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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Sergio Tiempo / Live in het Concertgebouw

最近はユニオンに出かけても胸がときめくことがほとんどない。


既出の見知らぬレア盤に出会うことなど、年に1・2度あるかないかなのだが、その1度がいきなり年始にやってきた(なんか毎年この時期に同じこと書いてる気もするが)。


セルジオ・ティエンポ / ライヴ・イン・コンセルトヘボウ

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これが(hetというのはオランダ語での「the」を表すようだが)有名なコンセルトヘボウ・アムステルダムでのライヴ盤とは違うCDなのだ。


ユニオン某店でふと手に取ったところ、値段がべらぼうに高くて驚いた。どうせ例のアムステルダム・ライヴだろうし、そんな珍しい盤じゃないのにと不思議に思い、一応収録曲を見たところ、1曲目にバッハのパルティータが入っていないことで脳内で完全にスイッチが入る。慌ててAmazonで調べ、タワレコで調べ、Discogsで調べ、さらに念には念を入れてGoogleでも調べ、最後に自分の記憶ともじっくり照らし合わせ、これは自分の未知なるCDと判断して購入した(だって高いんだもの)。先ほど述べたように、この3重・4重の"レア盤"フィルターを通過する盤は年に数枚もない(勿論、Discogsにも未だ載っていない)。


録音は1993/4/4、収録曲は、シューマン・幻想曲Op.17、ラヴェル・夜のガスパール、リスト・コンソレーション第3番、そしてメフィストワルツ第1番。EMIから出た夜のガスパール以外はどうやら初出のようだ。21歳の時の演奏ということになる。レーベル名がよく分からず、最初は海賊盤のような裏青CDかと思ったがプレスCDで、ジャケ写真もしっかりしているし、折りたたみのブックレットになっている。録音データも使用機材を書くなど思いのほか詳しい。肝心の音質は、隠し録りっぽさがなく、コンサートホールの前から15席めくらいで聴いているような残響多めの音で団子っぽい感じはあるが、この時代のライヴ録音としてはまずまず普通か。


シューマンの幻想曲は久しぶりに(そういえばこないだ聴いたのはアムラン盤だった)聴く気がするが、ダイナミックレンジが大きく、歌心もある。ロマンティックというよりは、力強さが目立つ弾きっぷりに若さを感じる。結構大胆にテンポを揺らすだけでなく、止まったり駆け出したりと忙しないのだが、センスがあって飽きさせない。技巧が目立つ曲ではないものの、テクニックの優秀さを随所に感じる。この曲は10年くらい前に知り合いが北川暁子氏についていて、先生がリサイタルをするというのでコンサートに聴きに行った思い出がある。その時の演奏がまた力強く、ガシンと心を掴む名演だったので、その刷り込みのせいかそんな演奏が好みになっている。このティエンポの演奏はそれを思い起こさせてくれた。


続いてラヴェルの夜のガスパール。これは後のEMIでの名演の印象が強いだけに、その6年前の演奏だからどうかなと思ったのだが、ライヴらしい勢いと生々しさがあって非常に良い。昔、ガラス細工のように繊細なこの曲はちょっとでもミスが出ると興ざめだと思い、ライヴ盤では聴きたいとは思わなかったのだが、シュフの、素晴らしい実演に接して以来、また違った楽しみ方ができるようになった。上手く言えないのだが、劇場で演者が目の前で慟哭しているような生々しさをイメージするといいかも(全く何を書いてるんだか…)ともかく、ミスはそれなりに多く、オンディーヌは時折、スカルボでは結構目立つ。それでも絞首台はグロテスクかつ暗澹たる情景を描き出しており、惹き込まれる。全体的なテクニックの冴えはEMI盤ほどではないが、それでも高レベル。ロルティ、ポゴレリチ、シュフ、グロヴナー、そしてティエンポ自身と、数ある名演の中でもやはり鋭利かつ豪快さに満ちた特異な盤として、このライヴには価値がありそうだ。

最後のリスト2曲。コンソレーション第3番は至極まっとうな佳演。最後に控える曲のために力を溜めているかのようではあるが、アルバム中もっとも抒情的で歌に浸れる演奏。音色も綺麗で、団子状に中央に密集しているのが惜しい。トリのメフィスト。出だしから金属的な打鍵でエコノム盤を思い出す。時折猛烈な勢いを見せる箇所もあるものの、むしろ緩徐部分での歌のセンスに惹かれる。重音トリルや同音連打がメチャ速く、ラヴェルで見せた細かい指技が彼の真骨頂か。クライマックス部分の迫力は凄まじいが、いまひとつスピードが上がらない上にミスが多くポロポロと目立つ。跳躍部分はテンポはまずまずだがやはり弾き損じが多い。ライヴで勢いのある演奏というとロマノフスキのブゾーニコンのガラコンサートを思い出すが、あれほど録音は良くないので、トータルではこちらの方が分が悪いか。この曲のマイベストはブニアティシヴィリかエコノム、D・トンだろうか(マツーエフには色々厳しい私)。


というわけでまとめると、団子の録音にミスが多めで、70点台の半ばという感じ。すんごいレア盤を見つけたと思ったが、中身はそれほどでもなかったというのが正直なところ。
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