音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
スポンサーサイト
-----------  CATEGORY: スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ページトップへ
最近聴いている音楽 vol.8〜パガニーニ超絶新録音の衝撃〜
2016-11-19-Sat  CATEGORY: 雑多な話題
全く気が付いていなかったが、なんとリストのパガニーニによる超絶技巧練習曲の新録音がNaxosから発売されていた。


これまで、私の知る限り6曲すべてを録音しているのはニコライ・ペトロフ、レスリー・ハワード、大井和郎の3人しかいなかった。その中でも遺稿まで含めた完全版を弾いているのはリスト全集を完成させるという前人未到の偉業を成し遂げたハワードしかいない。今回、この世紀の難曲に挑んだのはクロアチアのGoran Filipec(ゴラン・フィリペツ)。全く知らないピアニストだったが、ネット上の評価は概して高い。CDを買いに行くヒマなんぞないのでとりあえず慌ててネットから取り込む。



これが素晴らしい。予想を遥かに上回る驚異的な演奏だ。



まず音色が輝かしい。音にハリがあって、華々しくはじける和音は眩しいほどだ。最近ナクソスの録音陣は頑張っていると思う。そして肝心の演奏がスゴい。この曲集はペトロフによるギネス級の記念碑的名演があるので後に続くピアニストは相当な覚悟が必要だったと思うが、真正面からこの超難曲にぶつかっている。とにかくテンポが速い。非常に速い。ペトロフとほぼ同じか、少し速い曲すらある。急速フレーズもペトロフ以上に攻めている箇所まである。特に6番のエンディングの盛り上げ方は凄まじい。おまけにハワード同様、遺稿も完全に収録している。音楽的にも勢いを重視し、十分な緩急があって「聴ける」というレベルを遥かに通りこして充実している。フィリペツは溌剌とこの曲集のロマンティックな面を引き出しており、あくまで練習曲としての性格を重視している?ペトロフ盤から受ける整った印象とはかなり違う。プロデューサーによる帯の誇大広告?でのとばっちりで有名な大井盤の野暮ったさ(鍵盤の重いベーゼンの使用が原因とライナーには書いてあった)とはもはや比較にならない(大井氏の演奏も十分スゴいと私は思うが。ちなみにこの大井さんは現代音楽・古楽のスペシャリストでもある大井浩明氏とは別人なので要注意。「とんでもない難曲に挑戦している大井さん」という共通項からか、あらぬ勘違いをしている方をネット上でたまに見受ける。ちなみにこちらの大井さんは来年2月にソラブジのオプス・クラウィケンバリスティクムを日本初演予定。演奏時間約4時間である(苦笑)。私は今のところ行くつもりだが、相変わらずとんでもない人である)。


最難曲と言われる4番など、細部を聴くとペトロフの方が精確なのだが、このフィリペツ盤の勢いと元気の良さには、初めてこの曲集を聴かれる方にはこちらをむしろオススメできるのではないか。Amazonのレビューでは大変お詳しい方が演奏の比較をされていてとても参考になる(特に第3番の違いは今まで「アレッ?」と思っていた謎が解けたので大変感謝申し上げます)。


睡眠時間を削って3周したが、感激と興奮はまだ続いている。ペトロフ盤がウサイン・ボルトの9''58とするなら、このフィリペツ盤は9''71でゴールしたタイソン・ゲイくらいの素晴らしさがある。私にペトロフ盤を、というか聴き比べという楽しみ方を教えてくれたkyushimaさんのこのページにもFilipecの名がある。kyushimaさんはもう4年近くも新しい記事を書かれていないが、追加盤は記入されていることからサイト自体はまだ続けられているのだ。是非このフィリペツ盤についてレビューして欲しいとファンの1人として願うばかりである。ちなみに普通の大練習曲の方も、ラエカリオ盤とまでは行かないが素晴らしい。比較対象の多いラ・カンパネラを聴くとわかるが、このピアニストの技巧は相当高い。演奏自体、アムランより好きかも(彼は3番で変な手を加えてて?残念)。6番はもっとやれそうな気がするけど。


それにしても・・・人間の可能性というのはスゴい。このフィリペツの偉業は讃えられてしかるべきだ。そのうち、ペトロフやボルトをも上回る人間が現れるのだろう。しかしながら遠くない将来、きっと10年以内に、楽譜通りに人間らしくピアノを奏でるMIDI演奏を行うAIが現れるに違いない(すでにナナサコフの存在があるし、私のような人間でも或る程度は打ち込める。音源もこの15年で格段に進歩した)。そんな時は多くの「スタジオ録音」ピアニストが失業の危機に立たされるだろう。そんな時代が来てもこのフィリペツのように果敢に難曲にチャレンジして人間の可能性を示して欲しいと思う(単にフィリペツはナクソスから「リスト全集進行中だから、君パガ超よろしく」と言われただけなのかもしれないが)。


アーティスト受難の時代は続くが、「生の」ライヴ・コンサートにこだわったピアニスト・アーティスト・ミュージシャンの生き方・在り方ができると私は信じている。ジャズ・ミュージシャンなんかは今でもそうだ。音楽を愛する人は是非会場に足を運んで欲しいと思う。私も大井さんのソラブジに行こうと・・・思う。ご本人にも「行きます」って言っちゃったし。



ともあれ、ちょっと気付くのが遅かったがこの盤、超絶オススメである。

スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント2
<< 2016/11 >>
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。