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スザーネ・ラウテンバッハーのバッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
2007-06-26-Tue  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
このところ、バッハの無伴奏ソナタとパルティータを集中的に聴いております。最近聴いたものの中ではジェラール・プーレ、久保田巧、フロリン・パウル、クリストフ・バラティ、ララ・セント・ジョンなどが印象に残っています(挙げたものは必ずしも全集録音ではありません)。

さて、このラウテンバッハー(ラウテンバッヒャー)のCDは、いつもお世話になっているクラシック系サイトの大御所「極私的百科全書」のジュスマルダホスさんにお薦め頂いたものです。


ラウテン



薦められてからどうしても入手したくなり、海外の販売元にメールしたところ、「来週から日本の大手販売店で正規CD版として販売される」と恐ろしくタイミングの良い返事が来て、驚喜したのでした(それまではCDR盤が売られていたそうです)。


大きな期待を持って聴いたわけですが、印象はその80%というところ。予想通りゆったりとしたテンポで切々と歌い上げています。解釈も正統的で奇をてらったところがまったくなく、ただただひたむきにバッハを奏でているといった感じでしょうか。ソナタ第1番など、重音の美しさ、自然なアゴーギク、格調高い歌いっぷりに強く惹かれます。ヴァイオリンの音色も中域が渋めに響いていて、録音がやや古いせいか高音がちょっとヒステリックに聴こえる箇所もありますが、まずまずです(ただ、編集に難があるのか、所々音が途切れるように感じる箇所があります)。


実は僕の興味のほとんどはシャコンヌにあるわけなんですが、この曲の演奏はかなり素晴らしい部類に入るのではないかと思います。特に解釈が素晴らしく、これまで聴いた演奏者の中ではもっとも自然にバッハの音楽の「呼吸」が感じられる演奏です。僕好みにテンポがやや遅め(15:19)で、躍動感よりは澱みのない旋律の流れを重視したものになっています。第Ⅱ部冒頭の語り口の美しさは比類がなく、円熟の極みと言えましょう。女流ヴァイオリニストらしいほのかな暖かみや慈しみを感じる瞬間が多々あります。

ただ、技巧的なキレでは上に挙げた他盤に比べるといまひとつの点があって、例えば第Ⅰ部のクライマックスの急速なアルペジオ部分は(ブゾーニ編によるピアノ版のような分散和音になっていますが)、勢いや精度の点でちょっと物足りない感じがします。ちなみにシャコンヌに限って言えば、僕が今のところ一番のお気に入りなのは久保田巧盤(新録音の方)で、これは演奏・録音ともにかなり僕の理想に近いです。今回のラウテンバッハーの演奏も、路線としてはそれに近いのですが、技術的な面と録音の古さが多少気になります。


そんなわけで、十数種ある手持ちの盤の中でベスト1の一枚とはなりませんでしたが、それでも稀有な演奏には間違いなく、格調高く真正面から切々と歌ったバッハがお好きな方には強力に推薦出来るCDです。ソナタとパルティータ全曲入って2000円を切る値段も魅力。
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