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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ~2つ星編その3~
2012-07-21-Sat  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
☆☆・シチェルバコフ//original
 SACDでの録音ですが、プレーヤーを所有していないので普通のCDとしての感想を。コンポの音量をここまで上げたことはないというほど上げないとなかなか音が聴こえません。音のダイナミクスの幅が大き過ぎる感じ。ピアノは技巧派の彼らしく、ほとんど完璧な演奏と言ってよいかも。ただし、他の数多の熱演に比べるとかなり薄味。蒸留水のような無味無臭の印象を受けます。至って自然な解釈で熱くならず冷静なため、どこかエチュードの録音を聴いているような気もしなくもありません。かと言って歌えてないわけではないのですが、どこか硬く開放感に乏しいです。ルガンスキーの新録とタイプが似ている感があり、そちらよりも明晰さがありますが、その分情感を味わうだけのロマンも欲しいところです。カデンツァもオーソドックスで羽目を外さない。全体的に極めて完成度が高い演奏ですが、際立った特徴がないのでやや地味な印象を受けます。

☆☆・シェン/ヴァルガ/Orchestre National de Belgiue/03年/ossia
‘03年エリザベートコンクールライヴ(第2位)。恐るべき演奏です。ある意味、手持ちの盤で一番衝撃を受けた演奏かもしれません。とにかくミスがない。強靭な技巧は人間業とは思えず、サイボーグのようにどんな難所もよどみなく弾ききっています。しかもこのとき16歳。14歳だったスグロスの演奏も凄い技巧でしたが、それとはまた次元の違う演奏です。例えば第1楽章のカデンツァの前半部分。左手のうねるようなフレーズも難なくこなし、その音の明晰さと力強い和音にはただただ唖然とするばかり。第2楽章の緩徐部分はテンポを落として歌に入りますが、どうも表面的な感じがします。アゴーギクが機械的、音色の変化も少なくデュナーミクに至っては全く平板で心に迫ってくるものがありません。中村女史の言葉を借りれば、これこそまさしくエチュード的な演奏でしょう。そして第3楽章の完成度は、努力して身に付けたという感じのものではなく天才肌と呼ぶべきものです。冒頭の同音連打の粒の揃いにはゾッとするものがあります。オケの録音が小さいのか、それとも彼の打鍵が強烈なのか、ピアノの音がややうるさく感じます。しかし残念なことにラフマニノフのロマンはどこかに置き忘れられ、ただただ楽譜通りに正確に弾くというスポーツ的要素を強く感じなくもないです。彼は11歳のときからこの曲の練習を始めたということで、すでにコンサートのプログラムにも何度も載せているそうです。このコンクールの審査員を務めた故園田高弘氏の言葉通り、「音楽を云々するまえに毒気に当てられたごとく、形容の言葉は見当たらない」というのが正直な感想です。なにか恐ろしいものを聴いてしまった感すらあります。
※同コンクールで彼は難曲『ペトルーシュカからの3楽章』も演奏していますが、ライヴながらやはりミスはほとんどなく、凄まじい演奏です(特に終楽章には度胆を抜かれる)。個人的にはスタジオ録音のポリーニやワイセンベルク、ロルティなどの名演を超えるものではありませんが。彼はこの先どのようなピアニストになるのでしょうか。(レパートリーやタイプ、世代は全然違いますが)アムランやヴォロドスに比肩するであろうその技巧を上手く使って、是非大ピアニストになって欲しいものです。
※2005年のショパンコンクールは二次予選落ち、2006年の浜松国際ピアノコンクールも3次に進めなかったということで、彼の音楽性に疑問を抱いているのは審査員の中にも結構いるようです(技巧はもの凄いけど)。余談ですが、浜コンの2次で弾いた『ドン・ジョバンニの幻想』をストリーミング配信で観たのですが、文字通り“完璧な”演奏で、度肝を抜かれました。

☆☆・若林顕
エリザベート国際コンクールライヴ。演奏の性質上、おそらく修正が無いであろう事を考えるとライヴでありながらこの完成度は見事と言うしかないです。デッドな録音の生々しさも手伝って、緊張感と熱気に溢れています。第1楽章中盤の和音連打はなかなかの迫力。しかし、その直前の緩徐部分では歌い方がいまひとつで、単にテンポを落としただけという印象を受けてしまいます。ossiaのカデンツァは上手くまとめてます。第2楽章の前半の歌い方も、ここまでテンポを落として歌おうとしている演奏もなかなかないと思うのですが、なんというか平板で心に響いてくるものがまったくありません。デュナーミクに難があると言えます。第3楽章は彼らしい攻めっぷり。冒頭の同音連打も粒が揃っていて、かつスピード感もありスリリング。けれどもやはり音楽性の部分で疑問が付いてしまう箇所があります。コンクールで彼は第2位でしたが、ニコルスキーとこのコンチェルトを聴き比べる限りでは、技巧よりも音楽性の方に審査員は軍配を上げたようです。


☆☆・オールソン/Caracciolo/RAI di Milano/66年/original
ブゾーニコンクールライヴ実況録音(1位がオールソンで2位がリチャード・グード)。年代相応に音は悪いですが、演奏は立派。多少荒っぽいところもあるものの、全体的に勢いに満ちていて、歌心もあります。カデンツァはオリジナルですがこれも出来は良いです。後年、ショパンコンクールで優勝した才能の片鱗を見せていることは間違いないのですが、とにかく録音の悪さが残念。オケともかなりあっていない箇所があって少しハラハラします(ピアノ自体にミスは少ない)。

☆☆・ギレリス/アーノンクール//
 コンドラシンとの盤とピアノにさほど違いはないですが、録音がイマイチ良くない。変な色気を見せず、あくまで端正にかつキレのある技巧を聴かせる所も同様です。惜しむらくはオケが酷いこと。鋼鉄のようなギレリスのタッチとかみ合っていないです。フランスらしい線の細さが随所に見られ、明らかに曲想にマッチしておらず、思わず吹き出しそうになる箇所もあります。というわけで、オケが残念。
 
☆☆・アシュケナージ/ハイティンク//ossia
手持ちのアシュケナージの中では一番最近の録音。解釈は極めて標準的で奇をてらった所は全くないです。良く弾き、良く歌い、彼の本領が発揮されているように思います。ただ残響の多すぎる録音のせいで、ペダルを効かせた場面はかなり明晰さに欠けるのが残念(その分、オケの伸びやかで艶のある音色を楽しむことが出来る)。打鍵に重量感があるわけでないので鬼気迫る演奏という感じではないのですが、優等生的なピアノと評されることの多い彼の演奏の極みが現れているように思います。上品過ぎてラフマニノフらしさには欠ける(ホロヴィッツのような演奏と対照的)ので、人によっては好みが分かれるかもしれません。

☆☆・ピサレフ/フリードマン//98年・original
 とにかくオーソドックス。手持ちで最も標準的(中庸)な演奏を挙げろと言われたらこれを挙げるかもしれないです。というわけで演奏は悪くなく、緩徐部分も比較的上手く歌えています。第1楽章もここぞという箇所ではそれなりに畳みかけるし、特に不満な箇所はないです。カデンツァもスムーズ。第3楽章ではテクニシャンタイプの録音と比べると、推進力の点でやや技巧的な脆弱さを感じさせる所もありますが、それでも悪いというほどではないです。オケも悪くはなく、これまた標準的。個性とかそういったものには乏しいですが、全体的に好感の持てる演奏。

☆☆・中村紘子/スヴェトラーノフ//original
標準的な解釈かつ堅実な演奏。第1楽章中盤の和音連打で少しテンポが落ち、カデンツァもややスピード感に欠けるなど所々で苦しさも垣間見せてますが、全体的にはまとまっていると言えるでしょう。ゆったりと旋律を聴かせる場面ではもの悲しさが強く漂ってきます。偏見かもしれませんがロシア的というよりは日本的なわび・さびのような、心細い感じを受けます(褒め言葉)。男性ピアニストほど打鍵に力強さはないので、繊細で柔らかな音色で勝負しようとしているのがその理由に挙げられると思います。ピアノに寄り添うような主張しすぎないオケがそれを上手く助長している感じ。録音は管楽器だけやけに元気で、スヴェトラーノフらしい解釈かつ録音がオンマイク気味のせいで、大きく音を吹かされると興ざめするのが残念。

☆☆・ワイセンベルク/バーンスタイン/79年
手持ちの盤の中で、もっとも遅い演奏。曲全体のテンポが遅いのは自分の好みに合わないのですが、それでも評価しているのは何よりもこのカデンツァの迫力にあります。ピアノは十分に響かせる打鍵が透き通るように美しく、それがスケルツォ風の軽快なoriginalのカデンツァに良く合っています。オクターヴで下降する部分は驚異的なスピードで弾いており、彼独特のもの。第一楽章から噛みしめるようにゆっくりと進んでいくのですがピアノの音色の美しさがテンポの遅さによってたっぷり味わうことができ、聴き飽きさせません。バーンスタインは重いテンポをどっしりと受けとめた指揮という感じ。そんなわけで非常に個性的な録音となっています(その代わり聴き手を選ぶかも)。全体的には旧録の荒々しい演奏の方が個人的には好きです。

☆☆・園田高弘///original/67年
 日本人によるこの曲の初録音。第1楽章はオーソドックス。展開部はややテンポが落ちるものの、健闘しています。オリジナルのカデンツァでの表情付けも上手いです。第2楽章では慈しむようなタッチが美しい。日本的な耽美さが感じられます。内声の出し方も非常に考えられていて、無造作に弾かれた音は1音もないという感じ。第3楽章も技術的に安定しており、確かな技巧を感じさせます。ライナーによると、ソロイストのピアノは弾き直しも考慮されないなど、録音時にあまり配慮されなかったという旨のことが書かれていますが、その厳しい状況の中で完成度の高いピアノを聴かせていると言えるでしょう。日本を代表するピアニストの録音として、誇っていい出来映えです。ただ、オケと録音はイマイチ。
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