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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~追加レビュー編~
2012-10-03-Wed  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
マツーエフ(&ゲルギエフ)盤、J・モーク盤、フェルツマン(&プレトニョフ)盤を追加します。



☆☆☆・マツーエフ/ゲルギエフ/マリインスキー劇場管/ossia/2009年
 マツーエフにゲルギエフ、マリインスキー劇場管と、ついに役者は揃ったという感があり、いよいよ決定盤の登場かと未だかつてない大きな期待を持って聴きました。少し詳しく書くことにします。

第1楽章、立ち上がりから濃厚な印象で、足取りは重いわけではないものの、じっくりと弾き進める感じ。その後すぐの緩徐部分はグッとテンポを落とし、濃密に歌い上げます。両手交差は微妙に間が空いて少し変。いよいよ展開部。スピードはなかなかですが、期待の7割5分というところで、これはやや残念。また、彼にしては打鍵がやや不明瞭かも。カデンツァは旧録音同様ossiaで、前半の低音で強調する部分はさすがに遅すぎる感じ。解釈だと思うのですが、迫力よりは濃厚な歌をとったのかも。後半の和音部分は下品過ぎない重低音でここは良いです。でも、正直なところ個人的な好みの歌い方ではありません。その後の静かなピアノソロ(ここまで含めてカデンツァとした方がいいかな)の箇所も粘りすぎで違和感。第2楽章はオケがピアノと同じ解釈で、ビーフストロガノフにボルシチをかけた感じの濃ゆい出だし。その後の聴かせどころはやはり止まりそうな味付けで、決して悪くはないものの遅さに見あったタッチの変化が右手に欲しいかな。後半の細かい音型は言うまでもなく鮮やかで、彼の技巧が全開。そして第3楽章、12:32という驚異的な演奏時間ですが、体感速度はそれほど速く感じません。出だしの同音連打は彼にしては粒が揃っておらず、明晰さに欠けます(後半に出てくる同様なフレーズでもやはりモチャモチャしてて、苦手?)。それに対して、息が長く細かい急速フレーズやオクターヴ連打などは胸のすく見事な出来栄え。緩徐部分からテンポを戻すところでは低音を強調して場面のつなぎにメリハリを持たせるなど表現意欲十分です。ラストの1分などはオケとともに大迫力で突き進みます。ライヴのような燃え上がりを見せて終わりますが、スタジオ録音のようです。

全体的に自分の波長とは合わない語り口が多く、また彼ならば技巧的にもさらに高められる感があるものの、強弱の激しい、いわゆる「ロシア」を感じさせる演奏としてはベストの1枚でしょう。旧盤では「個性を感じない」と書きましたが、彼らしいどっぷりとしたロマンを感じさせる内容です。オケも音色はそこまで美しくありませんが、ピアノを細部で支える解釈が素晴らしい。録音もやたらライヴ感があって、生々しい(マツーエフとゲルギエフのうなり声もしっかり入ってます。特に終楽章でのゲルギエフ(?)の低いうなり声は、オケが新しいパートを追加したのかと思うほど)。4つ星にしないと怒られそうですが、自分の好みとしては3つ星にします。



☆☆☆・モーク/ミルトン/ラインラント=プファルツ州立フィル/original/2011年
彼はメカに定評があるということで楽しみにしてました。果たして第1楽章の出だしから快速テンポで精妙かつ安定したタッチ。例の両手交差部分以外はほとんどテンポを揺らすことなく突き進むので、展開部の和音連打もかなりのスピードなのですがそれほど迫力が増さないのは惜しいです。カデンツァはいかにもオリジナルを弾きそうだなと思ってたらやっぱりそうで、あまり工夫は感じられないもののやはり巧い。第2楽章は歌が硬めかなと予想してましたが、そこまでガッカリせず。後半の細かいフレーズもクリアです。終楽章は彼の本領が発揮といった感じで、冒頭の同音連打の粒の揃いやスピード、精度は手持ちでも五指に入るかと言うほど。演奏時間はほぼ13分ジャストで、数字の上でもそれが見てとれます。総合的には4つ星に近いのですが、勿体ないのが2点。曲を通してテンポの変化が少なく、いわゆるエチュード的な印象を強く受けます。自作自演系の解釈とも言えそうですが、ハフ盤のようにここぞというところでのたたみかけや迫力が欲しいところ。また、録音がピアノから遠いというか 、細部がボヤけ気味で達者な技巧を活かすような音質ではありません(聴き始めてすぐイマイチさに気付くほど録音はよくない)。それでも、ある意味潔い個性の詰まった演奏で、お気に入りに挙げる人が居てもおかしくはない完成度です。



☆☆☆・フェルツマン/プレトニョフ/ロシア・ナショナル管/original/1992年
 ヤコフ・フリエール メモリアル ライヴ。フェルツマンの2回目の録音になります。第1楽章は旧録音と同じく、杓子定規なカチカチした出だし。それでいて後ろに重心が載ったリズムです。展開部の前はテンポを上げて畳みかけていく勢いに満ちているのですが、残念なことに肝心の和音連打になるとこれまた旧録同様に噛みしめるように重いタッチ。例によってホロヴィッツのような解釈です。ちなみに録音がかなり近めで、展開部前では客のクシャミがかなりはっきり聞こえます。旧録の第2楽章緩徐部分ではかなり感激した覚えがあるのですが、それほどの感激はありませんでした(何かの記憶違いかなと思ってしまいました)。それでも後半になるにつれて力強さと明晰さが出てきて、ここは彼の無窮動的なフレーズへの強さが出ているかも。第3楽章は荒いです。冒頭の同音連打は粒の揃いが悪い。やはり重心が後ろなのが何よりも気になります。エンディング前の鐘を模倣した場面でも、旧録と同じく非常に力強いタッチで、かなりの間を取って轟音を響かせています。全体として旧録音と同様の解釈ながら、それにはちょっと及ばない感じ。3つ星の盤の中ではあまり上位には行けない印象です。
※この録音は以前はトライエムからヤコフ・フリエール メモリアルフェスティバル2として発売されましたが、その後同社が倒産したこともあり、極めて入手困難になりました。近年、Nimbusから再発売され、入手しやすくなりました(てっきり3枚目の録音かと思ったら、この時の権利を買って新たに録音した他曲と抱き合わせて発売した模様)。
 さらに全くの余談ながら、このフリエールメモリアルのシリーズの4枚目には故ニコライ・ペトロフによるシチェドリンのピアノ協奏曲第4番が収録されています。この曲は私が知る限り未だにほかの録音が出ておらず(第5番はなんとマツーエフが弾いてる)、超絶技巧の人気ピアニストであるペトロフの演奏ということもあり、極めて入手困難な状況が続いています(ヤフオクでは9年間で2度見かけましたが、1度はプレトニョフ・マニアの方と競り合って22000円(!)まで行って負けたことも)。ちなみにその曲ですが、2楽章からなっており確かに美しい部分もあるのですが、取っ付きやすさを考えると、いくらペトロフの演奏とは言えマニアの方以外は大枚叩いて手を出さないほうがよいと思います(笑)どことなく神秘的な雰囲気の中を、ギターのタッピング奏法をピアノで行ったような急速アルペジオが頻出する曲です(ライナーにはチェルカスキーが「演奏不可能である」として初演を断ったとある)。最近、『ニコライ・ペトロフの芸術』と題してペトロフの名演がシリーズ発売されていますが(なんとあの激レアLPラフマニノフの2番も同時に初CD化された。彼のメジャーデビュー?盤である同4番も同様にCD化されて収録。そこまでやるならカップリングのプロコ3番も入れてくれればいいのに)、市場の渇望を潤すためにもこの録音を発売してもらいたいところです。




というわけで、随分と関係のないことを書いてしまいましたが、しばらくしたら一覧表のほうにもこの3枚の評価を反映させておきたいと思います。

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