある音ではなく、ビロードのような滑らかな感じ。第1楽章は疾走感がありますが少々荒っぽいです。オケともズレるのが気になります。ピアノが結構自由にテンポを揺らすのでアワを喰っているのかもしれません。展開部の和音連打はスピード感抜群。カデンツァも指回りの良さを見せ付けます。第2楽章はやや歌い方が硬い気がします。構えがあまり大きくないのも少々マイナス。第3楽章はとにかく速い。演奏時間では(カット無しの)手持ちでベスト5に入る猛烈な速さです。全体的にジャニスと似た演奏ですが、彼ほどタッチに重量感があるわけではないので、軽快な印象を受けます。録音はデッドで音が痩せた感じがしてあまり良くありませんが、レコードとしてはまずまずかも。初めて聴いた時、終演後の拍手までライヴと気付かなかったほどミスが少ないです。彼のCDでの録音も素晴らしい演奏でしたが、それと同様に確かな技巧を感じさせる稀有なピアニストだと思います。
以前の記事


☆☆・ジャニス/ミュンシュ/ボストン交響楽団/57年・original
ジャニスの第1回目の録音。若干良くない音質のせいでかえって聴き疲れする感がドラティと組んだ盤ほどはないのは良いのですが、オケと合っていないところが幾つかあって気になります。先に先に進もうとしているのか歌い方ももう一つ足りず、せかせかした印象を受けてしまいます(単にテンポを落としただけという気もする)。ジャニスらしい迫力と推進力はあると言えましょう。例によって第3楽章は凄いスピード。ドラティとの盤を超えるものではありませんが、彼のような演奏が好きな人は買って損はないと思います。

☆☆・ヴィノグレード/パーマー/98年/original
熱演・爆演が多いこの曲の中では珍しい、しっとりとした気品に溢れる演奏。バッハ弾きらしくテンポが大きく揺れることがないし大げさなアゴーギクもないです。全体的にテンポは遅めで、きっちりと丁寧に弾いています(色気が無いとも言えますが)。第1楽章の和音連打の部分はそこそこスピード感があり、悪くないです。originalのカデンツァではアゴーギクにやや癖があるというか、遊び心を見せています。第2楽章は声高になることなく実に良くピアノが歌っており、ボレット並みの歌い方と言って良いかも。しかも熱くなりすぎずに崇高さを醸しだしています(ここだけでも十分に聴く価値がある)。しかし一カ所、暗譜が怪しくなったのかアルペジオの箇所で誤魔化している所があるのが残念。第3楽章は、ピアノはそれほど悪くないが、オケのせいで迫力に欠けます。エンディングのオクターヴで下降していく部分はヴァーシャーリらと同様に八分音符で弾いています(こう弾くと音が詰まっているような感じがするので個人的に好きではないのだけれど)。オケはかなりひどく、特に管楽器は興ざめの連続です。録音は残響があまりなく、音量レベルが小さい。ピアノが少々強調気味ですが、オケは聴けたものではないのでむしろ良いかも。ライヴとは言えピアノはなかなかの完成度で弾いているし、他に無い魅力を持っているので是非大手レーベルで再録音して欲しいところ。

☆☆・コラール/プラッソン/77年
ピアノ協奏曲全集を出しているコラールの録音。全体的に完成度が高く、オーソドックスな演奏と言えます。指回りが俊敏で歌心もあります。音の粒立ちが独特で、歯切れのよい潔さのある音というよりは波がうねるような連続性がある感じ。ただ音色が都会的なまでに優美で華やか過ぎて、ロシア的な精悍さというか、迫力には欠けてる印象です。しかし左手がかなり力強いので(左利き?)低音に厚みがあり、軽すぎるということは無いです(ただし、違和感を覚える人がいるかも)。オケの出来も良く、所々で入る管楽器は実に印象的で伸びやかに歌っています。録音はピアノの音がややデッドで高音が目立つためやや聴き疲れします。甘美だが贅肉のない引き締まった演奏に浸りたい人にはオススメ出来ます。

☆☆・バルト/エッシェンバッハ/ロンドン・フィル/ossia
 ゆったりとしたテンポで濃厚に歌ってます。かなり個性的な演奏と言えるでしょう。迫力よりはロマンを取ったという印象を受ける感じ。全体的にピアノのアゴーギグ・デュナーミクが大胆で、止まりそうなルバートをかけたりします。テンポの揺れが大きく、指揮者が泡を喰っている感を受けなくもないです。第1楽章の和音連打では冒頭部分がかなり遅めの入りなので少々ガッカリしますが、その後に段々テンポを速めていく感じ。ossiaのカデンツァもかなり個性的。後半の和音が続く部分では、他盤にない速さで連打したかと思えば急にスピードを落としてじっくりと歌い出したりしてます(これは他の曲の演奏でも聴けるので、彼の癖というか、個性的な解釈と言えそう)。第2楽章は胃にもたれるほどじっくりと緩徐部分を弾いてます。第3楽章はスピード感にやや乏しい感じ。丁寧ですが、多少微温的で神経質な弾き方という気がしなくもないです。後半のピアノとオケが掛け合いをする箇所はゆったりとした歌い口が上手くて印象に残ります。エンディング直前の和音で下降する部分は最初が8分音符で、途中で3連符になる。このような濃い演奏は聴く人によって好みが大きく分かれそうですが、人によってはたまらなく好きだと言う人がいるかも。録音はレベルが小さめで、音がもやっとしてます。

☆☆・ラローチャ/プレヴィン/ロンドン交響楽団//
 緩徐部分の味わいが深く、美しい。柔らかなタッチで針の先をつついたような繊細さというよりは、優しくなで回すような感じ。録音が素晴らしく、手持ちの中では最上級の音質といって良いかも。ただ、全体的にスピード感に欠けるのが惜しいです。第1楽章の和音連打は、スピードはまずまずですが、手が小さいハンデからか安定感に欠ける感じがあります。第2楽章はロマン性たっぷりなのですが少々粘り気味。第3楽章は急速部分での安全運転が面白くないのですが、彼女一流のリズム感を聴かせてくれるのでなかなかの好演。ボレットのようなタイプの演奏が好きな人には強力にお薦め出来る、優雅で包容感のある演奏と言えるでしょう。

☆☆・リル/尾高忠明//ossia
 全体的にかなりゆったりとしています。焦らず騒がずどっしりと構えた演奏で、緊張感というものが乏しいです。かと言って技巧的には悪くなく、そこそこの安定感があります。カデンツァはossiaですが、なぜかここでは慌て気味で、先を急くように弾き進むので、ちょっと不自然な感じ。第2楽章はなかなかロマンチックで良い。第3楽章の急速部分もそれなりにテンポがあってまずまず。録音はレベルが小さく、演奏とともに大味な印象。もう一つ決め手にかける感じです。

☆☆・ワッツ/小澤/ニューヨーク・フィル/69年/mixed version
 2種類のカデンツァのミックス・ヴァージョンが聴ける盤。比較的若い頃の録音のせいか、指回りはそこそこ俊敏ですが、タッチの変化が乏しく洗練された技巧とは言い難いです。第1楽章では妙な所で短いカットがあります(カデンツァでも)。カデンツァは初めoriginalの方を弾いていて、途中からossia和音部分の手前につなげて弾いています。結構面白いのでこれは一聴の価値在りかも。第2楽章の緩徐部分はしみじみとした情感があって悪くないです。ただ和音などで多少音が濁っているのが惜しい。急速部分も綺麗にこなし過ぎるあまり、どこか練習曲を聴いてる感じを覚えます。第3楽章は多少ミスタッチもありますが、彼の良さが出ているように思います。エンディング部分ではヴァーシャーリらと同様八分音符で弾いていて、途中で2拍3連になります。全体的に、細かい所のアレンジ(カットも含めて)が考えられている印象を受けますが、演奏はもう少し丁寧さがあってもよいと思います。オケは低音に締まりがなく、膨らみがあり過ぎる感じ。録音は年代相応で乾いた感じがしてあまりよくないです。
スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2017/05 >>
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.