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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

アレッシオ・バックスのバッハ・トランスクリプション集

アレッシオ・バックス(Alessio Bax)は1997年に行われた第3回浜松国際ピアノコンクールで優勝しており(2位がオリヴァー・カーン、3位がセルゲイ・タラソフ、6位がフレデリック・ケンプ)、その時のライヴCDも持っているのですが、ブラームスのピアコン1番とグラナドスのゴイェスカスという渋い?選曲であったため、あまり心惹かれませんでした(優勝したのだからもっと色々な曲が収録されてもよいのではないかと思いました。まあブラ1が50分近くあるせいですが笑)。


今日ご紹介するCDは例によってジュスマルダホスさんに教えて頂いたもの。2008年の録音です。すべてバッハの編曲モノで、ゴドフスキー、ペトリ、シロティ、サン・サーンス、ケンプ、ブゾーニらによるもの、さらにはバックス本人が編曲した曲が収録されています。






聴いてみて、19世紀のロマン的なバッハでありながらもギリギリのところで分別をわきまえている演奏と言えるでしょうか。輝かしいフォルテ和音に加え、柔らかなタッチを駆使しているところが特に印象的。ゴドフスキー編曲のヴァイオリン・ソナタ1番第3楽章では趣味良く歌っていますし、終楽章のメカメカした指回りとの対比も面白い。シロティの一連の編曲では抒情的な曲を選んでおり、彼の歌のセンスの良さが発揮されています。ケンプによる“目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声”では語り口がオピッツほど生真面目でなく良いバランス。バックス本人による鍵盤協奏曲からのLargoはちょっと面白みに欠けるかもしれません。


さて、トリを務める注目のシャコンヌですが、これは期待通りの好演と言って差し支えないでしょう。最初にも書いたとおり、バックスの根っこは間違いなくロマンチストなので、随所で劇的に和音を響かせたり、ここぞとばかりに指回りの良さをアピールしたり、必要以上にアゴーギクの振幅が大きい個所もあったりするのですが、悪趣味にならない絶妙なラインを攻めているように思います(第1部終盤ではossiaを弾いていません)。曲のラストのアルペジオで駆け上がるところはワイセンベルクやT・ラーべを上回る凄まじいスピードで唖然とします(手持ちで最速?)。全体的に多少あざといところが無きにしも非ずで、峻厳なバッハ好きの方は眉をまとめるかもしれませんが。一言でまとめると、自制しつつメリハリを利かせていると言えます。これはアルバムを通して言えることですね。


シャコンヌもバックス、オピッツ、ミケランジェリ、スターン、ドンヒョク、ワイセンベルク、ラーベ、ガヴリリュク、レーゼル、デミジェンコ、フアンチ、バリーニ、ボレット、ビディーニ、キーシン、グリモーなど、そろそろ音源が溜まってきたので、聴き比べてしまわないと忘れてしまいそうです。


とりあえずバッハ編曲好きの方は一聴の価値ありです。
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