音楽好きの世迷い言
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人類史上最強のライヴ〜MAGMA『LIVE』音源聴き比べ〜2017/5/20追記
2017-05-20-Sat  CATEGORY: 音源聴き比べ
2017/5/20 Victor 20bit K2 盤(Charlyライセンス)紙ジャケCDを追加



録音として聴ける人類史上最高のライヴは何か?




フルヴェンのバイロイト第9のSACD?それとも、音質ならレコードにこだわってFALP盤?いやいや、第9に限っても壮絶という点ではテンシュテットのBBCから出てる1985年ライヴの方が・・・




「最高」と銘打つと異論反論が多いに決まっていますし、私もどれか一つを選ぶことなどできません。しかしながら、「最強」のライヴ、ならば私は確実に「コレしかない・・・!」という1枚を選ぶことができます。




それが今回ご紹介する、フランスが誇るプログレッシヴ・ロック・バンド、MAGMAによる1975年の『LIVE』です。


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「最強」とは何を意味するのか?メンバーがケンカに強いのか?(笑)そして、クラシック音楽サイト(のはず)なのに何故プログレなんだ?と思われるかもしれません。順に書いていきたいと思います。




このアルバムは、音楽の持つ躍動感、エネルギー、そして演奏者のみならず、観客も含めたライヴ空間において生み出されるほとばしるような「生命力」が、私の聴いたどの録音作品よりも「強い」のです。実に力強く、まばゆいばかりに美しい。時に怪しく、狂気に満ちて、常軌を逸しているかのような壮絶なテンション。何より、「ライヴ」でなければ、生み出されることはなかったであろうという必然が、何よりもこの作品の価値を高めています。私が10年以上前に某SNS上に書いたレビューを紹介しましょう。



「コバイア星からやってきたフランス人、クリスチャン・ヴァンデ率いるプログレッシヴ・バンドの伝説的なライヴを収めた2枚組CD。僕が聴いてきた全てのアルバムの中で最強の作品である。最強の定義も意味もここでは述べないが、とにかく聴けば納得してもらえるはずだ。

 『マグマ』で検索してファンサイトを見てみて欲しい。どれほどの人がこの作品を畏怖し崇拝し讃えているか。「とても人間の所為ではない」「ライヴとは思えないがライヴでなければありえない演奏」「鼻血が出る」などの表現は決して大げさではなく、この「作品を聴いた人間は皆「事実だ」と答える。マグマのように演奏出来たバンドは現実に存在せず、かつて存在したこともなく、これからも存在しないだろう。
 
 7/8拍子のアルペジオをシーケンサーのように正確無比に弾き続けつつ曲の骨子を刻むキーボード、複雑で長大な構成の曲を絶妙のタイム感と多彩な装飾で駆け抜けるギター、インプロヴィゼーションでヴァンデと堂々と渡り合う当時17歳とは到底思えないロックウッドの叫ぶような狂気のヴァイオリン、マグマをマグマ足らしめる大きな存在となっている、コバイア語で歌われる不気味なヴォーカル&コーラスの迫力は既存のポップスに聴き慣れた人へ鉄槌を下すこと間違いなしであり、脱退したもう一人の異星人、ヤニク・トップの穴を見事に埋めたパガノッティが奏でる地獄の底を這うような音色のベースは、この楽器をどう弾けばそのような音が出せるのか僕には全く想像もつかない。そしてそれらの楽器全てをまとめ、鼓舞し、爆発させるヴァンデの燃えさかるようなドラム・・・。
 
 奇数拍子のリズムで執拗に繰り返されるフレーズに極度の恐怖感を覚え、徐々に加速しながら導火線にジリジリと火が着き、ついには爆発していくような緊張感と迫力に満ちたインタープレイの連続は聴く者の耳を捕らえて離さない。一体これはなんなんだ。大曲『コンタルコス』の驚異のブレイクでは耳を疑うこと間違いなく、『ハーイ』の高揚感・疾走感はどこまでも高く上り詰め、終曲『メカニック・ザイン』ではこの世の全てを超絶する驚愕の演奏のオンパレード。恥ずかしながら臆面もなく「奇跡」の演奏と言わせて頂こう。それはもはやプログレでもジャズ・ロックでもなく、マグマというジャンル以外の何ものでもなかった。」



・・・我ながら読み返すと恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまうのですが、これは私の所有するすべてのアルバムの中で、最も大切に思っている作品の1つなのです(他にはRADIOHEADの『OK computer』や、おなじみアントニオ・バルボーザのショパンピアノソナタ集、カート・ラダーマーのゴルトベルクなどがあります)。




さて、そんな大切な作品なので、出来るだけ良い音で聴きたい、というのは当然です。かと言って、メディア別にコンプリートするつもりもさらさらないのですが、ふと手持ちの3種類を聴き比べようと思い立ちました。なお、今回の聴き比べにおいて、2枚組すべてを聴き通したのは、体力の問題と家庭の事情により下記の②と③です。その上で、私の最も好きな「Mekanik Zain」を3種類交互に聴き比べました。予めご了承ください。






①輸入盤2枚組CD(SEVENTH Records)

②SHM-CD(SEVENTH Records)

③フランス・オリジナルUTOPIA盤CYL2-1245


 


学生の時にサークルの先輩に薦められて買って聴いたのが①の2枚組。私にとって初めてのマグマ体験であり、それまでの音楽観を変えてしまうようなとてつもない衝撃を受けた。それこそ何百回聴いたかわからない。私も楽器を演奏する人間の端くれとして、「プレイアビリティ」によって音楽の質が高まって行くようなジャンルが好きだ。クラシックはその究極だと思う。極限まで磨き抜かれたロルティやポリーニのショパンエチュードは我々の心を捉えて離さないし、ルービンシュタインのバッハ=ブゾーニのシャコンヌは枯淡の境地にあって、技術だけではない何かが魂に訴えかけてくる。


そしてジャンルは違えど、このマグマの『ライヴ』はプレイヤーの演奏能力が極限まで引き出され、ライヴならではの即興性と興奮が奇跡の演奏を創りだした。それは1日10時間のリハーサルに励むという、途方も無い努力と技術の結晶でもある(その上でさらに個人練をしていたのだろうか?恐ろしい)。


さてこの名盤、まず聴き慣れたセヴンス盤CD①から聴いてみる。


良い。実に良い。何度聴いたかわからないが、聴くたびに同じ感動を味わえる。音はヴォリュームを少しずつあげても音がキンキンせず、実に自然。シンバルの音の細やかさや各楽器の定位と空気感もよくわかる。この歳になって冷静に聴いてみると、いかにもアナログ音源をCD化したのっぺり感というか金属的な音の佇まいがあるが、それほど気にならない。


次にSHM-CD②。あくまで個人的な印象であるが、クラシックファンの間ではSHM-CDの評判はよくないように思う。尊敬する加藤さんのページでも否定的な評価をされており、私自身も幾つかSHM-CDを聴いたが、特にピアノは不自然に音が強調されている感がある気がしてあまり好きではなかった。


ところが、スティーリー・ダンの『プレッツェル・ロジック』のSHM-CDをたまたま聴いたところ、そのクリアな音立ちにビックリしたのだ。特にヴォーカルの印象の変化が大きい。iPodに取り込んでみても違いは顕著だった。そんなわけで、「忠実な原音再生が求められるクラシック」ではSHM-CDは不利で、「多様な音が入り交じったロック」ではSHM-CDは有利なのかも、と推察したのだ。そんなとき、池袋のユニオンで紙ジャケの当盤を見つけ、多少のプレミア(中古なのにほぼ定価)が付いていたものの、音質向上してるかもと期待を持って買ったのだった。


さて、前置きが長くなったがSHM-CD②を聴いてみる。①と同じヴォリューム設定で聴くと、凄まじい爆音!(耳が死ぬかと思った)相当レベルを持ち上げて音圧を稼いでいるようである。これがクリア。めちゃくちゃクリア。それでいて、音の輪郭がはっきりとしており、ぼやけることがない。加えて各楽器の音の分離の良さや、耳馴染みの良さがハンパではない。音数の多い情報が整理・整頓されて耳に届けられるのは非常に心地が良い。特に、ヴォーカルのクリアさは特筆ものだ。臨場感がグッと増している。



素晴らしい。本当に素晴らしい音質だ。



買ってよかったと思った。ここで止めておけば幸せだったのかもしれない。ところが、アナログ好きとしてフレンチプレスのユートピア盤のオリジナル・レコードを聴かないわけにはいかなかった。何故なら、愛読させて頂いているgeppamenさんのブログで「セヴンス盤CDより遥かに音質が良い」と書かれていたからだ。これは避けて通るわけにはいかない。そこで、ebayやDiscogs、さらにはCD&LPでフランスオリジナルのレコードで探した。結構枚数が出ており、常時入手が可能な感じであったが、音質を聴き比べるのだからなるべく良いコンディションのものを選んで購入した。ジャケの状態はイマイチだったが、フランスから送料込みで4000円で入手できたので格安と言ってよいだろう(ちなみに入手時期はSHM-CDよりずっと前)。




というわけで、レコード③。



ムム、、、こ これはあまりよくない。



・・・おかしい。レコード単体で聴いたときは気にならなかったのだが、こうしてCD2種と聴き比べるとよくない。レンジが狭く、低音は出ているものの音ヌケが悪い。シンバルは飛散する音がザラついており、何よりヴォーカルが遠い。これは痛い。その場の空気感というか臨場感というものもアナログ特有の致し方ないノイズのせいか、どうも聴き取ることができない。これはレコード原理主義者としてガッカリだった。。SHM-CDの方が断然良いではないか。




ここで止めてもよかったのだが、家族が不在だったのでせっかくだからさらにヴォリュームを上げて「メカニック・ザイン」を3種類もう1周しようと思った。防音室ではないリビングなので近所からのクレームが不安だったが、聴いていて耳が痛くなるギリギリまで音量を上げて再び聴き始めた。




するとどうだろう、評価が一変したのだ!




これには驚いた。まず通常盤CD①。ヴォリュームを上げても音の輪郭が壊れず、自然に全ての帯域が持ち上がる。高音がキンついたり、低音が被り気味になったりすることがない。ただ、あるところで音が薄味になるというか、中域が物足りなくなるポイントがあった。それでも最初の評価が大きく揺らぐことはない。




ところがSHM-CD②、これが酷い有様だったのだ!まず、音の輪郭が崩れる。細かくイコライジングしてCD化を行ったのだろうが、楽器によって音の密度に差が現れた。特に顕著だったのはマグマの命とも言えるヴァンデのドラム。スネアの音色が潰れて「ボテッ」と聞こえてしまい、全然美しくない!そして何より、最初に聴いたような感激が確実に薄まってしまっている。なぜだろうと何度か繰り返し聴いてあることに気付いた。




ヴァイオリンの音色が美しくないのである。




この作品で最もテンション高く叫び続けているロックウッドの壮絶なヴァイオリンの音色が、完全に飛んでしまっている。何度聴いてもあまりの名演に耳を奪われ、音色の退化にまで恥ずかしながら気付くのに時間がかかってしまったのだ。まるでCD化に失敗したクラシックのCDを聴いているかのようだ。ペンチで潰して平らに伸ばしたかのような、そんな無機質で無表情な音になってしまっている。





そして、もしやと思って再度聴いたフランスオリジナル盤LP③。音量はすでに爆音に近い。


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凄まじい。これこそMAGMAの『LIVE』である・・・!




喉元に銃口を突きつけられているような、ヒリヒリとした緊張感の中を執拗に繰り返されるリフの上で、縦横無尽に弾きまくるロックウッドのヴァイオリン。その豊かに伸びた中域は音色に艶があって実に素晴らしい!パガノッティのベースはとんでもない音の太さで、これを聴いてしまうとSHM-CDは昭和製の掃除機の断末魔のようだ。先ほど気になったヴォーカルの定位の遠さは全く気にならない。ヴァンデのドラムも相変わらず煮えたぎっているまさにマグマのようで、スコンスコンと叩かれる高めのピッチのスネアの音色が実に爽快極まりない。やはりレコードは原音再生の忠実度という観点からすると大きくデフォルメしているのは間違いないが、その当時の時代・空気感・バンドメンバーや録音スタッフ、プロデューサーの感性がこの歴史的名作を生み出したのだ。後年のものがどれだけリマスタリングを施そうとも、超えられない「音」が、この黒いヴィニールには詰まっているのだ。心の底から感激した。




さらにヴォリュームを変えて聴いてみた結果を表にまとめてみると以下のようになる。



メディア音量小音量中音量大
セヴンス盤通常CD
セヴンス盤SHM-CD×
フランスオリジナルUTOPIA盤LP
ビクターK2(Charly)盤


普通に聴く音量ならSHM-CDは非常に優秀。私もiPodや車のHDDには①でなく②をリッピングして通勤中・運転中に聴いている。レコード③のナロウレンジな感は否めないのだが、レコードから飛び出してくる音のカタマリの圧倒的な迫力は何者をもなぎ倒すような凄まじいもので、すべてのマグマファンに是非とも聴いてもらいたい素晴らしいオーディオ体験である。結局のところ、geppamenさんが正しかったのだ。これにより、「弦楽器はレコードフォーマットが優位」という自説の補強が(まさかマグマの『ライヴ』によって!)再びなされた気がする。



・・・と思って、SHM-CD盤の解説ブックレット読んでみると、日本にマグマを普及させた貢献者の一人である元ディスクユニオン営業部長の竹川真氏が次のように書いていた。



「この「LIVE」実はCharly原盤のビクター盤も存在する。その音もSEVENTH盤に比べオリジナルミックスからのリマスターでもあるため、渾然一体のあの圧巻な音が見事に再現されている。一方SEVENTH盤は24チャンネルマルチトラックからのリミックス盤のためCharly原盤では捉えられない細かい音も収録され音の分離感はすこぶるいいが、ひとつの音の塊で一気に聞き手を喝破するような迫力は乏しい。よって今回のリマスターはその圧巻な音をきめ細かい分離感を残しながら再現することに重点を置く作業となった。ところが送られたマスターはCDとほぼ同内容の音質でベースのロウ感の足りないものだったため、再現するのに大変な日数を要してしまった。単純にロウをあげてもこもってしまうので、結局は聴覚で一番説得力あったある帯域のみを持ち上げてマスタリングをしたものである(後略)」



このように私がこのSHM-CDに抱いた印象とほぼ同じことが書いてあり、結局のところこのフォーマットはSHM-CD盤のメディアとしての優位性が問える商品ではないような気がしてきた。そして、アマゾンのレビューなどでは酷評されているCharly原盤も聴いてみなければ、という気になってきた。うーんまた出費のかさみそうな宿題を見つけてしまったな。。。



2017/5/20追加
Victor 20bit K2 盤(Charlyライセンス)紙ジャケCDを購入。ジャケ裏には2001 Charly Licensing ApSと書かれている。どうやら上記チャーリー盤をビクターがデジタル化したものらしい。さて、上で書かれているように、CDながらアナログのような音の塊りで襲いかかってくる迫力が比較的小さい音量でも出ている。ところが、ヴォリュームを上げるとなんというか粗が目立ち始める。スカスカとは言わないまでも、音の緻密さが薄れてくる感じ。時間帯の都合で大ヴォリュームには出来なかったのでそこは未評価だが、全体的にそれほど悪くはない(というか内容が素晴らし過ぎてどの盤でも感激してしまう)。

ところで、geppamenさんがCDとLPの音質の違いについて、波形を表示して明晰に論じられているので是非ご覧頂きたい。ちょうど、私がこのマグマのレコードでヴォリュームを上げた時の音質について書いた感想と奇しくも合致する内容が科学的に(?)書かれており、「我が意を得たり」という感じである。






・・・実はこの他に、おそらく80年代のテストプレスLP(2枚目のみ)を所有しているのだが、それはまたの機会に。


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