音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
シプリアン・カツァリスのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番新旧聴き比べ
2007-06-29-Fri  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
元祖・超個性派ピアニストと言えば、ご存知シプリアン・カツァリス。


世評で名高いベートーヴェン/リストの交響曲ピアノ版の録音や、ショパンのバラード&スケルツォ集での見せた規格外の技巧と個性的な解釈は多くのピアノファンを惹き付けてやみません。


そんな彼の録音の中でも、今回は僕の愛聴曲であるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の新旧録音を取り上げることにしましょう。

まずは、昨年(2006年)発売された、普通に手に入るカツァリス自身のレーベルからのCDを。

katsaris2.jpg


録音は1978年、第1楽章のカデンツァは当然のごとくossiaです。第1楽章は軽快なテンポで精確に弾き進めます。展開部の和音連打は思ったよりあまりスピードが上がらないので肩すかし(それでも数多の他盤と比べると十分に速いですが)。カデンツは前半が素晴らしく、後半もスラスラと苦もなく弾いているのが伝わってきます。第2楽章もヴィルトゥオーゾの彼らしい演奏で、歌い方がこなれていて上手い。第3楽章は快速テンポでぶっ飛んで行きます。特に出だしの同音連打の粒の揃いが凄まじく、彼らしいアクロバティックな技巧を見せつけている感じ(スティーヴン・ハフほどの精緻さはありませんが)。彼の弾くリストのメフィストワルツでも感じたことですが、曲芸的な演奏と言ってもよいでしょう。有名な重音上がりのossiaも健在。後半では段々と地が出てきたのか、多少語尾があいまいになったり、ケレンみがかった表現も出てきます。オケもノッてきて最後は猛烈にアッチェレランドして終了。聴いていててっきりライヴ録音だと思ってましたが、スタジオ録音なんですね。それくらい白熱した演奏です。元気過ぎるカツァリスと比べるとちょっとオケがイマイチかも。放送録音風の音質なのも残念。



続いては、入手に困難を極めたエリーザベト・コンクールの実況録音盤LP。


katsaris1.jpg



DGから出されたこのレコード、ラフ3マニアの間では有名な一枚らしいのですが、僕は探し始めてから入手するまでに3年かかりました。このコンクール当時、カツァリスは観客の猛烈な支持を受けながらも第9位に甘んじ、物議を醸したと言います。優勝したのは、かのヴァレリー・アファナシエフ。第3位にファイナルでカツァリスと同じラフ3を弾いたジョゼフ・アルフィーディ(この演奏についてもいつか書きます)、第6位に神谷郁代女史が入っています。


演奏の方はというと、噂に聴いていた通り推進力に満ちていてスピード感溢れる演奏。同じコンクールでのジョセフ・アルフィーディの演奏も速かったですが、それよりも荒っぽいというかより良く言えば人間味があるという感じ。

解釈などはCDで出た先ほどの78年のスタジオ録音と基本的には変わりませんが、それと比べるとさすがにピアノはミスが多く雑な感じ。ただ、緊張感やピアニズムの引き締まりという点からは、スタジオ録音を上回るでしょう(スタジオ録音は元気がありすぎて余裕こき過ぎの所が無きにしも非ず)。

第1楽章は出だしから速いテンポで飛ばしまくり。展開部の和音連打も快速で爽快感があります(連打の直前はちょっとオケとズレてますが)。カデンツは前半部分でややミスがあるものの、和音部分も音を鳴らしきっていて素晴らしい迫力。ここは後年のスタジオ録音よりも評価出来るところ。第2楽章は緩徐部分での彼らしい歌い回しと、後半での細かい急速音型でのクリアさが実に見事(アゴーギクで妙に肩を張る箇所があり、もう少しスッと流れて欲しいところもある)。ヴィルトゥオーゾらしさが出ています。ただ、楽章冒頭のオケの入りが頼りないことこの上ありません。終楽章は予想通りの爆演。同音連打はスタジオ録音ほど粒は揃ってませんが、メチャ速い!このテンポに太刀打ち出来るのはハフ、グティエレス(LP盤の方)、ドノホー盤(LPのみ)くらいと思われます(ossiaでカット無しの完全版に限定)。ちなみに、この楽章の演奏時間は拍手入りでおよそ12’50”で、スタジオ録音よりも30秒以上短い。全楽章を通じても2分近く速いのです。この終楽章ではオケの荒さが目立ってくる面もありますが、カツァリスらしさが全開の演奏です。有名な練習番号58でのossiaはスタジオ録音ほどの精度とキレはないものの、コンクールでこの部分を弾こうとする彼の気合いが伝わってきます(重音での素早いパッセージなので、さすがの彼も苦しそう)。この曲のライヴ録音は色々聴きましたが、曲が終わらないうちに観客が拍手し始める演奏は初めてでした。観客の猛烈な興奮が伝わっています。録音は、同コンクールのアルフィーディのLPよりも音量レベルが大きくて音色も明晰です。


さて、聴き比べた結果ですが、音質やオケの出来を考えると個人的には一長一短という感じ。完成度では当然後年のスタジオ録音CD、ライヴならではの緊張感を味わうにはLPの方がよいですね。ちなみに、演奏時間を比較してみると、78年盤は17:10、10:26、13:25、72年盤は16:16、9:58、12:50(拍手入り)です。コンクールの方が相当スッ飛ばしています。


結論はと言えば、72年のLP盤の方はよほどのマニアでなければ入手する必要はないでしょう(苦笑)78年のCD盤でも十分にカツァリスらしい面白さを味わうことが出来ると思います。
スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2017/04 >>
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.