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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

続・Charles Altura

以前、ジャズ・ギタリストのチャールズ・アルトゥーラが気になるという記事を書いたのだが、それから彼がサイド参加した作品を3枚ほど聴いた。アメリカで「ネクスト・ライジングサン」と評判の彼の、ジャズ方面からの視点でレビューしてみたい(お分かりのように、私は1人のアーティストを深く掘り下げるタイプである)。


まずは彼の出世作??と思われる、チック・コリアのアルバムから。なぜか録音年の記載がないが、おそらく2013年初頭だと思われる。

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・・・実を言うと、私はチック・コリアが苦手である。何度も書いているようにキメの多いテクニカル・フュージョンが楽しめないのだ。演ってる本人たちは自身の演奏能力を十全に発揮する機会が多くて楽しいのだろうが、なんというかグルーヴに身体を委ねる喜びに欠けるというか・・・勿論、一概にフュージョン全部がダメなわけではないが・・・。

さて、結論から述べると、これはまさしく私の苦手なフュージョンであった。多作で知られるC・コリアとの先入観ということもあると思うのだが、いかにも超絶技巧の職人たちが集まって短時間で仕上げた「こしらえものの秀作」という感じがする。

ところで、アルトゥーラのギターは巧い。凄まじく巧い。youtubeでもライヴ映像を見ることができるが、HR/HM的なメカニカルな能力と、ジャズ・フュージョン的な和声的能力の両方を兼ね備えているという感じがする。アコギでの凄まじい早弾きなども聴けるので、どちらかと言えば前者寄りな印象がこの盤では強いが、以前紹介したD・スティーヴンスの盤では完全なジャズ寄りのプレイだったので、懐の深いギタリストなのだろう。とにかく卓越した指の運動能力に(久々に)耳を奪われた。

ブックレットの写真を見ると、どうやらストップテイルピースのギブソンES-335を使用しているようだ。テイルピースとブリッジの間に布??のようなものを挟んでいる。音色はエレクトリックな他の楽器群に埋もれないよう、基本的には薄く歪ませ、サステインも長めであり、箱モノ的なピッキングニュアンスのふくよかさやアタック感は楽しむことができない。

というわけで、彼が参加していなければおそらく聴くことはなかったであろう作品(苦笑)



続いて、ジャズ・ベーシスト、マット・ブリュワーのリーダー作品『アンスポークン』(2016)。

mattb.jpg

実は彼のオリジナルは苦手である。以前、彼のリーダー作『Mythology』にラーゲ・ルンドが参加しているというので買って聴いたのだが、どれもテンポがノロく、出来損ないのフリージャズかゲンダイオンガクか??と思って頭に来て、短気な私はヤフオクかなにかで売り飛ばしたのだった(だから正直内容はよく覚えていない・・・音源は残してあると思うが。金の無い学生時代と違って、最近はあまり音盤を売らなくなったのだけれど)。


そんなわけで一抹の不安があったものの、アーロン・パークスも参加してるし・・・ということで買ってみた。


結論から言うと不安ド的中。この人はドロドロしたアンダンテ曲しか書かないのか、という記憶があったのだが、今回もそれ。1曲目はまあ掴める旋律があるので許せるが、それ以降はなんだかモヤモヤしててパッとしない曲ばかり(3曲目のフリーゼルの曲はなかなかイイ)。5曲目の『EVIL SONG』という3分ほどの曲は私からすればまさに悪意と邪悪に満ちたキモ過ぎる曲。演奏者のソロらしきソロもなく、意味が分からない。パーカーの『CHERYL』だけはスタンダードだけに、演奏者たちのまっとうなソロが聴けるのが救いだ。

ブリューワーへの悪口が続いてしまったが、アルトゥーラの話だった。はっきり言って、バシッ!と目立つソロがそもそも少なく、高揚感のある曲も少ないので評価に困る。また、音色はやはりセミアコを使用していると思われ、曲によっては薄く歪ませたりして、その音のよく伸びる具合を考えると結構コンプとかのエフェクトも使ってそうな感じ。正直、『ヴィジル』路線の音色で、個人的にはあまり好きではない。


唯一の救いと言えば、パークスのピアノが素晴らしいこと。2曲目の冒頭の繊細なタッチでの抒情的なフレーズにゾクッとする。まるでクラシックピアニストの演奏のようだ。以前、「アーロンはパークスよりゴールドバーグの方が好き」と書いたのだけれど、彼の若い頃の小生意気な「オレ天才なんです」感がいい具合に角が取れてきて、真の天才に仕上がってきた感がある(なんて偉そうなんだ。でも、カートの2012年『スター・オブ・ジュピター』の1曲目「ガンマ・バンド」のソロは難解??な展開に勢いとリズムだけで何が言いたいのか分からんかったし・・・)。というわけで、パークスの煌めく才能ばかりが目立つ盤。おそらく今後、ブリュワーのリーダー作に手を出すことはないだろう。



さて、3つは最新盤。つい3日前に発売されたてホヤホヤの新譜である。

トム・ハレル『インフィニティ』(2018)

tomhha.jpg


いつものようにユニオンに出かけると、いい具合のクリーントーンでバシバシとカッコいいフレーズを弾くギターが耳に飛び込んできた。これはもしやと思ってレジで確認するとこの盤てあり、やはりアルトゥーラのギターであった(!)。

Tom Harrell(tp, flh)
Mark Turner(ts)
Charles Altura(el-g, ac-g)
Ben Street(b)
Johnathan Blake(ds)
Adam Cruz(prec M3 only)


コード楽器がギターのみで、いよいよアルトゥーラの本領が発揮されるかと思い、ワクワクして聴いてみた。


これまでに紹介した4枚と比較して、もっとも一般的なジャズ・フォーマットに近い。全曲がトム・ハレルによるものだが、あまり非ジャズ・ビート的な曲(というかロックっぽいドラム)もあり、単なるジャズ・スタンダード感だけに留まらない。ブリュワーの曲よりは断然好ましい。目玉の1人であるマーク・ターナーはいつ聴いてもマーク・ターナーで、例の高音域からヒュルリと降りてくる手グセフレーズが聴けて思わずニヤリとしてしまう。ドラマーは起伏に富んだビートを叩き出しており、私好みの、なんというかロックなエリック・ハーランド感があって巧いと思った。


アルトゥーラの話をすると、活躍度ではこれまでで一番なのだが、正直なことを言うとジャズ的語彙の限界も見えた感がある。カートやL・ルンドなど、普段から先鋭的なハーモニーを駆使するギタリストばかり聴いているせいだと思うのだけれども、要は物足りないのだ。ハレルがバップ寄りのアドリブを繰り出すために、「空気を読んで」分かりやすいソロを弾いたのかもしれない。アコギでのソロもちょっと普通で、なんだかポップスのセッション・ギタリストが弾いているみたいだ。それでも私が店頭で聴いてカッコいいと思ったフレーズは、D・スティーブンスのリーダー作に参加したときにも聴いた感じの、ペンタ的な1弦につき2音ずつ弾くものに多少の味付けしつつ下降・上昇するもので、手グセなのかもしれない(それでもリカルド・グリーリの「ソレしか弾けないのかお前」みたいな手グセオンパレードでは勿論ない)。また、卓越した指回りを見せつける場面もやっぱり空気を読んだのか少なく、地味なソロが多い。


ギターの音色に関しては根本的な変化が感じられる。録音が2018年の終わり頃なので、これは彼が渋谷ウォーキン『Westville』にエンドースされた後だと思われ、ウェストヴィル製のセミアコギターを使用しているのではないか。クリーントーンはヒラヒラしてて軽めながら不思議と芯があり、同ブランドのサイトでのKurtのyoutubeで聴ける音と同じキャラクターである。これまでの音色より私好みである(単に一般的なジャズ形態の作品に合わせただけかもしれないが。それにしても・・・ウェストヴィルの躍進はすごい。今度はメセニーの"トリビュート・モデル"だってさ。売れるだろうなぁコレ)。


というわけで、アルバム1枚を聴き終わると、曲のモチーフもリフの反復を基調にしていて似通った感があって、おまけにアルトゥーラのソロも地味で、悪くはないのだが惜しい。彼はテレンス・ブランチャード監修の映画でもギターを弾くなど、各方面に引っ張りだこのようだが、いつか腰を据えてジャズなフォーマットでリーダー作を出してほしいと思う。私が一番好むコンテンポラリー・ジャズは、J・レッドマンらのジェイムズ・ファームのような音楽性なのだが、あそこにギタリストとしてアルトゥーラが参加してくれれば最高なのだけれど。おしまい。
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