音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
Steely Dan 『Two against nature』 音源聴き比べ
2016-02-11-Thu  CATEGORY: 音源聴き比べ
以前から音源(メディア)の違いによる音質の違いが気になっており、最近の記事で書いたようにドノホー、カツァリス、クライバーンのメディアによる(あるいはCD化・DVD化等による)音の違いで色々考えさせられたので、思い切ってクラシック以外の話題をメインに書いてみます。記念すべき第1回目は、スティーリーダン『トゥ・アゲインスト・ネイチャー』です(ここからはメモ書きをそのまま貼付けるので突然文体が変わります)。




2000年当時、大変話題となった20年ぶりの新譜。今や16年も前の作品となり、語り尽くされたのは間違いない。そんなわけで、今回は音質の比較をしつつも全く個人的な思い入れを中心に書かせて頂こうと思う。


twoaga

①国内盤CD
このアルバムも、過去の作品群の例に漏れず驚異的な高音質である。クリアなギターのカッティング、どうしようもなくグルーヴしてるドラム、ホーンセクションの音のバランス等々、聴くたびに驚かされる。さらには名を連ねるスタジオ・ミュージシャンだけでご飯3杯はイケる豪華さ!カッティング世界一だと勝手に思ってるポール・ジャクソンJr.が8曲目「Nagative girl」のみの参加だったり(冒頭のスライドを絡めたフレーズが彼か?)、ベーシストのはずのウィル・リーはなぜかパーカッションのみを担当しているなど(ソロアルバムで披露しているらしいが)、聴き所満載である。私が最初に聴いたのはユニオンで買った数百円の国内盤中古CDだが、それだけで十分に満足できる音質である。

②LP(EU press)
DiscogsによるとEUのみのUnofficialリリースとあり、どういう経緯でこのレコードがプレスされたのか分からない。かなりのレア盤で3万円overとなっているが、日本では通販ショップだと1万over、ユニオンで出ると1万けっこう手前くらいで、どうやら海外の方で人気が高い模様。肝心の音質、当然と言えばそれまでだが、CDとほとんど同じに聴こえる。

正直音質的に大枚はたいてこのレコードを探す必要は全くないが、個人的にこれを入手した理由はただ一つ。私がSteely Danで最も好きな曲のひとつである、最終トラック「West of Hollywood」の、延々と続くクリス・ポッターの凄まじいサックス・ソロを是非ともアナログで聴きたかったのだ。この曲を聴いた時は本当にビックリした。『Aja』でのショーターのサックスソロを思い起こさせるような、素晴らしいtakeだと思う。当時30歳手前のポッターの、コンテンポラリーを基調としながらも歌心のあるブロウが炸裂している。彼は1991位のモンク・コンペティションでジョシュア・レッドマン、エリック・アレキサンダーに次いで3位だったが、個人的にはその2人以上によく聴いており、ちょっとBob Berg的な渋みというか、苦みを含んだ音色がたまらない。超絶技巧ギタリストのアダム・ロジャースと組んで出してる盤は特に愛聴している。ポッターは94年の日本ツアーにも参加しているそうだが、20年振りのこの新譜に、並みいるベテランの中でポッターを起用して超長尺のソロを任せたベッカーとフェイゲンは流石の慧眼である。サックスをやる友人にポッターの吹いた「All the things you are」の譜面を見せてもらったことがあるが、スゴすぎてtranscribeする気にもなれなかった記憶がある。

しかししかしこの曲で本当にスゴいのは、派手なフィルインをほとんど入れず、ねちっこくシンプルな8ビートだけで心地よいグルーヴを醸し出しているSonny Emory(ex. Earth, Wind & Fire)のドラムではなかろうか。ネット上では「地味」というコメントも見かけたが、むしろ私はこのような演奏を評価したい。

さて、随分と横道にそれたが、期待したサックスのゴリゴリ感はそれほどでもないが音質的には(この曲に関しては)満足である。CDだと「ブオ」という感じだが、アナログだと「ヴォオ」とより生っぽく臨場感が増す。いや、高い金を出して買ったので私の脳内がそう思いたいように聴いているだけなのかもしれない。我ながらレコードバカというか、なんというか・・・。ただし、やはりレコード内周に近付くにつれてやや歪みっぽくなってくる感は否めない。この曲がB面最終曲なので致し方ないことではあるが。アナログの空気感はCDを軽く上回るが、音質差には数十倍の価格差ほどは勿論無い。


③DVD-AUDIO
レコードを見つけて満足していたが、いつかはハイレゾに手を出そうかと思っていた。が、ある時ユニオンでふとDVDオーディオ盤を見つけてしまった。価格は4000円弱ほどだったろうか。ちょっと迷って、アマゾンでは入手困難なことと、どうやらハイレゾ音源と同じbit数・サンプリングレートであることを確認し、同音源だったとしたらハイレゾの方が安いし・・・と迷ったのだが、ええいと思い切って買ってみた。

再生はノートPCで試みる。私はWinとMacの両刀使いなのだが、最近買ったWinノートPCではなぜかfoober2000にDVDオーディオ再生用のASIOが上手く入れられず、Macで再生することに。しかーし、MacBookに標準で入っているDVD再生ソフトを使うと音量が均一化してしまう現象が起こって困っていたところ、愛読しているgeppamenさんのブログにもちょうど同様の事例が書いてあり、VLCを使うと良いとのこと。元々入れていたVLCを追加updateしてようやく無事に鳴らすことができたので(それでも所々でなぜか音量が小さくなるような気がするが)、DenonのSACD&USB-DACプレーヤーに繋いで再生。


これが素晴らしい。100点のさらに上があるような、素晴らしい音質!


国内盤CDが95点、LPが98点とすると、DVD-AUDIOは110点くらいありそうな感じだ。聴き慣れた1曲目の「Gaslighting Abbie」のクリアーなギターのカッティングは、まさに目の前で鳴っているようだ。全ての楽器にリアリティがありながら、全体のバランスが絶妙なためそれぞれの楽器が声高に主張することなく、聴き進めていくにつれ「こんな音が鳴っていたのか!」という感激に身が震える思いがする。ヴォーカルは喉の振動までが伝わるようで、音の聴き比べで分かりやすいシンバルの音の伸びは過去最高に美しいさざ波を立て、タイトなスネアの音色は膨らみがちなバンドアンサンブルを的確に引き締めている。音には私より遥かにうるさい嫁も「明らかに違うわね」と漏らす。余談だが、彼女はHDtracksで買って落としたロリンズのサキコロを「薄い!」と一刀両断した女だ(ハイレゾの名誉のために言っておくと、マイルスの『カインドオブブルー』にはそんなことは言わなかった)。

もう一度書くが、最も驚いたのはギターの音色だ。ピアノとギターが我が家にはあるので(サックスもあるが)、生音を聴く機会が最も多い楽器なわけだが、これまで何千回と鳴らしてきたギター&アンプの「まさにそこで鳴っている感」に近いものがスピーカーから聴こえてきた。こんな素晴らしい音楽ソフト体験は今までにしたことがない。Steely Danの音質へのこだわりには完全にやられてしまった。。

そして、大いなる期待を持って最終曲のサックスソロを聴く。正直アレ?と思う。音の彫りのキメの細かさはアナログを優に上回るのだが、どうもガヅンと身体にぶつかってくる感じがしない。心地良い音の塊りを全身で浴びるような、そんな快感が、期待したほどではなかった。もしやと思って続けてレコードを聴くと「コレコレ、この感じ!」と妙に納得してしまう。以前から書いているように、サックスやチェロなどの弦管楽器は、リアルな再現度よりもアナログの空気感が優位なのかもしれない。完全に私の先入観なのかもしれないが・・・。レコードはある種の「デフォルメされた音」だと思っているので、ハイレゾの「リアルな音」が常に良いとは限らないという一例をサキコロに続いて見た気がする(オーディオユニオンの店員さんによると、「結局ハイレゾはマスタリングするエンジニアの腕ですよ、腕」とのことだが)。


とまあ、色々好き放題書いたが、全体としては圧倒的にDVD-AUDIOの音質が良い。今度気が向いたらハイレゾの方も聴いてみようかと思う(が、ホントにDVD-AUDIOと全く同じ音だったら泣ける)。

次回もジャンルにこだわらずに書く予定・・・
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