音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
KURT ROSENWINKEL'S CAIPI BAND @Motion Blue YOKOHAMA (2017/4/16)
2017-04-22-Sat  CATEGORY: 音源聴き比べ
新年度最初のレビューはコンサートの感想を兼ねた音源聴き比べである。


以前書いた通り、モーションブルー・ヨコハマにカート・ローゼンウィンケルの日本ツアー最終日に行ってきた。


店の受付前には、カートにギターを提供している渋谷のウォーキンのブランド、Westvilleのギターが飾ってあった。見るからにクオリティの高そうなギターで、私は涎をガマンしながら脇を通り抜けた。ウォーキンオーナーの西村さん(West Ville)の姿も見えた。お店のFBではツアーの貴重なオフショットが見られる。客席はジャズギターマニアと思しき青年・中年で溢れていた。中には、私の一番好きなジャズギターライターの石沢功治さんの姿もあった気がする(紙面で拝見しただけでお会いしたことがないので不確かだけど)。

比較的早めに予約したせいか前から数列目が取れ、カートがほぼ目の前に見える位置で観ることができた。現代ジャズギターの皇帝ことカートの注目のライヴなのですでに多くの人がライヴレポートを書いているが、私がひと言で感想を言うなら、最高だった

バンドメンバーはカートとドラムのビル・キャンベルを除いて皆若く、20代か30代に見える。Voのペドロ・マルティンズはやや小柄で童顔、少年のように若いがどこかロックスター然とした佇まいで、ルームウェアのようなボトムズにRADIOHEADの『OK Computer』のトムの顔が載ってるTシャツを着ていた。ガムを噛みながら、歌にギターにキーボードに(AppleのラップトップもSEか何かで使っていた模様)大活躍だった。ピアノのオリヴィアは相当な美人で歌も上手く、しかも非常にリリカルなソロを弾いていた。カートやペドロが大汗をかいているのに、まさしく汗一つかかずにベースのフレデリコは淡々とリズムを刻んでいた。パーカッションのアントニオはあまり目立たない。

カートのメインギターWestville Vanguard Plus DC
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(ギターシンセ的なサウンドが多かった気がする。照明のせいで赤く見えるが、実際にはワイン色っぽい茶色)


カートの使用エフェクター
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(これを見て私は『JOEMEEK』というエフェクターメーカーがあることを知った。そのものズバリ人名を付けるとは)


ペドロのギター
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(よく見るとfホールをテープでふさいである)


メンバー
Kurt Rosenwinkel (g,vo)カート・ローゼンウィンケル(ギター、ヴォイス)
Pedro Martins(g,key,vo) ペドロ・マルティンズ(ギター、キーボード、ヴォイス)
Olivia Trummer(p,key,vo) オリヴィア・トルンマー(ピアノ、キーボード、ヴォイス)
Frederico Heliodoro(b,vo) フレデリコ・エリオドロ(ベース、ヴォイス)
Antonio Loureiro(per,vo) アントニオ・ロウレイロ(パーカッション、ヴォイス)
Bill Campbell(ds) ビル・キャンベル(ドラムス)

セットリスト
1.Caipi
2.Kama
3.Casio Vanguard
4.Time Machine (新曲)
5.No the Answer (新曲)
6.Chromatic B
7.Interscape
8.Ezra
9.Recognized (新曲)
10.Hold On
(Encore)
11.Little b

(漏れや間違いの可能性もあるのでご容赦を)

カートが1人で練り上げた宅録サウンドを、生身のバンドメンバーで再現するとこうも変わるのかと思うほど印象は異なっていた。勿論、ラウドなベースやタイトなドラムのスネアは恐ろしくアルバムのままなのだが(ベースがビリつくところまで同じ!)、音やリズムの揺らぎ、空気感が全然違う。やはりライヴはいい。私の記憶が確かなら、新曲を3曲やっていた。よりスタンダードなPOPソング寄りというか、ロック調ですらあった。曲の終わりはドラムがドコドコ叩いて終わるし、カートもロックギタリスト的な弾き終わりを見せるなど、ギター小僧だった私には感涙モノである。時にはエレクトロニカ風なアレンジもあり、ドラムのつっかえたようなリズムは、ペドロのTシャツのままに時折レディオヘッド的ですらあった。「ブラジリアン・プログレッシヴロック・ジャズ」とでも形容できそうな感じだ。

カートのギターはもはやデビューの頃とは大きく変貌を遂げている。独特のリズム感と浮遊するメロディは健在だが、バリバリ弾きまくる。歴史的名盤『The Remedy』以降、明らかにカートのテクニック(クラシック的に言うとメカニックの部分)が向上している。純粋に速弾きの割合が増え、音数が増加しているのもそうだし、ある意味HR/HM的なスウィープなども増えた(今回のライヴでもランフレーズで頻繁に用いていた。ヴォイシングが複雑で私には分からなかったが笑)。現代のジャズギタリストでここまで明らかな進化(というと偉そうだが)を感じさせるのは彼ぐらいではないか(まあメセニーもそんな感じだけど。逆にAdam Rogersのように「もう上手くなりようがない程に上手い」タイプもいる)。兎も角、ソロは彼らしい唯一無二のフレージングで、ライヴならではの聴衆を熱狂の渦に惹き込むような盛り上がりを感じさせるラインだった。ささやかながらギターを嗜む人間として、これまで色々なギタリストの演奏を見たが、あらゆる意味でここまで自在に楽器を操るギタリストを私は他に知らない。本当に感動的だった。彼のヴォーカルは流石にペドロの美しい歌声と比べるとかなりイマイチだったが、ギターを弾きながら歌う姿はロックミュージシャンかのようで、ロック好きの私には嬉しかった。

残念ながらM.B.Y.の音響バランスはイマイチで、カートやペドロは曲中に何度もマイクの音量を上げるようジェスチャーしていたし、曲の良いところでハウることもあった。まあこれはデカめのベースを指示したバンド側にも責任があるかもしれないが。ともかく、これまでに見たライヴの中でも特に素晴らしいものだったと思う。


終演後、他の客がレジとは違う行列を作っているので何事かと思っていると、なんとサイン会があるという。おまけに受付にはLPが売られていたのだ!レコードが販売されていたとは、全く気付いてなかった。嬉々として並ぶこと20分、メンバー全員が現れ、1人1人にサインをしてくれた。カートに握手をしてもらったが、温かく大きな手だった。ペドロに「私もOKコンピューターが好きだ。いいTシャツを着てるね」というと、そんなことを言う客は他にいなかったのか驚いていた。皇帝はにこやかにそして気さくにファンの1人1人と話をしていた。こんなに小さなライヴ会場で、座って酒を飲みながら目の前でアーティストを見ることが出来、おまけに握手とサインと会話付きなんて、ロックの世界ではおよそ考えられないことだ。こんなところにもジャズというジャンルの良さがある。


caipiLP.jpg


①ハイレゾ(flac 96kHz/24bit)
以前書いた通り、音の色鮮やかさはこれまでに聴いたどのアーティストの作品よりも素晴らしい。過剰とも言えるほどキメ細かに煮詰められたアレンジはハイレゾにピッタリである。情報量が多過ぎるので何度聴いても楽しめる。しかし、イヤホンで聴くと聴き疲れ感がハンパない。


②レコード
LPには9曲しか入っていない。ハイレゾは日本独自のボーナストラック『Song for our Sea』があって全12曲なのに比べるとかなり損な感じだ。ちなみにLPに入れられることなく落ちた2曲は『Ezra』『Interscape』である。

これまでこの"音源比較"コーナーで書いたように、アナログは音の一体感、塊り具合が特徴である。ハイレゾの、驚異的な音の分離と明晰さとは別次元だ(別表現と言ったほうがよいかもしれないが)。残念ながらハイレゾのようなカラフルさはかなり後退してしまっている。


毎回同じことを書くようだが、音楽に求めるもので良し悪しは変わってくるというのが率直なところである。通勤時はハイレゾを聴きまくったが、職場に着いた時の耳の疲労感というものはかなりある。リビングでハイレゾを流すとその緻密な表現に驚かされる。続けてレコードを聴くとまったく違う音像だ。正直、ギターも引っ込んでるし、SEなどの効果音の雰囲気もそれほど出ていない。ただし、心地良さはレコードが上回る。(9曲だし)あっという間にアルバムを聴き終えてしまう。


総合的にはハイレゾが上回るだろう。しかし、発売元のソングエクス・ジャズでの購入限定のようだが、このLPにはハイレゾのダウンロードコードが封入されている。私がM.B.Y.で買った輸入盤にはついてなかった(ウォーキンの好意でCaipiのジャケを模したピックは貰えた)ので、ハイレゾもレコードもそれぞれ買ってしまった私はなんだか哀しいというかなんというか・・・。

ちなみに同行してくれた友人は通常のCDを買っていた(音質的には一番損をしてる?)。
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