音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
最近聴いている音楽 vol.76~追悼John Abercrombie~
2018-03-13-Tue  CATEGORY: アナログレコード
かなり間が空いてしまった。年度末は忙しいのだが、ようやく時間が出来つつある。


実は最近、勉強のために代々木上原に行くことがたまにあって、幡ヶ谷駅で降りて歩いていく道すがら、こじんまりとした綺麗なレコード屋を見つけた。


広くはないし、レコードの量ははっきり言って相当少ない部類ではあるけれど、オシャレでセンスのいい店内はとても気分がいい。およそ隔週で通っているが、在庫の回転はやはり悪い(ユニオンやHMV等の大手じゃないと厳しいのだろう)。値付けはまずまず普通。ジャンルはクラシック以外は一応揃っている。和モノ以外にレア盤は少ないが、先日ジャズの棚で好きな盤を見つけたので買ってみた。

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ジョン・アバークロンビー、マーク・ジョンソン、ピーター・アースキンのトリオによる有名なライヴ盤である。ECMジャーマンオリジナル、盤質Ex+、1000円台半ば、昨年亡くなったアバクロの好きな作品だったので、追悼の意味でもアナログで聴き直してみる。

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残念ながらホコリの下に傷が隠れていて、周回プチノイズが10回ほど入るので私基準ではEx評価だが、まぁ大目に見よう。実はこのアナログ盤はあまりユニオンでも出ず、未だCD化されていないECMの2作品や79年の別レーベルから出した傑作『Direct Flight』(これもトリオ)などと合わせて結構足が速い(あの中では紫のシンプルなジャケの『M』が一番よく出てくるかな)。

88年の録音ということもあって、バリバリ多用されるギターシンセに拒否反応を起こす方もいるかもしれないが、それでもこの抒情性と繊細かつウォームなギターの音色(うすーくコーラスがかかっているのが玉にキズ…)は実にアナログ向きである(CDだとやはりシンセが耳にキツいのだ)。特にtr.3のアリス・イン・ワンダーランドは名演中の名演で、名手3人による絶妙なインタープレイが素晴らしい。リリシズムの極致である。

このアルバムなどを聴くと、アバークロンビーがメセニーに与えた影響は大きいのではないかと思う(ジャズ・ギター・ブックなどの記事でも、ジム・ホールとメセニーを繋ぐミッシングリンクがアバクロ、などと書かれていた気がする)。アバークロンビーのギターはテクニックやフレージングに派手さこそは全くないが、柔らかな音色で玄人好みの抒情性を備えているところがいかにもECMといった感じで、そのキャラクターがレーベルの性格にピッタリとハマッた幸福な一例だろう。


・・・しかし、アバクロも凄いのだが、このアルバムでなにより一番凄いのはアースキンのシンバル・レガートである。楽器でジャズを少しでもかじった人間なら誰でも戦慄せざるをえない驚異的な演奏だ。私も世の中の平均的な音楽ファンよりはジャズを聴いているほうだと思うが、これに匹敵するシンバルレガートは数少ない(私の先生がレッスン中、ジャレットのアルバムでのディジョネットのとあるプレイを評して「うちのジャズ科の学生ドラマーはこれを聴くときっとみんな泣いて逃げ出すよ」というようなことを言っていた。あれも凄かった)。ただし、B面の後半は何故だかやたらバスドラがドムドムとうるさく目立つミックスになっているのが少々残念(ちなみにベースも。CDではそれほど気にならない)。


というわけで、ジャズギターファンのみならず是非是非オススメな1枚。
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FORMULA 3 / LA GRANDE CASA (ITALY original)
2018-01-30-Tue  CATEGORY: アナログレコード
最も好きなプログレ作品は何か?と聴かれると返答に困るが、イタリア限定ならば答えられる。フォルムラ・トレ『神秘なる館』だ。

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(紙ジャケCD。リビングの蛍光灯の下で撮ると黄色っぽくなってしまう…)


大学時代に再発CDで聴いてブッ飛んだ。プログレで前衛的なロックばかり聴くことが感性を磨く最良の方法だと思っていたあの頃、イタリアの抒情溢れる歌心全開のこの作品は、プログレという枠を超えて大のお気に入りになった。イタリアの名カンタウトーレ、ルーチオ・バッティスティの薫陶を受けたメンバーが結成したバンドの4枚目であり、最終作だ。第1・2作はバッティスティの作曲が多かったと記憶しているが、ここでの全曲は完全に彼らのペンによるもの。


1曲目、「ラディウスのラプソディ」、Vo&Gのアルベルト・ラディウスの思わせぶりな美しいアコギの調べから徐々に盛り上がり、激しいストロークを呼び水にしてドラマチックに曲は走り出す。ラディウスのハスキーでソウルフルな歌もいい。2曲目「人口自然」はイタリアのブルースと言った趣きの曲。3曲目「男の自由」もムーディで、シンセとギターが切なく不安げに絡み合い、荘厳なコーラスとバンド演奏の融合で大団円を迎える。タイトルトラックの4曲目「神秘なる館」、前曲同様の構成だが、よりロック的なリフを軸に導火線にジリジリ火が付いていくが、やはり主役は抒情性に満ちた歌だ。5曲目「いとしのジョバンナ」、出だしはほっとするフォーキーなナンバー。途中からバンドでロックに展開するのが彼らの常とう手段とわかる。終わりの6曲目「少女のような君」、ポップなイタリア歌謡という雰囲気でプログレ感は薄め。6曲30分ほどなのが(この時代ではよくあるとは言え)唯一の不満。


ともかく音楽好きならば万人に推薦できる「分かりやすい」名盤だと思う。「劇的」「抒情」「イタリア歌謡(詳しくないので偏見かも)」という言葉がこれほど似合う作品も早々ないだろう。PFMやクエラ・ヴェッキア・ロカンダ、ニューートロルス、アルティ・エ・メスティエリ、ムゼオローゼンバッハ等ドラマチックを売りにするイタグレバンドの名作は多々あるが、最も王道(かつ、わずかにフォーキーな毛色)である1枚に挙げられる。ひょっとしたら、本格的なプログレっシャーの間では物足りない作品なのかもしれないが・・・。尚、彼らのこの他の3枚も実にバラエティに富んだ作品で、この4枚目の抒情を期待すると肩透かしを喰う(やっぱり彼らがプログレッシブロックバンドなのだと再確認させられる内容とだけ書いておこう)。この後、メンバーはスーパー・バンドと称されるイル・ヴォーロを結成、2枚のアルバムを残すが、この「神秘なる館」のような、突き抜けたまでのメロディアスな楽曲はそこにない(率直に言えば、プログレ的にやや取っつきづらくなる)。


さて、そんな愛聴盤はアナログレコードが欲しくなる。私は再発盤、紙ジャケを所有し(その2つの音質の違いは分からなかった苦笑)、いつかはイタリア・オリジナルをと夢見ていたが(再発盤はいしうら氏にプレゼントした)、このほど(というか1年ほど前だが)イタリア原盤を入手した。

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(白い部分が日焼けしやすいがこれは焼けなし)

想像通り音が滑らかで、CDの輪郭のシャキッとした音色も捨てがたいが、アナログのほうが頻出するアコギのきらびやかなキレ味を存分に楽しめる。シンセの高音もマイルドで耳に優しい。ちなみにアナログ盤の価格としては3作目「夢のまた夢」の方が2万overでダントツで高い(1・2作目はあまり見かけない)。

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(ジャケもヴィニルもコンディション良好のためかなりの価格に…DGアリなのがマニア心をくすぐる)


ところがその後、7インチのシングルEPをオークションで入手。


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収録曲は「ラディウスのラプソディ」と「少女のような君」の2曲で、物足りなさは否めないが音はLPを上回る素晴らしさ!LPの音の滑らかさに加えて、存在感というか生々しさというか、音の太さがさらに増す感じ(情報量が多い)。7インチの音質の優位性を改めて感じたのだった。
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SIR LORD BALTIMORE / Kingdome Come (USオリジナル)
2018-01-26-Fri  CATEGORY: アナログレコード
たまにはバキバキの70年代ハードロックが聴きたくなる。


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サー・ロード・バルティモアのファーストアルバム『キングダム・カム』である。1969年、NYで結成されたハードロックバンドで、鈍器を振りかざしたようなゴリゴリかつブリブリの重低音ベースに、ファズの効いたラウドなギター、そしてヴォーカルが叩いてるとは思えない手数多めのドラムのトリオだ。ヴォーカル兼ドラムのジョン・ガーナーはアル中の前科者ががなり声で叫んでるように歌い、ドタドタしたリズムとトリオ編成で少な目の音数をもろともせずに迫力と音圧で攻め切るさまが凄まじい。ツェッペリンやサバスの影響も感じさせつつ、どことなく地下室セッション的なアングラ感も漂う。幽霊船ジャケットからイメージするようなマイナー調の暗さは楽曲自体にはない。お気に入りはB4「Helium Head (I Got A Love)」。動画は貼らないが、youtubeの海にも落ちているので米国アングラ・ハードがお好きな方は是非探してみて頂きたい。


バンド名を冠したセカンドアルバムも素晴らしいが、混沌としたカオス渦巻く台風のような勢いはやはりファーストには敵わない。この2枚を2in1にしたCDが出ている。アマゾンでは不当に高いが、ユニオン等では1000円後半で出るので探す価値はある。あまりに好きで、USオリジナルのアナログも入手した。


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昨年初秋、友人の結婚式が横浜であったときに関内のユニオンで入手。3000円弱で買えてホクホクしながら帰宅した。音はCDのような音ヌケの良さには欠けるが、禍々しいまでの迫力はやはりアナログならではの素晴らしさ!


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(見開きのジャケも邪悪さに溢れる)


…東京で大雪が降ったつい先日、早朝業務があったのでまさかの車出勤をしてしまい(なんてバカ)、1時間かけて雪に埋もれたコインパーキングでタイヤにチェーンを付け、いつもの倍の1時間半もかかってなんとか無事に帰宅した。


ばるちもあ


その車中、このアルバムを大音量で聴きながら雪道で何度もスリップを繰り返し、まさに大海原でさ迷う幽霊船のような蛇行運転を繰り返し、一面真っ白の異世界での冒険のようでとても楽しかったので記事を書いた次第。いくつになってもおバカで向こう見ずなロック気質は直らない。
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Poralis / 光と影 アナログEP
2018-01-24-Wed  CATEGORY: アナログレコード
以前書いたが、私はポラリスが大好きだ。


メンバーは元フィッシュマンズの柏原譲(b)、元Lab LIFeのオオヤユウスケ(Vo.G)、そしてドラムはサックス奏者坂田明の息子、坂田学。2001年、ギターロック隆盛の日本の音楽シーンにあって、ハートビートなBPMでダブポップの柔らかな風を送りこんだ。そのデビューミニアルバムがウサギのジャケの『Polaris』である。

個人的な話題を語らせて頂く。2001年の12月、私は大塚にあるスタジオペンタでバンドのリハーサルをしていた。その時、待合室で流れていたのが前月に発売になったこのアルバムだった。そのフィッシュマンズライクなたゆたうビートと優しい歌声の素晴らしさに驚いた私は、すぐさまスタッフにアーティスト名を尋ねたのだった。収録曲はわずか4曲、しかもうち1曲目はSE的な打ち込み風インストだ。しかしながら、何かが始まりそうな予感が漂うSEを終え、始まる2曲目の「光と影」こそが、私の最も好きなポラリスの曲なのだ。前曲に引き続き、SE的な音響要素も備えつつピアニカの切ない調べに導かれ、DM7とAM7のアルペジオとストロークが繰り返されるシンプルな楽曲だが、フィッシュマンズそのもののベースと、心地良さ極まる確かな技術を感じさせるドラムに、心に淡く灯を点すようなヴォーカル。それこそ何百回聴いたか分からない。3曲目の「Slow Motion」はやはりギターのアルペジオのリフレインで始まるが、手数を増したドラムはねちっこいロールも織り交ぜ、より疾走感のあるキリリと引き締まった楽曲に仕上がっている。ラストの4曲目はなんとキンクリ「I Talk to The Wind(風に吹かれて)」のカバー。驚きの選曲だが、音の隙間とリズムの妙を楽しむアレンジになっており、見事なポラリス色に描いている。

そんな私の心のベストソングTop50に入るであろう「光と影」が、先月末に16年越しのアナログ化を果たし、12インチとして発売された。その時の私の嬉しい驚きをご理解頂けるだろうか。そしてまた、この曲がポラリスファンに愛されているとわかり、尚嬉しい。

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(実際はほぼ真っ白な味気ないジャケの小さいステッカー部分を写している)


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(ラベルも殺風景な白で、なんだか
手抜きプロモ盤みたいだ)



以前紹介した「深呼吸」アナログ7インチは非常に音が悪かったので、こちらは大丈夫かと不安だったのだが、こちらが期待した通りの音質になっており、安心した。彼らの楽曲はほんとうにアナログ向けである。


カップリングはフィッシュマンズ「SEASONS」のカバーでこちらも嬉しい。問題は2曲で2100円という価格だろうか。ともかく、ポラリス好きのアナログファンには是非ともオススメしたい。
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Nick Drake / Five Leaves Left 初版をめぐる一考:その3 "REVERSE C"
2018-01-20-Sat  CATEGORY: アナログレコード
3回目となるこのシリーズ。

これまでの情報
を整理すると、私の考える初版プレスの種類と順番は次のようになる。






プレス順・ラベル誤植マトリクス
① テクスチャージャケのみ枝番号なし反転C
② テクスチャージャケのみA//2, B//2
③ スムースジャケのみA//2, B//2
④ スムース ジャケ&盤両方?


このほかに、Discogsではジャケットの裏面のアイランドのスタンプが黒ではなくカラー刷りでグリーンのものの存在が(写真が挙げられているので)わかっている。しかし、そのマトリクスがどれなのかはわかっていない。ラベルの種類、誤植、マトリクスの違い等でさらに細かく分類される可能性もある。また、ユニオン等ではDGの有無についても記載しているが、テクスチャーと同義と考え、ここでは省いた。③で、スムースラベルで誤植なしの盤があるかもしれない。④のマトリクスは写真で確認したが画像が粗く判別ができなかった。文字数から考えるとどうやらリバースCではないようだ。


このレコードはここ2、3年で最高取引価格が2倍以上になってしまったと思う(価格の変動はpopsikeで検索するとよくわかる)。私は高くなり過ぎた時期に買ってしまった感があるのは否めない(人生の1枚だからと言い訳しているが…)。流動しやすい価格について記載するのはどうかと思ったが、近年高騰しがちなアナログ盤の沈静化を狙って(2018/1時点での)相場を書いてみたい。






ラベル出現比率市場価格 備考 
① テクスチャー(リバースC)320~23万ファクトリーサンプル盤?
② テクスチャー615万~最も価格に幅がある
③ スムース(ジャケ裏誤植)約3010~16万最も入手しやすい
④ スムース(W誤植) 123万最もレア


出現比率というのはこの1年半ほどの間にユニオン・HMV・ebay・Discogs・ヤフオクその他レコード屋で私が目撃したこのレコードの大体の枚数を書いている(勿論見落としや重複もあるだろう)。国内の市場では、③のスムースラベルが年に4、5枚は出てるようだ。ebayでも10万~12万前後で常時複数枚出ていたが最近は少なくなった。テクスチャーラベルとスムースラベルの見分け方をもう一度書いておくと、テクスチャーはザラザラした凸凹感があり、スムースはなめらかである。しかし、写真では判別しにくいので、DG(ディープグルーブ・・・ジャズのレコードでよく出てくるレーベル面の深溝のこと)の有無で判断するとよい。ラベルの淵の内側の円周に沿ってテクスチャーは切れ込み?のようなミゾがあるのに対し、スムースの方にはなく、なめらかに盛り上がったカーブになっている。私が思うに、年間で結構枚数が出てくる割に価格が高騰しているのはやはり作品自体の人気によるのだろう。稀少な盤なはずだが出せば売れるのでどんどん市場に出回り、高値安定という悪循環になっている気がする。


世の中にはアナログレコードの稀少性を尊ぶ方々もおられるが、私としてはやはり音質に最も関心がある。最愛の盤のひとつは、最良の音質で聴きたい。稀少性では④のスムースラベルW誤植が最もレアで、以前書いたようにこれまで1枚しか見たことがない。だが、これは1stプレスとされる中で最もレイトな盤ではないかと私は考えている(前述したようにマトリクスは未確認)。つまり、常識的に考えると音質面での評価は低くなる。海外のサイトでBest vinyl pressing of Five Leaves Left?という議論が掲示板で数年に渡ってなされている。長すぎて全てには目を通していないが(オリジナル盤の盤起こしのハイレゾが最上だと何度も書いている人がいる)、そこでも「最初のプレスA1B1に何らかの不具合があってA2B2がプレスされたのだ。だからこれが最上」と書いている人がいる(念のため書いておくとA1B1というマトリクスは確認されていない)。また、上の表にまとめたようなラベルとミスプリントの違いで分類している方もやはりいる。


どれが最良の音質なのかは結局聴いてみないと分からない。CDなどデジタルは無ノイズだが、経験上では表現という点で緻密さでアナログに劣ると思っている。アナログにはノイズというデメリットもあるが耳馴染みがよく存在感のある太い音が好きだ。盤起こしは元の盤を超えられないのでアナログの原盤が手に入るなら見送るのがよかろう。というわけで、できるだけ初期のプレスのレコードを求めるべきだというありがちな方針になる。ということは、ユニオンが書いているように世界市場でも確認された数が少ないというリバースCを探すしかない。




この度、四方八方手を尽くして"リバースC"を手に入れた




経路は某レコ屋を通じて海外の業者から入手。現地イギリスのコレクター&業者の間ではリバースCのマトリクスについては知られていたということである。ユニオン渋谷店の盤の購入も検討したが、コンディションを考えるとやはりあの価格では手を出せなかった(これを書いた2018/1/15現在未だに売れ残っている。やはり高すぎる)。自分の買った盤の額を書きたくはないが、ユニオン渋谷店よりはかなり安く買えた、ということだけ書いておきたい。

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入手したレコードのコンディション、今回でトドメを刺そうと盤質で妥協しなかったので厳しく見てもEX+~EXと言える。表面には光沢が残り、ごく薄いヘアラインが数本ある程度。早速手放した②テクスチャーとの(記憶での)比較を試みる。


マトA//2B//2の②テクスチャーと比べてかなり違うのが聴いてすぐわかる。とにかくまず、ベースがメチャクチャ出ている。我が家はスピーカーの低音がショボいのでウーハーを追加しているのだが、少し絞ろうかなと思うほど全曲に渡ってよく低音が出ている。これは②ではなかったことだ。さらに各楽器やヴォーカルの明瞭さ、音の分離が素晴らしい。アナログ特有の空気感に加え、音の輪郭が整っていることで、例えばtr.4とtr.5のヴォーカルにかかっているリヴァーブの違いもはっきりと聴きとれる。これにはデメリットもあり、各楽器の輪郭が強調されたことで逆に歌が引っ込んでいるように感じて気になる曲(tr.2、7)もあれば、よく伸びて聴こえる曲(tr.3,8,9)もある。もっとも、これは単に盤の部分的なコンディションの良さによるのかもしれない。アルバムで重要な要素を担うストリングスだが、アナログらしい重厚な響きが素晴らしい。②も良かったが、この盤では低音が加わったことでさらに豊穣に響いているように感じた。tr.6「チェロソング」の、まさしく間奏のチェロの音色はもはやクラシックのそれと言っていい。また、以前所有していた②では時折ストリングスが加わった時の最強音でサチっていたが、今回は盤質せいかプレスのお陰か分からないが今回はそれもない。ギターはリアルな再現性の面で②よりも優れている。例えばtr.6などで、アルペジオでの各弦のサステインの違いまでしっかり聴きとれる。ところが、だ。



レコードにキズが見られないところでのプチパチノイズが結構出るのである。



静電気のようなプチパチ音の量が、私の基準からすると許容範囲ギリギリなのだ。それも、レコードをかける時々によってノイズの量もかなり変わる。ゴミやチリかと思い、1度丁寧にクリーニングしたがそれほど改善されなかった。このプチパチノイズについてはgeppamenさんがブログで好事家の話として書かれていたことなので、ちょっと気になっていた(好事家がリバースCマトのことを指しているとは限らないけれども)。今思い返すと、コンディションが悪いと思って手放した②テクスチャーでもほぼ似たようなノイズがあって手放す決断の一因となったので、もしかしたらマトリクスに関わらずこの初版レコードの欠点なのかもしれない。反転Cマトの盤をごく少数プロモ用にプレスした後、ノイズの多さ等このマトの問題に気付いて前述のフォーラムの意見のようにA2B2マトの盤をプレスしたのか(目の覚めるような鮮度の音質そのものは素晴らしく、失敗プレスとはとても思えないが)・・・色々推測してしまう(私は③④のスムースラベルの盤を聴いたことがないので、ノイズの量の比較については分からないがお持ちの方は感想を寄せてくれると嬉しい)。キンクリ『宮殿』のオリジナル盤は、超絶激レアのA1B1マトでなくA2B2の方がバランスが良い、という話を聴いたが、それと似たようなことが当てはまるのだろうか。分からない。


結論を言うとこの①リバースCには、②と比べてその稀少性と価格の分だけの音質の違いはないだろう(泣)まあ②もコンディション面以外の音質そのものには満足していたのだが・・・。ユニオン渋谷で売れ残っている間にリバースCの盤を一度試聴してみようかな…適正価格は14万くらいではないかと思うが>>ユニオン渋谷店さん。



というわけで、一部ちょっと残念な結果となってしまった。ノイズに神経質な私はそもそもアナログに向いていないのかもしれない(聴くのは大好きなのだが、同じくらいイライラ&ガッカリすることも多い)。洗浄液を替えて盤を洗浄したり、傷の修復、セッティングの仕方でノイズを改善できるのかもしれないが、今後の宿題だ。アナログレコードの道というのは、果てしなく険しい。


・・・このマトリクスがebayに出たようにファクトリーサンプルとしてプレスされた盤だとすると、ニック・ドレイク本人が最初に耳にした音である可能性がある。世に出て50年が経とうとするこの作品、そう考えるとより一層感慨深い。私は基本的にアーティストを神格化するのを好まないが、彼だけは別だ。

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