音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
ヴィタリー・サモシュコというピアニスト~その2
2011-01-05-Wed  CATEGORY: お気に入りピアニストの紹介
さもしゅこ


例によって随分間が空いてしまいましたが、サモシュコの新しいアルバムをご紹介。

シューベルト・シューマン・プロコフィエフ・スクリャービンのオムニバス集(2003年)

さも

 
シューベルトはソナタ第4番、シューマンはクライスレリアーナ、プロコは第7番、スクリャービンは第5番です。
 シューベルトは朴訥とした魅力があり、サモシュコの素朴な一面が見て取れる印象。第2楽章はこの彼の性格?にマッチしていてとても良い雰囲気(少しリズムが気になる)。第3楽章の出だしなどは打鍵がカッチリしすぎていて腰が重く、ここがサモシュコの(個人的にはあまり好ましくない)特徴かもしれません。もう一段の引き締まりが欲しいのですが、それでもなかなか良い演奏だと思います。
 クライスレリアーナは出だしが快調で小気味良いのですが、曲ごとに結構テンポ設定が違っていてつながりが薄く感じます。そういう意味でロマン的な演奏かも。第2曲では各駅停車で田舎の山並みを眺めるような、ひなびた良さがあります。ただ、(シューベルトやスクリャービンでも感じたことですが)第3曲などでのリズムが鋭い曲でなにかしっくり来ないところがあります。この曲はヘルベルト・シュフのようにロマンに傾きすぎずカッチリとした構成感のある演奏が好きなのですが、この演奏も結構気に入っています。
 スクリャービンの5番はやはりリズムが個性的。テンポが遅めでユニークな印象を受けます。録音のせいもあるのか、ややガチャガチャした感じがありますが、聴き慣れている好きな曲のせいか印象は悪くないです。
 プロコフィエフの7番は若き日のブゾーニ・コンでの猛演(終楽章は3分を切るかというスピード!)が思い出されるので大変期待していました。しかし、購入前に終楽章の収録時間が4分超えをしているのを見て、「これは何かの間違いではないか」と思ったのですが、聴いてみると不安的中で、テンポがこれまで聴いたことが無いほどに遅く、それでいて終盤のメカニックもやや安定感に欠け、残念な演奏でした。この演奏がお気に入りなのか、後述するラフマニノフの3番のCDにも全く同じ演奏が収録されています。なぜ?
 というわけで、この2枚組は玉石混淆と言った感はありますが、全体的にはなかなか気に入ってます。



スクリャービン・エチュード全集(2005年)

sc.jpg



 この作品は有名曲が多いにも関わらず、あまり全集録音の数が豊富とは言えません。ここでのサモシュコの演奏は曲の骨組みが透けて見えるような演奏。理知的ではありますが、冷静すぎるわけではなく、情熱の炎が青白く燃えている感じ。曲によってはテンポが遅かったり、モッサリと覇気無く感じられて物足りない向きもあろうかと思いますが、Op.8-12やOp.42-5などの有名曲は個人的にベストを争う演奏で気に入っています。ちなみに、この2曲は本人のウェブサイトで聴くことができます。

Op.8-12に関しては、比較として以下を聴き比べてみました。

サモシュコ:◎
 どうペダルを踏んでいるのかわからないくらい音が澄み切っており、軽めの音質の録音とも相まってかなりスッキリした印象。最初の主題の繰り返し部分でフッと力を抜きつつ左手の重低音が静かに入ってくるところなどは、彼の一連の演奏(例えばラフ3旧録音の第1楽章第1主題の再現部等)での特長であり、グッとくる。ラストの和音がなぜか何の未練もなく短く切られるのが非常に気になり、惜しい(あまりに惜しいので波形編集して音を伸ばしたものを聴いている)。
ホロヴィッツ:○
 響き渡る轟音、中間部ではグッとテンポを落として歌いまくり、ラストはこれでもかとブッ叩く、劇的な演奏。昔はこの演奏以外受け付けなかったが、今聴き比べてみると個人的なエチュードの理想像とはちょっと違っている。まさにアンコール向けのショウピースという演奏
横山幸雄:○
 流麗で巧いが彼らしい機械的演奏で叙情性に欠ける。録音がボヤッとしている
S・バレール:×
 音が悪い。ガチャガチャした感が否めない
ヴォスクレセンスキー:△
 ラストでテンポが落ちるのが惜しい。骨太な演奏。質実剛健というセリフが似合う
グリーン:△
 可もなく不可もなく、全体的にまずまず
オールソン:△
音が無骨な感じで流れがスムーズでないところがある。盛り上げ方はうまい。ピアノの音が美しくない
レヴィナス:○
 ドラマチックだが後半の和音連打でちょっとテンポが落ち着いてしまうのが惜しい
F・ヴィジ:○
 2000年浜コン。シリアスで気持ち良くまとまっている。スッキリしすぎの感がなくもない
クズミン:×
 恐ろしく巧いがテンポが揺らしまくりで自由奔放。落ち着かない
ラン・ラン:△
 テクは十分だが、振幅が大きく中間部ではえらくテンポを落とす。どこかホロヴィッツ的
P・レーン:△
 優等生的演奏だがテクもある。生真面目で硬めの一本調子な打鍵なので、もう少し色気を出して歌っても良かったかも

その他、youtubeなどで、
ルガンスキー:△
 サラサラしすぎでいかにもエチュード。相変わらずキレは凄まじいが中間部がモタレる
ベレゾフスキー:△
 2分を切るかという凄まじい速さで、豪腕という感じ。繊細さがない、体育会系爆演
キーシン:△
 見事に1音のミスも無いが味わいという点ではいまひとつ。宇宙人としか思えないメカニックは一見の価値あり

 ・・・実は一番気に入っているのがオフチニコフのOp.8全曲のライブなのですが、どこで手に入れたのか忘れてしまいました(音源データだけ持ってる)。音質的にエアチェックか何かだったと思うのですが・・・。エチュード的な演奏でありながら、些かの叙情性も失っておらず、リストの超絶で見せたようにテクニックも十分。素晴らしいです。是非、CDで(若い頃に)録音を残して欲しかった!



ラフマニノフ・音の絵エチュード(2006年)

rachetu.jpg

 全曲盤と思って喜んで買ったところ、大好きなOp.33-8が収録されておらず、残念無念と思って聴いていくと途中でOp.33-8が演奏され、?と思いましたが、ウィキペディアで調べてみたところ、どうやらこのOp.33は初版に習った演奏順のようです。

 ここでも録音はピアノの音色に芯の無い、やや軽めの、ちょっと残念な音質なのですが、サモシュコらしい感傷的な演奏に溢れていて、特に緩徐曲で気に入ってます。Op.33-8はデミジェンコと並んで大のお気に入りのひとつ。ただ、一部の曲は凄まじい技巧のルガンスキー盤やバランスの良いアンゲリッチ盤に比べてキレが悪く、モッサリしていると感じる曲も少なくなく(例えばOp.33-1などはいくら何でも遅すぎる)、全体的にテンポは遅めです。Op.39-3や6も水準以上のテクはあるのですが、ルガンスキー盤に聴き慣れていると流石に遜色があります。そのため、個人的に叙情性を味わう盤として聴いています。そういう向きにはかなりオススメ。



ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番(2009年)

rach3.png

 1999年のエリザベートでの演奏以来、約10年ぶりの新録音ということになります。DVDでも全く同じ演奏なので、おそらく同一のライブ録音だと思われます。
 となると、エリザベート・コンの名演の再現を期待してしまうのですが、残念ながらやや及びません。解釈は全体的に変わらないのですが、細かく聴くと第1楽章の展開部のスピード感が落ちてしまっていますし、カデンツァも旧録音に比べてやや控えめ、第2楽章は彼らしいロマンチックさを見せるものの未だ想定の範囲内で、第3楽章も技巧の衰えなのか、胸のすくテクニックという感じではありません。
 しかしながら、この難曲を完全に手中にしているバランスの取れた熱演であることは間違いなく、特に映像で見ていると彼のこの曲にかける意気込みや情熱が感じられ、最後は圧倒的な感銘を与えてくれます。この曲の収集家はgetすべきかも。
 DVDに付属するインタビューでは、家族思いの好青年という感じで、音楽に対する真摯な姿勢と彼の謙虚で優しい人柄が伝わってきました。
 
 このレーベル?はどのCDも音に芯が無く、軽めでモワモワした音質なのが残念です。やや硬めで、それでいて適度な残響が付いた録音のほうが彼の思いきりのいいタッチを活かせると思うのですが・・・。



 というわけで、ご紹介した4枚のCDすべてが全面的にオススメというわけではありませんが、曲によっては個人的ツボにハマッた演奏をしてくれるお気に入りのピアニストです。今後も応援していきたいと思っています。
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