音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
五嶋みどり / バッハ・無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全集
2017-08-15-Tue  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
以前書いた五嶋みどりのバッハをユニオンで我慢できずに捕獲。



買ってすぐにSACDやハイレゾ音源が売られたら泣けるが、仕方ない。演奏だが、CD試聴記のスズキさんが書いているレビューに全面的に同意できる。しっとりと落ち着いた遅めのテンポ、人間的な温もりを感じる柔らかな解釈、全くキツくない音色、例によって完璧な技巧で一切のピッチの揺れも感じず、私の持っている全集の中で完成度では他の追随を許さない。ソナタ第2番は2度目の録音になるだけに他曲よりも良い演奏に感じるが、以前書いた2005年録音の方が私は好きだ。スズキさんは旧録を寒色系、新録を暖色系と書かれているが、それ以上に的確な表現は無いと思う。やはり私も旧録音のような、凛とした佇まいで格調の高い演奏がバッハでは個人的に理想なのではないかと感じる。あの演奏は、バッハ=ブゾーニのピアノ版シャコンヌで言えば、オピッツの演奏のような崇高な高みにある。

全体的にはソナタの3曲とパルティータ3番が良いように思う。残念ながら、パルティータ2番のお待ちかねシャコンヌは予想外に12分を少し超えただけの相当な快速運転(ジェラール・プーレほどとは言わないが)で、個人的にはガッカリ。冒頭の和音も、粘りの弱い納豆のようなこざっぱりとした糸の引き方で、17分前後のハーン盤と久保田新盤の遅い演奏が好みの私の趣味からは大きく外れる(しかしながらsuper巧い・・・!!)。ハーンのような完全無欠なテクニックというのではないが、細部に込めた心の砕き方は手持ちで一番。しかも、それが嫌みではなく、実に自然な表現になっているのだ。シャコンヌはやっぱり久保田巧さんの方が好みだし(ちょっと音と技巧が弱いのが惜しいが)、パルティータ2番としてはクリストフ・バラティの旧録ライヴ盤の方が好きだが、全集としては手持ちで久保田さんと1stチョイスを争いそうだ。ヴァイオリン原曲のシャコンヌのベストはなかなか決まらないので、長い旅は続く・・・(尤も、あまりヴァイオリン全集は持ってないのだけれど・・・30種くらいかな)。

録音は残響多めだが、イヤホンやヘッドホンで聴かなければ私はそれほど気にならず、ドライブ中に車のオーディオで聴く分にはなかなか良かった。音の情報量というか密度も詰まっていて好録音だと言える。

さて、ちょっとやっつけなレビューなのには理由がある。スズキさんがご自身のサイトで書かれているNHK-BSでの無伴奏ライヴが再放送されるのだ。忘れないうちに読者の方々にもお伝えしようと思い立った。私は前回ものの見事に見逃したので、大変嬉しい。

9月25日(月)【9月24日(日)深夜】午前0時00分~

から、ライプチヒ・バッハ音楽祭 2017 『ミサ曲 ロ短調』の後にこのバッハが放送されるようである。同曲の世界一?マイスターであるスズキさんが演奏録音共に最高評価を付けられている、期待の演奏だ。皆さんもぜひ録画されてはいかがだろうか。
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最近聴いている音楽 vol.59〜久保田巧のデビュー盤/バッハ・無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2・3番
2017-08-05-Sat  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
ヴァイオリンはあまり積極的に聴かないが、人並みにバッハの無伴奏は聴いている。


サブカテゴリでかなり昔に5枚ほど簡単なレビューを書いているが、バッハの無伴奏ヴァイオリンで最も好きな演奏の一つを今日はご紹介したい。

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久保田巧さんのバッハ無伴奏ヴァイオリン全集である(写真はパルティータ集のもの。フルート・パルティータのヴァイオリン編も収録されている)。

これは本当に大好きな演奏で、スズキさんの伝説的なサイト『CD試聴記』で見て買って、初めて聴いた時から心をがしっと掴まれた録音だ。演奏はオーソドックスな解釈の極みで、どこまでも丁寧かつ生真面目に弾き込んでおり、私がよく使う比喩としては「祈りの対象となる格調高いバッハ」ではなく、「求道者による祈りそのもののバッハ」という感じである(何だそりゃ)。上述の『CD試聴記』にこれ以上ないレビューが載っているので是非ご覧頂きたい。

さて、スズキさんのサイトには久保田さんのCDデビュー盤にあたる1992年の録音が載っている。これはサイトで販売されていたものらしく、2000年代の半ばにはすでに手に入らなくなってしまった。どうしても欲しかったのだが、ヤフオクでも1万over、ユニオンのセールでも即売れしてしまっていた。ところが久々に検索してみると、なんと同時に2枚も、それも普通の値段で売られていた。喜びいさんで高いが評価の良い出品者の方を買ってみた(もう通販で失敗するのはイヤだったのだ)。

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後年の録音からさかのぼること12年前、33歳前後と思われる時の演奏だが、これも素晴らしい。入手までに10年以上かかってしまったが、その期待を裏切らない演奏だ。確かにスズキさんのレビュー通り後年の録音の方が質は高いのだが、こちらもすでに完成された演奏である。解釈はほとんど変わらず真面目路線で、指回りはこちらの盤の方が(若いせいか)上回る。特にシャコンヌは、後年のものよりも明るく生き生きとしていて、また違った魅力に溢れている。第3番は若干シリアスさの薄れた演奏だがこれも良い。

記憶が確かなら久保田さんのレコードデビューは、秋山鉄氏の「シャコンヌ狂時代」にミュンヘン国際コンクールの時の実況録音盤だと書かれていたような気がするのだが、今はこのページも見られなくなってしまった。以前も書いたが、15年前にネット上でクラシック音楽の豊富な情報を惜しげもなく提供してくれていた老舗サイトは軒並み閉鎖してしまった。それらのサイトに勉強させて頂いた盤を今回ようやく入手出来、嬉しくもちょっと切ない思いがしなくもない。初恋の人に同窓会で出会ったらやっぱり美人で、残念なことに既婚とわかった時の感じだ(今日の私の喩えはイマイチだ。まぁ私は同窓会なぞ行かないタイプなんだけど・・・)。

ところで、バッハの無伴奏ヴァイオリンでまだ私は五嶋みどりさんの全集CDを買っていない。2005年のヴァイオリンソナタ第2番の演奏は、私のあらゆるバッハ体験の中でも最高のものの一つだけに、出来るだけ早く買わねばとは思っているのだが、ハイレゾかSACDでそのうち出るのではないかと疑心暗鬼になって早2年が経つ。いい加減聴きたいのだが、どうしたものか・・・。それと、もう一人の不世出の天才ヒラリー・ハーンもまだバッハの無伴奏ヴァイオリンの全集を録音していない。衝撃のシャコンヌの録音から今年でちょうど20年。ハーンも30代後半となり、脂の乗り切った時期だけに、なんとしても録音を期待したい(年老いてからの時機を逸した録音だけは勘弁して欲しい)。

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江藤俊哉のバッハ・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
2007-08-27-Mon  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
またまたヴァイオリンの盤をご紹介。
今回は日本を代表するヴァイオリニストである江藤俊哉のバッハです。この盤はシュムスキー盤同様に高い評価にもかかわらず現在廃盤が続いており、運良く音源を入手出来たので感想を書きたいと思います。






まず、とにかく音色がズ太いです。これがエトーのボウイングというやつなのでしょうか。非常に卓越した右手の技術を感じます。ちょっと強く弓を押し付け過ぎなのか、時折和音が濁る感じの場面があります。全体的に1枚目(ソナタ第1・2番、パルティータ第1番)の方が良い演奏で、ゆったりとスケール大きく構えた内容。特にソナタ第1番は気に入りました。ソナタ第2番のフーガも良い出来。


パルティータ第2番も全体的にテンポが遅めでじっくり歌っている感じ。緊張感が高く、背筋がピンと伸びるような印象を受けます。シャコンヌは非常に充実した内容で、男性的な力強さのある演奏です。勿論、急速部分や重音部分での乱れもありません。ちなみに演奏時間は16:20で、好みの遅いテンポ。第Ⅱ部冒頭の歌の部分でも極めて高い集中力で弾ききっています。名演です。ソナタ第3番も充実している演奏なのですが、(僕の耳がおかしいのか)ところどころピッチが揺れる場面が散見されて惜しいです。しかし、長大なフーガの高揚感は随一のもの(この曲は長いので大抵飽きてしまうのに、最後までしっかり聴かせます)。録音は全体的に古い印象があるものの(76年録音)、残響も必要最低限で不満はありません。


というわけで、世評の高さを裏切らない名盤でした。少なくとも、先日紹介したシュムスキーよりは個人的に断然好みの演奏です(日本人贔屓?)。日本人ヴァイオリニストのレベルの高さを見せ付けたと言えます。是非とも再発してもらいたいものです。
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木野雅之のバッハ・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
2007-08-25-Sat  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
またヴァイオリンの盤をご紹介。日本人ヴァイオリニストの木野雅之によるバッハの無伴奏ヴァイオリンです。分売されており、画像はパルティータの方です。






聴いてみましたが、オーソドックスの極みと言える演奏です。派手な身振りや主張の強い解釈などは微塵も無く、ともすれば地味極まりない演奏ですが、むしろその淡々としたバッハが日本的な耽美さを演出しているような気がします(どうも僕は日本人の弾くバッハにシンパシーを感じることが多いです)。テンポの揺れもほとんどなく、1音1音大切に考えて弾いていることが伝わってきます。


パルティータ第1番は女性的な丸みを帯びた音色が印象的。弓圧はきつめなのですが、やや多めの残響のせいか耳にはスッと入ってきます。テンポは速めですが、そっけないという感じはせず、前述したように表現は考え抜かれているという感じ。シャコンヌは14:06で、技巧的にもキレがあってなかなか良い演奏です。ところどころガチガチに弾かれている箇所もありますが、急速部分や重音部分にも安定感があります。パルティータ第3番は一番良い出来。所々メトロノーム的な箇所もありますが、音の運びに余裕が感じられ、それでいて歌心もあります。ソナタ集の方は全体的に硬さが目立つ感じ。というわけで、かなり質の高い全集と言えるでしょう。日本人好みの演奏だと思います。
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オスカー・シュムスキーのバッハ・無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲
2007-08-25-Sat  CATEGORY: ヴァイオリンあれこれ
このところ集中的にバッハの無伴奏を聴いております。
名盤として誉れ高いシュムスキーの音源を入手したので、今回はその感想を書きたいと思います。






まず、一聴してぎすぎすした音色がかなり耳障り。録音がよくない。それでいてソナタ第1番は出だしから音程が揺れているのが気になります。聴いていて酔ってしまう感じです。ただ気迫というか、テンションの高さは尋常ではなく、息苦しさを覚えるほど。ストレートにバッハに向き合っているという感じ。技術的にもあまり高いとは言えず、重音も美しいとは言えません。前回紹介したチェピツキーの洗練された演奏とは対極にあります。


パルティータ第2番もやはりピッチの不安定さが少々気になります。シャコンヌは15:03で、中庸なテンポ。出だしの和音がちょっとぶっきらぼうで、表情が感じられません。それ以後も粘ったりタメたりするところがほとんどなく、面白みがありません。第Ⅰ部の前半の急速部分も音型が乱れ気味。長調になってからは素朴な語り口がなかなかよいです。ソナタ第3番は一転してシンプルな演奏が映えた良い演奏です。ラルゴもスケールが大きいです。しかし、パルティータ第3番は各楽章間のつながりがイマイチすっと来ないというか、テンポ設定が不自然な気がします。


というわけで、世評の高さからかなり期待して聴いたのですが、残念ながら好みの演奏ではありませんでした。この盤は現在廃盤であり、人気の高さもあって相当入手困難のようです(アマゾンのマーケットプレイスでは23万円を超える値が付いているのですが、一体どうなっているのでしょうか?)何度か聴いているうちにその良さが理解できるのかもしれません。もう少し聴いてみなければ。
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