音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.18〜UnwinのDamaseピアノ作品集〜
2016-11-29-Tue  CATEGORY: 雑多な話題
さてアンウィンのDamase。


ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928-2013)はフランスのコンポーザー=ピアニスト。wikiによるとコルトーにピアノを学び、パリ音楽院をイヴォンヌ・ロリオと同時に首席で卒業というから相当にピアノの上手な人だったのだろう。曲はどれもピアニスティックで、しかも分かりやすい。現代の作曲家だが完全な調性音楽で、かつ拍子(ビート)も聴いている曲ばかりだ。


私の貧弱な語彙で無理矢理楽曲を喩えると、プロコフィエフ的な基礎の上にデュティユが家を建て、平尾貴四男が屋根を葺き、その上に吉松隆と久石譲のスパイスを振り掛けたフランス家屋という感じだ。同国代表のラヴェル・ドビュッシーの影響はそこまで強くない。メロディも陳腐でない程度に分かりやすく、そして美しい。かなり日本人好みの曲想ではないだろうか。Amazonでは、アンウィン本人にCDを売ってもらった方がレビューを書くなど、熱烈なファンがいるようだ(しかし世の中、凄い方がたくさんいるものだ)。


序奏とアレグロは1992年のロンティボー国際コンクールの課題曲。規模的にプロコのソナタ1番のような感じで、緩急のメリハリが聴いていて取っ付きやすい。いかにもコンクール用に作られた感じのするフレーズも頻出するが、そのせいかピアノも十分に活躍し聴いていてとても楽しい。「こしらえもの」なわけだが、名曲だと思う。私がいちばん気に入っている曲。


主題と変奏、18分ほどの演奏時間で15の変奏が展開される。旋律と技巧の織り交ぜ方が巧み。第14変奏のAllegro ma non troppoは思い切りデュティユのピアノソナタの終楽章みたいなフレーズが出て来て非常に盛り上がる。これもいい曲。


続いてピアノソナタ。プロコフィエフ的な重低音で力強く始まるが、すぐにきらめく星のような柔らかい叙情も見せる。その後もヘヴィなパートとキャッチーなパートが頻繁に交替し、一筋縄ではいかない感じだ。面白い。


お次は6分ほどの緩徐曲、アパラシオン(幻影)。リビングで聴いていると嫁が「これ、大ちゃんが踊ってたやつじゃない?」と言う。高橋大輔がフィギュアスケートの曲として使用していたニーノ・ロータの「道」にソックリだと言うのだ。「絶対パクりよ!」…確かに聴き比べると恐ろしく似ている。。。似すぎている気もする。アヴェマリア的な主題の拝借なのだろうか。ちなみに作曲年は「道」が1954年、「幻影」が1968年である。


8つの練習曲、1番は和音重音のトレモロみたいな曲。2曲目も同じ感じ。3曲目、音の跳躍の大きく、カプースチンみたいなアルペジオ。曲自体もジャズ風なところ(勿論、和声だけという意味)があって終結部まで似てる。4曲目は同音連打。きちんと粒が揃ってる。5曲目。リズミカルに和音を延々と繰り返す明るい曲。6曲目、叙情的に始まり、細かい指の動きが目立つ感じ。左手で旋律を歌い、右手は走り回る子どものように高音部でアルペジオ。役割を交替し、いつまにか幅広い音域を行ったり来たり。感傷的に終わる。7曲目、ストレッチ的なリフ。コミカルな音使い。8曲目、ラストを飾るに相応しい無窮動風に広大かつ急速な上昇下降の分散和音を繰り返す。これもデュティユのソナタに出て来た感じのフレーズが出てくる。


ラストはソナチネ。ここまで聴いてくると「ダマーズ風、ダマーズ的」な音使いが分かってくる。短いが豊かなストーリーが盛り込まれた曲だ。


Unwinの演奏は比較できる他盤を私は知らないが、ほんとうに素晴らしい。イベリアの時も感じたが、ザッハリヒというほどではないがストレートな演奏がここでも活きている。キレも十分に感じられる。けれども、さすがに1枚の終わりまで聴くと、同じようなモチーフが何度も登場するなど、音楽としての強度に些か疑問が湧かないでもない。数十年・数百年の、時代というフィルターを超えられるかどうかは、これからの音楽ダウンロード時代の10年で膾炙するか否かにかかっているだろう。兎も角、私はとても好きなアルバムだ。冬の、真っ白い雪のように混じりっけのないアンウィンの演奏はこの季節にピッタリだと思う。


現在、彼はジャズに路線を変更しているらしい。好きなピアニストがオスピーやエロール・ガーナー、そして(私の好きな)モンティ・アレキサンダーというのもなんだか「らしい」。今日、ラローチャの「セビリアの聖体祭」「ラバピエス」を聴いてくらべたが、私はUnwinの演奏の方が好きだ。とにかく鮮やかで、これほどまでに旋律線が浮きだって聴こえるのは本当に凄い。この技巧の鮮やかさを考えると、彼のジャズ転向は少し残念な気もする(彼のジャズは素晴らしいのかもしれないが)。



願わくば、カプースチンのソナタ2番を録音して欲しいものだ。今の彼なら、最高の名演を残せる条件が整っているかもしれないのだから。

スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2017/05 >>
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.