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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~2つ星編その1~
2012-07-16-Mon  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
☆☆・ルガンスキー//95年
旧録音。技術的に洗練されていて、曲を通して良い勢いを保っています。タッチは実に軽やかで瑞々しさがあり、ピアノの音色には温かみがあります。第一楽章中盤の和音連打の所で若干音が荒れますが、他にミスがほとんどないだけに逆にそこだけが目立ってしまうかも。originalのカデンツァは素晴らしい出来で、抑揚の付け方や間の取り方も上手い。テンポの遅さはあまり感じさせないのですが、聴き込んで行くと実は結構テンポを揺らしていることに気づきます。録音はマイクがかなりホールの残響を拾っていてピアノの音がジャブジャブしており、かなり明晰さに欠けるため個人的に好きではない感じ。さらに音のダイナミクスの幅が狭く、オケと合わせた美しい旋律の聴かせどころでは平坦な味付けに感じてしまって物足りないです。ピアノはメリハリを付けて歌おうとしているだけに、それを台無しにしているこの音質にはかなり不満が残ります。

☆☆・ジルベルシュテイン/アバド/
女性ピアニストによる録音。ライナーにも書かれていますが、よほど弾き込んだのか難所でも苦しさを見せることがほとんどありません。打鍵は男性ピアニストと比べるとそこまで力強さはないのですが、流麗で柔らかい音色が心地良いです。しかしその淀みない曲運びを重視するあまり強弱の付け方が平坦で少し一本調子な気がしなくもないです。何より曲を通してのテンポが速いので、思い入れもなくサラサラと弾き飛ばしていく印象が強いです。直線的過ぎる演奏と言えるかも。オケもやや音を吹かし過ぎる箇所があるのが残念。などなど批判的に書いてしまいましたが、完成度は高く最初の一枚にオススメ出来ます(あまり説得力がない?)。

☆☆・アシュケナージ/オーマンディ//75年・ossia
3度目の録音。上手く言えませんが、どこかしっくりこないです。彼にしては結構テンポが揺れるし、アゴーギクなどもちょっと以前の録音からは想像できない解釈が多いです。違和感を覚えると言って差し支えないです。意欲的に表現しているとも見て取れるけれど、それが魅力的かどうかはまた別な感じ。トリルなど細かい指さばきでは見事な美音を聴かせてくれますが、それ以外に特に聴き所がありません。全体的に技術的な破綻もなく、いつもどおりの完成度の高さを見せてくれるのですが、彼の他の録音に比べると幾分魅力に欠ける感は否めません。

☆☆・コチシュ/デ・ワールト
とにかくテンポが速く、サラサラと演奏が進みます。全体的にジルベルシュテインの演奏に似ており、同じような事が言えます。こちらの方が表現に色気が無いというか、味気ない感じを若干受けます(指回りは凄いけど)。また録音もピアノがボワッとしていて明晰さに欠ける上、オケに埋もれてしまいがち。澱みがなくスムーズに流れる演奏が好きな人は気に入るかもしれません。

☆☆・Ts’vereli/Kakhidze/Tbilisi Symphony Orchestra//ossia
第一楽章の前半はテンポが良く、ホロヴィッツやジャニスなど往年の演奏を思い起こさせます。技巧はまずまずですが、丁寧に音を鳴らそうとしている態度には好感が持てます。緩徐部分ではテンポを落として、かなりゆったりとロマンチックに歌うのが非常に印象的。録音は霧がかったようなもやっとした感じで音の明晰さに欠けますが、演奏のタイプとの雰囲気はあっています。オケの弱さが致命的で、ピアノと合わない所も多々あり、それさえ除けば廉価盤にしては良い演奏です。

☆☆・ポコルナ/ピンカス/ブルノ国立フィル・76年/LP/※CD化された模様

ポコルナ

所有している盤の中でもかなり個性的な録音。ピアノにしろオケにしろ、とにかくテンポが細かくコロコロと揺れまくります。演奏は全体的に粗さを感じるが熱を帯びていて迫力がある感じ。タッチがややぶっきらぼうに感じる所があり、速いフレーズの末尾が多少雑になったりします。それでも演奏精度は悪くはなく、聴いていてストレスを感じることはありません。とにかく特筆すべきはピアノの癖・アクの強さ。アクセントの付け方が独特で、突然なんの脈絡もなく強打したり、曲の流れに背くようにルバートをかけたりとこのピアニストの強すぎる個性を感じます(聴いたことはありませんが、モノの本によるとコンチェルト2番の方でも同様な演奏をしているらしいです)。カデンツァはoriginalで、ここでも急にテンポを速めたり、凄いスピードで加速しだしたりと他とは違った趣きがあります。また音量のバランスなのか、あるいは指揮者もピアニストに同調したのか、他の演奏では聞かれないような箇所でオケとピアノの音のそれぞれが際だって聞こえてくる所も。一体どういう解釈で臨んだのか判然としません。正統的とは全く言えませんが、聴いていて面白い演奏であるのは間違いないです(無茶苦茶だと言う人がいるかもしれないけど)。もしCD化されたら(されないだろうけど)買うと思う。
※驚くべきことに、CD化された模様です。まだ買っていませんが(笑)

☆☆・プレトニョフ/ロストロポーヴィチ
技巧的には申し分なく、タッチも羽毛のように軽やかで実にスムーズな演奏なのですが、残念ながら自分が求めているラフマニノフとは違います。1音1音に気を使っている印象を受けるものの、それが神経質すぎて逆に勇猛さに欠けてます。強弱の付け方なども自分の好みとは合いません。言い過ぎかもしれませんが、狙いすぎていてあざとく作為的な感じ。録音は残響が多めな上に音が軽すぎて胸がすくようなスカッとする音質とは言えません。オケは弦楽器の響きに重みが無く頼りないのですが、管楽器は音色が美しくコントロールされています。この盤の演奏は全体的に「ここが致命的にダメ」などと言う所は一つも無いのですが、どこか醒めている感じがあって曲に入っていけません。演奏の完成度は非常に高いので彼のピアノが好きな人は気に入ると思います。

☆☆・チェルカスキー/テミルカーノフ・94年
83歳のチェルカスキーによる、現時点でのこの曲の最高齢録音記録。自分がミス無く無理なく弾けるテンポを狙ったのか、かなり遅いです。(年齢を考えれば当然かもしれないのですが)打鍵に力が無く、迫力や覇気というものがあまり感じられません。当然音量もなく、音の輪郭がぼやけて明晰さに欠け、オケに埋もれてしまっているような所も多々(録音もイマイチ)。力強い推進力に溢れる若手ピアニストの演奏に聴き慣れるとかなり不満が溜まるかもしれません。しかし、それでも聴いてしまう不思議な魅力があるかも。たおやかに優しく語りかけるような、ボレットにも通じる歌い方の上手さがその1つでしょう。どちらかと言えばマニア向けの演奏。

☆☆・ペトゥコフ/シモノフ/モスクワ・フィル
ライヴ録音。ミスは少なく、演奏精度はそれなりに高いのですがいまいちしっくりこない。第一楽章の中盤の和音連打の箇所の前で不自然にテンポが落ちるのは心証が良くないし、曲が進むにつれてやや音楽を持てあまし気味な所が出てきます。全体的にテンポが遅めなのにもかかわらず、フレーズの末尾が曖昧で打鍵の明晰さにかなり欠けてるのが残念。音の響かせ方にもデリカシーが感じられなく、大味な印象。ところが難所では意外にスムーズに弾きこなしている所もあり、やはりこの曲を弾くだけの実力はあるなと思わせます。☆が二つの盤はさすがにネガティブな感想が多くなってしまいますが、この録音の良い点を強調するなら演奏者が全てロシア人であることでしょう。偏見かつ先入観かもしれませんが、ロシア的な雄大さや情緒連綿たる叙情性は備えていると思います。緩徐部分での濃い歌いっぷりにそれがよく現れています。細かい部分を神経質に聴くのではなく、雰囲気を味わうには良い盤です。

☆☆・カペル/マクミラン/トロント・シンフォニー48年
第1楽章の冒頭はゆっくりと旋律を奏でますが、駆け上がるフレーズから突如凄まじいスピードで弾き始めます。指回りの鮮やかさが印象的です。それでも始めはほとんどミスもなく、これは凄いと思って聴いていると、第一楽章の中盤の和音連打で盛り上がる辺りからミスタッチが増え始めます。技術的に完成されている(あるいは上手く編集している)最近の録音と比べると、やはり少し聴き劣りします。カデンツァはoriginal。ミスもありますが、切れ味は鋭くメリハリを付けて弾いているのは好感が持てます。旋律が美しく歌われる所で再びテンポがぐっと落ちてゆっくりとピアノが奏でられるので、聴いていてかなり二重人格的な印象を受けます。テンポがここまで極端に変わる演奏は他にはあまりないかも。攻める所は攻め、歌う所は歌う、古風なヴィルトゥオーゾタイプの演奏と言ったらよいでしょうか。とにかく曲を通しての迫力は凄いです。録音は悪く、古いラジオから流れてくるような音質なのですが、実際はさぞかし熱演だったのだろうと思わせます。

☆☆・バッカウアー///不明/original/LP

バッカウアー

自作自演系の解釈で軽快に弾き進んでいます。第1楽章第1主題はオケの弦の細さに少々先行き不安に思うも、ピアノは女流ながらなかなか安定した技巧で悪くありません(というか、結構良いかも)。幅広いアルペジオもルバートをかけて立ち止まることなくインテンポで弾いています。展開部の和音連打で少しテンポが落ちるのが惜しい。カデンツァはよく表情が付いていて聴き応えがあります。第2楽章はこの盤で一番の聴き所。繊細で叙情的なタッチで聴き惚れてしまいます。ここまで自然に歌えているピアニストはなかなかいません。先入観もあるのでしょうが、この時代のピアニストは味わい深く歌える人が多いように思います。ただ、やはり緩徐部分はオケの音色が細くて痛々しい(あるいは解釈なのか?)。第3楽章も立派。冒頭部分も現代のピアニストと遜色ないですし、アルゲリッチほどではありませんが、自由闊達に溌剌と弾いている感じを受けます。録音時期はおそらく50年代と思われますが、やはりあまりよくありません。どうやらCD化されていないようなので、是非リマスタリングしてもらって良い音質で聴きたいものです。というわけで、オケと音質が残念。
※CD化された模様?です。
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