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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~3つ星編その6~
2012-09-01-Sat  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
☆☆☆・シェリー///
 ストレートな解釈で模範演技的です。デュナーミクの幅はそれほど広くありませんが、歌い方のセンスが素晴らしい。それでいてタッチも正確で音色もまろやか。テンポはやや遅めですが聴き飽きさせません。また両手交差部分もなかなかクリアです。展開部でかなりスピードが上がるのも好印象。カデンツはオリジナルなのが惜しいですがこれも上手い。下品にならない程度に力強いあたりにセンスを感じます。第2楽章もどちらかと言えばスッキリ系の演奏ですが、やはり歌がべらぼうに上手い。第3楽章の出だしの同音連打部分だけがややテンポ遅めなのが本当に惜しいです。それにしても解釈の正統性(というか、違和感の感じなさ)ではベストの盤と言えます。流石はラフマニノフ弾きとして名を馳せただけのことはあります(確か、元世界ラフマニノフ協会会長?だったかな?)。このようなストレートな演奏には4つ星を付けたくなるのですが、個人的な理想の演奏からの距離がややあるということで、涙を飲んで限りなく4つ星に近い3つ星にします。


☆☆☆・オールソン///
 やや速めのテンポで進みます。ピアノの音がわずかに小さく、若干明晰さに欠けます。全体的に緩徐部分は遅いです。伸びやかにゆったり歌う彼の特長が出ているというか、(この曲の解釈として個人的にあまり好きではありませんが)緊張感を求めるよりは深刻にならず楽天的な感じ。両手交差はあまりはっきり音が出ていません。展開分の和音連打はタッチが軽めですがけっこうスピードが出ていてオケの力強さと相まってかなりの迫力。カデンツは左手があまり聴こえてこないものの後半の和音部分はガツンとやってくれるのでさすがわかっているという感じ。第2楽章も同様に語り口が明るい印象。終楽章の出だしはまずまずのテンポ。技術的に非常に安定して整っている感じです。オケの出来も良く、文句の付けようがないのですが、やはりもう一段の緊張感やせき込むようなところがあって欲しいので、厳しいですがこれもシェリー同様限りなく4つ星に近い3つ星。
※オールソンは若い頃の旧録(2つ星をつけたブゾーニコン・ライヴ)のカデンツァではoriginalを弾いており、アシュケナージ以来の2種類を弾き分けているピアニストと言えます(mixヴァージョン系のピアニストを除く)。ちなみに彼は70年代はossiaで弾いた履歴があり、60年代のブゾーニコン&80年代ではオリジナルを弾いたことがあるという、年代によってカデンツァを弾き分けている大変珍しい?タイプのようです。
※さらに余談ですが、彼のゆったり歌う特長からか個人的に彼の弾く2番の方はあまり好きではありません。


☆☆☆・ベルマン/アバド/ロンドン・フィル・76年
ベルマンらしい迫力に満ちた1枚。第1楽章は全体的にややゆったりのテンポでコブシを効かせて雄大に歌い上げており、ヴィルトゥオーゾぶりを感じさせる演奏です。打鍵が強烈極まりなく、中盤の和音連打はオケを打ち負かさんばかりの轟音を響かせ、さらにうねるようにクレッシェンドしながら突き進むカデンツァの壮大な迫力は素晴らしく、ここだけでも聴く価値があるでしょう。特に前半部分での、内声の出し方などは緊張感があって良いです。(ホロヴィッツとはまた違った)重低音の炸裂がベルマンらしくて爽快です。第2楽章も出色の出来。これぞロシアという情緒がたっぷりで、語り口の上手さは抜群。第3楽章は冒頭の3連符の同音連打など、現代の技巧派と比べると若干スピード感に欠ける感があるのが惜しい。曲の最後の最後に素早く駆け上がっていくフレーズでほんの1カ所、音を外したミスタッチがあります(モギレフスキー盤の方にも目立たないが同様の箇所でミス?がある)。もう少し録音が良ければ…特に、ピアノの音色があまり美しくないのが少々残念(フォルテでの打鍵がカンカン鳴っています)。しかし、名実ともにこの曲の代表的な演奏と言って差し支えないと思います。バーンスタインとの録音よりこちらの方を断然オススメします(あれはまさにコレクターズアイテム)。


☆☆☆・クライバーン/コンドラシン/モスクワ・フィル/58年/ossia
 第1回チャイコフスキー・コンクールライヴ。第1楽章から並々ならぬ緊張感が漂っています(観客の咳がうるさく、かなり気になる)。ペダルに頼らない打鍵は力強く、気迫に満ちています。何でもない所でのミスがかなり多いので演奏精度は良くありませんが、とにかくスケールが大きいです。同じような緊張感のある演奏として、ショパンコンクールライヴにおけるポゴレリチのソナタ第3番を思い出します。ossiaのカデンツァは、前半はなかなか良いのですが後半の和音部分でかなり音を外してしまっているのが残念。第2楽章はこの盤のハイライト。この上なくロマンティックに歌いこなし、しかも語り口が自然でグッと来るものがあります。固唾を呑んで聴き入る観客の姿が目に浮かぶようです(ここでの咳が無いのが嬉しい)。ちなみに途中でピアノの音像が変わるのが結構気になります。第3楽章へアタッカで突入する場面ではオケと完璧に一体となり、凄まじい迫力。段々と指回りも冴えてきたのかミスも少なくなります。コンドラシンも素晴らしい。演奏後には1分以上の拍手とブラヴォの嵐が入っています。音質は年代相応に悪いですが、東西冷戦のさなかにロシア人を熱狂させただけの事はある、渾身の演奏です。個人的にはアメリカの凱旋公演での録音よりも好きです。


☆☆☆・クライバーン/コンドラシン/モスクワ・フィル/58年/ossia/LP(&DVDで再発売(未入手))
 有名なアメリカ凱旋ライヴでも伝説のチャイコンライヴでもない、第3のクライバーン。存在だけは聞いていたものの、自分で入手するまで半信半疑でした。情報ではCD化されていないメロディア盤LPとのことでしたが、私が入手したのはDolgoigratsia(Accord)というレーベルのレコード。どうやらメロディアの前身だったレーベルのようです。おそらく、第1回のチャイコフスキー・コンクールで優勝して評判になった彼が、米国に凱旋帰国する前にコンドラシン&モスクワ・フィルと録音したものではないかと推測します。この演奏では比較的ミスの少ないクライバーンが聴けます。打鍵が強烈極まりなく、やや耳障りに感じるところがなきにしもあらずですが、時折重低音をガツンとかますところなどはまさにクライバーンの真骨頂。彼のピアノは、ホロヴィッツのそれとはまた違った効かせ方が非常に上手いです。ピアノを鳴らすツボを心得ていると言えます。第1楽章の前半から彼らしい噛みしめるような力強いタッチで、緩徐部分はコブシが効いていて素晴らしい。カデンツァはベストを争う名演。特に前半が素晴らしい。後半の和音部分ではアツくなってしまうのか、力が入りすぎて隣の音を引っ掛けてしまうのは彼の他の盤と同様(この箇所が苦手?)。また、後半の最後の部分では例によって2小節ほどのカットがあるのが惜しい。第2楽章の緩徐部分はコンクールほどではないものの、呼吸の深い歌い回しが美しいです。彼の大きな美点の一つと言えましょう。第3楽章の技巧的難所も出来が良く、オケとの一体感があります。現代の技巧派ほどではありませんが、この時代にこれほどまでに高い完成度の演奏は他になかったのではないでしょうか。コンドラシンの付けは期待を裏切らず、やはりロシア物はこうじゃないと、と思わせます。特に終楽章でのズ太い弦の響きが魅力です。録音はやはり悪く、音像がやや小さい感じ。幸いにして入手したレコードの状態はかなり良いのですが、もう少し元の音質が良ければ・・・特に彼のタッチが強すぎるあまり、高音が金物を叩いたような音色なのが残念。
以前書いた記事を若干改訂しました。ご容赦下さい。


☆☆☆・ラプラント///
快速テンポ。タッチにそれほど精密さはありませんが、なかなかのテクニックを感じます。部分ごとのテンポ変化が激しく、マルクジンスキやカペルなどの古い時代の演奏を思い起こします。両手交差部分は上の声部が不明瞭ですが、以前テンポは速めのまま展開部に突入。ここでミスも出ますが和音連打はかなりの迫力。カデンツはオリジナル。ここも激しく迫力十分です。第2楽章は情感がこもっていてセンスを感じます。ショパンのソナタのところでも書きましたが、意外にロマンチストです。第3楽章は出だしからかなり速めで、同音連打の粒の揃いはイマイチなものの、胸のすく指回りです。このまま最後まで行けばかなり良い演奏だと思いきや、ラストでオケがズッコケてピアノは泡喰ったのか凄まじく合わずにバラバラのまま終了。こんなグダグダな最後を迎える演奏は他に記憶がありません。しかしながら、全体的にはオケも良く、最後の最後を除けばライヴの高揚感とともに非常に満足させられる惜しーい演奏。

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