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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

最近聴いている音楽 vol.21~今年1番の衝撃~

頑張って連続更新を続けていたのだが、2日ほど空いてしまった。いつもはこれから寡黙になるところだが今回は違う。忙しいのもあったが、Filipecのパガニーニ超絶を上回る、とんでもない今年1番の衝撃を受けていたからだ。



2016年のエリザベート王妃国際ピアノコンクールである。



「今年はいちばん好きなコンクールのエリザベートだなァ」とか思って楽しみにしていたのだが、5月6月のあまりの忙しさに記憶の片隅からフッ飛んでしまい、ピアノ音楽から少し離れてしまったのもあり、全然チェックしてなかった。



優勝者の名はLukáš Vondráček (ルーカス・ヴォンドラチェク)。コンクール史上初めてのチェコ人の優勝者だそうだ。彼のファイナルでのラフマニノフの3番がとんでもないことになっている





出だしから爆走する。そのまま突き進むが1音のミスもなく、緩徐部分でややテンポを落とすものの、再びエンジンは唸りをあげて展開部に突入。相当なスピードでも余裕を感じる。ossiaのカデンツァは前半部分はじっくりと歌い、後半の部分の和音部分では独自の解釈を見せる。凄まじいテクだ(第1楽章の終わりだけオケとピアノが幾分派手にズレてしまっているが)。第2楽章も、過去のピアニストとは違うセンスで歌い上げる。過去のどの演奏でも聞いたことのない場面で内声を強調したりする。やや語り口は濃いめで、急速部分のスピードとの落差が目立つが、聴き手(私)の感情面との繋がりがスムーズなところが非凡な才能を感じさせる。アタッカで突入する部分の上昇音型の巧みさ、そして第3楽章、この速度と精度は過去のコンクール出場者の猛者の中でも、私の知る限りナンバーワンではないか(Mogilevsky、Alfidi、Katsaris、Plagge、Babayan、Samoshko、Wen Yu Shen、Rashkovsky、etc)。マシーンのようなアルフィディ、プラッジ、ウェンユーと違って、細かなフレーズにもいちいち表情を付けているのが凄い。実は例の「重音部分」も期待したが、ふつうに弾いていた。しかし、この箇所を未だかつてないほど繊細にチャーミングに弾き終えていて私は心底戦慄した。終演直後の観客はもはや絶叫だ。当然の優勝である。


youtubeのコメントでは、海外のファンも「74年の人生で最高」「新しいヴォロドス」などと書かれているが、全面的に同意する。テクニックに限っても、60年代生まれのアムラン、ハフ、70年代生まれのキーシン、ヴォロドス、ルガンスキーらと並ぶ技巧の持ち主だろう。巨大な体躯はすでに貫禄十分、まさにペトロフ、ソコロフ~ヴォロドス、マツーエフらロシアン超絶技巧の継承者のように思われる(チェコ人だが)。

すでにコンクールCDが9月に出ており、慌てて注文したが、私の知る限りこれは手に入る同曲の録音史上で決定盤のひとつと言って過言ではないものになると思う。正直、細部での解釈は私と合わないところは多々ある(例えばカデンツァの和音部分、スタカートにするのは好きではないし、全体的にもっとストレートで弾いてほしいと思う)が、youtubeのコメントにある通りフレッシュな解釈をこの曲にもたらしたとも言える(それでも第1楽章はサモシュコのドストレートな演奏の方が好きだが)。4つ星でいちばん好きなサモシュコ盤が87点なら、これは初の5つ星の93~95点くらいいきそうだ。非正規含めて最も気に入っているブロンフマン&VPOの伝説の2004年サントリーホールライヴの音盤化がなされない以上は、これが最上の1枚と言ってよいだろう。もしくは、ヴォロドスが気合いを入れて全力で爆走して再録音しない限り当面は最高の演奏となることだろう。余談だが、第3楽章で最高の演奏をしてるのはニコラス・アンゲリッチだと思う。youtubeに上がっている抜粋は私の知る限り最速である(ただし、緩徐部分との落差が大きすぎるが)。


それにしても・・・この曲で「決定盤」と言いうる演奏が現れるとは思いもよらなかった。Filipecに続き、1年も終わりになろうというところで(気付くのが遅かったが)このような演奏に出会えて本当に嬉しい。CDが届き次第、聴き込んで聴き比べの方に書きたい。いつも通りこちらのほぼ日刊更新は聴き込みの浅い速報版であることをお断りしておく。


ああ音楽って、ほんとうに素晴らしい。。



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