FC2ブログ

The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

エッカードシュタインというピアニスト (一部工事中)

ブログを整理していて、今から8年前に書きかけて下書きのまま保存されていた記事を見つけた(飽きっぽいのでそういう記事がたくさん眠っている)。ブラウザの不具合で書いては消え書いては消えを繰り返した記憶があり、イヤになってずっと放置していたのだと思う(汗)。今とは言葉遣いもノリも違うが、今後棚やHDDから音源をサルベージして追記していきたい。




今日ご紹介したいピアニストはセヴェリン・フォン・エッカードシュタイン(Severin fon Eckardstein、1978年ドイツのデュッセルドルフ生まれ、エッカルトシュタインとも) です。


eckardstein

彼は数々の国際コンクールで入賞歴があり、中でも2003年に行われたエリザベート国際では見事第1位を受賞(松本和将氏が第5位)。そのコンクールの審査員だった故園田高弘氏が、生前ご自身のホームページでベートーヴェンのソナタ第27番を聴いて「彼こそ今回の優勝者である」と書かれていたのを思い出します。亡くなられた今では、そのページもう見ることができなくなりました(ちなみに園田氏は「松本氏は2位に相応しかった」と書いていた記憶があります)。

私は例によってそのエリザベートコンのライヴCDで彼を知ったのですが、彼のその哲学者のような知性溢れる風貌の通り、格調高い演奏解釈と緻密な技巧を兼ね備えたピアニストという印象を個人的に持っています。その反面、ややもすると重苦しく深刻すぎるというか、チャーミングさ・愉悦感に欠ける面もあると感じています。本日はそんな彼のアルバムをご紹介したいと思います(全てを網羅していません)。


デビュー盤はMDGから出したメシアン、ヤナーチェク、プロコフィエフ集。難曲プロコのソナタ8番の終楽章は彼の技巧の高さを示しています。

61d4GFCMe-L__SL500_AA300_.jpg


続いて2003年のエリザベート国際コンクールの実況CD。流石は優勝者だけあって、どの曲も質が高い。コンチェルトはプロコの2番。ライヴながら完成度は高いが、特に素晴らしいのがベートーヴェンのソナタ第27番。

200505.jpg


お次がスクリャービン集。前奏曲Op.11とソナタ第3・8番という内容。私がエリザベートに続いて聴いたのもこれでした。ソナタ第3番はスタティックな印象で残響多めの録音。ソナタ第3番はとんでもなく詩情的で感傷的な演奏。残響が多い録音がちょっと好みでないのが惜しい(彼は残響が好きなタイプの模様)。

51JqRcv-BeL__SL500_AA300_.jpg


2006年のルール・ピアノフェスティバルのVol.13(2枚組)。

cd4_g.jpg


同フェスティバルVol.14は3枚組で、その中でモーツァルトのピアノ協奏曲第26番の室内楽版(Nummel編曲)を弾いてます。技巧のキレが素晴らしい。

474.jpg


グラズノフのピアノ協奏曲第1番。

cd3_g.jpg


2007年にMDGから出た驚きのメトネル集。まさかの『Night Wind』収録(末尾で追記)。

51CkLrImOvL__SL500_AA300_.jpg


2010年のシューベルトのピアノソナタ第15番・20番。レリーク・ソナタは少し神経質なところもあるものの、リリシズム溢れる演奏。

41IBj8vvoCL__SL500_AA300_.jpg



2012年にK&Kレーベルから出したライヴ・リサイタル集。

kuk107.jpg

これが特に素晴らしい。最後の第14番は、kyushimaさんの影響で「ベートーヴェン的なシューベルト」を弾くポール・ルイスの新録音が好みだったのですが、このエッカードシュタインの演奏は「シューベルト的なシューべルト」路線としては最上級。終楽章は5:33(弾き終わりは5:06)ですが、メリハリの付け方がルイスよりも大胆というかロマン的でその語り口がまた巧い!ライヒェルトの演奏が「やりすぎでちょっとイマイチ」と以前書いたのですが、エッカードシュタインはそこまで感情の起伏が極端ではなく、タッチに気品があるというか格調高い印象。

そして、手持ちの彼のアルバム中で個人的にベストの名演だと思っているのがメトネル『Night Wind』。ライヴということもあってかMDG盤より熱っぽく男性的な演奏。技巧の冴えが素晴らしく、アムランの流麗さに引けを取らず、音楽性のメリハリや切迫感では上回る。この演奏で感銘を受けない人は、きっとメトネルを聴く必要の無い人である。


eckarddvd2.jpg

2枚出ているDVDの2枚目の方。VAIレーベルから出てるマイアミ国際ピアノフェスティバルの2009年のコンサートライヴ映像である(ガヴリリュクも出してたのと同じシリーズと思われる)。演奏曲はショパンのノクターンにワルツ、スクリャービンのソナタ第4番(!!)、メシアンの幼な子イエスにそそぐ20の眼差しの第20番、そしてリストのピアノソナタ(!)、さらにグリーグ、プロコフィエフ、おまけに自作曲まで、大変興味深いプログラム。なお、DVDの1枚目はベートーヴェンのワルトシュタインソナタが含まれていて魅力的だったので、そのうち購入したい。





他にもドビュッシーの映像第1集や、フーズム城音楽祭ライヴにも頻繁に出演して、マイナー曲で質の高い演奏を残している。

今日は、上掲の作品群の中から、MDGから2007年に出たメトネル集を紹介したい。

51CkLrImOvL__SL500_AA300_.jpg

収録曲は以下。
Tr.1 忘れられた調べ第2集(ピアノソナタ第11番)Op.39より第4曲朝の歌
Tr.2 第5曲悲劇的なソナタ
Tr.3 3つの小品Op.49より第1曲
Tr.4 4つのおとぎ話Op.26より第1曲
Tr.5 2つのおとぎ話Op.14より第2曲
Tr.6 フモレスケ(作品番号なし、1896,Vivace)
Tr.7 4つのおとぎ話Op.26より第3曲
Tr.8 8つの情景画Op.1より第5曲(1901/02)
Tr.9 4つのおとぎ話Op.35より第4曲、
Tr.10 小品第1番(作品番号なし)
Tr.11 アルバムの綴り(作品番号なし、1900)
Tr.12 ピアノソナタ第7番Op.25,2「夜の風」第1楽章
Tr.13 第2楽章
(曲目はアムランの日本語解説書、ウィキペディア、ネット、グーグル翻訳から私が適当に付けた。また、ピアノソナタはWikiにしたがって番号を振った)

一聴してピアノの音がどことなく柔らかい。そしてやはり残響が多めの録音(彼が好きなのだろう)。ライナーによると使用したピアノは1901年生のスタインウェイとのことである。曲は作品番号のない小品も録音しており、(メトネルもだいぶ人工に膾炙してきたかと思ったが)フーズム城で秘曲を演奏しているコダワリを感じる。

このアルバムこそ、私の中で長いことデミジェンコが保持していた「ベスト・メトネルアルバム」の座を奪い取った1枚なのだ(デミジェンコのメトネルのコンチェルトやアムランのピアノソナタ全集はどうするんだとか言う声が聞こえてきそうだが、前者の2番はピアノ独奏ではないので除き、後者は4枚組なのでちょっと置いておく)。

前述したように、多めの残響のせいか、全体的に夢見るような、たゆたうようなメロディックな演奏である。どの曲も素晴らしいが、残念ながら「夜の風」だけはK&Kのライヴ盤に敵わない。



以後、もう少し整理して追記して更新の予定。
スポンサーサイト



音盤紹介 | コメント:0 | トラックバック:0 |

Dejan LazicのLiszt集

デヤン・ラツィックのリスト・リサイタルを聴いてみた。

録音は2016年。
曲は、
tr.1 ハンガリー狂詩曲第18番嬰ヘ短調
tr.2 2つのチャルダーシュ
tr.3 巡礼の年第3年より『エステ荘の噴水』
tr.4 ヴェルディの『リゴレット』による演奏会用パラフレーズ
tr.5~7 巡礼の年第2年の補遺『ヴェネツィアとナポリ』
tr.8 シューベルトの『ウィーンの夜会』(ヴァルス・カプリース第6番)
tr.9 シューベルトの『魔王』
tr.10 モーツァルトの『レクィエム』からのコンフィタトゥスとラクリモサ
tr.11 愛の夢 第3番
tr.12 ワーグナーの『イゾルデの愛の死』
tr.13 ワーグナーの『リエンツィ、最後の護民官』からの主題による幻想曲
という内容。

全体的に明るく華やかな曲目が多いアルバムと言える。ラツィックと言えば、なんと言っても2000年に出したショパンのソナタ第2番の印象が強い。その後、『リエゾンス』シリーズやブラームスやベートーヴェンのコンチェルトを聴いて、私の中では「ムストネンほど個性的表現はないけれどもテクも音楽性も優秀なピアニスト」という位置付けでいたのだが、今ひとつ個人的に聴く曲のメインストリームを外されていた感じもあった(これは彼に限らないけれども)。

そんなわけで、この有名どころの多いリスト集はけっこう期待して聴いてみた。

結論から言うと、相当良い。「素晴らしく良い」の一歩手前で、80点台の後半は十分に付けられそう。録音はやや明晰さというか締まりに欠けて音色に鋭さがなくフワッとした印象があるが、ゆえに華やかでメランコリックな雰囲気が出ている。テクニックについてはショパンのソナタの頃のような凄みはないけれども、どの曲も語り口が自然で心地良く聴ける。技巧的には例えばタランテラは比較的近年の録音ではガヴリリュクやグロヴナーを思い出すが、彼らほどのキレはないものの十分に満足できる(ちなみに演奏時間は8:49)。ウィーンの夜会がこれまた抒情的で美しい。

シューベルトやモーツァルト、ワーグナーなどの編曲モノも実に「根明」な演奏。「魔王」はもう少し劇的さというか、彼らしくスタッカートを多用したエキセントリックな解釈が聴けるかと期待したのだが、他曲の演奏同様に歌路線な感じ。「ラクリモサ」はドラマを見ているような多彩な音色とダイナミクスによる情景変化が秀逸。間に挟まる愛の夢第3番は、数多く聴いたこの曲の演奏の中では5指に入りそう。トリを飾る「イゾルデの愛の死」も音にガッツが欲しいところはあるが好演。

というわけで、大満足の1枚である。ただ、彼に期待していた「ムストネン的なスタッカートを多用した刺激的な解釈とキレのある技巧」が影を潜めていたのは事実。むしろ彼のこの「抒情路線」は、ピアニストの歳の重ね方として他よりも上手だとは思う。フツーな解釈で歌っている点が気に入らない、というのは私の「ないものねだり」だろう。オススメである。
音盤紹介 | コメント:0 | トラックバック:0 |

MelnikovのProkofievのPiano Sonata第2集

大好きなピアニストの1人であるアレクサンドル・メルニコフによるプロコフィエフのピアノソナタ第2集。早速NMLで味見してみた。曲はピアノソナタ第4・7・9番である。

録音は2018年8月と2019年1月にまたがっているようだ。第1集が2015年の録音で、以前書いたがピアノソナタ第8番の終楽章はガヴリーロフやエッカードシュタインほどではないが技巧的にかなり健闘していて、ピアノの音色が良いこともありお気に入りになっていた。

第7番から聴いてみた。相変わらずタッチがまろやかというか無神経に弾いた音は一つもない感じで私好みなのだが、ちょっと覇気に欠けるというかプロコらしい硬質な突進に欠ける。第2楽章の音楽性はさすがで終盤の盛り上げも上手く、気持ちが高揚するのだけれどそういうのを楽しむ曲でもないので注目はやはり終楽章。この演奏時間が3:52で、聴く前からすでに「アラ残念」な予感(弾き終わりは3:40くらい)。実際の演奏はやっぱり遅めの上に至るところでルバートがかかり、終盤の難所はタッチもリズムも不安定。彼の技巧の限界がここで見えてしまったようで残念。彼も録音時は45〜6歳で、テクニック的には大きく衰えていて不思議はない。

というわけで、目玉曲の7番でガッカリしたのであまり聴かない第4番・9番は聴かず仕舞い。彼の美音やタッチはプロコ向きではないと思う。
音盤紹介 | コメント:0 | トラックバック:0 |

Nikolai LuganskyのFranckとBach

好きな曲なので早速聴いてみた。


2019年録音。稀代のテクニシャンであった彼も早50間近である。テクニックは抜群で音楽性がイマイチという先入観なしに聴いたつもりだったが、やはり前奏曲部分の表情付けが浅く、イマイチ。フーガも音色の変化が少なくのっぺりしていてさらにマズい。おまけに最後のところではリズムがなんだか変。変奏曲だけが音数が多いこともあってまずまずだが、それでもサラサラしてて感興に欠ける。残念ながら、案の定△、という感じ。


痛烈に書いてしまって短く終わるのもなんなのでちょっとだけ別な話題を。


先日のブレハッチの記事で書いたように、若かりし頃のルガンスキーがVictorから出したバッハ・イタリア協奏曲は今でもよく聴く。あれを上回る演奏は早々ないと思うのだが、未だ廃盤のようだ。ところが昨年、1990年、18歳のルガンスキーによるバッハ・リサイタルのライヴがメロディアから出た。これが残響多めながら、Victor盤を思い起こすような良い演奏。個人的にバッハのピアノ曲はライヴ録音に向かないと思っている(もちろん生では聴きたいが、レコードとしては出来るだけスキもミスもない演奏を繰り返し聴きたいので)のだが、これは再聴に値すると思う。やっぱりちょっと細かな部分での強弱の付け方や語り口に不満はあるが、おそらく先生(ニコラーエワ、ドレンスキー)の言うことをしっかり聴いて練習に励む天才少年だったのかな、と感じる。なお、第2章で金属製の何かを落とした耳障りな会場ノイズが入る。終楽章は期待通りの演奏でミスは微塵もない。演奏時間は弾き終わりが3:13ほど。なかなかオススメである。


音盤紹介 | コメント:0 | トラックバック:0 |

Rafał BlechaczのBach ハイレゾ

ものすごーく今更の音盤を紹介。


ラファウ・ブレハッチのバッハ集である。

bre.jpg

収録曲はイタリア協奏曲、パルティータ第1番、4つのデュエット、幻想曲とフーガ、パルティータ第3番、カンタータ:主よ、人の望みの喜びよ、というなかなか期待させるものであった。録音は2012年と2015年に分かれており、雰囲気は結構違う。DGから発売されたのは2017年であるが、CDでなくハイレゾを買おうと思って放っておいたら入手が遅れ、書くのがこんなに遅くなってしまった。

ブレハッチは、ショパコン優勝時は勿論その前の浜コン優勝の時から追いかけているし、ショパコン優勝後の来日も聴きに行っており、実演に接してもなお「好きなピアニスト」と言える。彼はショパンよりはベートーヴェンやバッハなど生真面目な堅い感じの曲が似合ってると常々思っていたので、この録音はまさに我が意を得たりというものであった。


さて、内容。


まずイタリア協奏曲。第1・2楽章は予想通り彼の音楽性が良い方向に働いており、堅く生真面目な感じではあるがそれでいて重くなく、期待通り。終楽章は聴く前に演奏時間が3:33ということで、彼の技巧を考えると「ほどほどの出来かな」と予想していたが、残念なことに予想を下回る内容。タッチの堅さが目立ち(ピアノの音色が硬めなのもある)、おまけに終盤であからさまなルバートが入り、ガクッと来る。この曲はどうしてもルガンスキーのビクター盤という人間の指に羽根が生えた「この世の奇跡」みたいな演奏があるので、それと比べてしまうのがよくない。ルガンスキーがなければこれも佳演だと思うが・・・録音の悪いグールド、速すぎるシュタットフェルト、バランスの良いシフ新旧と比べると総合的にはどうかな?という感じ。

パルティータ第1番、これは録音が2012年のものだが、先ほどよりも残響が少な目で、音の鋭さも幾分マイルドで聴きやすい。特に工夫はないが優等生過ぎず親しみが持てる。ただ、頻出するトリルでの指さばきが鮮やかとまでは行かず、惜しい(最後のジーグは結構イケてる)。4つのデュエットはそんなに好きな曲ではないのでアレだが、ベッタリしすぎないのが良い(解釈なのか、ところどころでほんのわずかにモタつく?のが気になるが)。幻想曲とフーガはオルガンのBWV542のリスト編では勿論なく、あっという間の幻想曲に、キビキビとしたフーガ。悪くはないが軽やかさが欲しいかな。

パルティータ第3番、イタリア協奏曲と同時期の録音だがやはり音が硬い。短調だと彼の方向性は重苦しく働いてしまうようである。(長調はサラバンドなどをはじめバランスが良い)。全体的にはイタリア協奏曲と同様の印象。最後の『主よ、人の望みの喜びよ』が、ようやく彼に求めていた、柔らかでありながら優美すぎない心が洗われるような演奏。でもやっぱりちょっとピアノの音が硬いかな。

というわけで、総合的には70点台半ばくらいだろうか。彼のキャラに合っていると思うのでなんとも惜しい。曲を変えてまたバッハを録音して欲しいと思う。
音盤紹介 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| ホーム |次のページ>>