音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
David Greilsammerのオムニバス集
2010-01-21-Thu  CATEGORY: 音盤紹介
David Greilsammer(デヴィッド・グレイルザンマー)というピアニストは、ネットで評判を見かけて名前だけは知っていたのですが、出してるCDが私の苦手なモーツァルト物が多いということで避けておりました。ホームページを見たところ、彼がバッハを含む録音を出していると知って早速聴いてみました。ジャケットでは3人の東洋人とおぼしき女性たちと怪しい雰囲気で写っており、一抹の不安を覚えます。これをジャケ買いできる人は相当な勇者です(ちなみに、モーツァルトのCDの方も変なジャケ)。


greilsammer


まだしっかりとは聴きこめてはいないのですが、これは素晴らしいピアニストの予感。最近聴いた若手ピアニストの中では、ヘルベルト・シュフに次ぐ衝撃かもしれません。


収録曲はバッハの半音階的幻想曲を冒頭、フーガを終曲に配し、間をブラームス、モーツァルト、ヤナーチェク、シェーンベルク、リゲティ、ジョン・ケージ、ジョナサン・ケレンなどのソナタや小品が埋めるという意欲的なもの(曲順をよく見るとモーツァルトの幻想曲を中心とした鏡像関係になっていることに気付きます)。選曲だけを見ると突拍子もないように写るのですが、バッハから現代曲まで、まったく違和感なくあたかもひとつの大きな組曲として最後まで聴き通すことができます。


クロマチック・ファンタジーはどちらかと言えばかなり遅めのテンポのロマンチックな演奏で、1音たりとも無造作に弾かれた音は無いという感じ。テクニックにもキレがあって流麗。加えて歌のセンスがハンパありません。テンポをぐっと落として繊細に歌い上げてます。僕の苦手なブラームスですら聴き惚れてしまう説得力(こういう、今までの苦手曲を克服させてくれるピアニスト、好きです)。J・ケージのプリペアド・ピアノのためのソナタは、その昔高橋悠治盤を聴いて「これはアイデア賞だなァ」と思っていたのですが、曲が始まるなりまるでアマゾンのジャングルに迷い込んだかのような雰囲気。うーん面白い。


全体的に緩徐曲が多いので、重ったるくなってくるとビートの利いた曲が欲しくなった来るのですが、間に入るリゲティなどの現代曲が良い薬味になっています。力強く響く和音が印象的。そして、再び弾かれるケージのソナタ、今度は若きインディ・ジョーンズが隠された屋根裏部屋で宝物の在りかを記してある古文書を発見したかのような神秘的な雰囲気。ピアノのpreparingもよく考えられており、高音部ではオルゴールのような魅力的音色を聴かせています。初めてこの曲の良さに気付かされました。天才です。


霧がかったタッチはなんとなくツィモン・バルトを彷彿とさせますし、1音1音に神経を使っているさまは若き日のポゴレリチのようですが、どうも似ているピアニストがはっきりと思い当たりません。既存のピアニストでは喩えることのできない個性を持ち合わせていると言えそうです。尚、ジョナサン・ケレンという作曲家は、77年生まれのグレイルザンマーと同年代の人のようです。音の響きに神経を使っている小曲。


そんなわけで、アルバムを聴き進めるにつれてこのピアニストのトリコになってしまいました。最後のバッハのフーガは出だしこそ抑えた表現で静かに禁欲的に始まりますが、伸びやかに屹立していくフーガの美しさには瞠目させられます。正直言うと、ここまできたらもう少し凝った演奏を期待してしまったのですが、意外にフツーの演奏だったかな?でもまあ良しとしましょう。



というわけで、豊かな音楽性を持った稀有なピアニストだと感激しました。正直収録曲や歌のセンスはかなり好き嫌いの分かれるところだとは思いますが、知的好奇心をくすぐるセンスは無類です。僕は今後とも要チェックしていこうと思います。モーツァルトの協奏曲も食わず嫌いせずに聴いてみようと思います。
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