音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.48〜トリフォノフのリスト超絶〜
2017-02-03-Fri  CATEGORY: 雑多な話題
若手金メダルコレクター、ダニール・トリフォノフが昨年リスト超絶2枚組を出した。気になっていた盤をようやく聴く。3回通しただけだが書いてしまう。


トリフォノフの演奏は例によってショパンのソナタ3番しか知らない。そこでは豊かな叙情性を表現しようという意思は感じられるものの、まだまだ青い(というか波長が合わないのか私の琴線には触れない)という印象であった。1枚で見切るのは惜しいと思っていたところに、リストの2枚組である。超絶全曲にコンサートエチュード5曲、さらにパガニーニによる大練習曲ときてる。正直、この難曲群を揃えて「いい度胸してるな」と思った。1枚ずつ出しても良さそうな内容だ。



聴く前は「ショパンのソナタで聴けたような甘いマスクの優男が女性を口説くような」演奏かと思っていたのだが、半分アタリ半分ハズレと言ったところか。



まずはdisc2の方から(超絶は聴き疲れするので後回し)聴く。コンサートエチュードを一聴して、録音が良い!というか、やたら近接録音でしかもピアノの音色が耳に痛くない(DGの録音技術の為せる技か)。ショック・アブソーバーが鍵盤についているというか、強打してもキツい音にならない構造でピアノが作られているかのようである(勿論、録音の影響が大きいのもありそうだ)。また、ショパンではキザな印象(あざとい感じ)を受けた語り口が、実にこのリストに合っている。エチュードではあるが、技巧のための技巧ではなくあくまで音楽を表現する手段としての技巧、という印象を受ける。これには驚いた。barで口説いているような安っぽさは微塵も無い。『小人の踊り』も、音色の粒が揃っているとかテンポがきちんと測られているとかそういう次元ではなく、音楽を虚飾なく語ろうという姿勢に感じる。タッチの表情付けが素晴らしい。この前半5曲には感心した。


続いてパガニーニ大練習曲。この間のフィリペツの名演があるのでどうかなと思っていたが、案の定雲行きが怪しくなってくる。第1番のトレモロのキレはちょっと物足りないし、ラ・カンパネラも歌はともかくテンポが遅い。第6番だけはなぜか速めのテンポでかなりのテクニックを見せるが、それでもラエカリオやフィリペツには及ばない。フィリペツは宙に舞う半紙を日本刀で切り裂く鋭さがあるなら、トリフォノフは手で掴んでハサミで切ったような感じだ(なんという例えだ)。前半5曲は素晴らしい出だしだったのに、アレレと思ってしまう。


段々と不安になってきていよいよdisc1の超絶12曲。これはもう巷ではkyushimaさんのレビューがクラシックピアノファンに膾炙して全集はオフチニコフ一択のような気がしているが、果たしてどうか。前奏曲こそまずまずの迫力だが、第2番はベルマンVictor盤でこの曲を刷り込まれた身にはおとなしめというか、少し優等生的に響く。第3番は期待していた歌い方が微妙で、単に足取りが重いだけのように聴こえる。そして、disc2のほうではそんなに感じなかったのだが、マゼッパなどではピアノの音が柔らかく感じてもう少し金属的で鋭い音色も欲しくなってくる。そのマゼッパは出だしのユニゾンはいい感じなもののその後の主題はオフチニコフ新盤と比べると堅いというか、噛み締めるようなところがあって惜しい(演奏時間は8分台でオフチニコフより30秒以上もかかっている)。鬼火はキーシンや横山盤ほどの高速テンポではないが3分半を切る演奏時間でこれはかなりいい(そしてまた非常に音楽的である)。続く幻影も叙情的で巧いけれど、リストの超絶としてはどうだろう。エロイカも同路線(中盤の下降・上昇のアルペジオが美しい)。狩はオフチニコフとテンポこそ変わらないが、キレというか迫力の点で物足りない。回想も音楽性重視の演奏で、聴かせる演奏だが繰り返し書くように超絶としてはどうなのか?10番冒頭のキレもいまひとつな気がするし、ラスト2曲もややテンポ遅めでどちらかと言うと音楽性に偏っている(11番などかなり遅めによく歌っているのだけれど)。


ネット通販のレビューではどこも絶賛の模様である。確かに、普段シンフォニーをメインで聴いているようなベテランのクラシックファンの方が聴いたら「歌が上手いしこれは凄い!」と思う演奏のような気がする(水準以上のモノは持っている)。少なくとも、ショパンのソナタよりは語り口に惹き付けられる。けれども、普段からテク重視のピアノ曲やピアニストを根掘り葉掘り意地悪く聴いている私のような向きには「リストの超絶」として若干物足りない感は否めない。


というわけで、disc2の前半は素晴らしいものの、肝心の超絶とパガ練は70点というところ。それでも、ショパンコンクールの時のソナタは気になってきた。リシャール=アムランのコンクールもyoutube以来聴いていないのにアレだけど。トリフォノフは私の好きなババヤンに師事しているということなので、レパートリーに加わるであろうラフマニノフの3番では師匠を超える演奏を残して欲しいものである(結局このエリコンラフ3レビューは書いていないが、技巧の確実性で言えばプラッジ>ババヤン、ボロヴィアク>ルデンコ、ジュニエだった気がする。まぁプラッジはシェン・ウェンユーや若林と同じテク路線ではあったが)。
スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2017/09 >>
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.