音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
DREAM THEATER 『METROPOLIS PT.2:SCENES FROM A MEMORY』音源聴き比べ
2017-03-22-Wed  CATEGORY: 音源聴き比べ
ブログのアドレスでずっと気になっておられた方がいるかもしれないので10年目の告白をすると、私はドリームシアターが大好きである。



青春の何年かを、彼らに捧げたと言っても過言ではない。

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ジョン・ペトルーシは私のヒーローだった。スコアやヤングギターを買い揃え、来る日も来る日も彼のフレーズをコピーした(ジャズのセッションでもたまにペトルッチ的なトライアドフレーズを弾いてしまうことがある笑)。

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彼らの作品の中で最も好きなアルバムがこの第6作目の「メトロポリス・パート2 シーンズ・フロム・ア・メモリー」である(勿論、I&MやAwakeも捨て難いが)。このアルバム発表後に来日した2000年5月の東京近郊の全4公演は全て観に行った。横浜ベイホールではスタンディングで暴れ回り、数メートル先のステージ上のペトルーシと目が合ったときは死んでもいいとさえ思った。私も若かった。

このアルバムについては多くの人が様々なところで書いているので、内容については割愛させて頂く。超絶技巧のジョーダン・ルーデスの加入でクラシカルなフレージングを増したアレンジが、コンセプト・アルバムとなった本作にはピッタリだと思う。ギターの話をすると、私の記憶が確かならこの頃ペトルーシのギターは、アイバニーズの自身のモデル「ピカソ」からミュージックマン(アーニーボール)の現行のモデルへと移行する過渡期にあったはずだ。このアルバムはピカソで録音されたと記憶しているが(ヤングギター10年分は就職したときに捨ててしまった)、ピカソギターはアイバニーズらしいソリッドで音抜けの良いサウンドに仕上がっている。この後はよりハイエンド??なミュージックマンに変わるので、ギターの中域が良く伸びて艶のある音色に変化するが、個人的にはやや音の身が詰まり過ぎに感じる(別に所有しているからピカソの肩を持っているわけではない笑)。


というわけで、音源聴き比べである。

今回は通常CD、SHM-CD、LPの3種類を聴き比べる。平日昼間に休みを取ると、ちょうど嫁と息子は幼稚園仲間とウルトラマンを観に新宿へ出かけるという奇跡のような半日があったので、遠慮なく大音量で聴き比べた。時間の都合で、(ほぼ)通して聴いたのはSHM-CDで、通常CDとLPは前半5曲後半3曲とさせて頂いた。アマゾンをはじめとするネット上では賛否両論、SHM-CDの音はスゴい、いや通常盤が最高だ、などと色々書かれているが、さて。


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①通常CD
これを買ったのは某MKGJという塾でアルバイトをしていたときだ。発売日に買ってバイト後22時過ぎに帰り、疲れのあまり聴きながら途中で寝落ちしたのを覚えている。それ以来、何百回も聴いた。ともかく20世紀最後の年はこのアルバムとクラムボンの『まちわび まちさび』をひたすら聴いていた。音質だが、大音量で流すとあの時の思い出が鮮やかに蘇る。自分にとって聴き慣れた音で、安心して聴けるバランス。特に不満などあるわけもない。


②SHM-CD
メタルの世界にも、と言ってはなんだが、音質向上ムーヴメントの波はやってきた。このSHM盤は2009年、デビュー20周年記念SHM-CDコレクションでデジタル・リマスターということで発売された。ちなみに比較的発売から日が浅いにも関わらず、大人気2nd『Images and Words』のSHMはユニオンで5000円over、3rd『Awake』も3000円overという状況である。ちなみにこの『SFAM』のSHM盤はユニオンで1600円だった(いつか他盤の聴き比べも書きたい)。

聴いてみると、MAGMAの時のような明らかな違いは感じないものの、SHM-CDらしく、各パートの音の分離が明瞭でヌケの良いサウンドである。特にヴォーカルが前面に出てきているように感じられる。さらに音量を上げて3、4曲目のみ①と聴き比べると、①は密な空気感の中で音が渾然一体となって感じるのに対し、この②は分離した各楽器各パートの隣り合う音の狭間まで見て取れるような感じ(現代の録音のせいか、MAGMAの時のようなスカスカ感をSHM-CDに感じない)。音が非常にクリアで明瞭。しかし、通常CDと目の覚めるような違いがあるわけではない。少なくとも、私の愚耳ではそこまで聴き分けられるものではない。


③LP
数年前に池袋のユニオンで6000円弱ほどで入手。近年の再発盤ではなく、これは2011年のUSオリジナルでシリアルナンバーはNo.2309。結構後ろの方のプレスになる。状態はEXとあったが、まずまずか。

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聴いてみると、例によってアナログらしく、耳馴染みが良いというか、耳に優しい。当然だが、CD2種と全く違う。ヴォーカルとギターが気持ち遠めで、音の輪郭がボヤケ気味、各パートがモチャっとしていると感じる人がいるかもしれない。レコードに聴き慣れていない人は「アレレ」と思うかも。しかし、聴き続けても疲れることがない。素晴らしいのはD面で、曲調がレコードの特性にマッチしているのか、ラブリエの歌がグッと胸に迫ってくる。終曲のペトルーシのギターの音も柔らかくて絶品である(ただし、C面ラストの『One Last Time』はさすがに内周ギリギリまで収録されているためノイズが酷くなってくる)。以上はレコード原理主義者の私の感想なので半分は聞き流して頂きたい。


レコードの後に再びSHM-CDを流すと、そのリアルさ、明瞭さ、ピッチの安定感に愕然とする。けれども、聴き続けてくると幾分高音部のシャリシャリ感が気になってくるというか、聴き疲れをする(通常CDではそこまで感じない。単に聴き慣れているからかもしれないが)。正直、一長一短で、いつものように点数化するほどの違いには感じられなかった。通勤のイヤホンでは通常CD、車ではSHM-CD、家で独りならLPと使い分けるかもしれない。



というわけで、玉虫色の結論で大変申し訳ないが「どちらかのCDを持っている人は改めて別種を買い直す必要は無い。ただし、レコード好きな方はD面のためだけにLPを買う価値有り」と書かせて頂きたい。他にも、別マスタリングや再発LPも出ているようなので、気が向いたら購入して追加予定。ともあれ、青春の1ページを紐解いた感があり、恥ずかしいやら懐かしいやら。


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Steely Dan 『Aja』 〜マトリクスの謎〜
2017-01-12-Thu  CATEGORY: 音源聴き比べ
私ごときが語れることではないのだが、あえて書いてみる。


スティーリー・ダン「エイジャ」のUSオリジナル盤レコードの音質比較である。


世の中にはスティーリー・ダンの熱烈なファンの方がいるに違いないので、ひょっとしたらすでに結論が出ているのかもしれない。ネットで検索して出てくる最も有名なものはこちらだと思う。USオリジナル盤をマトリクス違いで4種、さらに高音質4種聴き比べる(それも素晴らしい機器で!)という、もの凄いブログだ。


ちなみに私の手持ちのUSオリジナル盤のマトリクスは上記のブログにもあるA面●AB 1006(RE-3)-A 1A掻き消し 1B、B面●--------------B 1A掻き消し 1Dで、数年前に3000円弱で購入したもの。コンディションがとても良いのでこれを愛聴してきた。ユニオンで1A/1Bや1C/1A(両方とも英国旗なし)を試聴したことはあるが、盤質がイマイチなので見送ってきた。最近は両面1A/1Aを見かけてない。


さて、先月のクリスマス頃、DiscogsでなんとAjaの「Promo」盤が売りに出ているのを見つけ(それも至ってフツーに)、状態が良さそうなのと$20と格安だったこともあって買ってみた(結局送料込みで5000円overにはなってしまったが・・・)。それがつい先日届いた。


ところが残念なことに、届いたのは「Promo」のレコードではなかった。。ジャケットにあるはずのステッカーがない。これには参った。10年以上海外オークションや通販を利用していると、「Almost perfect」や「Mint condition!!!」とか書いておきながら、プチノイズどころか針飛びや盤の歪み、さらには偏芯まであるレコードが届くことはままある。何度経験してもガッカリする。勿論、先方に文句を言って(ダメ元で)「せめて半額の$10返せ」とメールしたが案の定返事はない。


ここで終われば単なる愚痴なのだが、せっかくなのでレコードを再生してみた。中くらいのヴォリュームでかけてビックリ。素晴らしい音が流れてきた。慌てて前述の手持ちを引っぱり出して来て比較する。出だしはそんなに違いはないが、ヴォーカルが入ってくると分かる。1B/1Dの方は(よくある表現だが)うっすいヴェールというか膜が1枚かかっているような音だ。マトリクスを見てみると、なんとA面●AB 1006(RE-3)-A以降のマトリクス表記が無い。


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(何十枚も撮ったが上手くmatが写らない・・・AB 1006(RE-3)-Aとだけ刻まれているのがお分かりになるだろうか)


そのような盤が存在することはDiscogsに書いてあるので知っていたが、実際に見たのは初めてだ。ひょっとすると、これは本当にプロモ盤なのかもしれない(ただし、Discogsの一番上の最も初版と思われるマトリクスも同様にRE-3の末尾の1Aが無いものが記載されている)。

私の予想はこうである。販促プロモ用としてプレスした盤で末尾1Aなしの盤が、プロモ用の他に一部初期盤として販売に回った。中には、プロモステッカーが貼っていないものもあるだろう。よって、商業用の量産盤の中では、RE-3以降の1A無しのものが最も若いマトリクスなのではないか、ということである。私は今回、その後者のほうを期せずして入手したのかもしれない。


上記ブログのコメント欄には、マニア垂涎のテストプレスを所有されている方が登場している。確か去年も渋谷で『Aja』のテストプレスが出た。私も欲しくて並ぼうかと思ったが、とても手の出る価格ではなかろうと思い結局諦めた。ユニオンで1A/1Aに近い1A/1Bなどでも近年は5000円を超えてしまうようだ。ましてヤフオクは海外モノに手を出さない方や近所にユニオンのない方も参入するので価格が高くなりやすい。それならば、Discogsの格安「promo」盤に一か八かでチャレンジするのもよいかもしれない、というのが今回の記事の趣旨である。


以上、哀しき庶民派からの報告でした。
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人類史上最強のライヴ〜MAGMA『LIVE』音源聴き比べ〜
2016-08-03-Wed  CATEGORY: 音源聴き比べ
録音として聴ける人類史上最高のライヴは何か?




フルヴェンのバイロイト第9のSACD?それとも、音質ならレコードにこだわってFALP盤?いやいや、第9に限っても壮絶という点ではテンシュテットのBBCから出てる1985年ライヴの方が・・・




「最高」と銘打つと異論反論が多いに決まっていますし、私もどれか一つを選ぶことなどできません。しかしながら、「最強」のライヴ、ならば私は確実に「コレしかない・・・!」という1枚を選ぶことができます。




それが今回ご紹介する、フランスが誇るプログレッシヴ・ロック・バンド、MAGMAによる1975年の『LIVE』です。


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「最強」とは何を意味するのか?メンバーがケンカに強いのか?(笑)そして、クラシック音楽サイト(のはず)なのに何故プログレなんだ?と思われるかもしれません。順に書いていきたいと思います。




このアルバムは、音楽の持つ躍動感、エネルギー、そして演奏者のみならず、観客も含めたライヴ空間において生み出されるほとばしるような「生命力」が、私の聴いたどの録音作品よりも「強い」のです。実に力強く、まばゆいばかりに美しい。時に怪しく、狂気に満ちて、常軌を逸しているかのような壮絶なテンション。何より、「ライヴ」でなければ、生み出されることはなかったであろうという必然が、何よりもこの作品の価値を高めています。私が10年以上前に某SNS上に書いたレビューを紹介しましょう。



「コバイア星からやってきたフランス人、クリスチャン・ヴァンデ率いるプログレッシヴ・バンドの伝説的なライヴを収めた2枚組CD。僕が聴いてきた全てのアルバムの中で最強の作品である。最強の定義も意味もここでは述べないが、とにかく聴けば納得してもらえるはずだ。

 『マグマ』で検索してファンサイトを見てみて欲しい。どれほどの人がこの作品を畏怖し崇拝し讃えているか。「とても人間の所為ではない」「ライヴとは思えないがライヴでなければありえない演奏」「鼻血が出る」などの表現は決して大げさではなく、この「作品を聴いた人間は皆「事実だ」と答える。マグマのように演奏出来たバンドは現実に存在せず、かつて存在したこともなく、これからも存在しないだろう。
 
 7/8拍子のアルペジオをシーケンサーのように正確無比に弾き続けつつ曲の骨子を刻むキーボード、複雑で長大な構成の曲を絶妙のタイム感と多彩な装飾で駆け抜けるギター、インプロヴィゼーションでヴァンデと堂々と渡り合う当時17歳とは到底思えないロックウッドの叫ぶような狂気のヴァイオリン、マグマをマグマ足らしめる大きな存在となっている、コバイア語で歌われる不気味なヴォーカル&コーラスの迫力は既存のポップスに聴き慣れた人へ鉄槌を下すこと間違いなしであり、脱退したもう一人の異星人、ヤニク・トップの穴を見事に埋めたパガノッティが奏でる地獄の底を這うような音色のベースは、この楽器をどう弾けばそのような音が出せるのか僕には全く想像もつかない。そしてそれらの楽器全てをまとめ、鼓舞し、爆発させるヴァンデの燃えさかるようなドラム・・・。
 
 奇数拍子のリズムで執拗に繰り返されるフレーズに極度の恐怖感を覚え、徐々に加速しながら導火線にジリジリと火が着き、ついには爆発していくような緊張感と迫力に満ちたインタープレイの連続は聴く者の耳を捕らえて離さない。一体これはなんなんだ。大曲『コンタルコス』の驚異のブレイクでは耳を疑うこと間違いなく、『ハーイ』の高揚感・疾走感はどこまでも高く上り詰め、終曲『メカニック・ザイン』ではこの世の全てを超絶する驚愕の演奏のオンパレード。恥ずかしながら臆面もなく「奇跡」の演奏と言わせて頂こう。それはもはやプログレでもジャズ・ロックでもなく、マグマというジャンル以外の何ものでもなかった。」



・・・我ながら読み返すと恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまうのですが、これは私の所有するすべてのアルバムの中で、最も大切に思っている作品の1つなのです(他にはRADIOHEADの『OK computer』や、おなじみアントニオ・バルボーザのショパンピアノソナタ集、カート・ラダーマーのゴルトベルクなどがあります)。




さて、そんな大切な作品なので、出来るだけ良い音で聴きたい、というのは当然です。かと言って、メディア別にコンプリートするつもりもさらさらないのですが、ふと手持ちの3種類を聴き比べようと思い立ちました。なお、今回の聴き比べにおいて、2枚組すべてを聴き通したのは、体力の問題と家庭の事情により下記の②と③です。その上で、私の最も好きな「Mekanik Zain」を3種類交互に聴き比べました。予めご了承ください。






①輸入盤2枚組CD(SEVENTH Records)

②SHM-CD(SEVENTH Records)

③フランス・オリジナルUTOPIA盤CYL2-1245


 


学生の時にサークルの先輩に薦められて買って聴いたのが①の2枚組。私にとって初めてのマグマ体験であり、それまでの音楽観を変えてしまうようなとてつもない衝撃を受けた。それこそ何百回聴いたかわからない。私も楽器を演奏する人間の端くれとして、「プレイアビリティ」によって音楽の質が高まって行くようなジャンルが好きだ。クラシックはその究極だと思う。極限まで磨き抜かれたロルティやポリーニのショパンエチュードは我々の心を捉えて離さないし、ルービンシュタインのバッハ=ブゾーニのシャコンヌは枯淡の境地にあって、技術だけではない何かが魂に訴えかけてくる。


そしてジャンルは違えど、このマグマの『ライヴ』はプレイヤーの演奏能力が極限まで引き出され、ライヴならではの即興性と興奮が奇跡の演奏を創りだした。それは1日10時間のリハーサルに励むという、途方も無い努力と技術の結晶でもある(その上でさらに個人練をしていたのだろうか?恐ろしい)。


さてこの名盤、まず聴き慣れたセヴンス盤CD①から聴いてみる。


良い。実に良い。何度聴いたかわからないが、聴くたびに同じ感動を味わえる。音はヴォリュームを少しずつあげても音がキンキンせず、実に自然。シンバルの音の細やかさや各楽器の定位と空気感もよくわかる。この歳になって冷静に聴いてみると、いかにもアナログ音源をCD化したのっぺり感というか金属的な音の佇まいがあるが、それほど気にならない。


次にSHM-CD②。あくまで個人的な印象であるが、クラシックファンの間ではSHM-CDの評判はよくないように思う。尊敬する加藤さんのページでも否定的な評価をされており、私自身も幾つかSHM-CDを聴いたが、特にピアノは不自然に音が強調されている感がある気がしてあまり好きではなかった。


ところが、スティーリー・ダンの『プレッツェル・ロジック』のSHM-CDをたまたま聴いたところ、そのクリアな音立ちにビックリしたのだ。特にヴォーカルの印象の変化が大きい。iPodに取り込んでみても違いは顕著だった。そんなわけで、「忠実な原音再生が求められるクラシック」ではSHM-CDは不利で、「多様な音が入り交じったロック」ではSHM-CDは有利なのかも、と推察したのだ。そんなとき、池袋のユニオンで紙ジャケの当盤を見つけ、多少のプレミア(中古なのにほぼ定価)が付いていたものの、音質向上してるかもと期待を持って買ったのだった。


さて、前置きが長くなったがSHM-CD②を聴いてみる。①と同じヴォリューム設定で聴くと、凄まじい爆音!(耳が死ぬかと思った)相当レベルを持ち上げて音圧を稼いでいるようである。これがクリア。めちゃくちゃクリア。それでいて、音の輪郭がはっきりとしており、ぼやけることがない。加えて各楽器の音の分離の良さや、耳馴染みの良さがハンパではない。音数の多い情報が整理・整頓されて耳に届けられるのは非常に心地が良い。特に、ヴォーカルのクリアさは特筆ものだ。臨場感がグッと増している。



素晴らしい。本当に素晴らしい音質だ。



買ってよかったと思った。ここで止めておけば幸せだったのかもしれない。ところが、アナログ好きとしてフレンチプレスのユートピア盤のオリジナル・レコードを聴かないわけにはいかなかった。何故なら、愛読させて頂いているgeppamenさんのブログで「セヴンス盤CDより遥かに音質が良い」と書かれていたからだ。これは避けて通るわけにはいかない。そこで、ebayやDiscogs、さらにはCD&LPでフランスオリジナルのレコードで探した。結構枚数が出ており、常時入手が可能な感じであったが、音質を聴き比べるのだからなるべく良いコンディションのものを選んで購入した。ジャケの状態はイマイチだったが、フランスから送料込みで4000円で入手できたので格安と言ってよいだろう(ちなみに入手時期はSHM-CDよりずっと前)。




というわけで、レコード③。



ムム、、、こ これはあまりよくない。



・・・おかしい。レコード単体で聴いたときは気にならなかったのだが、こうしてCD2種と聴き比べるとよくない。レンジが狭く、低音は出ているものの音ヌケが悪い。シンバルは飛散する音がザラついており、何よりヴォーカルが遠い。これは痛い。その場の空気感というか臨場感というものもアナログ特有の致し方ないノイズのせいか、どうも聴き取ることができない。これはレコード原理主義者としてガッカリだった。。SHM-CDの方が断然良いではないか。




ここで止めてもよかったのだが、家族が不在だったのでせっかくだからさらにヴォリュームを上げて「メカニック・ザイン」を3種類もう1周しようと思った。防音室ではないリビングなので近所からのクレームが不安だったが、聴いていて耳が痛くなるギリギリまで音量を上げて再び聴き始めた。




するとどうだろう、評価が一変したのだ!




これには驚いた。まず通常盤CD①。ヴォリュームを上げても音の輪郭が壊れず、自然に全ての帯域が持ち上がる。高音がキンついたり、低音が被り気味になったりすることがない。ただ、あるところで音が薄味になるというか、中域が物足りなくなるポイントがあった。それでも最初の評価が大きく揺らぐことはない。




ところがSHM-CD②、これが酷い有様だったのだ!まず、音の輪郭が崩れる。細かくイコライジングしてCD化を行ったのだろうが、楽器によって音の密度に差が現れた。特に顕著だったのはマグマの命とも言えるヴァンデのドラム。スネアの音色が潰れて「ボテッ」と聞こえてしまい、全然美しくない!そして何より、最初に聴いたような感激が確実に薄まってしまっている。なぜだろうと何度か繰り返し聴いてあることに気付いた。




ヴァイオリンの音色が美しくないのである。




この作品で最もテンション高く叫び続けているロックウッドの壮絶なヴァイオリンの音色が、完全に飛んでしまっている。何度聴いてもあまりの名演に耳を奪われ、音色の退化にまで恥ずかしながら気付くのに時間がかかってしまったのだ。まるでCD化に失敗したクラシックのCDを聴いているかのようだ。ペンチで潰して平らに伸ばしたかのような、そんな無機質で無表情な音になってしまっている。





そして、もしやと思って再度聴いたフランスオリジナル盤LP③。音量はすでに爆音に近い。


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凄まじい。これこそMAGMAの『LIVE』である・・・!




喉元に銃口を突きつけられているような、ヒリヒリとした緊張感の中を執拗に繰り返されるリフの上で、縦横無尽に弾きまくるロックウッドのヴァイオリン。その豊かに伸びた中域は音色に艶があって実に素晴らしい!パガノッティのベースはとんでもない音の太さで、これを聴いてしまうとSHM-CDは昭和製の掃除機の断末魔のようだ。先ほど気になったヴォーカルの定位の遠さは全く気にならない。ヴァンデのドラムも相変わらず煮えたぎっているまさにマグマのようで、スコンスコンと叩かれる高めのピッチのスネアの音色が実に爽快極まりない。やはりレコードは原音再生の忠実度という観点からすると大きくデフォルメしているのは間違いないが、その当時の時代・空気感・バンドメンバーや録音スタッフ、プロデューサーの感性がこの歴史的名作を生み出したのだ。後年のものがどれだけリマスタリングを施そうとも、超えられない「音」が、この黒いヴィニールには詰まっているのだ。心の底から感激した。




さらにヴォリュームを変えて聴いてみた結果を表にまとめてみると以下のようになる。


メディア音量小音量中音量大
セヴンス盤通常CD
セヴンス盤SHM-CD×
フランスオリジナルUTOPIA盤LP


普通に聴く音量ならSHM-CDは非常に優秀。私もiPodや車のHDDには①でなく②をリッピングして通勤中・運転中に聴いている。レコード③のナロウレンジな感は否めないのだが、レコードから飛び出してくる音のカタマリの圧倒的な迫力は何者をもなぎ倒すような凄まじいもので、すべてのマグマファンに是非とも聴いてもらいたい素晴らしいオーディオ体験である。結局のところ、geppamenさんが正しかったのだ。これにより、「弦楽器はレコードフォーマットが優位」という自説の補強が(まさかマグマの『ライヴ』によって!)再びなされた気がする。



・・・と思って、SHM-CD盤の解説ブックレット読んでみると、日本にマグマを普及させた貢献者の一人である元ディスクユニオン営業部長の竹川真氏が次のように書いていた。



「この「LIVE」実はCharly原盤のビクター盤も存在する。その音もSEVENTH盤に比べオリジナルミックスからのリマスターでもあるため、渾然一体のあの圧巻な音が見事に再現されている。一方SEVENTH盤は24チャンネルマルチトラックからのリミックス盤のためCharly原盤では捉えられない細かい音も収録され音の分離感はすこぶるいいが、ひとつの音の塊で一気に聞き手を喝破するような迫力は乏しい。よって今回のリマスターはその圧巻な音をきめ細かい分離感を残しながら再現することに重点を置く作業となった。ところが送られたマスターはCDとほぼ同内容の音質でベースのロウ感の足りないものだったため、再現するのに大変な日数を要してしまった。単純にロウをあげてもこもってしまうので、結局は聴覚で一番説得力あったある帯域のみを持ち上げてマスタリングをしたものである(後略)」



このように私がこのSHM-CDに抱いた印象とほぼ同じことが書いてあり、結局のところこのフォーマットはSHM-CD盤のメディアとしての優位性が問える商品ではないような気がしてきた。そして、アマゾンのレビューなどでは酷評されているCharly原盤も聴いてみなければ、という気になってきた。うーんまた出費のかさみそうな宿題を見つけてしまったな。。。





・・・実はこの他に、おそらく80年代のテストプレスLP(2枚目のみ)を所有しているのだが、それはまたの機会に。


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Pat Metheny Group 『Imaginary Day』 音源聴き比べ
2016-07-16-Sat  CATEGORY: 音源聴き比べ
音源による音質の違いを聴き比べるこのコーナー。3回目の今回は、パット・メセニー・グループ『イマジナリー・デイ』の通常盤CDとDVD Audioの聴き比べのご紹介です。


パット・メセニーは昔から大好きで、ジャズギタリストの中でも突出してよく聴いていましたが、私の中ではギタリストという面よりもコンポーザーとしての側面に惹かれます(勿論、ギターもsuper巧いのはわかっております)。

『Still Life』 USオリジナル盤LP


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『Letter From Home』 USオリジナル盤LP


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そんな私にとって、パット・メセニー・グループの数ある名作群の中で、実は最も好きなのはこの『Imaginary Day』なのです。



このアルバムは、ひょっとしたら熱心なメセニー・PMGファンの間では評価が分かれるかもしれません。中期の、牧歌的で数百年後までもスタンダード・クラシックとして残るであろう、美しい旋律を携えた作品である前述の2枚を最高傑作として挙げる人がいるのは理解できます。それでも私は、このアルバムの持つ壮大なスケールと、ジャズとロックやテクノの奇跡的な融合、そしてギタリスト・コンポーザーとして完成の域に達しつつあるメセニーの妙技とそれを支えるメンバーの凄まじい力量に、圧倒されます。

とにかく、初めて聴いた時はあまりの壮大かつスケールの大きい音作りに「もはや映画音楽じゃん!」とビックリしました。プロデュース過剰気味の1曲目タイトルトラック「Imaginary Day」。エキゾチックな東洋的旋律がシタールで奏でられ、勿論お決まりのギターシンセも登場。ソロは完全にメセニーの手グセ金太郎飴ですが、それがまた曲にハマってる。ひたすらドデカいスケールの中を縦横無尽に泳ぎまくるメセニーが凄い。2曲目『Follow Me』。POPでどちらかと言えば今までのPMG然としたこの曲は、私が人生で初めて書いた曲とたまたま出だしのリフが一緒で、初めて聴いた時は偶然に驚きつつ「パクりと思われちまう」と焦ったものです。間奏曲的な3曲目『Into the Dream』を経て、これまた美しくスティーブ・ロドビーのグイングイン言うウッドベースが印象的な4曲目『A Story within the Story』。そして5曲目、このアルバムで最も好きな『The Heat of the Day』、執拗に繰り返されるリフに手に汗握らないリスナーはいないでしょう。ライル・メイズのピアノも、「書きソロだと言ってくれよ!」と言いたくなる驚異的完成度で、彼の最高のソロのひとつではないでしょうか。満を持していつものフレーズで登場するメセニー。「待ってました!」の大名演です。6曲目の抒情性極まる『Across the sky』に続き、グラミー賞を受賞した7曲目『The Roots of Coincidence』は、衝撃の打ち込みとジャズの融合!歪んだギターでこれでもかとロックに攻め込んでくるメセニーの迫力が凄まじい!のちに発売された『Speaking of Now』のライヴDVDでは、超絶テクニシャンドラマーのアントニオ・サンチェスを携えてこの曲を再現していますが、彼をもってしても、というかやはりこの打ち込み感の強いビートを再現するのは人間には無理なのだなぁと思いました。ちなみに、テクニカル系ロック・ギタリストで本格的に打ち込み音楽との融合を果たしたのは、ジョー・サトリアーニの「Engines Of Creation」でしょうか。このアルバムの1曲目のギターの音のブ厚さはスゴいものがあります。話が逸れました。ギターとピアノの絡みが美しい、8曲目『Too Soon Tomorrow』。そしてアルバムが終わりに近づいていることをイントロで感じさせる終曲『The Awakening』はケルティックで爽やかな感動の中、アルバムを締めくくってくれます。


さて、曲目紹介が長くなりましたが音源聴き比べ。


通常盤CD:例によって、ユニオンで買った数百円の輸入盤。コダワリの音作りゆえか聴いた当時は「超音イイじゃん」と思ったものだ。7曲目の『The Roots of Coincidence』はそれこそ何百回も聴いた。特に不満はない。今となっては、フツーのCDの音質。


DVD AUDIO盤:PMGで最も好きなこの作品、メディアはCDとDVD AUDIOの2種類のみで、LPでは出ていない。未だにハイレゾ配信もされていない。そんなわけで、ずっとDVDオーディオ盤を探してたところ、今年の1月にユニオン池袋で引っかかり、取り置き。池袋のヤマハに用があった嫁に「近くだから買ってきてよ」と頼んだところ、当日悪天候で「駅から出るの億劫になっちゃって」と手ぶらで帰宅されたのを翌日聴かされ、買い逃す始末。その後、ebayやAmazon、ヤフオク、ユニオン、Discogsなど色々探し続けるも、高かったり(Amazonは1万円over!)帯の付いた日本盤が出てこなかったのを、ようやく入手。サンプリング周波数は88.2kHz、量子化ビット数は24bit。


す、すげー・・・!


1曲目のイマジナリーデイ、もはや映画。音楽映画。聴いていて情景が浮かんでくる音楽映画。ポール・ワーティコが叩くシンバル揺らす空気の揺れが見えるようだ。そう、毎度おなじみのセリフで恐縮だが「空気感が違う」のだ。2曲目のフォローミー、音色の鮮やかさが違う。聴き慣れたはずのメセニーのギタートーンが実に美しい。5曲目、ヒート・オブ・ザ・デイ、デカいヴォリュームで聴いていると失神寸前の大迫力。7曲目、ルーツ・オブ・コインシデンス。気のせいか、聴こえなかった音が聴こえる。ここまで来ると、もはや怖い。。チープだとバカしていたギター・シンセの音まで味わい深く聴こえてくる(笑)

DVD AUDIO盤と比べると通常のCDの方は音がスッカスカ。2曲目のフォローミーなどモノクロームにさえ映ってしまう。ルーツ・オブ・コインシデンスは「MIDI?」とか超失礼な言葉が浮かんでる始末。いや、参った。


しかし、良い面ばかりでなく、9曲目アウェイクニングなどでは時折スピーカーが歪んでしまい、私のショボい機器の限界が露わになってしまう。やはりスピーカーもそれなりのものに新調しなければダメか…。そろそろ車にピアノも買い替えなきゃならないのに。。余談ですが、先に述べた2枚は、メセニーの柔らかいギターの音色がアナログにマッチしており、レコードの方が聴きやすいと思います。


というわけで、メセニー好き・このアルバム好きの方にはこのDVD AUDIO盤を是非とも聴いて頂きたい!文句なしの高音質です!メーカーはファンに入手の苦労をさせることの無いよう、そろそろハイレゾ配信しなさい!


・・・次回は、ミクローシュ・ペレーニ『バッハ無伴奏チェロ組曲』高額LP VS 配信FLAC音源や、ドナルド・フェイゲンの名作『ナイトフライ』激レアプロモ盤LP VS ハイレゾ音源などを予定しております。気長にお待ちください。


(家族のいない大音量の出せる昼間の独りの時間が全然取れません)
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the Anthony Wilson trio 『our gang』 音源聴き比べ
2016-02-20-Sat  CATEGORY: 音源聴き比べ
本日は私の最も好きなジャズギタリストの1人である、アンソニー・ウィルソンのリーダー作品を音源聴き比べとともにご紹介。

the Anthony Wilson trio / our gang


Anthony2

1. Our Gang
2. Chitlins Con Carne
3. Britta's Blues
4. Time Flies
5. Road Trip
6. Luck Be A Lady
7. I Want You (She's So Heavy)
8. Prelude To A Kiss

Anthony Wison:Guitar
Joe Bagg:Hammond B-3
Mark Ferber:Drums
(2000年録音)

彼に興味を持ったのは、ダイアナ・クラールの名盤ライヴ『Live in Paris 』を聴いて、1曲目の「I Love Being Here With You」の知的で練られたソロ、そして7曲目の「Devil May Care」での、絶妙なグルーヴに乗せた信じられないほどドラマチックな名演(勿論耳コピした)に、雷に打たれたような衝撃を受けたからでした(Amazonのレビューを見ると皆さん同じ感想を抱かれてるようです)。私は知りませんでしたが、ジェラルド・ウィルソンというジャズ・オーケストラの生き字引(だった)アーティストの息子だそうです。どおりでトリオ作品の他はビックバンドものが多いと思いました。

ところで、以前ダイアナ・クラールのサポートギタリストは超絶技巧のラッセル・マローンが務めていました。ウェス・モンゴメリーとジョージ・ベンソンを足して2で割ったようなマローンも私は好きですが、アンソニー・ウィルソンを聴いてからというもの、彼の知的でsensitiveなソロと、そして何より素晴らしいギタートーンに完全にやられてしまいました。

Anthony1

ジャズギター・ファン垂涎のナチュラルフィニッシュの1958年製Gibson Byrdland(あのコンディションでフルオリジナルなら200万以上??)で紡ぎだされるそのトーンは、音の輪郭が明晰でありながら尖ったところが全くなく、時にはクラシックギターのナイロン弦を思わせるような美しい透明感としなやかな弦の弾力を帯びた驚異的な音色です。往年のジャズギターレジェンド、例えばケニー・バレルなどの音色は、私にはナチュラルすぎて「カシカシペシペシ」と乾いて聴こえて苦手なのですが、ウィルソンの音はどこまでも柔らかく陰影に富んで深みがあり、熟成された極上の赤ワインを思わせます(現在、彼はメインギターを超高級ギターのモンテレオーネに替えているようです。後述する『Savivity』の時点で、録音で使用しているとのこと)。


さてこのアルバム。正直なところを言うと、この後同じメンバーで2005年に出した『Savivity』のほうがトリオとして成熟し、各々のソロの出来も良いかもしれません(THE DIGのジャズギター・ディスクガイドでもギタリスト兼ライターの山中氏によって『Savivity』の方が取り上げられている)。しかしながら私は、オープニングを飾るウィルソンのオリジナル「Our Gang」の、まさに「魂を撫で回す」かのようなギターを聴くだけでも十分にこのアルバムの価値があると思います。曲のテーマ自体は、(ド忘れしましたが)ジャレットが演ってるスタンダードとケーデンス部分が似てて「どっかで聴いた感」があるのですが、それにしても取っ付きやすく美しいメロディ。ソロでは派手な速弾きに走ることなく、知的かつ洗練された音使いで熟成されたギタートーンをこれでもかと聴かせます。


それにしても、ため息が出るほど本当に美しいトーン...!


先ほど引き合いに出したバレル作のギタースタンダードである2曲目「チトリンズ・コン・カルネ」は重心が後ろに乗ったリズム感が聴きもの。バレルの名演との聴き比べも楽しい。3、4曲目はウィルソンのオリジナル。「Britta's Blues」は美しいバラード。ブルージーなフレーズも泥臭くなく洗練されているのが特徴。「Time Flies」はスピーディでドラムの妙技が目立つ。ウィルソンは音数を増やしながらも、構成の巧みさを保ったソロ。5曲目「Road Trip」はオルガンのジョー・バグの曲。印象的な転調と取っ付きやすいテーマが非凡な作曲センスを感じさせます。ギターの音色とオルガンの響きのなんと見事に合うことか。。シナトラで有名な6曲目「Luck Be A Lady」は実に控えめなギターの独奏から始まりますが、リズミカルなテーマに入ると一転、明るいノリに変貌。ソロは伸びやかで音の跳躍が多く、さらにはオルガンソロの時のギターのバッキングが実にオイシイ。7曲目、意表を突いたビートルズ「I Want You (She's So Heavy)」は気だるくブルージーなアレンジ。3分過ぎからの曲調が変わるところはドラムのエイトっぽいビートで弾きまくる感じ。オルガンはハーモニックマイナー系を織り交ぜてるのかエキゾチックなフレーズを連発。10分近い演奏でけっこう満腹...。ラストのスタンダード「Prelude To A Kiss」は繊細なフレーズを連発。オルガンとドラムをよく聴きながら抑えたプレイ。少し物足りない余韻を残してアルバムは終わります。一聴すると地味ですが、聴くたびに味わい深さに気付かされる渋ーい1枚。


ウィルソンのギタープレイの特徴はロックやブルース、ボサノヴァなどの様々なジャンルを内包し、ジャズを基調としながらもトータルな音楽性として聴かせるところにあると思います。それぞれの色が目立つことなく調和を感じさせる演奏と言ったらよいでしょうか。例えば、彼の他のトリオ作品に『JACK OF HEARTS』というアルバムの中の6曲目に「VIDA PERDIDA ACABOU」という曲があるのですが、なんというかポップでカントリーちっくなアルペジオをテーマに据えつつもなぜだか不思議とジャジーに進んでいき、アブストラクトな短いオブリを挟んで実に心地良く曲が閉じられます。是非聴いてみて頂きたい1曲です。彼の奏でる音楽には、ジャズを幹としつつもあらゆるジャンルを枝葉として伸びる一本の木のような、豊かな音楽性と統一感とがあるのです。「分かりにくい」とか「渋すぎる」と感じる人がいても当然ですが、私はたまらなく好きです。そんな彼を支えるメンバーの演奏も秀逸。オルガンのジョー・バグは自分の役所をわかっているというか、出すぎず出なさすぎずトリオとしての音の厚みも考えたプレイ。良いオルガニストだと思います。ドラムのマーク・フェーバーと組んでリーダー作を出しているようなので、今度聴いてみたい。



さて、それでは音源聴き比べに参りましょう。


① 輸入盤CD(GRV1008-2)
始めに聴いた彼のリーダー作がコレだった。一発で極上の音色と曲の良さにやられたのは上に書いたが、そもそもの録音も良い!ややギターが小さいかなとも思うが、オルガンの音が実によく録られていてジョー・バグのセンスの良いソロが堪能できる。このGroove Noteというレーベルは音質にこだわってるらしく、律儀に録音マイクなどの機材までもクレジットされており、CDでも十分に満足できる音質である。

② ハイブリッドSACD(GRV1008-3)
SACDプレーヤーを購入してからというもの、手持ちの愛聴盤のSACD盤を検索する日々を送っていたところ、この作品がヒットしすぐにポチった。届いてすぐに聴いたが、正直CDを聴いた時との差はそれほど感じなかった(それほど元の録音が良い)。ところが、聴き比べしようとCD→SACDと続けて聴くと全然違う!誰でも判る音の「彫り」の克明さ。SACDと比べると、CDはギターがパサついて高音がうるさく聴こえるようになってしまった。SACDは上にも書いたようにギターの音色が時折「クラシックギターか」と思うほどの透明感と柔らかさ・しなやかさを備え、太くウォームで手の指の動きまで見えるようだ。判別容易なドラムはそもそものリアルさが段違いで、ハモンドオルガンは豊かな音の厚みが全然違う。音の分離も素晴らしい。断然SACDが良い。


③ LP(GRV1008-1)
シリアルナンバーは700番台で、若干後ろのプレスになるのだろうか。針を落とすと出だしの1音からしてCD・SACDとは別物の表現である。デジタルメディアが「各楽器の音のリアルさ」でもって演奏を伝える表現なのに対し、アナログは「音全体の塊りとして演奏を聴かせる」表現である。悪く言えば音の分離が甘いが、ギターが「ギター」、オルガンが「オルガン」として聴こえるのではなく、ひとカタマリの演奏の中での「ギター」あるいは「オルガン」として聴こえる。マスタリングやミックスの違いがあるのかどうかは判らないが、レコードを聴いた後でSACDを聴くと、ややドラムのスネアがうるさく大きすぎるように聴こえる。ちなみに4曲目の「Time Flies」と5曲目「Road Trip」は贅沢な45回転の片面1曲で、さらに音質が良い。上の評価と逆になるが、レコードを聴くとSACDの音の分離の良さは良し悪しかも。レコードは極めて耳馴染みが良く、聴き疲れしない。CDは音のパサ付きが、そしてSACDは音の細部がリアルすぎるため、若干聴き疲れする。それでもトータルとしてSACDの方が良い。


満足度をCDが90点とすると、SACDは98点、LPは95点(Steely Danの時と同じ点数基準ではありません。あくまでこのアルバム限定の話)。SACDはハイブリッド盤であるので、断然こちらを薦めます。アマゾンによると、4月に新譜が出るらしいです。フォーマットはLPとCDとmp3の3つがすでに予約受付として出ていますが、SACDやハイレゾはどうなんだろう・・・出来れば、部屋聴き用のLPと外出時用のmp3の2つで勘弁して欲しいな(苦笑)


そのうち、彼のリーダー作品ディスコグラフィーを書く予定・・・
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