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The melody at night, with you

音楽好きの世迷い言

ギター&エフェクターレビュー

今年は忙しくてレコード屋に行けず、ネットでの情報収集も怠ったので、ろくに新しい音楽が聴けなかった。CDやレコード、ハイレゾもあまり買わなかった。じゃあ何に金を使っていたのかというと、楽器と機材に浪費していた。

そんなわけで、今年最後の記事は新しく購入したギターとエフェクターのレビューを書いてみたい。


トラベラーギター プロシリーズ

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実は今年、人にギターを教える機会が出来た。忙しい本業の合間に練習時間を確保する必要があった。出張先や旅行先で普通のミディアムスケールのギターが弾けるのは大きい。約70cmなので、この夏の沖縄旅行(以前ブログで書いたところにまた泊まった)の家族用のスーツケースにも十分収まった。サイズはテニスラケットより二回り小さいというか、(持ったことはないが)バドミントンのラケットサイズくらいだろうか。コントロール部分が1本の太目のネジで締める着脱式のラップレストになっており、持ち運ぶときには外して小さくできる(簡単手軽に着脱できる)。

ピエゾとマグネティックがマウントされており、デフォルトで張られていたのはエレアコ用の弦であった(チョーキングし辛いのでエレキ用に張り直した)。ヘッドレスでストラップピンがネック上になく、代わりにゴム製の紐??が付いている。仕方なく、ストラップの片方をそれに結び付けて弾いているが、立って弾くのは結構辛い。しかし、座って弾いてもアームレストがないため、かなりの違和感がある。そのため、アームレスト付きのプロシリーズMOD-Xというモデルを買おうか、それとも少し安いこちらを買おうか悩んでいた。両方ともAmazonの「ほしいものリスト」に入れて眺めていたある日、突然それまでよりも1万5千円以上安い価格でこのプロシリーズの方が売りに出された。

traama

ビックリして何度もモデル名と送料とを確認してすぐさま購入を決断。その日の午後には元の価格に戻っていたので、これは販売側の値付けのミスだろう。噂には聴いていたが本当にこんなこともあるのかと嬉しい驚きであった。子どものオモチャのような聴診器が付いていて鳴った音を聴くことができるが、フィット感がメチャクチャキツく、耳がすぐ痛くなる。静かなところであれば直音(じかおと)でも十分練習できる音量なので、聴診器はほとんど使っていない。

せっかくエレキなのだからアンプから出したいのが人情である。そこでBlackstarのFLY3というミニギターアンプを購入。これがまた便利で、Bluetoothでスマホやタブレットから音楽を飛ばして鳴らしつつ、ギターのサウンドも鳴らすことができる。音色はまあ期待していなかったが、歪みのODチャンネルも付いており、これが意外と悪くない。端子はAUXのinや、もちろんヘッドホンのoutもある。タブレットでiRealproを鳴らし、それに合わせてトラベラーギターで練習をしていた。ライブハウスでセッションするほどの音量は出せないが、旅行先では十分スピーカー代わりにもなるし、バーベキューの時などに外で電池駆動でBGMを流せるのが便利。おそらくネット最安のサウンドハウスで黒はずっと在庫切れなので、仕方なく青色の派手なペイズリー柄を買った(恥ずかしすぎるので写真は自粛・・・)。

1つ困ったのが純正の別売りACアダプタ(高い!)がずーーーーっと品切れ状態であること。単3電池でかなり(十数時間)使用はできたが、旅先での電池切れは心配である。仕方ないので色々調べて、Amazonで、

CUGLB 【変換6種セット】ACアダプター30W 3V-12V 2000mA(2 A) 小型チャージャー 電圧自動調整 ユニバーサル AC充電器 ACアダプター スピーカー LED 端子コネクタ Micro USB-B 搭載5V 2.1A USBポート(30W)

・・・というものを購入(長い)。これはプラグと電圧が変えられる優れもので、その中の一つが無事にFLY3に使用することができ、今のところ壊れていない。

というわけでこのトラベラーギタープロシリーズ、アームレスト付きのMOD-Xとどちらを買おうか迷ったが、こちらはピエゾPU付きなのでアコギ風の音も出せるし、何より格安で新品を買えたので結果的に大満足である。中古でも4万を切る価格だったら是非購入をオススメしたい。


続いて、エフェクター。

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誰のマネをしたいのかがすぐ分かってしまうペダル群であるが、一応書いておくと勿論カートの後追いである(苦笑)彼の機材はネット上にもジャズギターブックにも豊富に情報が載っていて、全く同じ音を出したかったわけではないが(そもそもあんな風に弾くことはできない!)気が付いたら揃えてしまっていた(汗)。

歪みは最近彼がボードから外しているJ ROCKETT AUDIO DESIGNS の Allan Holdsworth Signature。ホールズワースのUK時代の音色が大好きな自分には是非試してみたいペダルで、ずっと探していた。新宿の某店で中古で2万ちょいで購入。音は何種類か出せるが、想像よりもあんまり歪まないのでフルアコでガッツを出したい時に使っている。ホールズワースのようなヌルっという感じの音色を作るのがかなり難しかったが、ギターを教えてる生徒達にブラインドしたところ、私の所有の歪みペダルの中で一番評判が良かったのがなんとコレだった。コンプとディレイはストライモン。このメーカーはクオリティが素晴らしく、まだ十分使いこなせていない。コンプは「パコーン」と言うよりは「クァコーン」と効く感じで透明感がある(意味不明)。エルキャピはラーゲ・ルンドも使っているようだが、ヴィンテージ風のテープエコーなサウンドが特にお気に入り。

しかしこの中でのイチオシがエンプレスのパライコである。とにかくノイズが少ない。それでいて「ギターを持ち替える以上の原音変化」をもたらしてくれるスバらしいペダルである。ただし、音作りは(私にとっては)シビアで、アンプごとにかなり調整する必要があり、正直ストライモン同様使いこなせていない。今は直列で繋いでることもあり、今後はバッファーを買いたいところ。なお、これはフルアコ用のボードなので、チューナーはKORGのクリップチューナー、スレッジハンマーカスタムを使用している。


続いて、ソリッド用のボード。写真はこれから組み上げる途中のもの。

elec.jpg

歪みはストライモンのサンセットとヴェムラムのジャンレイ。カート好きとしては彼が使用しているリバーサイドの方が欲しかったが、サンセットが安く売りに出たので思わず買ってしまった。正直、自分のメインギター(USAテレカス)には合わないが、仕方ない。ソロ時にはジャンレイで歪ませている。最近、PUをフェンダーカスタムショップのTwisted Tele Pickups Setに替えた。音がクッキリハッキリしてゴージャスに音抜けが良くなったのもあり、高音の歪み成分が目立つサンセットだと耳にキツい気がしてちょっと悩み中。

コンプとワウはBUDDA。今から20年近く前、ブッダのワウが流行ったことがあった。それ以来、このメーカーには注目していたのだが、中古市場では比較的安価で、それでいて実はとても質の良いペダルを作っていると思う。コンプも「パコーン」と分かりやすく効いてくれる感じですごく良い。ただ、肝心のワウは踏むとなぜか音量が少し上がる感じがあるのが惜しい。セッションをする時は面倒なのでMOOERのオートワウを使うことも多い。中華系は初めて所有したが悪くないし、何よりヤフオクで2000円位だったのでまあ文句は言えない。

EQはソースオーディオのSA170。EQのプリセットを曲間で変えられるのがとてもよいが、やはりパライコよりもノイズが目立つ。しかしオススメである。ディレイはカートも使っているNEMESIS。これも多機能でクオリティが高く、オススメである。特にアナログの音色がイイ。

コーラスは私が所有する数少ないヴィンテージペダルのCE-2。15年くらい前に後輩から「母親がキーボードに繋いで使ってました」というのを4000円で譲ってもらった。はっきり言ってコーラスというエフェクターは好きではないのだが、ごくごくうすーくかけてオートワウと併用し、カッティングに用いている。チューナーはKORGのPB-AD。堅牢なボディ、見やすいディスプレイ、おまけに安い、で買ってみた。とてもいい。


お次は、旧ボード。

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歪みは10数年前に買ったBD-2のKeeley-mod。普通のBD-2はやや音ヌケが悪いというか、モッサリしていて気に入らなかったのだが、このキーリーモディファイは素晴らしい!ピックアップをセンターにして歪ませると最高である。しかし、リアで弾くと「ノー天気で頭の悪そうなキンキンサウンド」になるのが悩みで、結局外してしまった。

軽い伴奏時の歪みにはKLON CENTAURのクローンペダル、Studio Daydream KCM-OD ver.9.0。全然中古に落ちてこず、ついつい新品でAmazonで買ってしまった。ジュワ~ンという歪みの艶感と、各帯域のバランスの良さが素晴らしい。ただし、セッションでは「カラっ」とした感じの方が合う気もして、今は外してしまった。。。


残りのペダルを最後に。

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グヤトーンのヴィンテージコンプ、PS-103はネットでも話題のペダル。たまたまハードオフの花小金井店で発見、5000円弱で購入。これが存外素晴らしく、少し余計な色が付く感じもあるが、それがまたイイ味を醸し出す。残念ながらPUを変えてクッキリゴージャスな音色になってしまったので外してしまったが、長いこと使っていたダイナコンプをすぐに売り払うくらいのインパクトはあった。

マルチはBOSSのGT-1。昔からBOSSのマルチを長いこと使っていたが、この夏の暑い時にボードを組み直していて嫌気が指してしまったので思わず買ってしまった。セッションにもこの1台で出かけられるし、結局のところ私にはこれで十分である(笑)特にお気に入りなのが、ワウの種類が多く、とても使いやすいこと。

ちなみにアンプはツインリヴァーブとDV MARKのLITTLE JAZZ。ツインリヴァーブは家の防音室に置いておくと嫁が「邪魔!」と怒るので、仕方なく今はレッスン場所に置いている(汗) リトルジャズは小さい・軽い・音が良いと3拍子揃った素晴らしいアンプ。エフェクトの乗りも良く、フルアコでのジャズ用に買ったが、ソリッド・エレアコなどギターの種類を問わずナチュラルなギターの素の音を出してくれる感じがして今はメインアンプである。


・・・長くなったので、もう2本、買ったギターの話はまた別の機会に。
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続・Charles Altura

以前、ジャズ・ギタリストのチャールズ・アルトゥーラが気になるという記事を書いたのだが、それから彼がサイド参加した作品を3枚ほど聴いた。アメリカで「ネクスト・ライジングサン」と評判の彼の、ジャズ方面からの視点でレビューしてみたい(お分かりのように、私は1人のアーティストを深く掘り下げるタイプである)。


まずは彼の出世作??と思われる、チック・コリアのアルバムから。なぜか録音年の記載がないが、おそらく2013年初頭だと思われる。

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・・・実を言うと、私はチック・コリアが苦手である。何度も書いているようにキメの多いテクニカル・フュージョンが楽しめないのだ。演ってる本人たちは自身の演奏能力を十全に発揮する機会が多くて楽しいのだろうが、なんというかグルーヴに身体を委ねる喜びに欠けるというか・・・勿論、一概にフュージョン全部がダメなわけではないが・・・。

さて、結論から述べると、これはまさしく私の苦手なフュージョンであった。多作で知られるC・コリアとの先入観ということもあると思うのだが、いかにも超絶技巧の職人たちが集まって短時間で仕上げた「こしらえものの秀作」という感じがする。

ところで、アルトゥーラのギターは巧い。凄まじく巧い。youtubeでもライヴ映像を見ることができるが、HR/HM的なメカニカルな能力と、ジャズ・フュージョン的な和声的能力の両方を兼ね備えているという感じがする。アコギでの凄まじい早弾きなども聴けるので、どちらかと言えば前者寄りな印象がこの盤では強いが、以前紹介したD・スティーヴンスの盤では完全なジャズ寄りのプレイだったので、懐の深いギタリストなのだろう。とにかく卓越した指の運動能力に(久々に)耳を奪われた。

ブックレットの写真を見ると、どうやらストップテイルピースのギブソンES-335を使用しているようだ。テイルピースとブリッジの間に布??のようなものを挟んでいる。音色はエレクトリックな他の楽器群に埋もれないよう、基本的には薄く歪ませ、サステインも長めであり、箱モノ的なピッキングニュアンスのふくよかさやアタック感は楽しむことができない。

というわけで、彼が参加していなければおそらく聴くことはなかったであろう作品(苦笑)



続いて、ジャズ・ベーシスト、マット・ブリュワーのリーダー作品『アンスポークン』(2016)。

mattb.jpg

実は彼のオリジナルは苦手である。以前、彼のリーダー作『Mythology』にラーゲ・ルンドが参加しているというので買って聴いたのだが、どれもテンポがノロく、出来損ないのフリージャズかゲンダイオンガクか??と思って頭に来て、短気な私はヤフオクかなにかで売り飛ばしたのだった(だから正直内容はよく覚えていない・・・音源は残してあると思うが。金の無い学生時代と違って、最近はあまり音盤を売らなくなったのだけれど)。


そんなわけで一抹の不安があったものの、アーロン・パークスも参加してるし・・・ということで買ってみた。


結論から言うと不安ド的中。この人はドロドロしたアンダンテ曲しか書かないのか、という記憶があったのだが、今回もそれ。1曲目はまあ掴める旋律があるので許せるが、それ以降はなんだかモヤモヤしててパッとしない曲ばかり(3曲目のフリーゼルの曲はなかなかイイ)。5曲目の『EVIL SONG』という3分ほどの曲は私からすればまさに悪意と邪悪に満ちたキモ過ぎる曲。演奏者のソロらしきソロもなく、意味が分からない。パーカーの『CHERYL』だけはスタンダードだけに、演奏者たちのまっとうなソロが聴けるのが救いだ。

ブリューワーへの悪口が続いてしまったが、アルトゥーラの話だった。はっきり言って、バシッ!と目立つソロがそもそも少なく、高揚感のある曲も少ないので評価に困る。また、音色はやはりセミアコを使用していると思われ、曲によっては薄く歪ませたりして、その音のよく伸びる具合を考えると結構コンプとかのエフェクトも使ってそうな感じ。正直、『ヴィジル』路線の音色で、個人的にはあまり好きではない。


唯一の救いと言えば、パークスのピアノが素晴らしいこと。2曲目の冒頭の繊細なタッチでの抒情的なフレーズにゾクッとする。まるでクラシックピアニストの演奏のようだ。以前、「アーロンはパークスよりゴールドバーグの方が好き」と書いたのだけれど、彼の若い頃の小生意気な「オレ天才なんです」感がいい具合に角が取れてきて、真の天才に仕上がってきた感がある(なんて偉そうなんだ。でも、カートの2012年『スター・オブ・ジュピター』の1曲目「ガンマ・バンド」のソロは難解??な展開に勢いとリズムだけで何が言いたいのか分からんかったし・・・)。というわけで、パークスの煌めく才能ばかりが目立つ盤。おそらく今後、ブリュワーのリーダー作に手を出すことはないだろう。



さて、3つは最新盤。つい3日前に発売されたてホヤホヤの新譜である。

トム・ハレル『インフィニティ』(2018)

tomhha.jpg


いつものようにユニオンに出かけると、いい具合のクリーントーンでバシバシとカッコいいフレーズを弾くギターが耳に飛び込んできた。これはもしやと思ってレジで確認するとこの盤てあり、やはりアルトゥーラのギターであった(!)。

Tom Harrell(tp, flh)
Mark Turner(ts)
Charles Altura(el-g, ac-g)
Ben Street(b)
Johnathan Blake(ds)
Adam Cruz(prec M3 only)


コード楽器がギターのみで、いよいよアルトゥーラの本領が発揮されるかと思い、ワクワクして聴いてみた。


これまでに紹介した4枚と比較して、もっとも一般的なジャズ・フォーマットに近い。全曲がトム・ハレルによるものだが、あまり非ジャズ・ビート的な曲(というかロックっぽいドラム)もあり、単なるジャズ・スタンダード感だけに留まらない。ブリュワーの曲よりは断然好ましい。目玉の1人であるマーク・ターナーはいつ聴いてもマーク・ターナーで、例の高音域からヒュルリと降りてくる手グセフレーズが聴けて思わずニヤリとしてしまう。ドラマーは起伏に富んだビートを叩き出しており、私好みの、なんというかロックなエリック・ハーランド感があって巧いと思った。


アルトゥーラの話をすると、活躍度ではこれまでで一番なのだが、正直なことを言うとジャズ的語彙の限界も見えた感がある。カートやL・ルンドなど、普段から先鋭的なハーモニーを駆使するギタリストばかり聴いているせいだと思うのだけれども、要は物足りないのだ。ハレルがバップ寄りのアドリブを繰り出すために、「空気を読んで」分かりやすいソロを弾いたのかもしれない。アコギでのソロもちょっと普通で、なんだかポップスのセッション・ギタリストが弾いているみたいだ。それでも私が店頭で聴いてカッコいいと思ったフレーズは、D・スティーブンスのリーダー作に参加したときにも聴いた感じの、ペンタ的な1弦につき2音ずつ弾くものに多少の味付けしつつ下降・上昇するもので、手グセなのかもしれない(それでもリカルド・グリーリの「ソレしか弾けないのかお前」みたいな手グセオンパレードでは勿論ない)。また、卓越した指回りを見せつける場面もやっぱり空気を読んだのか少なく、地味なソロが多い。


ギターの音色に関しては根本的な変化が感じられる。録音が2018年の終わり頃なので、これは彼が渋谷ウォーキン『Westville』にエンドースされた後だと思われ、ウェストヴィル製のセミアコギターを使用しているのではないか。クリーントーンはヒラヒラしてて軽めながら不思議と芯があり、同ブランドのサイトでのKurtのyoutubeで聴ける音と同じキャラクターである。これまでの音色より私好みである(単に一般的なジャズ形態の作品に合わせただけかもしれないが。それにしても・・・ウェストヴィルの躍進はすごい。今度はメセニーの"トリビュート・モデル"だってさ。売れるだろうなぁコレ)。


というわけで、アルバム1枚を聴き終わると、曲のモチーフもリフの反復を基調にしていて似通った感があって、おまけにアルトゥーラのソロも地味で、悪くはないのだが惜しい。彼はテレンス・ブランチャード監修の映画でもギターを弾くなど、各方面に引っ張りだこのようだが、いつか腰を据えてジャズなフォーマットでリーダー作を出してほしいと思う。私が一番好むコンテンポラリー・ジャズは、J・レッドマンらのジェイムズ・ファームのような音楽性なのだが、あそこにギタリストとしてアルトゥーラが参加してくれれば最高なのだけれど。おしまい。
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Daisuke Abe / On My Way Back Home

続けて日本人ジャズギタリストの作品を。



阿部大輔 『On my way back home』 2004年録音

阿部大輔:guitar
Walter Smith:tenor sax
Aaron Parks:piano
Matt Brewer:bass
Rodney Green:drums
Gretchen Parlat:vocals (tr 4,6)

阿部大輔氏は1978年生まれ、洗足学園短期大学ジャズ・コースで道下和彦氏に師事、同校首席で卒業後渡米、バークリー音楽院でミック・グッドリックらに師事、在学中に"Louis Belson Award"を受賞し、2002年卒業。その後、NYに滞在し、2005年にリリースされたのがこの初リーダー作品である。まずはともかく、御覧の通りメチャクチャメンツが凄い。今をときめくアーロン・パークス、マット・ブリュワー、ロドニー・グリーンら素晴らしいサイドメンを集めている。


さてこのアルバム、全曲阿部氏のペンによるものだが、一番の要点を述べるととにかく曲が良い。いわゆる一般的な編成のジャズ作品だが、どれも印象的なテーマで、見た目の通り(??)いかにも生真面目そうな日本人が書いたバランスの良い(≒ベタすぎない)メロディックな曲が揃っている。タイトルトラックの1曲目、アップテンポでいかにもギタリストが書きそうな旋律。アドリブはやや堅い??感じがしてすぐ終わってしまう。他のソリストも、「曲に馴染んできたかな?」と思うところで終わるので、物足りない。2曲目、メセニーにも通じるキャッチーで分かりやすい佳曲。非常に印象に残る。3曲目、これも比較的速めのテンポ。ギターの音がM・モレノみたいで、プレイも若干そんな印象がある。これはサックスのソロに行く前のサブテーマみたいのが実に美しい。ただし、やはりソロは短い。4曲目、歌が入ってくるが、このヴォーカリストがまた良い声で、おまけに曲もいい(歌詞はなんとロドニー・グリーンが書いたという)。当時二十歳そこそこと思われるパークスの伴奏も光る。曲に合わせ、ここではアコギをプレイしているのが「わかってる」という感じがする。


5曲目、最も長尺の曲(8:15)で、ようやくたっぷりソロを取ってくれたという感じ。クインテットなら10分くらい演奏してほしい。6曲目の歌、さっきよりもアブストラクトでちょいとダークな、不思議な切なさを備えた曲。ギターはフルアコで、歌と時折ユニゾンしつつ、ソロも取る。7曲目、これも快速テンポで、あまり旋律が跳躍しない、1曲目同様な感じのテーマの曲。ブリュワーのベースがようやくグイングイン来る。テナーも一発目にガツンとしたソロで本領発揮。続くギターソロがこれまた短い!(そのあとにドラムソロを入れるせいだろうか。それも短いが)。この曲にはパークスが参加しておらず、阿部氏のバッキングを堪能できる。8曲目、なぜかこの曲だけギターソロの音色がかなり前面に来て力強い(というか各楽器のソロごとに音がフォーカスされて解像度が著しく上がる感じ)。阿部氏のソロは広い音域を跳び回り、抽象的な現代詩をそらんじているような演奏。パークスのソロはやや常識の範囲内かな。スミスのソロも少々盛り上がりにかける。テーマもアルバム前半に比べれば少し取っつきにくいか。終曲、サックスとピアノが巧みなユニゾンで伸びやかなテーマを奏でる。直後にブリュワーのベースソロ。音が少しコモり気味なのが惜しいかな。ギターソロはラーゲ・ルンドみたいな広大なアルペジオが登場する。個人的な好みとしてはやはり短すぎる。


ギターのプレイは先に述べたように、私の知っている他のギタリストで例えるならばマイク・モレノに一番近い気がする。使用ギターはギブソンの1970年初期のES-330で、この年代の個体は日本ではあまり見かけない。サンサンゴと同じシェイプのシンボディながら、センターブロックのないフルアコ構造で、サステインが強すぎず鳴りがふくよかな感じ。モレノっぽいと書いたのは、空間系のエフェクトを強めにかけていること(笑)透明感がありながらも芯のある音色で、けっこう私好みである。録音は各楽器のバランスが良いのだが、曲によってはベースが小さく感じるのが勿体ない(Vo曲は聞こえるがそれ以外がかなり低音が物足りないのでリビングで聴くときはウーハーを上げている)。


というわけで、感想をまとめる。アルバム前半に特に良い曲が揃っており、サイドの演奏も実力通りに素晴らしく、ギターは派手さが無くやや印象には欠けるが好みの音色で、各奏者のソロが短いのが一番惜しいところ。もう15年も前の作品だが古さは全くなく、他の欧米のコンテンポラリー・ジャズギター作品に微塵も聴き劣りしない良作だと思う。現在も阿部氏はNY在住で活躍とのこと。下に氏の動画を貼っておく。この時と同じスタイルの演奏ながら、さらに深みを増した艶やかなギターが聴ける(ドラムが近く、ギターが小さいのが残念・・・)。





なお、彼のHPにはジャズギター講座の紹介があり、「ジャイアント・ステップスをペンタだけで弾く」などの実に有益な動画がある(私はこの手法を、最初にジャズギターを教えて頂いた菅原邦弘先生に、「スコット・ヘンダーソンが「こんなの1日中続けられるよ」と言ってペンタで弾きまくってるんですよ」と習った記憶があるが、知らない方は驚かれるのではないかと思う)。

来日されたらライヴにも行ってみたい。
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Motohiko Ichino / Sketches

普段ジャズギターは90年代以降の盤を中心に聴いている。海外ギタリストの作品が多いが、日本人は布川先生しか聴いていないのかというと、もちろんそんなことはない(文京区立図書館でたくさん聴いた(笑))。今日は珍しく、日本人ジャズギタリストの作品を。


sketches
(サイン付き)


Motohiko Ichino / Sketches (2005録音)
市野 元彦 - guitar
東保 光 - acoustic bass
嘉本 信一郎 - drums
かみむら 泰一 - tenor sax (Tr 2,5,6,10)


市野元彦氏は1968年生まれ。大学卒業後に渡米し、バークリー音楽院にてミック・グットリックらに師事、帰国後2003年のギブソン・ジャズ・ギター・コンテストで優勝している。この作品は彼の初リーダー作である。例によって私は10年ほど前のジャズ・ギター・ブックの記事で市野氏を知った。


ジャズギターは、モダンジャズ・後期モダンジャズ・フュージョン寄り・フリージャズ寄り・コンテンポラリー等に大きく分けられるかと思うが、この作品はジャズをフォーマットとしつつも、どこか音響系・エレクトロニカな雰囲気を漂わせた1枚となっている。全曲が市野氏の作曲で、どれもオリジナリティがある。美しいが抒情的になりすぎないテーマ、やや暗めでモノトーンな録音でセピア色の写真のようにノスタルジックな雰囲気、そして何より磨き選び抜かれたギターのヴォイシングが非常に印象的だ(彼のサイトを見るとそれも頷ける)。CDの帯にあるように「心象風景」「音の~スケッチ」という紹介はまさに、という感じがする。


アルバムの雰囲気を思い切り乱暴に例えると、「エレクトロニカに転向したジョン・アバークロンビーがECMから離脱し親指で弾いたトリオ作品」という感じ(サックスはゲスト的参加)。"アンダーサム"と呼ばれる(らしい)右手の親指中心の奏法による透き通ったギターの音色が素晴らしい(この作品の使用ギターはブックレットに書かれていないが、彼は渋谷ウォーキンのアーチトップ・トリビュート、現在は同店のWestvilleを使っているはず)。


ECMレーベルのような、抒情的だけれどもどこか透徹したそっけないまでに冷たいがゆえに切ないような雰囲気はない。時折、ネックベンド(??)でピッチを揺らすところなど、音響系的というかオーガニックな印象さえ受ける。そして繰り返しになるが、ヴォイシングが本当に美しい。ソロも無駄な音は一切弾かないというか考え抜かれた音を紡いでおり、そのラインは私の知る他のどのギタリストにも例えることができない(アルバムの雰囲気はアバクロ的だが、プレイ自体は全く違う!)。私はこんなブログを書いてるので、ピアノもギターもテクニック重視で派手な超絶技巧作品が好みと思われそうだが、このような一見地味だが知的に洗練された音楽も大好きである。


プレイの中心は転回コードによる、素人ギター弾きの私からするとあまり聴き慣れない、しかし非常に惹きつけられるヴォイシングである。ブルーノートの典型的な用い方をしていないのか泥臭いような雰囲気は一切なく(※ 7曲目で一カ所あった)、洗練された響きがアルバム全体に通奏低音のように流れている。多くの曲はその和音をモチーフにジャズなビートで展開していき、旋律は現代コンテンポラリーのように抽象的ではなく、しかし甘ったるくキャッチーでもない、そしてどこか日本人的なわびさびを感じるもの(私がよく用いる例え)だ。サイドについても書いておこう。サックスが苦味を感じる実に渋い音色を聞かせるのだが、録音のせいかやや一本調子な音に聞こえる。ベースも音像のスケールが小さく、全体的に録音クオリティは少し残念な感じを受ける。ただ、ドラムの距離間は遠目だが、邪魔をしてないのがイイ(これギター作品では重要)。


この後、彼は佐藤浩一氏(布川先生のカルテットのピアニスト)らとrabbittoというグループを結成、より音響的・エレクトロニカに漸近した音楽を奏でている。私的にはそちらも大好きなのだが、一般的なジャズフォーマットからさらに離れ、おまけにギターのソロが少ないので紹介はまた別の機会にしようと思う。


というわけで、オーガニックかつノスタルジーに満ちつつも洗練された印象と、こじんまりとはしているが知的な雰囲気に満ちており、聴けば聴くほど心に沁みてくる懐の深い作品である。私の愛聴盤であり、大変オススメ。
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Vic Juris / Roadsong

最近レコードについて書いてない気がしたので、ジャズ絡みの盤を。

vic

ヴィック・ジュリス / ロードソング

1977年/MUSE/MR-5150
Vic Juris(g)
Barry Miles(key)
Terry Silverlight(ds)
Rick Laird(b)
Jon Budsrr(b) ※A3
Richie Cole(as) ※B1,B4

1953年生まれのジャズギタリスト、ヴィック・ジュリスのデビュー盤である。もうそろそろおじいちゃんな歳だが、近年もバリバリSteepleChaseから作品を出している(全然チェックしてないけど…)。

このレコードは私のバイブルであるTHE DIGによるディスクガイド、『JAZZ Guitar』で「未CD化のアナログ」ということで知った覚えがある。Discogsを見てみると、残念ながら今に至ってもCD化はされていないようだ(ジョン・ストーウェルのデビュー盤とかは確かCDになってるのに・・・)。最近、数年ぶりにジャズのセッションに出かけたこともあってギターづいていることもあり、久々に取り出して聴いてみた。

うーん何度聴いてもポップ。キャッチーなメロディのテーマとAOR風なカッティング、そしてギターはマルティーノライクな16分の直線的ラインとポキポキした音色で弾きまくる弾きまくる。当時24歳だが曲の分かりやすさとよく回る左手のテクニックが凄い。すでに完成されている感がある。

A1「Roadsong」は勿論ウェス。オクターヴを交えるギターのリズムの締まりが凄い。ドタバタしたドラムのコンプが効いたバスドラはジム・ホール『アランフェス~』のスティーヴ・ガッドみたいだ。ソロはどこまでもマルティーノ感満載で弾きまくり。A2、ジュリスのオリジナルですんごいポップ。野原で子どもが駆けてるような、昭和の終わり~平成初期のNHKの天気予報のバックで流れてそうな曲。A3、ジュリス作。さらにバラード的でギターのナチュラルハーモニクスとシンセが美しく絡み合う。テーマも実に分かりやすい。チョーキングも織り交ぜるが、そのタイム感・ピッチ感は只者ではない。ラリー・コリエルっぽさも漂う。A4はシルヴァーライトの曲で短いがジュリスの派手なソロが聴ける。

B面はすべてジュリスのオリジナル。スピードはマルティーノを超え、J・ウィルキンス的でさえある(なお、ライナーによると1曲だけ参加のジョン・バーはウィルキンスのアルバムへの参加経験があるらしい)。B1はキレのあるカッティングにアルト・マッドネスことリッチー・コールが混ざってきて、よりAOR的というかフュージョン的。ただし、私の苦手な「コーラスびんびんギター&細かすぎるキメ」はないのでとても聴きやすい。B2はこのアルバムの中でも最もキャッチーなテーマ。正直恥ずかしくなるくらい。ドラムのビートが心地良い。ギターの音のコモりがやや強いのが惜しい。ソロは教科書的で分かりやすいが、やっぱりところどころで一瞬マルティーノが顔を出す。トライアド+αな手グセのアルペジオを繰り返しつつ、フェイドアウトで終わる。B3はテンポが速く、さらに途中でチェンジする。テーマは直線的でスピーディ。バリー・マイルズが切り込んで来てシンセのソロが始まる辺りなんかは、ナショナル・ヘルスのデイヴ・スチュアートみたいだ。ラストのB4、リッチー・コールとのユニゾンでちょっとフュージョンにありがちなテーマを奏でる。まずジュリスがバリバリ弾きまくり、その後コールがテーマの崩し風な出だしから控え目で短めのメロディックなソロを取る。アウトロでもジュリスは弾きまくってアルバムは幕を閉じる。

もう42年も前の作品だが、当時としても非常に分かりやすくて「バリバリのジャズギター作品」ぽさは薄いかも。プレイもメジャーペンタ率が思いのほか高いというか、急速フレーズもクロマチックを織り交ぜたシンプルなラインに聴こえる。ただし、キャッチーなテーマ連発ながらイージーリスニングな印象がないのはやはり高いテクニックによるものだろう。むしろこの演奏の「分かりやすさ」は、ジャズギター聴き始めのギター小僧にイチオシできる快作だと思う。

それにしても・・・ダグ・レイニー(1956)、メセニー、ディ・メオラ(1954)、リー・リトナー(1952)、ロベン・フォード、ジョンスコ(1951)という同年代の充実ぶりは凄い(ジュリスは渡辺香津美と同い年)。

「アナログレコード」カテゴリの記事であるから音質についても書いておこう。残念ながら、音質はそれほど良くなくて、オーディオ的な楽しみは少ない。録音エンジニアはかのR・ヴァン・ゲルダーだが、ジュリスの趣味でギターの音がコモリがちなのもあるし、前述したドラムのコンプ感に時代を感じるし、全く存在感のないベース、シンセの音量のバラつきなど、もう少しなんとかして欲しかったと思う。尤も、私の持ってるのは邦盤なので、USオリジナルはもっと良い音なのかもしれない。気長に探してみようと思う。
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