音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.28〜新垣隆のピアノ協奏曲「新生」〜
2016-12-10-Sat  CATEGORY: 雑多な話題
私は比較的音楽に偏見を持たないタイプであると自負している。


ジャズやロックにJ-POP、プログレ、ハードロック、ヘヴィメタル、デスメタル、パンク、テクノ、ファンク、アイドル音楽までなんでも聴く(嫌いなジャンルもあるがここでは書かない)。そこに貴賎はない。あるのは(私にとって)好きか嫌いかだけだ。ピアニストの優劣を付けているではないかと言われればそれまでだが、あれも「演奏が好き嫌い」の延長上だということだ。どんな人が、どんな経緯で音楽を世に送り出すかは勿論大切なことだが、出て来た音楽はまっさらに楽しんで感動しようというスタンスで私は音楽を聴いている。


さて、私は佐村河内守名義の曲を1度も聴いたことがない。ただ、たまたま当時のNHKのドキュメントは観ていて、「世の中には凄い人がいるもんだ」と思ったことはある。だからその後の騒動にはひどく驚いた。


新垣隆という人は、バラエティ番組でたくさん観た。嫁と二人で「キャラが立ちすぎている」「いい人感が出過ぎ」などと言い合っていた。そんな彼の、「本職」である作曲家としてクレジットされたアルバムを今回ひょんなことから聴くことになった。とりあえずピアノ協奏曲からだ。

第1楽章、出だしはドロドロと低音からウネるようにピアノの主題が現れる。突然インテンポになって、比較的わかりやすい旋律が2度繰り返されるも再びドロドロとした低音に飲み込まれる。すぐに束の間の叙情を見せるが、再びピアノの主題が巡ったりと、落ち着かない。4分過ぎからは今度こそリリカルで短いピアノソロ。それをオケでなぞりつつ、ピアノが合いの手を入れたりして、このモチーフは1分半ほど引っ張られる。後半に差し掛かると、冒頭のドロドロした低音群が反復するピアノのリフレインとして形となって現れる。そこからはさしずめロシアのマイナー作曲家のピアノコンチェルト的雰囲気だ。

第2楽章は典型的な緩徐楽章。ピアノソロで叙情的に歌う。この辺りに彼の真骨頂が見られると思うのだが、所謂クラシックの旋律とは違う感じで、TV的というか映画的というか、それでいて「キャッチーなメロディを書く訳にはいかんのだ」という現代の作曲家(※吉松隆を除く)の葛藤も感じたりする。旋律の性格はやはりどことなく日本的だ。楽章半ばの3分くらいまではピアノメインで歌われ続け、その後はオケと交互に顔を出し、楽章の終わり手前1分頃には再びピアノが短いが切ない響きを奏でる。ここでようやく様々なクラシックの作曲家のメロディの萌芽みたいなものを聴き取ることができる。「あれに似てる」「あれ風だな」「それともあっちかな」と考えてる間に楽章が終わる。ここに彼の「音楽オタク」という面が見られているのかも。

第3楽章、同音連打の主題として力強く始まるが、それは第1楽章の出だしの主題の類似へと回帰していく。怪獣映画というか戦争映画というか、そんなワンシーンを観ているかのようにピアノはゴォンゴォンと低音をハネ回る。再現部を経て、楽章の半ば過ぎから展開部?と呼ぶのか、オーケストラの弦の力強い響きに引っ張られながら盛り上がりを見せていく。終始ピアノは低音をゴォンゴォン鳴らしてる印象である。その後は鈍くオケと掛け合いながら曲は激しさを増して行き、映画音楽的な解決と現代音楽的な帰結の折衷のような表情を見せて曲は終わる。合計19分ほどで、あっという間である。


この曲の評価を云々する立場にないが、無理矢理喩えると、「20世紀半ばのロシアの売れない作曲家が自分のピアノの技量と相談しながら書いたドロドロしたコンチェルティーノ」・・・だろうか。とにかく、曲想がコロコロ変わって落ち着かない箇所と、やたらとモチーフを引っ張る箇所の繰り返しで、はっきり言ってまとまりがない。もう少し長く、1.5倍に引き延ばして曲を成熟させたら面白かったのかもしれない(曲が本格的に長いと一般の聴衆に受けづらいと考えたのかもしれないが・・・)。何より思うのは、ピアノがこちらが期待するほど活躍しないことである(私がピアノ好きということもあるが)。もっとバリバリ弾いて欲しい(まああの彼が弾いていると想像すると「頑張ってるなぁ」と十分思えるほどには音が鳴っているのだが)。

結論を言うと、頑張って2回聴いたがもういいかなという感じ。「シンフォニーも聴いて感想をよろしく」と言われているのだが、正直お腹いっぱいだ。「吉松隆のような、旋律主義で聴きやすくそれでいて繰り返しのリスニングに耐えうるある種の現代っぽさ」を期待すると肩すかしを喰う(念の為に言っておくと私は吉松隆が大好きである)。

TVで見る彼の人柄を考えると、こうして大手レーベルDeccaから自作自演が出されるというのは本当に喜ばしいことだ。しかし、この騒動がなければ彼はこうしてCDを出すこともなかったのではないかとも思う。一応申し上げておくと、きっとこのブログの読者の方々はお金を出して買われる必要のない音楽である。気が向いたら、シンフォニーも聴いて感想を書こうかな。。

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