音楽好きの世迷い言
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横山幸雄のラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
2016-12-28-Wed  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
横山幸雄氏のリストの記事を以前書いた時、「そろそろラフ3も聴かねば」と思っていたのですが、ようやく中古でgetしました。2012年2月28日サントリーホールでのライヴ演奏で、指揮は小泉和裕、オケは東京都交響楽団。フォーマットはハイブリッドSACDで、iPodに取り込んでイヤホンで数回、それとSACDレイヤー層をスピーカーで(リーズナブルな音量で)1度聴きました。


何度か書いてますが、横山氏は岡田博美氏の後に続く日本が誇る世界的なテクニシャンだと思っているので、実は結構期待していました。聴く前は「細かい箇所はクリアで、やや遅めのもったりしたテンポでの冷静緻密な演奏」だと予想していたのですが、その予想は良い意味で大きく裏切られました。


まずとにかくテンポが速い。演奏時間は順に15:42/9:50/13:45となっていますが、ライヴなので終楽章は拍手入りで実際には13分10秒を切るものとなっています。第1楽章は出だしから飛ばす飛ばす。こんなに速い演奏は久しぶりに聴きます(先日書いたヴォンドラチェクはまだCDが届いていないので正規のレビューではないということで・・・)。緩徐部分は意外に(と言っては失礼ですが)かなり聴かせます。両手交差も実に力強い!お待ちかねの展開部の和音連打は十分なスピードですが、音が深くまで鳴り切っていない感じなのが非常に惜しい。また、録音がやけにマルチな感じで、弦楽器の定位がやたらと細かく感じます(ある意味凄い録音)。特に、右側のコントラバスは未だかつてないほど音がでかく、真ん中やや左寄りのピアノの音にも少し被っている感じです。演奏時間が15分台だし、originalのカデンツァの方が彼向きかなと思っていたのですが、嬉しいことにカデンツァはossia。やや音ギレが悪く締まりに欠けるのが若干気になるものの、後半の和音部分はメチャメチャ速い!いくらなんでも速過ぎじゃないの、というくらいの凄まじいスピードで(技巧を見せ付けているかのよう)、個人的にはもっと音を深々と鳴らし、思い入れをもって表現して欲しい気もしますが、それにしてもこのテクニックは手持ちでもトップクラス。勿論、ノーミスです。第1主題の再現部も極めて切なく弾き上げており、何気なく聴いていた家人も「こんな単純な旋律をここまで聴かせるなんて・・・巧いわね」と感心(学生の頃、彼女は横山氏のショパコン後の凱旋公演を聴きに行ったことがあるとか)。


第2楽章、オケの音の分離の良さというか、録音にも感心(イスのきしみや呼吸音まで拾ってる気がします。また、この楽章は特にオーディエンスノイズも気になります)。ピアノが入って来てからの叙情的な旋律が素晴らしい。。技巧派の歌いベタという彼に対する個人的な印象を大きく変えるものです。ピアノの録音がややライヴすぎて残響が実音に被って濁っているためか音色の変化はそれほどでもないのですが、それでもこの語り口は聴き惚れます。その後の細かいフレージングは彼の独壇場という感じ。左手の上昇音型の力強さも目立ちます。オケも健闘しており、良い音を奏でています。ところどころで定位が変わる?気がするのが多少気になります(突然前面に出てくるように感じる)。


第3楽章、出だしの同音連打に始まる細かなフレーズのタッチも実に見事。かなりの高速テンポながら、細部での表情付けをしているのが凄い。というか、巧い。巧すぎる。極めて流麗に音楽が進んで行きます。重音の得意な彼のことだから、重音ossiaを弾いてないかと期待しましたが、ノーマルでした。そこからは徐々に熱を帯びていき、オケとともに駆け出します。強奏部ではオケに埋もれがちなのが惜しい。「鐘」の部分の前後もはっきり言ってオケが目立ち過ぎです。エンディング手前の2拍3連で降りてくる辺りもピアノが聴こえません。ともかく、大熱演で終わった直後はブラヴォの嵐。ほとんどノーミスなのでゲネプロからの編集は入れているかもしれません。録音日は上記の1日だけとなっています(私はむしろ編集して欲しい派)。


聴き終えて、横山氏の素晴らしい演奏に深く感激しました。ひとつ残念なのは、ある意味良質な録音がピアノを埋もれさせていることです。オケの音色が素晴らしいのは良いのですが、協奏曲では逆に仇となってるかなとも思いました。上でも書きましたが、ピアノの残響多めなのがこの盤最大のマイナスポイントでしょう。ピアノへの不満は、強いて言えばさらなる和音の深い響きと、終楽章等での熱っぽさでしょうか。また、全体的に優等生すぎるという人もいるかもしれません。


色々録音上の不満も述べましたが、ピアノのテクニックと叙情性は数多の手持ちの盤にあっても最上位と言えるでしょう。トータルな評価でも、これは躊躇無く日本人ピアニスト初の4つ星☆☆☆☆を付けたいと思います。

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