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音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.77~イレーナ・ヴェレッドのショパン集(LP)~
2018-05-20-Sun  CATEGORY: 雑多な話題
イレーナ・ヴェレッド(Ilana Vered、1943-?)という女流ピアニストを知ったのは学生の頃、例のラフマニノフのコンチェルト2番の「門田本」からであった。


当時住んでいた調布市の中央図書館は、なぜだか今は絶版なこのレア本や、数学の貴重な専門書が揃っており、私は足しげく通ったものだ(残念ながら、CDの品揃えは文京区に比べるとそれほど良くない)。ともかく、門田本では(もう詳細は忘れてしまったが)ラフ2の中でも最低ランクの評価で、酷評されていたのを覚えている。実際に入手したラフ2でも、門田氏の言う通りヒステリックなおばちゃんがやりたい放題のトンデモ系な演奏だった記憶があって「こりゃダメだ」と思い、それ以来忘れてしまっていたピアニストだった。


それが、紀伊国屋書店の上に移転してアクセスしづらくなってしまったユニオン新宿クラ館(紀伊国屋のエレベーターは絶望的に混みすぎる)で見かけたのがこのレコード。


vered
(コーティングジャケットで室内で反射して見づらいのはご勘弁を)

曲はショパン、ピアノソナタ第3番、バラード第4番、軍隊ポロネーズ、それにワルツとノクターンが1曲ずつ、マズルカが2曲という、比較的王道な内容である。どうやらCD化されていないらしく、ユニオンでもそこそこの値段(忘れてしまったが1000~2000円位?)が付いていたが、ソナタ3番ではラフ2で聴けた個性的演奏でどう料理されるのかが面白そうだったので買ってみる。


これがまずまず面白い。


とにかく録音が良い。ピアノの音色が美しい。レーベルはDECCA、1974年頃の録音だがさすがという感じである。そして演奏も、「そこでタメます?」とか、「スーパーの安売りに行くのかい?」的に駆け出す箇所はあるのだが、十分に許容範囲で(というかむしろ面白い)、第2楽章での指回りで、なんちゃってピアニスト系より頼もしさがある。おまけに第3楽章では品の良さまで感じるのにチョット驚く。相当にモタレ気味なのが個人的な趣味から大きく外れるが、情感の込め方は悪くない。意外だ。そしてお待ちかねの終楽章。出だしは消え入りそうな音量だがすぐに歯をむき出しにして駆け出す。まるで昼ドラで主婦が夫の不倫相手を後ろから追いかけるような迫力だ。タメが多いのが惜しい。急速部分もスピード感はあるが、粒の揃いがやや悪い感がある。終盤は明らかにテンポが落ち、打鍵も弱まるのが残念。それでもタイムは4:38ほどで相当速い。トータルでちょっと甘いが〇、という感じか。


ノクターンは予想通り重いが、感傷には浸れる黄昏れな雰囲気はある。バラード4番も激重。それでもマジ勘弁、というほどではなく、なんだか聴いてしまう。アナログの魔力か。ユニゾンやストレッタ前は大いに盛り上げる。和音連打部分もかなりの迫力。続く弱音はやはり聴こえないほどだが、ラストは力強く夫の胸にナイフを突き立てる。ワルツ、これもねちっこく色目を使ってるような演奏。指回りはなかなかなので「できる女でしょう」と言い寄られている感じだ。軍隊ポロネーズ、力強く始まるが、躍動感に少し欠け、堅い感じがする。それでも、重めの演奏が続いた中では良いアクセントになっている(あまり好きな曲ではないのでコメントは薄目)。終わりのマズルカ2曲、これがソナタ3番で見せた品の良さを感じさせる演奏で聴かせる。特にOp.7-1は「私にもいじらしいところがあるでしょ?」みたいな可愛げのある表情さえ見せる。一筋縄ではいかない御仁のようだ。


イレーナ・ヴェレッド、以前はオフィシャルサイトがあったようだが消えてしまった。拙文で興味を持った方は、ジュスマルダホスさんの記事も読まれてみるとよいだろう。
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