音楽好きの世迷い言
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ヴィタリー・サモシュコというピアニスト~その1
2010-03-06-Sat  CATEGORY: お気に入りピアニストの紹介
Vitaly Samoshko(1973生まれ、ウクライナ出身)

Samoshko


1992年 シドニー・コンクール第6位(1位はシャン=ドン・コン)

1993年 ブゾーニ・コンクール第2位(1位はロベルト・コミナティ)

1999年 エリザベート・コンクール第1位 優勝(2位はアレクサンドル・ギンジン)


アレクサンダー・ロマノフスキやロベルト・ジョルダーノらを育てたロシアの名ピアニスト、マルガリウスに師事。エリザーベト優勝後はベルギーを拠点に活動中。



今回は数々のコンクールで入賞歴があるピアニスト、ヴィタリー・サモシュコについてご紹介します。



彼を知ったのは、例によって1999年に行われたエリザベート国際ピアノコンクールのファイナルで弾いたラフマニノフの3番の録音を聴いたからです。その演奏たるや、当時コンクールの審査員を勤めた故園田高弘氏が生前にウェブサイトで語っていた通り、「ロシア人ピアニストのロシア物に対する思い入れの強さ」が十全に発揮された渾身の名演と呼ぶに相応しいものでした。



まずは一連のコンクール録音を列挙してみます。



シドニー・コンクール:ラフマニノフ・パガニーニ狂詩曲

変にこねくり回さず、爽やか。第18変奏でも粘らない。オケと合わせるのが難しい曲だけに多少のズレやミスは結構ある。個人的にこの曲は苦手なのであまり感度が高くないので、正直あまり手が伸びない。ところどころで思い切りの良さを見せるのが彼らしいと言えば彼らしい。



ブゾーニ・コンクール:プロコフィエフ・ピアノソナタ第7番

怒涛の攻めの一言。ミスやタッチの粒の揃いの悪さがあったりして技術的な精度やキレはそれほど高くないのだが、盛り上げるツボを押さえたヴィルトゥオジティ溢れる演奏。特に終楽章は3分ジャスト(!)の演奏タイム。インテンポを極力保ち、跳躍部分でほんの少し間が空くがかなり健闘していて、終盤の和音連打もごくわずかにルバートをかけるが迫力十分。この時20歳で、若さゆえの運動能力を活かしきった熱演。聴衆はブラヴォと絶叫。ちなみに、6年後のエリザベートコンの時にも同曲で熱演を残したらしい(録音は残っていない)。




エリザベート・コンクール1999:ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

技巧・迫力・叙情性と三拍子揃っており、そのバランスが良い。コンクールの緊張感に加え、ライヴならではの生々しさとダイナミズムに満ちている。全体的にはやはりストレートな解釈で、この曲に対する思い入れが感じられ、細かいミスはあるもののかなり弾き込んでいる印象を受ける。第1楽章は個人的にほぼ理想的な演奏。展開部の和音連打は猛烈なスピードで、多少音が濁っているがそれが逆に手に汗握るスリリングを演出している。ossiaのカデンツァもスケールが大きく、後半の和音部分での畳みかける迫力が出色。第2楽章の緩徐部分も良い出来。時々フッと力を抜く表現がツボにはまっている。第3楽章は後半になると少々疲れてきたのか、多少疵が多めなのが惜しい。正直テクでも歌でもこれを超える盤が他にあるので万人にはオススメできないが、個人的な好みにハマっていて100種以上ある手持ち盤の中では最もよく聴くもののひとつ。演奏時間は16:40、10:28、13:51(拍手入り)で全体的に少し速め。




エリザベート・コンクール 1951-2000:ショパン・バラード第4番

半世紀に渡る同コンクールの記録を収めたCDの中の1曲(3枚組と12枚組とがあり、そのどちらにも収録されている)。ストレッタの和音連打のたたみかけやラストの急速部分のスピードなど、聴かせ所を押さえた身振りの大きいロシア的ロマン色の濃い演奏。かと言って深刻すぎもしない節度を持ち合わせている。所々ミスもあり、技巧も叙情性も浜松国際でのタラソフの演奏には正直及ばないが、「ここはこんな感じで攻めて欲しい」といった個人的ポイントを押さえているのでついつい手が伸びてしまう。



という感じです。彼の特長を幾つか挙げてみると、


① 決して技巧派ではない(園田氏も「バラ4の時の技術力では優勝は無理」と思ったそう)

② 小細工しない解釈(プレトニョフやキーシンなど考えすぎな演奏をするタイプではない)

③ 盛り上げるツボを心得ている(歌のセンスが抜群というわけではないがグッと来る)



と言ったところでしょうか。特に③が人によって好みの分かれるところで、例えばプロコ7番の終わり直前の和音連打が続く箇所で突然弱音にしてその前後との対比を作るところはあざといと思う人がいるかもしれませんが、ラフ3の第1楽章前半の緩徐部分でも歌いどころで一瞬フッと力を抜いて精神の飛翔(というと大げさかな)を演出するところは個人的にはたまりません。



そんなサモシュコですが、1999年のエリザベート優勝後から現在までに4枚のアルバムを発売しています。そこで見せている彼の演奏は、若さ溢れる勢いに満ちた過去の演奏からは想像もできない変貌を遂げています。



次回はそのCDについて書きます。


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