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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

Kit Armstrong / Bach Ligeti Armstrong

キット・アームストロングの他のCDをユニオンで安く見つけたので早速購入。録音は2013年なので、当時若干21歳の時の演奏ということになる。


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以下、収録曲はHMVから引いた(輸入盤と曲順が違うようなので一部入れ替えた)

・J.S.バッハ:最愛なるイエスよ、われらここに BWV.634
・J.S.バッハ:主よ、汝のうちにのみわれ望みを持つ BWV.712
・J.S.バッハ:ただ神の摂理にまかすもの BWV.690
・J.S.バッハ:我らが救い主、イエス=キリスト BWV.666
・J.S.バッハ:イエスはわが喜び BWV.713
・J.S.バッハ:甘き喜びのうちに BWV.729
・J.S.バッハ:高き天よりわれ来たり BWV.738
・J.S.バッハ:いと高きところにある神にのみ栄光あれ BWV.715
・J.S.バッハ:いと高きにいます神にのみ栄光あれ BWV.711
・J.S.バッハ:主イエス=キリスト、我らを顧みたまえ BWV.655
・J.S.バッハ:キリストは死の絆につきたまえり BWV.625
・J.S.バッハ:おお人よ、汝の大いなる罪に泣け BWV.622
・アームストロング:ファンタジー・オン・バッハ (2011)
・J.S.バッハ:パルティータ第1番変ロ長調 BWV.825
・リゲティ:『ムジカ・ルチェルカータ』より第4,3,10,9,5,7楽章


またそれほど聴き込めていないのに書いてしまう。まずはゴルトベルクで感銘を受けた、得意と思われるバッハのコラール。やはり抑制されたタッチ、禁欲的でしっとりと落ち着いた演奏になっている。タッチのコントロールぶりはゴルトベルクのBDほどではなく、あれがライヴということもあってあのような柔らかいスタッカートとも言うべき抑えた表現になっていたのかと思う。演奏の傾向としては、シュフ、ブレハッチ系統のバッハと言えるかもしれない。グレイルザンマーやムストネンのようなある種の突き抜けたあざとさや挑戦的な弾き方ではない。フーガ的な部分では、彼の特徴である、どの声部も独立した人間が別々に弾いているかのように等しく聴こえてくるのはここですでに健在である。コラール群は1曲1曲が短いこともあって演奏の特徴がやや見えづらいが、無機質のようでいてどこか温もりのある解釈がじんわりと心に染み入ってくる。ただし、これはゴルトベルクの先入観があるせいかもしれず、「いたってフツーの演奏」と思う人がいる可能性はある。それでも、比較的長めのBWV.622での音楽性は素晴らしいと思う。


次は自作の「ファンタジー・オン・バッハ」。10分ほどの曲で、出だしは緩徐的に複数の声部がメロディの形をとらずに不気味に川の上流でうごめく感じ。プロコフィエフの中期のソナタをゆっくり弾くとこうなるかも、というフレーズが延々と続く。どこがバッハなのかは全く分からない。すごく数学を感じるのはきっとこれも先入観のせいだろう。中盤からは曲の音数も勢いも増していき、激しく流れる川のごとくなっていく。音使いは現代的そのもの。後半はまたゆったりとしたプロコフィエフ調というかリゲティ、メシアン等の雰囲気となる。面白いかどうかで言えば面白くない。


つづいてバッハのパルティータ1番。これはアンデルジェフスキの1・3・6番の抜粋をよく聴いていたが、あのような品の良い躍動感はないが、落ち着いた優美な演奏。欲を言えば、やや普通っぽい演奏の感じがするので、ゴルトベルクBDのような超コントロールされたタッチを聴かせてほしいところだが。


最後はリゲティのムジカ・リチェルカータ。色々なところで色々なピアニストが抜粋で弾いている(私の好きな盤だと例えばババヤン)が、今回初めて聴いた曲もある。ピアニスティックな曲は少なめで、と言えば緩徐的なものが選ばれているようである。最後の7番はババヤンも弾いていて、左手が無窮動な動きを繰り返す分かりやすい曲なので覚えていたが、彼よりテンポがかなり遅いが凛とした透明感のある右手の語り口が良い。他の曲は詳しくないので、バッハのようにタッチの精妙さや解釈の新鮮さという楽しみ方ができない分、面白さは薄いか。


…というわけで、かなり期待してハードルを上げて聴いたわけだが、75点というところか。バッハは優れものの演奏と言えるものの、他の選曲が王道というわけでもないので、聴き比べの楽しみも出来ず、突き抜けた解釈も聞けず、イマイチ不完全燃焼な印象は残る。音楽性では光るものがあるが、技巧的には特にズバ抜けているというわけでもなさそう。


うーんやはりゴルトベルクBDの1枚で天才と決めつけるのは早計だったようだ。お次は彼のリスト集について書く予定。
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