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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Alexej Gorlatch / Chopin Etude Op.10 ほか

見落としていた盤を。アレクセイ・ゴルラッチのショパンのエチュード他のアルバムである。


ゴルラッチは、2006年の第6回浜コンで優勝した時からそのライヴCDを聴いて「優美な音楽性と、意外にテクニックも悪くないかも」と思って一応注目していたつもりだった。浜コンの実況CDに収録されているリストの超絶もけっこう巧いし、何より課題曲の日本人作曲家委嘱の作品の演奏がとても良かったのが印象に残っている。さらに、その後に出したベートーヴェンのコンチェルトやソナタのCDについて、kyushimaさんが好意的なレビューをしていたので私もNMLで聴き、確かに期待通りの演奏をしてくれていると感じ、たまに聴き直している。


そんな折、ユニオンに日参していてふとこのCDを見つけた。

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曲はショパン・エチュードOp.10全曲、シューマン幻想小曲集Op.12、ドビュッシー・前奏曲より4曲、音と香りは夕暮れの大気に漂う、西風の見たもの、亜麻色の髪の乙女、花火、録音年は2009年4月とある。10年近くこのCDに気が付かなかったというのはなんとも情けない。

2005年、ブレハッチが優勝したショパコンで彼はセミファイナルどまりだったと記憶していたせいか、私の中で彼とショパンはあまり結び付いてなかった(ベートーヴェンの演奏がよかったせいもある)。それで今回、練習曲を録音していたと知って、ちょっと意外な感じがした。彼は決して抜群の技巧派ではないが前述したように密かにしっかりしたテクニックの持ち主かも、と浜コンの時に感じたので、併録の2作品はあまり手の伸びない曲だったが思わずこのアルバムに飛びついた(余談ながら、浜コン最高位はブレハッチ→ゴルラッチ、、、国籍は違うが名前も芸風も似てるから、なんとなく同様の印象を持っている(笑))。

最近は忙しくてリビングで音楽が滅多に聴けないので、通勤の車内で聴いてみた。そしてすぐに、この録音の酷さに失望してしまった…。

とにかく残響が多く、ピアノが遠く、演奏を台無しにしている。ショパンやシューマンの技巧的な曲は勿論、緩徐曲でも音色の変化が感じられず、怒りさえ感じるほどである。残響を好む方には良いかもしれないが、私は苦手なのでコンサートホールの前から20番目以降のようなこの音質はちょっと許せない。聴いたことのないマイナーレーベルだからか。

気を取り直して、ショパンのエチュードから。1曲目の10-1の出だし数秒で残りの11曲の演奏の程度も大体予想できてしまうのが怖いところだが、思わず軽くガッツポーズ。スピードは標準的だが、タッチに重厚感があって実にクッキリハッキリとした弾きっぷり。ロルティのように細かい音色の変化で聴かせる余裕はなさそうだが、それでも変にテンポを揺らしたりせず、生真面目路線で2:02で弾き終える(欲を言えば、「んっ?!」と思うところが全くないわけではないが)。10-2はやや一本調子。10-3は歌い方が柔らかく、メチャ巧い。10-4と10-5はどちらも10-1同様の明晰っぷり。10-6はややかったるい。10-7は録音のせいかややモゴモゴしてるか。10-8も粒立ちがいい。10-9は重く、ショパンらしくないかも。10-10も残響多めの録音で損をしている。10-11はふわっとしたタッチが聴けるが、硬質なピアノの音色と残響が台無しにしている。10-12も重みのある打鍵で迫力十分。しかし録音が・・・。

お次のシューマンの幻想「小」曲集Op.12。1・3曲目は語り口が10-3同様ハマっていて素晴らしい。2曲目も力強く、シューマンというよりはベートーヴェン的。5曲目もシブくて1本筋が通ったカッチリした演奏。ラストの8曲目は貫禄というか格調の高さも感じられて良い。あまり聴かない曲集だが、良い演奏だと思う。

最後のドビュッシーの前奏曲からの4曲。ここでは前の2作曲家と違い、さらなる音色の変化を表現している。1曲目は時にボヤけたような、霧がかったような、フワフワの綿アメを抱きしめたような、そんな音色だ。2曲目は録音のせいもあって明晰さに欠ける(意図的かも)。有名曲の3曲目はヘタなわけがなく、非常に感傷的。ラストの花火は優等生的ではないヴィルトゥオジティも感じられる。


というわけで、このゴルラッチの見落としていた盤、演奏は全体的にかなり良いと思う。クッキリしたフォルテやメリハリのあるデュナーミクは確かにベートーヴェン向きかもしれない。だが、何度も言うように録音が酷い(やたらと重厚感のある音も、録音によるものなのかもしれない)。リビングで大音量でかけるとまだマシなのだけれども、大きなマイナスだ。演奏だけでは80点台前半を付けてもいいかなと思いつつ、トータルでは70点ほどか。聴き直す回数は少なそうだ。残響好きの方にはいいかも。
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