音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
マルク=アンドレ・アムランによるアルカン・独奏ピアノのための協奏曲(再録音)
2007-09-03-Mon  CATEGORY: 音盤紹介
ネットで以前からアナウンスがあった、アムランのアルカン・ピアノ独奏のための協奏曲がついに発売されたので購入してみました。実に14年ぶりの再録音となります。


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早くもネットでは絶賛の嵐・・・なのですが、これはある意味当然と言えます。と言うのも旧録音のM&A盤は、アムラン渾身の演奏にもかかわらず、MIDI音源のごとき想像を絶する最低の音質によってその魅力が半減してしまっていたからです(90年代の録音のくせに最強音で音が割れる・・・!)。そのため、優秀録音を誇るhyperionでこの曲を録音してくれていれば・・・との思いがファンの間に募っていました。ただ、たとえアムランと言えどもこの超難曲を以前のようなクオリティでもう一度録音出来るのか?という一抹の不安があったのも事実。しかし、蓋を開けて聴いてみれば、結果としてファンの声に120%応えた名演であったというだけでなく、彼の数多の名録音の中でも特筆大書すべき1枚になったのではないかと確信しております。


まず、やはり録音が明らかに良い。レコーディング・エンジニアは名人と謳われるTony Faulknerでないのが残念ですが、それでも適度な潤いと明晰さがあって合格点(個人的な好みを言うともっとオンマイクだった方が嬉しい)。肝心の演奏の方ですが、大筋では変更はないものの部分部分で少しテンポが落ちているように感じます。というか、旧盤は(アムランにしては)無茶な突っ込みがかなりあって、そのテンポの揺れが気になっていたのでこれはむしろ改善した点と言うべきでしょう。残響の多い録音のせいか、多少左手の和音が団子気味であったり、非人間的な跳躍部分でわずかに不自由を感じなくもないところがあるのですが、これはそもそも曲に無理があるわけなのでほとんど気になりません。


今回驚いたのは、残響多めの録音によって左手の重低音が増強されており、ズシンと響くその轟音が以前の彼にはなかった新たな魅力となっている点です。アムランは御多分に漏れず僕も大好きなピアニストで、発売されているほとんど全てのCDを購入しているほどなのですが、その薄味な音楽性が喰い足りないところもあって必ずしも全ての演奏が好きなわけではありませんでした。けれども、今回は録音するだけで大変なこの曲を、あまりに玲瓏なる明晰さで弾ききっており、この再録音に懸けた彼の気概を感じます。特に、第1楽章8分6秒辺りからの‘第1主題に基づいたbrilliant section’の急速な指回りはおよそ人間の限界を超えているとしか思えません(ちなみに、ライナーによるとこの第1楽章だけでベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタより小節数が多いそうです。72ページ、1343小節!)。第1楽章終わり近くの、どこまでも続く同音連打の粒の揃いやスピードには悶絶することでしょう。音色のパレットが少ないと言われがちな彼ですが、第2楽章での叙情的な語り口も美しい。終楽章全般に渡る超人的なたたみかけなども宇宙ヤバい。併録の歌曲集第3集も十分に手の内に入った音楽的な演奏。終曲の舟歌などは1994年のフスム城音楽祭ライヴでも弾いていますが、それよりもテンポがかなり遅くて叙情的(その時が3:15で、今回は4:00)。


ちょっと褒めすぎな気もしてきましたが、客観的に聴いても手持ちのアムランのCDの中でもベスト5に入る名盤でしょう。出来るだけヴォリュームを大きくして近所迷惑覚悟で聴くとさらにその素晴らしさを享受できると思います。ちょうど明後日で46歳となるアムランの技巧がまだまだ健在なのが嬉しいところ。このアルバムでひとつ気に入らないところがあるとすれば、それはジャケットです。


hyperionは何を目指しているんでしょうか。




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