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音楽好きの世迷い言
The melody at night, with you
福間洸太朗のショパン・ピアノソナタ第3番ほか
2019-01-12-Sat  CATEGORY: 音盤紹介
以前、読者の方に「福間さんのショパンのソナタ3番は良いですよ」とオススメ頂いて早速NMLで聴き、今回改めて聴き直したのでざっくりと感想を書きたい。

まず録音が良い。音像への距離、明晰さ、残響、どれも申し分ない。そして際立つ技巧の高さ。以前、NHKの超絶技巧のピアノ曲紹介の番組で知ったが、この人の(少なくともメカニカルな面での)テクニック力は本当に高いと思う。解釈はオーソドックスで整いすぎていると言えばそうなのだが、「決して優等生的にはなりませんよ」という決意表明のようなアツい瞬間がどの楽章にもあるのがニクい(単に私の思い過ごしかもしれないが(笑))。

演奏時間は13:06/2:49/9:23/5:11で、全体的に私の苦手な遅めなのだが、細部の完成度、全体のバランスと説得力が素晴らしい。特に第3楽章は飽きさせず、極めて美しい音色で歌っており、単なる技巧派ではないことが分かる。それでも、評価一覧の方にも書いたが、終楽章のテンポが標準的なのだけが惜しい。惜しすぎる(まあ楽譜の指定に従ったのだろうけど・・・)。コンサートではまた違うのだろうか?ショパンのソナタ第3番は是非今後、熱く飛ばしたライヴ盤を発売して欲しい。

そんなわけで、引き続いてNMLで彼の他のアルバムもつまみ食いしてみた。

まずはリストのパガニーニ大練習曲。過去のテクニシャンの名演と技巧では一歩も引けを取らない。ラ・カンパネラも、トータルの感銘度はともかく技巧的にはガヴリーロフよりもずっと精密。やはり優等生で終わらないのもイイ(尤も、ガヴリーロフのように最後で爆発というほどではないけれど)。M・レカリオ(ラエカリオ)のようなブッ飛んだテンポではないが、あの盤はちょっと向こう見ずのギャンブラーの為せる技というか、ミスはないもののどこか綱渡り的な危うさを感じるところも無きにしも非ずなのに比べ、この人には安心感がある。第5番はちょっと誠実に過ぎるかなとは思うが・・・しかし、音色もメチャクチャ明晰で綺麗である。第6番だけは、ところどころでタメがあるのが惜しいものの、勿論最後のアルペジオは凄まじいスピードで攻めまくる。聴き込み次第では、レカリオ盤やフィリペツ盤の比較対象に・・・?と思わせるほどの印象。

続いて、トッパンホールでのリサイタルライヴがあったのでスクリャービンのソナタ3番を聴いてみた。出だしからほんのちょっと音を引っかけるが、途方もなく和音がよく響く。スタジオ録音同様、音が濁りなく鳴る。ただ、全体的にタッチが明晰なので(意図的とは思うのだけれど)、曲想的にもう少しくぐもったような、霧がかった音色も織り交ぜてもらえるとよかったかも。

そしてイベリア第1巻。じっくり、かなり遅いテンポの箇所もあるが、急速部分との繋がりも自然で、さほど違和感はない。やはりタッチは明晰で、どこまでもビシッと和音が響く。セビリアの聖体祭の例の箇所も鮮やか!1回しか聴いていないので、アローチャ盤、岡田盤、アムラン盤、アンウィン盤と比較してどうなのかまでは言えないが、抜き出して聴いたラバピエスを聴く限りは相当イイ線言ってると思う。

・・・日本人男性ピアニストでテクニシャン系というと、岡田博美氏、横山幸雄氏などのレジェンドがいるが、勝るとも劣らない技巧の持ち主だと感じた。とにかく明晰な打鍵と正統派な解釈が印象に残る。演奏がストレートなだけに技巧の高さが際立つ。今後もウォッチしつつ、是非コンサートにも行ってみたい。
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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番op.30聴き比べ~評価一覧編改訂版(2019/1/12)~
2019-01-12-Sat  CATEGORY: ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番聴き比べ
コルスティック盤、アイモンチェ盤を追加(2019/1/12)
アムラン盤を追加(3/22)
ブニアティシヴィリ盤を追加(3/20)
ソコロフ盤(DG)を追加(3/18)
エレシュコ盤(Ponkin,LP)を追加(2/6) 
ヴォンドラチェク盤を追加(1/22)
評価一覧が随分古くなったので改訂しました(2017/1/10)




私が持っている音源の数では最も多いラフマニノフのピアノ協奏曲第3番について、所有している録音を挙げて簡単にレビューしてみます。

とりあえず4つ星を最高として自分のお気に入りを書きましたが、ピアニストのランク付けや優劣では勿論ありません。テンポが速いか遅いかなどの客観的な感想部分を読んで、お好みの録音探しの参考にして頂ければ幸いです。評価・ピアニスト/指揮者/オケ(録音年・第一楽章のカデンツァの種類)の順です。メモが面倒臭くて書いてないものもあります。オケの名称表記は適当です。


時と場合によって評価を突然変えることがありますので予めご了承ください(聴き直す度に変えるかも)。また、評価が下に行くほど&レビューが短いほどあまり聴き込んでいない盤ですので、それほどあてにされませんようお願いします。

評価未記入盤:ラ・サール

レビュー未記入盤:ラ・サール、ラフマニノフ、アニエヴァス、コスタ、キム・ヒョスン、シグフリッドソン、ケルダー、ラシュコフスキー、舘野泉、ホロヴィッツ(&メータ)、クリダ、ジェッター、マッサ、オルティス


予め私の好みの演奏や聴く上でのポイントを書いておくと、

第1楽章:演奏時間が16分台前半以下(ossia)で速めのテンポであること
①展開部前の難所である両手交差部分のクリアさ
②展開部の和音連打のスピードと迫力
③カデンツァは断然ossiaが好みで後半の和音部分での劇的さ
④再現部前の抒情性(ここは意外にセンスが出る)

第2楽章:音色が豊かで抒情的であること
⑤ピアノが入ってきてすぐの緩徐部分の歌い方
⑥中盤以降の細かい急速音型のクリアさ
⑦アタッカで最終楽章に突入するときのオケとの一体感と迫力

第3楽章:演奏時間が13分台前半以下で速めのテンポであること
⑧冒頭の同音連打のスピードと粒の揃い
⑨後半部分の急速部分のクリアさ(重音上がりのossiaでなくても可)
⑩エンディングの下降音型がノーマルな2拍3連であること

さらに全体を通しては、

⑪カットが無いこと
⑫多少のミスや会場ノイズがあってもライヴの熱気や観客の高揚感を重視

となります。特に重視しているのが②③⑤⑦⑧⑫です。

以下の評価では、4つ星の盤のみ気に入っている順に並べています(3つ星以下の評価は順不同です)。

現在149種(2019/1/12)

☆☆☆☆☆ヴォンドラチェク/Marin Alsop/National Orchestra of Belgium/2016年/ossia/Live
☆☆☆☆ サモシュコ/Soustrot/Orchestre National de Belgique/99年/ossia/Live
☆☆☆☆ ブロンフマン/ラトル/BPO/09年/Live/Blu-ray ※DVDは買ってはいけない
☆☆☆☆ ヴォロドス/レヴァイン/ベルリン・フィル/99年/ossia/Live/※ SACD
☆☆☆☆ ハフ/リットン/ダラス響/04年/original/Live
☆☆☆☆ 横山幸雄/小泉和裕/東京都交響楽団/12年/Live/Hybrid SACD
☆☆☆☆ ガヴリーロフ/ラザレフ/モスクワ・フィル/76年/ossia/LP
☆☆☆☆ ロドリゲス/P.A.MacRae/Lake Forest Symphony/94年/Live
☆☆☆☆ コルスティック/ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団/D. リス/2017年/ossia
☆☆☆☆ プラッツ/バティス/メキシコシティ・フィルハーモニック/89年/ossia
☆☆☆☆ カツァリス/ R.Defssez/Orchestre National de Belgiue /72年/ossia/Live/CD ※LPは☆☆☆
☆☆☆☆ アンスネス(旧)//オスロ・フィル/95年/ossia/Live
☆☆☆☆ アルゲリッチ/シャイー/コンセルトヘボウ/82年/Live
☆☆☆☆ ブニアティシヴィリ/P.ヤルヴィ/チェコ・フィル/16年/ossia
☆☆☆☆ アンスネス(再)/パッパーノ/BPO
☆☆☆  エレシュコ/ポンキン/レニングラードフィル/83年/ossia/LP ※ネット上にデジタル音源有の模様
☆☆☆  ドノホー/フェドセーエフ/Moscow Radio Symphony Orchestra/82年/ossia/Live/LP&CD
☆☆☆  ボレット/フィッシャー/ロンドンフィル/82年/original
☆☆☆  アムラン/ユロフスキ/ロンドンフィル/16年/original
☆☆☆  オールソン/
☆☆☆  ラシュコフスキー/2007年エリザベート王妃国際ピアノコンクールLive/ossia
☆☆☆  シェリー/original
☆☆☆  ペナリオ/サスキンド/フィルハーモニア管弦楽団/61年
☆☆☆  ワイルド/ホーレンシュタイン/original
☆☆☆  モーク/ミルトン/ラインラント=プファルツ州立フィル/original/11年
☆☆☆  アルフィディ/R.Defssez/Orchestre National de Belgiue/72年/ossia/Live/LP
☆☆☆  清水和音/アシュケナージ/2007年/ossia
☆☆☆  及川浩治/広上純一/新日本フィル/05年/ossia
☆☆☆  レーゼル/ザンデルリンク/78年/ossia
☆☆☆  カツァリス/Neumann//78年/ossia
☆☆☆  ジャニス/ドラティ/ロンドン・フィル/61年
☆☆☆  スコウマル/スワロフスキー/プラハ室内交響楽団/2002年/original
☆☆☆  ブロンフマン/サロネン/ossia
☆☆☆  グレムザー/ヴィット/ossia/
☆☆☆  ソコロフ/ossia/Live ※海賊盤的音質
☆☆☆  サモシュコ(再)/ossia/Live/DVD
☆☆☆  トルプチェスキ/
☆☆☆  ガヴリーロフ/ムーティ/フィラデルフィア・フィル・86年/ossia
☆☆☆  アシュケナージ/フィストゥラーリ//63年/
☆☆☆  ルガンスキー/オラモ/03年/orginal
☆☆☆  ギレリス/コンドラシン/USSR state orchestra/49年/Live
☆☆☆  スグロス/シモノフ/ベルリン・フィル/84年/ossia
☆☆☆  クライバーン/コンドラシン/モスクワ・フィル/58年/ossia/Live
☆☆☆  ベルマン/アバド/ロンドン・フィル・76年/ossia
☆☆☆  スルヤディ/Miguel Gomez Martinez/ロンドンフィル/
☆☆☆  フェルツマン/メータ/イスラエル・フィル/88年
☆☆☆  リシッツァ/
☆☆☆  Y.ワン/ドゥダメル/シモン・ボリバル響/original/
☆☆☆  小山美稚恵/フェドセーエフ/
☆☆☆  及川浩治/広上淳一/新日本フィル/2008年/Live
☆☆☆  コミナティ/96年シドニー国際ピアノコンクール/Live
☆☆☆  L .ラン/テミルカーノフ/サンクトペテルブルグ・フィル/01年/ossia/Live
☆☆☆  ホロヴィッツ/ライナー/ /Live
☆☆☆  フェルツマン/プレトニョフ/ロシア・ナショナル管/original/92年
☆☆☆  マツーエフ/サッカーニ/ブダペストフィル/ossia/Live
☆☆☆  マツーエフ/ゲルギエフ/マリインスキー劇場管/ossia/09年
☆☆☆  ニコルスキー/ossia/Live
☆☆☆  ライヴリー/
☆☆☆  J.ナカマツ/シーマン/ロチェスター・フィル/ 00年
☆☆☆  ピサロ/ossia
☆☆☆  クレショフ/ヤブロンスキ/The Russian State Orchestra/original/01年
☆☆☆  ルディ/ヤンソンス/サンクトペテルブルクフィル/original/92年
☆☆☆  アシュケナージ/プレヴィン/LSO・70&71年/ossia
☆☆☆  ベレゾフスキー(旧)/ossia
☆☆☆  若林顕//Orchestre National de Belgiue/Live
☆☆☆  クライバーン/コンドラシン/Symphony of the Air/58年/ossia/Live
☆☆☆  ボレット/Charele Webb/インディアナ州立大学オーケストラ/69年/Live
☆☆☆  グレムザー(旧)/Maksymiuk/92年/ossia
☆☆☆  ヴァーシャーリ/77年/ossia
☆☆☆  マッサ/ossia
☆☆☆  アイモンチェ/チネケ管弦楽団/R. コックス/2017年/original
☆☆☆  ラプラント/
☆☆☆  ギルトブルク/12年/Live
☆☆☆  オルティス/mixed version cadenza
☆☆☆  グティエレス/マゼール/ピッツバーグ交響楽団/91年
☆☆☆  キーシン/小澤/ボストン交響楽団//ossia/Live
☆☆☆  K.パイク/
☆☆☆  クライバーン/コンドラシン/モスクワ・フィル/58年/ossia/LP&DVD
☆☆☆  モギレフスキー/コンドラシン/Symphony of the air・64年/ossia
☆☆☆  ホロヴィッツ/バルビローリ/ニューヨークフィル・41年//Live
☆☆☆  シチェルバコフ/SACD
☆☆☆  ワイセンベルク/プレートル/シカゴ交響楽団/68年
☆☆☆  ティボーデ/アシュケナージ/クリーヴランド・オーケストラ/94年/ossia
☆☆☆  ゲルナー/シナイスキ/BBCフィル/02年/Live
☆☆☆  ベレゾフスキー/リス/Orchestre Philharmonique de l’Oural/ossia
☆☆☆  モギレフスキー/Sternefeld/Symphony Orchestra of the RTB/64年/ossia/Live
☆☆☆  ラシュコフスキー/ヴァルガ/ベルギー国立管弦楽団/07年/ossia/Live
☆☆☆  エレスコ/プロヴァトフ/USSR響/84年/ossia
☆☆☆  ベルマン/バーンスタイン/NY・フィル/ossia/Live
☆☆☆  シェパード/プリチャード/ロンドン・フィル/76年/ossia/LP
☆☆☆  ジャルドン/
☆☆☆  マルシェフ/
☆☆☆  ジョン・チェン/
☆☆☆  小川典子/
☆☆   ソコロフ/Yan Pascal Tortelier/BBCフィル/95年/ossia/Live ※音がおかしい
☆☆   イェゴン/
☆☆   ビレット/
☆☆   クリダ/78年/original
☆☆   ロドリゲス/
☆☆   オールソン/Caracciolo/RAI di Milano/64年/original/Live
☆☆   シグフリッドソン/
☆☆   ギレリス/アーノンクール/Live
☆☆   コスタ/
☆☆   舘野泉/
☆☆   Ukhanov/チヴジェリ/シドニー交響楽団/original/Live
☆☆   シェン/ヴァルガ/Orchestre National de Belgiue/03年/ossia/Live
☆☆   アシュケナージ(4)/ハイティンク/ossia
☆☆   ピサレフ/フリードマン/98年
☆☆   ワイセンベルク/バーンスタイン/79年/
☆☆   園田高弘/original/67年
☆☆   グティエレス/ロジェストヴェンスキ/Moscow Radio Symphony Orchestra/70年/Live/LP
☆☆   ジャニス/ミュンシュ/ボストン交響楽団/57年
☆☆   ヴィノグレード/パーマー/98年/original/Live
☆☆   コラール/プラッソン/77年/
☆☆   バルト/エッシェンバッハ/ロンドン・フィル/ossia
☆☆   ラローチャ/プレヴィン/ロンドン交響楽団/
☆☆   リル/尾高忠明/ ossia
☆☆   アニエヴァス/
☆☆   ケルダー/
☆☆   キム・ヒョスン/
☆☆   サイモン/
☆☆   ジェッター/ossia
☆☆   ワッツ/小澤/ニューヨーク・フィル/69年/mixed version cadenza
☆☆   ラフマニノフ/
☆☆   ルガンスキー(旧)//95年/
☆☆   ジルベルシュテイン/アバド/
☆☆   アシュケナージ/オーマンディ/75年
☆☆   中村紘子/スヴェトラーノフ/
☆☆   コチシュ/デ・ワールト/
☆☆   プレトニョフ/ロストロポーヴィチ/ossia
☆☆   Ts’vereli/Kakhidze/Tbilisi Symphony Orchestra//ossia
☆☆   ポコルナ/ピンカス/ブルノ国立フィル/76年/ LP ※CD化された
☆☆   チェルカスキー(新)/テミルカーノフ/94年/
☆☆   ペトゥコフ/シモノフ/モスクワ・フィル/ossia
☆☆   カペル/マクミラン/トロント・シンフォニー48年/
☆☆   バッカウアー/不明/original/LP ※CD化された模様?
☆     メルジャーノフ/
☆     ホロヴィッツ/メータ/DVD
☆     ホロヴィッツ/オーマンディ/Live
☆     Orlovetsky/Titov/
☆     マルクジンスキ/クレツキ/フィルハーモニア49年/
☆     チェルカスキー(旧)/
☆     K.Leimer/Zsolt Deaky/Nurnberger Symphoniker/?/LP
☆     リンパニー/コリンズ/ニュー・シンフォニー/52年/
☆     ホロヴィッツ/コウセヴィツキー/41年/Live
☆     ポストニコワ/ロジェストベンスキ/91年/ossia/Live
☆     ホロヴィッツ/コーツ/30年/ Live
☆     ヘルフゴッド/Horvat/コペンハーゲン・フィル/95年/ossia/Live
☆     ギーゼキング/メンゲルベルク/コンセルトヘボウ/40年/ossia/Live


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コルスティックとアイモンチェのラフ3
2019-01-12-Sat  CATEGORY: 音盤紹介
NMLで聴いたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の簡単なレビューを。

① M. コルスティック / ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団 / D. リス / 2017年/ossia
昨年配信されてすぐ聴いてなかなか良かった気がするが、忙しくてブログに書くのを忘れていたところ、今年になって読者の方からコメントでご推薦頂いたので聴き直してみた。

これが名演だった!最初聴いたときは、ライヴでもないのに(録音日は2日間の記載がある)なかなか熱い演奏だなぁくらいの印象だったのだが、記憶を大幅に上回る熱演が展開されていた。まず、ピアノの音が近くてデカい。オケが小さく、いわゆる伴奏に「徹して」いる。ベレゾフスキー新盤でもオケを率いていたリスは、あまり好きな感じではなかったと思うのでこれは嬉しい。そして、録音も明晰で良い。

演奏は全体的にかなりの快速。タイムが16:31/10:36/12:49だから、テンポ的には私の好みどストライクである。第1楽章は出だしから熱い。なんでそんなに気負ってんの、と思うほど。第1主題の再現部ではオクターヴ下げて弾いたり、速いだけでなく表現意欲もある。展開部の和音連打は凄く速いというわけではないが、手に汗握る。ただし、和音がパシャリと弾けてて、高音部が目立つ腰高の音色になっているのが惜しい。ossiaのカデンツァは標準的な解釈だが素晴らしく、数多の名演にひけを取らない(オクターヴ下げもある)。ロシア的な大げさ感と、ベトソナ弾きが備える格調の高さの、イイとこどりとでも言おうか。第2楽章も期待を裏切らずに歌いまくりで、オケが弱いだけにピアノの活躍が嬉しい。名技的な細かい音型での指回りは最上の部類でないが、「置きにいった」感じがしなくて気持ちがこもっている。多少の粗さや「っっ??」と思う箇所がないわけではない。第3楽章も気合入りまくりで、出だしから相当なスピード。コンクールでもないのにどうしたの、と思わせるほどで、プラッツの爆演を思い起こす。また、例の重音上がりはやっていないが、そこの最後のアルペジオをオクターヴ上げ?ていたような気がする。面白いのが、その後の緩徐部分は他の盤で記憶がないほどグッとテンポを落として切なく歌っており、彼の解釈のセンスを感じる。なお、この楽章に限らず、「カットした??」と思う箇所が幾つかあったような気がする。

コルスティックはベテランのベートーヴェン弾き、という印象が私には強く、こんなにロマンティックに熱い演奏する人とは思わなかった。探せば違和感や粗はあるものの、全体的に受けた感銘からは躊躇なく4つ星☆☆☆☆を付けられる。

② G. アイモンチェ / チネケ管弦楽団 / R. コックス / 2017年 / original
これもNML。全然知らないピアニストだが、聴いてみた。コルスティックと比べると(比べなくても?)かなーり微温的な演奏で、対照的な印象を受ける。演奏時間はオリジナルのカデンツァで16:06/10:03/14:30だから、私の好みからは(第2楽章を除いて)結構遅めになるが、聴いてみると意外に悪くない。歌心抜群、というよりは細部への気遣いや柔らかいタッチでこの曲の別な魅力を惹き出している。かと言って、第2楽章の演奏タイムを見て分かるようにべらぼうに遅いわけではないのが個人的には嬉しい(某テクニシャンの誰かさんも見習って欲しかった…)。ただし、オケがかなり弱く、音を外し気味に感じるところがままある(録音日は1日分だけでのようなので、編集はしてないのかもしれないが)。まだきちんと聴き込んだわけではないが、今のところ3つ星☆☆☆は付けられる。

というわけで、コルスティックは久々のhitであった。フィジカルCDを入手したくなった。
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Francesco Grillo / Vivaldi: The Four Seasons, etc
2019-01-12-Sat  CATEGORY: 音盤紹介
フランチェスコ・グリッロというイタリアのピアニスト&コンポーザーの作品を聴いた。

ピアニスト&コンポーザーというワードは久々に目にした気がする。原曲に彼なりの編曲を加えているようである。販売元による情報では次のように書かかれている。


イタリアのピアニスト&コンポーザー、フランチェスコ・グリッロ。音楽に造詣の深い家庭に育ったグリッロは8歳からピアノを始め、11歳で作曲を始めるまでとなりました。彼の憧れはショパンやリストであり、15歳で初めてのソナタを作曲、さらにその後ラフマニノフ、プロコフィエフなどのロシア系、さらにラヴェルなどのフランス系作曲家たちに影響を受け、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院を卒業。ビル・エヴァンスやバド・パウエルなども好んで聴き、弾いていました。彼のアルバムは、これまでの音楽とは異なり、クラシックの伝統を完全に学び自分のものにしたミュージシャンが、現代の音楽(ジャズ・インプロヴィゼーション)を織り交ぜた独特なもの。この斬新なリリシズムと多彩なスタイルは、ポピュラー音楽に通じるクールさがあります。それにしてもこんな斬新で美しい音楽は、どうやったら思いつくのだろうか? 演奏技術もさることながら、その創造力にもただただ感心させられるアルバムです。


これはひょっとして私の好きなGreilsammer系ピアニストか?と思い手を出して聴いてみた。

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曲目は、ヴィヴァルディ(フランチェスコ・グリッロ編):協奏曲集「四季」(全曲)、バッハ/ブゾーニ:コラール『主よ、われ汝に呼ばわる』、シャコンヌ、バッハ/ラフマニノフからヴァイオリンパルティータ第3番より3曲、となっている(ちなみに収録曲はいつも通りまずはネットからコピペをしたのだが、メーカーのインフォがデタラメで書かれていない曲もあり、閉口した)。2016年の録音である。

これがまあ酷い。何が酷いかというと、演奏はそれほど酷くないのだが、上の紹介文が全くのデタラメだったのだ。

まず録音だが、毎度おなじみソニーの明晰モノクローム調&不自然な残響の音質で、悪くはないがピアノの音色が磨かれているとまでは言えない。初めのヴィヴァルディは過度な虚飾を排したカッチリしたタッチで、なんとなくグレイルザンマーやドゥバルグを思わせる知的な印象がして期待させる(アームストロングほどではないが)。ところがPrestoなど素早い同音連打が続く曲になると、粒が揃ってない感じでパサついてホコリっぽい。また、ところどころで彼の編曲が加わっているのだが、近代的な音を少々追加した程度にしか私には感じられず、ジャズだの現代音楽だのと言った雰囲気は皆無。

バッハ=ブゾーニになると、聴き慣れた曲だけにさらに注文が増えるのだが、ヴィヴァルディから想像するほど悪くない。技巧はたとえば近年盤だとレスチェンコやグロヴナーとかの若手?技巧派から3段くらい落ちるのだけれど、まずまず標準的でストレスはそこまで感じない。前半の長大なアルペジオが連続する部分の勢いも結構あって頑張っているのだが、和音が入る箇所ではさすがにテンポが落ち、オピッツには遠く及ばない。アルバム全体を通して、和音に腰が入っていない印象を受けるのがいちばん気になる。ほかに、レガートとノンレガートの弾き分けが極端というか、恣意的にコロコロ変わるのが私の趣味に合わない。演奏時間は14:46で個人的な好みからは少し遅めであり、以前紹介したビスムート盤のほうが良いかも。そしてまだ聴き込んでいないが、ここでも一部に彼なりの音の追加と解釈の変更がある気がする(良いとは言えない)。

バッハ=ラフマニノフのパルティータ3番は一番良くない。解釈もそうだが、和音や同音連打の響かせ方が特にイマイチで、しかもたった3曲でアッという間に終わるし、一体何がやりたかったのか?しかもこれがトリとは、販売元は何を考えているのか。

そして最も憤るのは、アルバムのどこを聴いても「現代音楽もジャズのインプロヴィゼーションもポピュラー音楽のクールさ」が感じられないことである。ひょっとしたら、彼の他盤からの印象を書いているのかもしれないが、少なくともこのアルバムの紹介文としては誤解を招く内容であり、極めて不適切である。書いた人間がこのアルバムを聴いていないとしか思われない。

そんなわけで、アルバム全体の出来としては60点台半ばくらいで「今後聴き直すか微妙」なラインだが、何よりメーカーの紹介文が許せない。モノを売るなら、もっときちんとしたほうがいい。
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Sergio Tiempo / Live in het Concertgebouw
2019-01-04-Fri  CATEGORY: 音盤紹介
最近はユニオンに出かけても胸がときめくことがほとんどない。


既出の見知らぬレア盤に出会うことなど、年に1・2度あるかないかなのだが、その1度がいきなり年始にやってきた(なんか毎年この時期に同じこと書いてる気もするが)。


セルジオ・ティエンポ / ライヴ・イン・コンセルトヘボウ

tiempo.jpg



これが(hetというのはオランダ語での「the」を表すようだが)有名なコンセルトヘボウ・アムステルダムでのライヴ盤とは違うCDなのだ。


ユニオン某店でふと手に取ったところ、値段がべらぼうに高くて驚いた。どうせ例のアムステルダム・ライヴだろうし、そんな珍しい盤じゃないのにと不思議に思い、一応収録曲を見たところ、1曲目にバッハのパルティータが入っていないことで脳内で完全にスイッチが入る。慌ててAmazonで調べ、タワレコで調べ、Discogsで調べ、さらに念には念を入れてGoogleでも調べ、最後に自分の記憶ともじっくり照らし合わせ、これは自分の未知なるCDと判断して購入した(だって高いんだもの)。先ほど述べたように、この3重・4重の"レア盤"フィルターを通過する盤は年に数枚もない(勿論、Discogsにも未だ載っていない)。


録音は1993/4/4、収録曲は、シューマン・幻想曲Op.17、ラヴェル・夜のガスパール、リスト・コンソレーション第3番、そしてメフィストワルツ第1番。EMIから出た夜のガスパール以外はどうやら初出のようだ。21歳の時の演奏ということになる。レーベル名がよく分からず、最初は海賊盤のような裏青CDかと思ったがプレスCDで、ジャケ写真もしっかりしているし、折りたたみのブックレットになっている。録音データも使用機材を書くなど思いのほか詳しい。肝心の音質は、隠し録りっぽさがなく、コンサートホールの前から15席めくらいで聴いているような残響多めの音で団子っぽい感じはあるが、この時代のライヴ録音としてはまずまず普通か。


シューマンの幻想曲は久しぶりに(そういえばこないだ聴いたのはアムラン盤だった)聴く気がするが、ダイナミックレンジが大きく、歌心もある。ロマンティックというよりは、力強さが目立つ弾きっぷりに若さを感じる。結構大胆にテンポを揺らすだけでなく、止まったり駆け出したりと忙しないのだが、センスがあって飽きさせない。技巧が目立つ曲ではないものの、テクニックの優秀さを随所に感じる。この曲は10年くらい前に知り合いが北川暁子氏についていて、先生がリサイタルをするというのでコンサートに聴きに行った思い出がある。その時の演奏がまた力強く、ガシンと心を掴む名演だったので、その刷り込みのせいかそんな演奏が好みになっている。このティエンポの演奏はそれを思い起こさせてくれた。


続いてラヴェルの夜のガスパール。これは後のEMIでの名演の印象が強いだけに、その6年前の演奏だからどうかなと思ったのだが、ライヴらしい勢いと生々しさがあって非常に良い。昔、ガラス細工のように繊細なこの曲はちょっとでもミスが出ると興ざめだと思い、ライヴ盤では聴きたいとは思わなかったのだが、シュフの、素晴らしい実演に接して以来、また違った楽しみ方ができるようになった。上手く言えないのだが、劇場で演者が目の前で慟哭しているような生々しさをイメージするといいかも(全く何を書いてるんだか…)ともかく、ミスはそれなりに多く、オンディーヌは時折、スカルボでは結構目立つ。それでも絞首台はグロテスクかつ暗澹たる情景を描き出しており、惹き込まれる。全体的なテクニックの冴えはEMI盤ほどではないが、それでも高レベル。ロルティ、ポゴレリチ、シュフ、グロヴナー、そしてティエンポ自身と、数ある名演の中でもやはり鋭利かつ豪快さに満ちた特異な盤として、このライヴには価値がありそうだ。

最後のリスト2曲。コンソレーション第3番は至極まっとうな佳演。最後に控える曲のために力を溜めているかのようではあるが、アルバム中もっとも抒情的で歌に浸れる演奏。音色も綺麗で、団子状に中央に密集しているのが惜しい。トリのメフィスト。出だしから金属的な打鍵でエコノム盤を思い出す。時折猛烈な勢いを見せる箇所もあるものの、むしろ緩徐部分での歌のセンスに惹かれる。重音トリルや同音連打がメチャ速く、ラヴェルで見せた細かい指技が彼の真骨頂か。クライマックス部分の迫力は凄まじいが、いまひとつスピードが上がらない上にミスが多くポロポロと目立つ。跳躍部分はテンポはまずまずだがやはり弾き損じが多い。ライヴで勢いのある演奏というとロマノフスキのブゾーニコンのガラコンサートを思い出すが、あれほど録音は良くないので、トータルではこちらの方が分が悪いか。この曲のマイベストはブニアティシヴィリかエコノム、D・トンだろうか(マツーエフには色々厳しい私)。


というわけでまとめると、団子の録音にミスが多めで、70点台の半ばという感じ。すんごいレア盤を見つけたと思ったが、中身はそれほどでもなかったというのが正直なところ。
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