FC2ブログ

The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Nick Drake / Five Leaves Left 初版をめぐる一考:その3 "REVERSE C"

3回目となるこのシリーズ。

これまでの情報
を整理すると、私の考える初版プレスの種類と順番は次のようになる。






プレス順・ラベル誤植マトリクス
① テクスチャージャケのみ枝番号なし反転C
② テクスチャージャケのみA//2, B//2
③ スムースジャケのみA//2, B//2
④ スムース ジャケ&盤両方?


このほかに、Discogsではジャケットの裏面のアイランドのスタンプが黒ではなくカラー刷りでグリーンのものの存在が(写真が挙げられているので)わかっている。しかし、そのマトリクスがどれなのかはわかっていない。ラベルの種類、誤植、マトリクスの違い等でさらに細かく分類される可能性もある。また、ユニオン等ではDGの有無についても記載しているが、テクスチャーと同義と考え、ここでは省いた。③で、スムースラベルで誤植なしの盤があるかもしれない。④のマトリクスは写真で確認したが画像が粗く判別ができなかった。文字数から考えるとどうやらリバースCではないようだ。


このレコードはここ2、3年で最高取引価格が2倍以上になってしまったと思う(価格の変動はpopsikeで検索するとよくわかる)。私は高くなり過ぎた時期に買ってしまった感があるのは否めない(人生の1枚だからと言い訳しているが…)。流動しやすい価格について記載するのはどうかと思ったが、近年高騰しがちなアナログ盤の沈静化を狙って(2018/1時点での)相場を書いてみたい。






ラベル出現比率市場価格 備考 
① テクスチャー(リバースC)320~23万ファクトリーサンプル盤?
② テクスチャー615万~最も価格に幅がある
③ スムース(ジャケ裏誤植)約3010~16万最も入手しやすい
④ スムース(W誤植) 123万最もレア


出現比率というのはこの1年半ほどの間にユニオン・HMV・ebay・Discogs・ヤフオクその他レコード屋で私が目撃したこのレコードの大体の枚数を書いている(勿論見落としや重複もあるだろう)。国内の市場では、③のスムースラベルが年に4、5枚は出てるようだ。ebayでも10万~12万前後で常時複数枚出ていたが最近は少なくなった。テクスチャーラベルとスムースラベルの見分け方をもう一度書いておくと、テクスチャーはザラザラした凸凹感があり、スムースはなめらかである。しかし、写真では判別しにくいので、DG(ディープグルーブ・・・ジャズのレコードでよく出てくるレーベル面の深溝のこと)の有無で判断するとよい。ラベルの淵の内側の円周に沿ってテクスチャーは切れ込み?のようなミゾがあるのに対し、スムースの方にはなく、なめらかに盛り上がったカーブになっている。私が思うに、年間で結構枚数が出てくる割に価格が高騰しているのはやはり作品自体の人気によるのだろう。稀少な盤なはずだが出せば売れるのでどんどん市場に出回り、高値安定という悪循環になっている気がする。


世の中にはアナログレコードの稀少性を尊ぶ方々もおられるが、私としてはやはり音質に最も関心がある。最愛の盤のひとつは、最良の音質で聴きたい。稀少性では④のスムースラベルW誤植が最もレアで、以前書いたようにこれまで1枚しか見たことがない。だが、これは1stプレスとされる中で最もレイトな盤ではないかと私は考えている(前述したようにマトリクスは未確認)。つまり、常識的に考えると音質面での評価は低くなる。海外のサイトでBest vinyl pressing of Five Leaves Left?という議論が掲示板で数年に渡ってなされている。長すぎて全てには目を通していないが(オリジナル盤の盤起こしのハイレゾが最上だと何度も書いている人がいる)、そこでも「最初のプレスA1B1に何らかの不具合があってA2B2がプレスされたのだ。だからこれが最上」と書いている人がいる(念のため書いておくとA1B1というマトリクスは確認されていない)。また、上の表にまとめたようなラベルとミスプリントの違いで分類している方もやはりいる。


どれが最良の音質なのかは結局聴いてみないと分からない。CDなどデジタルは無ノイズだが、経験上では表現という点で緻密さでアナログに劣ると思っている。アナログにはノイズというデメリットもあるが耳馴染みがよく存在感のある太い音が好きだ。盤起こしは元の盤を超えられないのでアナログの原盤が手に入るなら見送るのがよかろう。というわけで、できるだけ初期のプレスのレコードを求めるべきだというありがちな方針になる。ということは、ユニオンが書いているように世界市場でも確認された数が少ないというリバースCを探すしかない。




この度、四方八方手を尽くして"リバースC"を手に入れた




経路は某レコ屋を通じて海外の業者から入手。現地イギリスのコレクター&業者の間ではリバースCのマトリクスについては知られていたということである。ユニオン渋谷店の盤の購入も検討したが、コンディションを考えるとやはりあの価格では手を出せなかった(これを書いた2018/1/15現在未だに売れ残っている。やはり高すぎる)。自分の買った盤の額を書きたくはないが、ユニオン渋谷店よりはかなり安く買えた、ということだけ書いておきたい。

FLL

IMG_20180113_180719-614x569.jpg

IMG_20180113_180751-614x392.jpg


入手したレコードのコンディション、今回でトドメを刺そうと盤質で妥協しなかったので厳しく見てもEX+~EXと言える。表面には光沢が残り、ごく薄いヘアラインが数本ある程度。早速手放した②テクスチャーとの(記憶での)比較を試みる。


マトA//2B//2の②テクスチャーと比べてかなり違うのが聴いてすぐわかる。とにかくまず、ベースがメチャクチャ出ている。我が家はスピーカーの低音がショボいのでウーハーを追加しているのだが、少し絞ろうかなと思うほど全曲に渡ってよく低音が出ている。これは②ではなかったことだ。さらに各楽器やヴォーカルの明瞭さ、音の分離が素晴らしい。アナログ特有の空気感に加え、音の輪郭が整っていることで、例えばtr.4とtr.5のヴォーカルにかかっているリヴァーブの違いもはっきりと聴きとれる。これにはデメリットもあり、各楽器の輪郭が強調されたことで逆に歌が引っ込んでいるように感じて気になる曲(tr.2、7)もあれば、よく伸びて聴こえる曲(tr.3,8,9)もある。もっとも、これは単に盤の部分的なコンディションの良さによるのかもしれない。アルバムで重要な要素を担うストリングスだが、アナログらしい重厚な響きが素晴らしい。②も良かったが、この盤では低音が加わったことでさらに豊穣に響いているように感じた。tr.6「チェロソング」の、まさしく間奏のチェロの音色はもはやクラシックのそれと言っていい。また、以前所有していた②では時折ストリングスが加わった時の最強音でサチっていたが、今回は盤質せいかプレスのお陰か分からないが今回はそれもない。ギターはリアルな再現性の面で②よりも優れている。例えばtr.6などで、アルペジオでの各弦のサステインの違いまでしっかり聴きとれる。ところが、だ。



レコードにキズが見られないところでのプチパチノイズが結構出るのである。



静電気のようなプチパチ音の量が、私の基準からすると許容範囲ギリギリなのだ。それも、レコードをかける時々によってノイズの量もかなり変わる。ゴミやチリかと思い、1度丁寧にクリーニングしたがそれほど改善されなかった。このプチパチノイズについてはgeppamenさんがブログで好事家の話として書かれていたことなので、ちょっと気になっていた(好事家がリバースCマトのことを指しているとは限らないけれども)。今思い返すと、コンディションが悪いと思って手放した②テクスチャーでもほぼ似たようなノイズがあって手放す決断の一因となったので、もしかしたらマトリクスに関わらずこの初版レコードの欠点なのかもしれない。反転Cマトの盤をごく少数プロモ用にプレスした後、ノイズの多さ等このマトの問題に気付いて前述のフォーラムの意見のようにA2B2マトの盤をプレスしたのか(目の覚めるような鮮度の音質そのものは素晴らしく、失敗プレスとはとても思えないが)・・・色々推測してしまう(私は③④のスムースラベルの盤を聴いたことがないので、ノイズの量の比較については分からないがお持ちの方は感想を寄せてくれると嬉しい)。キンクリ『宮殿』のオリジナル盤は、超絶激レアのA1B1マトでなくA2B2の方がバランスが良い、という話を聴いたが、それと似たようなことが当てはまるのだろうか。分からない。


結論を言うとこの①リバースCには、②と比べてその稀少性と価格の分だけの音質の違いはないだろう(泣)まあ②もコンディション面以外の音質そのものには満足していたのだが・・・。ユニオン渋谷で売れ残っている間にリバースCの盤を一度試聴してみようかな…適正価格は14万くらいではないかと思うが>>ユニオン渋谷店さん。



というわけで、一部ちょっと残念な結果となってしまった。ノイズに神経質な私はそもそもアナログに向いていないのかもしれない(聴くのは大好きなのだが、同じくらいイライラ&ガッカリすることも多い)。洗浄液を替えて盤を洗浄したり、傷の修復、セッティングの仕方でノイズを改善できるのかもしれないが、今後の宿題だ。アナログレコードの道というのは、果てしなく険しい。


・・・このマトリクスがebayに出たようにファクトリーサンプルとしてプレスされた盤だとすると、ニック・ドレイク本人が最初に耳にした音である可能性がある。世に出て50年が経とうとするこの作品、そう考えるとより一層感慨深い。私は基本的にアーティストを神格化するのを好まないが、彼だけは別だ。

スポンサーサイト




アナログレコード | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<最近聴いている音楽 vol.70~マーラー・大地の歌「告別」ピアノ編曲版2種 | ホーム | 最近聴いている音楽 vol.69〜バッハ平均率第1巻2種>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |