音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
リューボフ・エドリーナ&ボロディン弦楽四重奏団によるショスタコーヴィチ・ピアノ五重奏曲
2014-08-04-Mon  CATEGORY: 廃盤再発推進委員会
私のブログに来てくれる読者の方々は、きっとショパンやラフマニノフがお好きな方が多いと思います(コンテンツ的にそうでしょう)。そんな私が、珍しくショスタコの、それもピアノ五重奏曲をご紹介。



正直な話、分かりやすいロマン派からクラシックに入った私にとって、ショスタコーヴィチは苦手でした(そりゃあショスタコが弾きたくてピアノを始める子どもはそういないはずです)。シンフォニーはともかく、ピアノ曲にしても「なぜそこでその展開?ふざけてんの?」「メロディが晦渋過ぎ」と思うことしばしばで、某2大有名サイトでショスタコのイロハを勉強させて頂いて、ようやく楽しめるようになったのです。

今日はそんな私がショスタコに開眼した愛聴盤をご紹介。リューボフ・エドリーナのピアノとボロディン・カルテットの弦による、ピアノ五重奏曲です。

ショスタコと聴いて逃げ出す皆さん、ご安心ください。この曲は傑作です(マーラー風に)。この5楽章には、胸を締め付けるような哀切のメロディとショスタコらしい諧謔とが、絶妙なバランスで描かれています。

第1楽章の出だしからシリアスさが全開。劇的な和音に導かれ、重々しく曲が始まるとすぐにそのただならぬ緊張感のトリコになってしまうでしょう。切ないフーガとアダージョを経て、ショスタコらしさ満開の第3楽章スケルツォ。こういう曲を許容できるか否かがショスタコにハマれるかどうかの分かれ道なんだと思います。別な喩えをすると、こちらも名作の誉れ高い24の前奏曲とフーガ、筋金入りのショスタコファンの方は第15番を好まれるそうなのですが(往年のロシア人ピアニストも抜粋でこの曲の録音を残していることが多い)、浅薄ミーハーなわたくしなどは分かりやすい美しさを持った第13番に宇宙の広がりを感じるのです(メルニコフの演奏が涙チョチョ切れます)。陰鬱で弦がか細く叫ぶ間奏曲に続き、終楽章のフィナーレは弦楽器が次第に明るく力強さを増し、ピアノが快活な和音連打で行進曲風のモチーフを奏でつつも、ショスタコらしい一筋縄ではゆかないある種の「分かりにくさ」も通過して(それこそロシア文学のような、何度も繰り返し読むことで理解できる深みと哀しみと難解さを伴って)、最後は小さな花が道端に咲くようにチャーミングに曲を締めくくります。

ショスタコーヴィチの自演も含めてこの盤は色々聴きましたが、エドリーナ&ボロディンQによるこの演奏が最も好みです。初めはリヒテルのスケールがデカいライヴ盤でこの曲にハマったのですが、あちらは曲を通して巨大な緊張感と向き合う聴き疲れ感があるのに比べ、こちらの方が凛と張り詰めたシリアスな演奏表現の中にも、どこか暖かみや人間味に溢れていて、ピアノが深い残響をまとっていつつも不思議と明晰に聴こえる録音とも相まって、非常に深い感銘を与えてくれます。唯一の欠点と言えば、曲が終わって感動の余韻に浸っているのに、しばらくするとカップリングのストラヴィンスキーの弦楽四重奏の不協和音が爆発するところでしょうか。

ともあれ、ドストエフスキーのように雄弁で、悲哀とユーモアと幾ばくかの希望を素晴らしい構成美で織り込んだこの作品の最良の演奏のひとつとして、この盤の再発を願うばかりです。
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