音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
廃盤レコードセール顛末記
2017-05-13-Sat  CATEGORY: コラム
以前書いたように、GW中2回ほどディスクユニオンのセールに行ってきた。以下はその顛末であり、セール未体験のレコードファンの方に向けて駄文を書いてみたい。



2回とも新宿ロックレコードストア店に並んだ。まずはUKプレミアム廃盤レコードセール。中古レコードだから廃盤で当たり前だしヘンな呼び名だと思うのだけれど、最近はレコードの新譜も増えてきたからあながち間違ってはいない。この名称の方が客を呼べるのだろう。整理券を配られるちょうどの時間に行ったが9番。先行き不安に思う。ナナメ向かいにあったマックがいつの間にか閉店していたので、仕方なく東南口の方のマックで開店まで時間を潰す。開店5分前、店先に戻っていよいよ突撃準備。集まったのは20人前後か。周囲はベテランばかりで、私が一番若い部類であった(いつもブログを拝見しているgeppamenさんと思われる方の姿も見えるが、人違いだとまずいのでお声をかけられない)。エレベーターで順に案内される。幾ら新宿駅東口近くの好立地とは言え階段のない店舗を選んだのはユニオンのミステイクだろう、店員も常連に「すみません」と漏らしていた。


さて、レコードセールは朝イチで並んだからと言って、お目当ての盤を必ずしもgetできるわけではないことを、セール未経験の方にまずお伝えしたい。有り体に言えば、運が必要なのだ。


開始の合図と同時に、客はレコードの入った箱(以下エサ箱と言う)に突撃する。開店したてのディズニーランドかUSJか年末の福袋商戦みたいな光景で、(私も含め)いい年のオッサンが熱くなって猛ダッシュする姿に一般の方々はドン引きすること間違いなしだ。さて、お目当ての盤がエサ箱の一番手前の見えるところにあったり壁に飾られていれば即getできるのだが、一度に数百枚も出るため大抵はエサ箱に潜んでいる。そこで、次々にエサ箱を漁っては移動し、また漁る・・・を繰り返す。開始30秒ですべてのエサ箱に客が飛び付いているので、エサ箱の数にもよるが整理番号15番くらいまでならその箱の「最初の客」になれる可能性があり、運良く目的のレコードを掴める場合がある(エサ箱が少なめの店舗だとこうはいかない)。その後はうまいことみんな1箱ずつ横にズレてお目当ての盤を探していくわけだ。


ここでひと言物申したいのだが、常連さんの中には「これキープしとこうかな」と思った盤は迷いなく手に取って次々にキープしてしまう方がけっこういらっしゃるのだ。とんでもなく高額なレア盤を一度に10枚近くキープし、おせちの重箱を抱えるようにして盤を漁り続ける御仁がいたりする。そしてその重箱の総額は軽自動車が買えるほどなのである。資産家の方なのかもしれないが、はっきり言ってこれはいかがなものかと思う。手に取った盤を全て買うなら文句はないが、実際には検盤してキャンセルする場合もあるわけで、目についた盤をとにかく多く抱えた人のほうが先手を打てていい思いをするというのはどうなのか。なかには発掘途中に平気で半分以上エサ箱に戻す方がいて、自分でレコードを掘りつつそのような人の動向を目で追うのは大変だ。その後の検盤で何十分もキャンセル待ちするのは、店にも客にもお互い相当な時間の無駄ではないだろうか。


ここは、ユニオンが一度に持てるレコードは3枚までなどとルールを定めるべきだと考える。3枚を選んだら一度カウンターに預けてもらうなどの処置を取るべきではないか。そうすれば、ほんの少しの間の戦線離脱となるがかなり平等性(何のだ)は確保されると思う。私は先日書いたように、私の目当ての盤を抱えている方には積極的に声をかけてキャンセルする時は回してもらうようお願いする(皆さん結構応じてくれる)。また、友人同士で並んでいるグループは明らかに確率的に目当ての盤を捕獲しやすいので、今後は私も数少ないレコードファンを伴って掘りに行こうと考えている(昼飯くらいは奢らねばならないだろう)。


先日書いたように、残念ながら私の一番のお目当ての『ピンク・ムーン』は私が掘ったエサ箱のひとつ隣りの箱から掘り出された。その時の気持ちたるや「俺の人生こんなのばっか」である。運良く掴めて財布がGOサインを出したら買おうと思っていたComusの1stもどなたかに捕獲されたようだ。そんな中、空手で帰るのはイヤだと思い、「買わなきゃ」とセールの熱っぽい雰囲気に飲まれつつ半ば半泣きになりながら焦って買ったのが次の2枚。

Hatfield and the North / THE ROTTERS' CLUB : UK-original mat A-1U/B-1U
hatrotters

学生の頃、この盤はいつかオリジナルで所有したいと思っていた憧れのレコードだったが、近年はジャケ&盤ともにEX以上のコンディションだと1万を超えてしまっていたので手を出さなかった。ところが今回セールで掴んでみると、なんと驚きの4000円台!盤はEX+ながらジャケがかなりイマイチな状態のためか格安で、毎度ながら「花より団子」な私は飛び付いたのだった。しかし、やはりこの盤は内容以上にジャケットの価値が高いのだとわかったのが少し哀しかった(笑)

内容的なことを言うと、巷間よく言われることだがフィル・ミラーのギターがとにかく酷過ぎる。指も回ってない上に、肝心のアドリブがひどい(あれで書きソロだったら泣くしかない)。ギター初心者が難しい音使いを目指して弾こうとするときに陥りがちな「迷い指」とも呼ぶべきフレージングになっている。それでもR・シンクレアをはじめ、独自のポップセンスで牧歌的でさえある魅力的なカンタベリー・ミュッジックを展開する。B面の大曲も好きだ。帰宅して2回ほど聴いたが、A面のコンディションが特に良く、満足であった。


NATIONAL HEALTH / NATIONAL HEALTH : UK-original mat A1/B1
national

これはジャケに魅力が無いせいか(笑)オリジナルでも2000円台で出るが、マトリックスが若くコンディションが良いものを探しており、今回ようやく捕まえた。なんと言っても1曲目がイイ!フィル・ミラーは相変わらずヘタクソだが、前述の盤ほどひどくない(苦笑)それにしてもデイヴ・スチュアートは良い曲書くなあ・・・。

2ndもオリジナルで持っているが、こちらも同じくらい好きな盤だ。初めて検盤したとき、アメコミみたいな漫画風のラベルを見てビックリしたのだが、これで初版だそうだ。



さて翌日、今度はUSプレミアム廃盤セールに並ぶ。UKの時よりも明らかに若者が多く、客層の違いが面白い(昨日、私の目の前で『ピンクムーン』をgetした御仁の姿もまた見える)。今日の私のお目当てはSteely Danの『Aja』テストプレス。もしくはプロモジャケ&両面マト1Aの盤だ。前日同様とにかくエサ箱を光の速さで漁りまくる。まずは早速「PROMO」の金色ステッカーが眩しい両面1A盤を掴む!値段は、げげっっ、、22000円!完全な予算オーバーだが買えないわけではない。とりあえずキープ(笑)そして、引き続きその他の箱も絨毯爆撃。ところがテストプレスはどれだけ漁っても出て来ない。もう掴まれたか?と思いつつ周囲を見渡すが、テストプレス特有のジャケなしレコを抱えてると思われる人はいない。諦めず探し続ける。すると、なぜかセールとは関係ないエサ箱奥の通常の「R」のところにテストプレスが潜んでいたではないか!それは川底に潜む黄金のシャケのごとく、輝いて見えた。私にウインクしているようだった。誰かが開始直後に嫌がらせで隠したのだろうか、兎も角、吃驚してそれを掴んで引き上げる。やった、ついに俺はやったんだ!と手に取って値札を見ると、価格は驚愕の289000円。。うーーーん ごめんなさい 前言撤回、、、とりあえずキープしよう






私は熱気溢れるセールの喧噪をよそに、フロアの片隅で『Aja』2枚を抱えてしばし呆然と立ち尽くしていた。





すでに前の職場から(の手切れ金に等しい)退職金は振り込まれていた。その1/4を嫁にバレないようとある細工をしてコッソリプールしたのは、結婚生活で初めて私が彼女を裏切った瞬間だった。何も酒や女やギャンブルにつぎ込むわけではない、ちょっぴり高いレコードに使うだけだ。可愛いものではないか。それに嫁がカルティエの時計が欲しいというから買ってあげようとさえ思っているんだ(いちばん安いのだけど)。優しい夫ではないか。10円ハゲが出来るくらい身を粉にして働いたのだ、これぐらいやったってバチは当たるまい。ちっとも私は悪くない・・・そう自分に言い聞かせようとした。




俺には買えるッッ



買う金はあるんだッッッ





10分ほどだろうか。地下の工事現場で働くカイジが給料日に悩んだように、私は人生でも稀なほどに悩んだ。その短い間に、あらゆるシミュレーションを行った。幾ら歴史的名盤とは言え30万出せるか?それだけの音質的な価値はあるか?いや、ない。この間Discogsで買ったマトの(RE-3)以降表記無し盤は十分に素晴らしい音質だった。しかしマニアとは不思議なもので、異常に高過ぎる値段ゆえに逆に欲しくなる。なにしろ約30万は強烈だ。そんな価値のあるレコードは早々ない(昨日スパイロジャイラの3rdが28万で茶水に出てるのを見た。チューダー・ロッジは18万)。特にこんな人気盤の極上コンディション、次はいつ出るか分からない(しかし一昨年渋谷でテストプレスが出ている。ひょっとしたらこの盤かもしれない)。出てきたとしてもその時は、今度こそ手の届かない価格になっているに違いない。とすると、投資だと思って買ってしまうのはどうだ?銀行に預けたり株を買うよりよっぽど割がいいだろう。レコードファンという私の専門性が活かせる(Ajaのテストプレスが暴落することは未来永劫あるまい)。嫁だって(ナイショにするけど)賛成してくれるに違いない!そう悪魔が囁いた。

















・・・けれども悩みに悩んだ末、結局私は買わなかった






私は覚悟を決め、長縄跳びの列に戻るようにすすっとレコ掘り爆撃に戦線復帰し、ひっそりとテストプレスをエサ箱に戻した。さようならテストプレス。やはり俺には買えない。それが私の導き出した結論だった。


私は妻を愛している。リビングのレコード棚に、29万のエイジャをしれっと潜ませたままこの先の人生を送ることは不可能だった。それは、すぐ手の届くところに愛人を囲っているようなものだからだ(たぶんこの考えは間違っている)。それに、幾ら値上がりしても私は売らないだろう。それは投資資金の回収を放棄することに等しい。敗北感漂う中、いち早く検盤に並び、手元に残ったプロモの盤質をチェックした。一目見て、それは私の所有する盤より遥かに劣るコンディションと分かった。しかもマトリックスはきっとこちらの方がレイトだろう。プロモステッカーの貼られたジャケットに両面1A盤を入れ替えたものと思われた。つまり、推測するに私の持っている盤と逆の状況だ。プロモジャケのために2万以上出すことはできない。こちらもキャンセルした。



これでいいんだ、、よかったんだ。



そう言い聞かせながら私はセールを後にしてとぼとぼと休日出勤に向かった。西新宿で『Pink Moon』を買って感激の涙を流すのは、その5日後のことだった。



(今回の記事はユニオンからクレームが来たり嫁バレした場合、削除します)
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