音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.1〜ヘルベルト・シュフ/ピアノ・リサイタルの思い出〜
2016-11-12-Sat  CATEGORY: 雑多な話題
最近忙しくてまともな記事を書けず、このままでは更新が途絶えそうな気がしたので、あまり気負わずに独り言を呟くことにしました。まとまりもなく、メモ書きに毛が生えたようなちょっとした感想でしかありませんが、お暇な方は内容をあまり信用せずお目通し頂けると望外の喜びです(文体を変えます)。




レナード・コーエンが亡くなった。

今年はあまりに多くのミュージシャンがこの世を去っている。クラシック界ではブーレーズから始まり、アーノンクール、ロックやジャズそのほかではデヴィッド・ボウイ、ポール・ブレイ、グレン・フライ、モーリス・ホワイト、ジョージ・マーティン、キース・エマーソン(タルカスの「エラプション」をピアノで弾いていた時代が私にもあった)、ガトー・バルビエリ、富田勲、ニック・メンザ(exメガデスのDr),
(ミュージシャンかどうか微妙だが)宇野功芳、ボビー・ハッチャーソン(私の好きなジャズ・ギタリスト、ブルース・フォアマンとの共演作も素晴らしかった)、最近ではブンブンサテライツの川島道行、そしてプリンス。個人的には彼の死が本当に辛かった。その日の仕事は全く身が入らず、帰宅途中にはiPodに入れてある伝説の2007年スーパーボウルでのパープルレインを聴きながら涙した。(ここに名前を挙げていない著名ミュージシャンもいるが、私が知らないだけということでご了解ください)

さて、私にとってコーエンと言えば「ハレルヤ」だが、ロックな私はジェフ・バックリィのカヴァーを好んで聴いている。あの歌声は奇跡以外の何者でもなかった。トム・ヨークに「Fake Plastic Trees」を書かせた子バックリィの死は、アメリカ音楽(業界)にとって多大な損失であったに違いない。久々に聴いてみよう。


スクリャービンのエチュードが好きだ。ホロヴィッツのOp.8-12でハマって以来だが、kyushimaさんも書かれた通り、決定盤やリファレンスとなる演奏が少ない。最近、アンドレイ・コロベイニコフによるスクリャービンのエチュードを聴いた。あまりwatchしてなかったピアニストだが、これはかなり良いと思う。Op.2は遅めのテンポながら音楽的。他の作品も総じて非常に歌のセンスを感じる。それに反してOp.8-12は技巧のキレが素晴らしく、右手のオクターヴで上がるところは最速ではないか。驚いた。もう少しタメるとこがあった方が劇的で好みだが、これはこれで良いと思う。Op.42-5では流石にガヴリーロフやクズミンほどの豪快さはないが、それでも十分にキレがあって、そしてやはり音楽的。Op.65も良い。比較盤としては、レーン、グリーン、レヴィナス盤くらいしか全曲盤を持っていないが(オールソン盤は一部未聴)、これはかなり上位に来そうだ。少なくとも暫定首位のレーン盤より音楽的でキレも良い気がする。お気に入りだったサモシュコ盤は音が軽いのが返す返すも残念だ。


アヴデーエワのダンテソナタを聴く。「ショパコンで優勝した彼女のソナタをなぜ感想に書かないのか」と聴かれたことがあるが、コンクールの映像を見てあまり好みではないと思って以来、ユニオンで見かけても高いのでスルーしている。ダンテソナタは競合盤が多いので不利だが、一聴して悪くない。この曲は個人的チェックポイントが多すぎるので、どの辺りの位置に来るかは聴き込まねば分からない。


リーズ・ドゥ・ラ・サールのラフ3 with ルイージ。想像通り遅めのテンポでゆったり歌った演奏。聴き比べに書くにはあと数回は聴き込まねば。


ヘルベルト・シュフのアルバムを幾つか。彼は現在、最も好きなピアニストの1人だ(その割にアルバムコンプリートをしていないが)。ベト3のコンチェルト。良い。センスが良く、指回りのキレが素晴らしい。3番はコンクールライヴ群のドミトリエフ、ゴルラッチを昔よく聞いていた。その後、ムストネン盤を聴いていたが、このSchuch盤がファースト・チョイスになりそうだ。

某SNSの古い日記を辿ると、2010年のシュフのリサイタルの感想が出てきた。あちらではもう誰も読む人はいないから、ここに引用しよう。

圧倒的な天才を目の前にすると心が震えるものです。



Herbert Schuch(ヘルベルト・シュフ) ピアノ・リサイタル


@紀尾井ホール


プログラム

1. モーツァルト  ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」
2. ベートーヴェン ピアノソナタ第23番「熱情」

~休憩~

3. モーツァルト  アダージョ
4. ラヴェル    夜のガスパール

~アンコール~

5. シューマン   4つの夜曲より第4番
6. モーツァルト=ヴォロドス 「トルコ行進曲」
7. ベートーヴェン 6つのバガテルより第5番 



客席は9割方埋まってます。客層は年配の方と若い女性が多い。やはりイケメンだからか。拍手とともにシュフ登場。ダークグレーのパンツとシャツジャケットを着込んで現れる。やはりモデル並みの超絶色男です。



1曲目のモーツァルトはとにかく音色が多彩。今まで実演で聴いたどのピアニストよりも音色のパレットが多く、フォルテからピアニッシモまで様々な表情を紡いでます。タッチが凄まじく繊細と言えましょう。アゴーギグもかなり大胆。独自の世界を持っている感じ。第1楽章はリピートを完全に行っていました。2回目以降は必ず手を加えていて面白かった。飽きさせずに聴かせましたね。ちなみに再現部のテーマの2回目では時代楽器奏者のヴェッセリノーヴァと同じく前打音を短くして弾いており、フォルテピアノの訓練も積んでいるという経歴が関係しているのかなと思いました。まだ1曲目だというのにブラヴォが出ましたよ。


2曲目のベートーヴェン、第1楽章の出だしを聴いただけで「天才」と確信。表現力が違う。ベートーヴェンらしいfとpの急激な交替にも忠実で、ガツンと鳴らすところは気持ちよく鳴らす。すべての音に表情が付いていて凄まじい説得力。急速部分も高度に安定(多少引っかけましたがそれでも完成度は高い)。内声も「そっち出すんだ」みたいな個性あり。つまらないと思っていた第2楽章もとにかく聴かせる。自分独自の感性を見せつつも、説得力があるのはやはり演奏に格調の高さというか崇高さがあるためか。第3楽章のラストはクライマックスへの盛り上げ方が完璧で最高。今まで聴いたどのリサイタルよりも興奮しました。



凄まじい拍手とブラヴォの嵐の中、休憩に入る。後半のプログラムにも俄然期待が出てきました。


後半開始。3曲目のモーツァルトは普段ほとんど聴かない曲。8分ほどの短さながら様々な表情を見せます。ここでも繊細なタッチが印象的。ホールの端まで絶妙に届く弱音が素晴らしく美しい。


4曲目のラヴェル、夜のガスパール。この繊細な難曲はミスが重なると雰囲気が台無しになるためおよそライブ向きではないと思っていたのですが、完璧な技巧で鮮やかに弾ききりました。「オンディーヌ」はやや控えめのテンポながら弱音のトレモロがどこまでも美しい。精巧なガラス細工を思わせるタッチ。そしてそして「絞首台」が空前絶後の名演!この暗く陰のある重苦しい曲を息を呑むような緊張感を持って描き出しました。固唾を飲んで聴き入る観客をよそにシュフはアタッカで「スカルボ」に突入。ダイナミックさが凄い。これホントにラヴェルの曲?というくらいメリハリを付けて起伏のある演出です。ラストはやはりライブらしく盛り上げまくって終わる。猛烈な拍手、興奮した年配の方がスタンディングオベーション。


アンコール1曲目。CDにも収録されているシューマンの夜曲より第4番。もう観客も完全にシュフの世界に引き込まれており、涙を浮かべて聴き入る客も。


そして耳を疑った2曲目。英語がよくわからないので断片的ではありましたが、「・・・私のプログラムに戻って・・・編曲の・・・」





        突如ヴォロドス編曲のトルコマーチを弾き出しました




・・・皆さんにはことの重大さが伝わらないかもしれませんが、わかりやすく言うと大学教授が研究集会の最後に突如メタリカを演奏し始めたようなものです(わからねぇよ)。おそらくあのホールに居た誰よりも腰を抜かしていたのが僕でしょう。この悪趣味ゲテモノ一歩手前の超絶技巧編曲をサラリとオシャレに、それでいて完璧に弾ききりました。バケモノだと思いました。予想外の爆演にもう観客は大興奮。完全にシュフに心を掴まれました。


圧倒的な演奏の後、「もうやらないだろう」という観客の予想を裏切って最後の最後に彼はベートーヴェンを弾きました。これが心に沁み入る叙情的な演奏で本当に泣けてきた。。。この日は間違いなく僕が今まで聴いたリサイタルの中で最高の演奏でした。



終演後、サイン会が行われるというので新発売のCDを買って並ぶ。ラフな格好に着替えて現れたシュフに黄色い歓声があがる。何度見ても超イケメンです。


シュフと握手↓

schuch


頂いたサイン↓ジャケは映りが悪いのか実物の方が遥かにイイ男でした

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いやぁ、ヘルベルト・シュフ、これは人気が出ますよ!将来はキーシンとは行かないまでも、アンスネスやルガンスキー、アンデルジェフスキのような正統派の若手ピアニストになるに違いありません。同い年として応援していきたいと思います。



(初回はちょっと気合いが入ったのか?長くなってしまいました。今後は短くなると思います)
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