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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Daisuke Abe / On My Way Back Home

続けて日本人ジャズギタリストの作品を。



阿部大輔 『On my way back home』 2004年録音

阿部大輔:guitar
Walter Smith:tenor sax
Aaron Parks:piano
Matt Brewer:bass
Rodney Green:drums
Gretchen Parlat:vocals (tr 4,6)

阿部大輔氏は1978年生まれ、洗足学園短期大学ジャズ・コースで道下和彦氏に師事、同校首席で卒業後渡米、バークリー音楽院でミック・グッドリックらに師事、在学中に"Louis Belson Award"を受賞し、2002年卒業。その後、NYに滞在し、2005年にリリースされたのがこの初リーダー作品である。まずはともかく、御覧の通りメチャクチャメンツが凄い。今をときめくアーロン・パークス、マット・ブリュワー、ロドニー・グリーンら素晴らしいサイドメンを集めている。


さてこのアルバム、全曲阿部氏のペンによるものだが、一番の要点を述べるととにかく曲が良い。いわゆる一般的な編成のジャズ作品だが、どれも印象的なテーマで、見た目の通り(??)いかにも生真面目そうな日本人が書いたバランスの良い(≒ベタすぎない)メロディックな曲が揃っている。タイトルトラックの1曲目、アップテンポでいかにもギタリストが書きそうな旋律。アドリブはやや堅い??感じがしてすぐ終わってしまう。他のソリストも、「曲に馴染んできたかな?」と思うところで終わるので、物足りない。2曲目、メセニーにも通じるキャッチーで分かりやすい佳曲。非常に印象に残る。3曲目、これも比較的速めのテンポ。ギターの音がM・モレノみたいで、プレイも若干そんな印象がある。これはサックスのソロに行く前のサブテーマみたいのが実に美しい。ただし、やはりソロは短い。4曲目、歌が入ってくるが、このヴォーカリストがまた良い声で、おまけに曲もいい(歌詞はなんとロドニー・グリーンが書いたという)。当時二十歳そこそこと思われるパークスの伴奏も光る。曲に合わせ、ここではアコギをプレイしているのが「わかってる」という感じがする。


5曲目、最も長尺の曲(8:15)で、ようやくたっぷりソロを取ってくれたという感じ。クインテットなら10分くらい演奏してほしい。6曲目の歌、さっきよりもアブストラクトでちょいとダークな、不思議な切なさを備えた曲。ギターはフルアコで、歌と時折ユニゾンしつつ、ソロも取る。7曲目、これも快速テンポで、あまり旋律が跳躍しない、1曲目同様な感じのテーマの曲。ブリュワーのベースがようやくグイングイン来る。テナーも一発目にガツンとしたソロで本領発揮。続くギターソロがこれまた短い!(そのあとにドラムソロを入れるせいだろうか。それも短いが)。この曲にはパークスが参加しておらず、阿部氏のバッキングを堪能できる。8曲目、なぜかこの曲だけギターソロの音色がかなり前面に来て力強い(というか各楽器のソロごとに音がフォーカスされて解像度が著しく上がる感じ)。阿部氏のソロは広い音域を跳び回り、抽象的な現代詩をそらんじているような演奏。パークスのソロはやや常識の範囲内かな。スミスのソロも少々盛り上がりにかける。テーマもアルバム前半に比べれば少し取っつきにくいか。終曲、サックスとピアノが巧みなユニゾンで伸びやかなテーマを奏でる。直後にブリュワーのベースソロ。音が少しコモり気味なのが惜しいかな。ギターソロはラーゲ・ルンドみたいな広大なアルペジオが登場する。個人的な好みとしてはやはり短すぎる。


ギターのプレイは先に述べたように、私の知っている他のギタリストで例えるならばマイク・モレノに一番近い気がする。使用ギターはギブソンの1970年初期のES-330で、この年代の個体は日本ではあまり見かけない。サンサンゴと同じシェイプのシンボディながら、センターブロックのないフルアコ構造で、サステインが強すぎず鳴りがふくよかな感じ。モレノっぽいと書いたのは、空間系のエフェクトを強めにかけていること(笑)透明感がありながらも芯のある音色で、けっこう私好みである。録音は各楽器のバランスが良いのだが、曲によってはベースが小さく感じるのが勿体ない(Vo曲は聞こえるがそれ以外がかなり低音が物足りないのでリビングで聴くときはウーハーを上げている)。


というわけで、感想をまとめる。アルバム前半に特に良い曲が揃っており、サイドの演奏も実力通りに素晴らしく、ギターは派手さが無くやや印象には欠けるが好みの音色で、各奏者のソロが短いのが一番惜しいところ。もう15年も前の作品だが古さは全くなく、他の欧米のコンテンポラリー・ジャズギター作品に微塵も聴き劣りしない良作だと思う。現在も阿部氏はNY在住で活躍とのこと。下に氏の動画を貼っておく。この時と同じスタイルの演奏ながら、さらに深みを増した艶やかなギターが聴ける(ドラムが近く、ギターが小さいのが残念・・・)。





なお、彼のHPにはジャズギター講座の紹介があり、「ジャイアント・ステップスをペンタだけで弾く」などの実に有益な動画がある(私はこの手法を、最初にジャズギターを教えて頂いた菅原邦弘先生に、「スコット・ヘンダーソンが「こんなの1日中続けられるよ」と言ってペンタで弾きまくってるんですよ」と習った記憶があるが、知らない方は驚かれるのではないかと思う)。

来日されたらライヴにも行ってみたい。
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