音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
クラシックピアニストの未来〜AIは音楽を奏でるか〜
2017-07-22-Sat  CATEGORY: コラム
最近、次の本を読んだ。

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ルトガー・ブレグマン著『隷属なき道〜AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働〜』

帯が鮮烈である。

「福祉はいらない。お金を直接与えればよい。」

裏帯も衝撃である。

「貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる」

「貧困家庭の子どもは、奨学金の制度があってもそもそも申し込まない」

「福祉制度を全てやめて、直接お金を振り込むと、人々は学び働きだす」

「今日では、わずか62人の富豪が35億人の総資産より多い富を有する」

「米国人の仕事の47%、欧州の人々の仕事の54%が20年以内にAI・ロボットに奪われる」


本では、さらに詳しく根拠となる数字を、そのソースと共に説明している(巻末に膨大なリファレンスが載っている)。

「2009年、ロンドンの13人のホームレスに3000ポンドを与えた。見返りどころか紐も何もついていない。自由に使うことができる。一年後、彼らは平均で800ポンドしか使っていなかった。さらにその半年後には13人のうち7人が屋根のある生活をするようになり、他2人もアパートに移ろうとしていた。そして13人全員が、支払い能力や個人的成長へとつながる重要な足がかりを得ていた。ソーシャルワーカーの賃金を節約して、ただ単にお金を与えることが最も効果的であった。」

「貧乏人はお金の扱いが下手だと、我々は思い込んでいる」等々、にわかには信じ難い報告がたくさん書かれている。ベーシックインカムについては漠然とwikiで読んだ知識しか持っていなかったが、とにかくこれには驚いた。著者は「働き過ぎ」についても延々と非難しており、(過労とパワハラとで転職した私も含め)多くの日本人には耳が痛いのではないか。そのような社会構造そのものの改革を著者は主張しており、なるほどと考えさせられること多大であった。しかし、私が書きたいのはこれではない(これは一応音楽系ブログである)。以前も書いたがAIの話である(ちょうど今、マツコが初だというNHKでの司会でAIの番組をやっている。興味深い)。




AIは近いうち人間のピアニストを超えるのではないか?





という危惧が私にはある。近いうち、とは5〜10年を指す。現に、「Band in a box」というバンドマン向けの老舗アプリは確か10年以上前からあるが、ジャズのインプロヴァイズを「誰々風」として指定すればアドリブをとってくれる。哀しい事にその演奏は、私の演奏よりも遥かにジャズでカッコいいのだ(なんてことだ)。


クラシックピアノは楽譜通りが(基本的には)尊ばれるのでMIDI等で対応しやすい。ナナサコフの存在も20年近く前からある。将棋の名人が過去の棋譜を大量に学習したAIに負けたのが話題となったが、同じように有名ピアニストの演奏をAIに何百何千と読み込ませれば大変なことになるのではないだろうか。人間が「感動しやすい」アゴーギクやデュナーミクが解析されれば、ノーミスで楽譜を再現できる自動演奏ピアノに人間は勝てないのではないか。Band in a boxのように「ポリーニ風」や「アルゲリッチ風」などと簡単に名ピアニストの演奏が完璧に再現出来れば、ピアニストや指揮者は失業し、ピアノを習う人は減るのだろうか(そうなると我が家は経済的に困る!!)。極論すれば、音楽産業が衰退するのみならず(すでにしている)、音楽という文化そのものが喪失するのではないか?



しかし、完璧な自動演奏をわざわざ聴きたいと思うかどうかはまた別である。



先日吉祥寺の某電気店で「2台の電子ピアノで自動演奏コンサート!」というのをやっていたが、子どものおもちゃ売り場階にも関わらず、席はガラガラであった。前回の布川先生に関する記事でも書いたが、ハイレゾ隆盛の時代にあってアナログレコードブームが到来、一見時代に逆行するかのような現象が起きている。我々はレコードをかける手間に意味を求め、プラシーボでアナログを良い音と錯覚しているだけかもしれない。人間にとって「良い音」もそのうち科学的に解明されるのだろうが(音だけでなく幸せという点で)、その時まで、レコードは消えることはないだろう。


それでも、過去の演奏を解析することなく、まったく新しい解釈でAIが素晴らしい演奏を奏でるようになったとしたら・・・私は複雑である。ざっくりと言うと、そんな未来が幸せかどうか?についても、冒頭に紹介した本に書かれている。機会があれば是非ご一読されたい。
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