音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
ヴァン・クライバーンのラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番新旧聴き比べ
2007-07-17-Tue  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
間が空いてしまいました。
今回は、第1回チャイコフスキー・コンクールでラフ3を弾いて優勝したヴァン・クライバーンの新旧聴き比べをご紹介したいと思います。


まずは、数あるラフ3の録音の中でも、超定番の1枚となっているアメリカ凱旋ライヴ↓






世評で名高い録音ですが、僕が初めて聴いた時はそれほどのインパクトを持ったわけではありませんでした。むしろ、大きなミス(彼の場合は力強いタッチのせいで本当に大きく外している)が気になって仕方ありませんでした。今ではそれも許容範囲になりつつありますが。特に、第1楽章では結構目立つ所で音を外しています。彼の演奏は曲の勢いというか流れを大切にした音運びが印象的で、ロマンティックにピアノを歌わせようと腐心していることがこちらにも伝わってきます。カデンツァもossiaを叙情性たっぷりに弾いていますが、繰り返し聴いているとやはり疵が少々気になるかも・・・。後半からは演奏精度が上がり、何かに憑かれたかのような見事な演奏が続くのが凄い。録音年が若干古いため音的な魅力に欠けるのが少々残念。最近の洗練された演奏が好きな人にはお薦め出来ないかも。




続いて、チャイコフスキー・コンクール時の実況録音。


van2.jpg


この演奏はメロディアからLPで出ていたようですが、その存在がほとんど知られていなかったらしく、近年(2004年辺り?)CD化されるまで謎に包まれていたようです。


コンクールらしく、演奏は第1楽章から並々ならぬ緊張感が漂っています(観客の咳がうるさく、かなり気になる)。ペダルに頼らない打鍵は力強く、気迫に満ちています。何でもない所でのミスがかなり多いので演奏精度は良くありませんが、とにかくスケールが大きい。同じような緊張感のある演奏として、ショパンコンクールライヴにおけるポゴレリチのソナタ第2番を思い出します。展開部の和音連打はまずまずのテンポでミスもなく完成度も高い。ossiaのカデンツァは、前半はなかなか良いのですが、例によって後半の和音部分でかなり音を外してしまっているのが残念。第2楽章はこの盤のハイライト。この上なく叙情的に歌いこなし、しかも語り口が自然でグッと来るものがあります。固唾を呑んで聴き入る観客の姿が目に浮かぶようです。ちなみに途中でピアノの音像が変わるのが結構気になります。第3楽章へアタッカで突入する場面ではオケとともに駆けに駆けて、凄まじい迫力。段々と指回りも冴えてきたのかミスも少なくなります。演奏後には1分半以上の拍手とブラヴォの嵐が入っています。音質は年代相応に悪いですが、東西冷戦のさなかにロシア人を熱狂させただけの事はある、渾身の演奏です。個人的にはアメリカの凱旋公演での録音よりも好きです。




・・・実はこの他に、もう1種クライバーンの録音が存在します。それがこのLP。


van1.jpg



有名なアメリカ凱旋ライヴでも伝説のチャイコンライヴでもない、第3のクライバーン。存在だけは聞いていたものの、自分で入手するまで半信半疑でした。情報ではCD化されていないメロディア盤LPとのことでしたが、僕が入手したのはDolgoigratsia(Accord)というレーベルのレコード。どうやらメロディアの前身だったレーベルのようです。おそらく、第1回のチャイコフスキー・コンクールで優勝して評判になった彼が、米国に凱旋帰国する前にコンドラシン&モスクワ・フィルと録音したものではないかと推測します。


なんと言っても、この演奏の特筆すべき点はライヴではなくスタジオ録音であること。ミスの少ないクライバーンが聴けます。個人的には、ライヴで凄みのある演奏もいいのですが、録り直しのきくスタジオ録音が残っていたら・・・という望みを叶える演奏です。打鍵が強烈極まりなく、やや耳障りに感じるところがなきにしもあらずですが、時折重低音をガツンとかますところなどはまさにクライバーンの真骨頂。彼のピアノは、ホロヴィッツのそれとはまた違った効かせ方が非常に上手いです。ピアノを鳴らすツボを心得ていると言えます。第1楽章の前半から彼らしい噛みしめるような力強いタッチで、緩徐部分はコブシが効いていて素晴らしい。カデンツァは手持ちでガヴリーロフ旧盤などと並んでベストを争う名演。特に前半が素晴らしい。後半の和音部分ではアツくなってしまうのか、力が入りすぎて隣の音を引っ掛けてしまうのは彼の他の盤と同様(この箇所が苦手?)。また、後半の最後の部分では例によって2小節ほどのカットがあるのが惜しい。第2楽章の緩徐部分はコンクールほどではないものの、呼吸の深い歌い回しが美しいです。彼の大きな美点の一つと言えましょう。第3楽章の技巧的難所も当然ですがライヴよりも出来が良く、オケとの一体感があります。現代の技巧派ほどではありませんが、この時代にこれほどまでに高い完成度の演奏は他になかったのではないでしょうか。コンドラシンの付けは期待を裏切らず、やはりロシア物はこうじゃないと、と思わせます。特に終楽章でのズ太い弦の響きが魅力です。録音はやはり悪く、音像がやや小さい感じ。幸いにして入手したレコードの状態は非常に良いのですが、もう少し元の音質が良ければ・・・特に彼のタッチが強すぎるあまり、高音が金物を叩いたような音色なのが残念。このLPはジャケットが違うものを3枚持っていますが、一番音質が良いのがこのACCORD盤でした。


演奏タイム比較ですが、カーネギーホールライヴが17:26、10:37、14:31、チャイコフスキー・コンクールライヴが1トラックに3楽章入って41:50(大体16:28、10:02、14:30、拍手入り)、未CD化LPが17:25、10:32、14:15となっており、チャイコンライヴが他の2つよりかなり速めです。


LPの方は入手に苦労しただけに思い入れのある演奏なのですが、現役盤でまだ手に入るチャイコンライヴの尋常ではない緊張感があれば、無理して探さなくてもいいかな、という感じです(勿論、アメリカ凱旋ライヴも好きですけど)。


※追記
どうやらこの録音がDVDで(!)発売されるようです。
ということは、これは演奏会のライヴ録音だったのですね。
誤った情報を流してしまい、すいませんでした。
DVDについてはは入手次第感想を書きたいと思います。
スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック1 コメント2
<< 2007/07 >>
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


余白 Copyright © 2005 The melody at night, with you. all rights reserved.